双方の経済対策(自民党と民主党の経済対策について その1)


与野党の経済対策について考える。全3回シリーズでエントリーする。

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6月29日の参院決算委員会で、麻生総理が民主党への政権交代は必ず景気後退になると発言した。

本当に景気後退になるかどうかは、選挙前後の株価をみればある程度分かる。政権交代して、民主党政権もしくは民主党中心の連立が見えたときに、相前後して株価が下落すれば景気後退すると世の中が判断した証拠にはなる。

だけど、ここでは、自民党と民主党の経済対策の中身を大雑把に比較することで考えてみたい。


◎自民党の経済対策

1.生活に具体的な景気対策
①夫婦・子ども二人の家族で、64,000円の「定額給付金」
②家計を助けるため、住宅ローン減税の控除可能額が最大600万円に拡大。
③住宅の省エネ、バリアフリー化改修費用の10%が税額控除。
④個人の土地譲渡益のうち、最大1000万円が課税所得から控除。
⑤低燃料車を購入した場合、自動車重量税と所得税が減免。
⑥安全に子どもを埋めるよう「14回分の妊婦検診」が無料に。
⑦第二子以降の子ども(3~5歳)、36,000円の「子育て応急特別手当」。

2.働く人に具体的な景気対策
①受け入れている派遣労働者を直接雇用した中小企業に、1人あたり100万円を支給。
②年長フリーターや内定が取り消された学生を正規雇用した中小企業に、1人あたり100万円を支給。
③初めて障害者を雇用する中小企業に、100万円を支給。
④従業員を解雇せずに休業や教育訓練、出向で雇用を維持した中小企業に、賃金の80%を助成。
⑤雇用保険の非正社員の加入要件を,現行の「1年以上働く見込み」から「6ヶ月」に短縮。
⑥再就職が困難な方の失業手当の給付期間が60日分延長。
⑦解雇されて住居を無くした方に1万3,000戸の「雇用促進住宅」を提供。

3.金融・中小企業に具体的な景気対策
①信用保証枠が20兆円に拡大。一般保証枠とは別枠で、2億8,000万円まで100%保証。
②政府系金融機関のセーフティネット貸し付けなどが10兆円に拡大。
③銀行への公的賃金の注入枠が現行の2兆円から12兆円に増額。
④大企業・中堅企業の資金繰り支援として「危機対応業務」(3兆円規模)を発動・拡充。
⑤中小企業の経営支援として軽減税率22%を2年間18%へと引き下げ。
⑥上場株式の譲渡益・配当などの軽減税率(20%⇒10%)を三年間延長。
⑦赤字になった企業の法人税(前年度納付分)の還付制度を復活。

4.地方に具体的な景気対策
①大都市圏を除き、土日祝日、乗用車の高速料金を原則1,000円以下へ。首都・阪神高速の料金を引き下げ。
②平日の全時間帯で、大都市圏を除く高速道路料金を3割程度引き下げ。
③1兆円規模の「地域活力基盤想像交付金」を地方に。
④雇用促出などのため地方交付税を1兆円増額。
⑤6,000億円規模の「地域活性化・生活対策臨時交付金」を地方に。
⑥安全な交通空間の確保や、物流コストを下げることに繋がる交通ネットワークを整備。
⑦地域企業再生や商店街活性化により地域を活性化。


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◎民主党が掲げる景気対策案

(1)家計が自由に使えるお金(可処分所得)を増やす(14.1兆円程度)
○子ども手当:中学卒業までの子ども1人あたり月額2.6万円の「子ども手当」を支給。
○高校実質無償化:国公立高校通学世帯に対し、実質無料化。私立高校通学世帯についても、12~24万円の助成。
○大学生に対する奨学金の大幅拡充
○年金課税の見直し:04年改正以前の状態に戻す。
○高速道路無料化
○暫定税率廃止・直轄事業地方負担金廃止
○中小企業の法人税率引き下げ等:中小企業向けの法人税率を11%に引き下げる。
○中小企業オーナー課税の廃止
○中小企業、住宅ローンを抱える個人に対する支援

(2)新しいライフスタイル、新しい価値の実現を支援する(1.6兆円程度)
○太陽光パネル設置促進等:住宅用太陽光パネルの設置に対する半額助成など
○次世代自動車購入支援:環境対応車への買い替えについて、200万台程度を対象に最大30万円の促進策を実施
○省エネ等住宅リフォーム

(3)現在の不安を軽減し、将来の安心感を高める(4.5兆円程度)
○全ての労働者に雇用保険適用:雇用保険給付に対する国庫負担割合を法律本則である1/4(現在13.75%)とする。
○中学生までの医療費無料化
○医師・看護師・コメディカル・クラーク等の不足解消(所要額0.5兆円)
○ドクターヘリの導入促進等
○介護労働者待遇改善・人材確保:介護報酬の7%相当額を税財源から給付
○学校・病院等の耐震化加速等
○学校教育の情報化:小中学校のパソコン配備の加速、教科書等のデジタル化。
○コミュニケーション教育の充実
○全ての小中学校にスクールカウンセラーを配置
○求職者支援制度:職業訓練を実施し、月額10万円の手当を給付
○消費生活相談員の拡充

(4)消費の拡大、新産業の育成、安定雇用の維持・創出(1.0兆円程度)
○省エネ家電等の購入補助・地デジ対応機器の購入補助
○農林水産業における戸別所得補償制度等の創設
○グリーンイノベーション機構の創設:環境・エネルギー・農業関係の事業を支援する組織を創設。
○環境・エネルギー技術の開発促進:次世代の環境エネルギー技術の開発を促進するための投資。
○次世代科学技術を支える人材の育成等
○求職者支援制度
○職業訓練・職業人材育成教育

◆規模・財源
○2年間で約21兆円(真水)の財政出動。
○「天下り廃止等による公共調達のコスト削減」等により財源を確保。
○09年度の措置は、「経済緊急対応予備費」の活用、埋蔵金等により確保。
○現下の経済状況に応じた緊急措置を講じると共に、内需主導経済への転換を実現するための恒久的な政策へ切れ目なく移行し、その財源は予算の総組み替え(税金の使い方の抜本改革)の本格実施により確保する。 

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こうしてみてみると、ぱっと見それ程大きな違いは無いようにみえる。しいていえば、自民党の対策が企業を潰さずに雇用を確保させる対策にも力点があるのに対して、民主党のそれは、生活者への保護的意味合いがやや強いといえようか。

これだけを見ると、民主党への政権交代は必ず景気後退になるかどうか分からないように見える。だけど決定的に違う点がある。それは、4月9日に麻生総理が提示した「未来開拓戦略」にその答えがある。

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画像「政権交代なら、必ず景気後退」麻生首相 2009.6.29 17:40

 麻生太郎首相は29日の参院決算委員会で、民主党の政策に関し「財源をしっかり明らかにしてほしい」と指摘した上で「民主党は政権交代を旗印にしているが、政権交代は必ず景気後退になるだろう」とけん制した。

 首相は「われわれは景気立て直しが国民の気持ちだと思い断固やらせていただく。景気を良くして、経済のパイを大きくすると将来の収入につながる。これが政策の優先順位の一番だ」と強調した。

 景気回復後の消費税率引き上げの必要性にも重ねて言及。「きちんと将来のことを考え、財源の裏付けが必要だ。何でもただにするかのごとき無責任なことは言えない」と述べた。

 自民党の西島英利、西田昌司両氏への答弁。

URL:http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/090629/plc0906291741010-n1.htm

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