政治主導と官僚政治(総理の一字 ~鳩山首相考~)

 
こうした、官僚を半分スポイルするような形での外交を行う場合、相手国の対応として考えられることは二つある。

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ひとつは、官僚を一切咬ませず、政治家同士だけで全てを決めるやり方。もうひとつは、政治家をお飾りとして雛壇に祭り上げて、肝心なことは、全部双方の官僚同士で決めてゆくやり方。

つまり、外交交渉の窓口を何処に置くのか、ということ。

前者のやり方で巧くいくためには、双方の政治家同士で、盤石な信頼関係があることと、政治家が官僚を含めて、完璧に国政を掌握して、政治家の言う言葉、合意した事項については、完璧にその約束を果たすという政治手腕が必要とされる。

それに対して、後者の場合は、官僚同士の水面下での交渉がかなりの部分を占め、官僚のトップが事実上、国政を担う政治家になるという、密室政治に近い形になる。

だから、鳩山政権が、脱・官僚を唱え、それを実現するのであれば、官僚をスポイルするのではなくて、官僚を密接な関係を持ち、逐一情報を吸い上げ、スタッフレベルでの協議内容を十分踏まえた上で、トップ会談なり、外交交渉に臨まなければ、期待する成果は上げられない。

あまつさえ、意味不明な発言を繰り返して、昨日言ったことを、今日翻すなんて、鳩左ブレなことが、国際間合意において行われるのであれば、あっという間に信頼を失うことになる。それも国家的信頼を。

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米国のカート・キャンベル国務次官補は、ワシントンの「戦略国際問題研究所(CSIS)で行った講演で、米政府の政策ではなく個人的意見だと強調した上で、「もし民主党に対して忠告するなら、官僚を敵視するようなことはやめた方がいい。個人的な経験から言うと、日本の官僚は非常に優秀だ」と発言している。これは、前者のやり方で巧くいくための条件でもあるし、今の鳩山政権への懸念をはっきりと表明したと考えていい。

もしも、それでもなお、こうした、官僚をスポイルした外交を続けるのであれば、アメリカを始めとして、世界各国は、前者での外交交渉を諦め、後者での交渉に重点を移してゆく可能性も出てくる。

つまり、脱・官僚を唱えながら、実態は、官僚が全てを決めてゆく、これまで以上の官僚政治の出現。そこでは、もはや政治家による合意文書は美辞麗句で彩られ、肝心なことは何一つ書かれないという、空虚な見せかけだけの政治になる危険さえある。

「ミスター年金」の異名を持つ長妻昭厚生労働相が17日厚生労働省に初登庁したときに、拍手や花束贈呈などのセレモニーなどが無くて、冷戦ムードだとか、長妻大臣が「“もうちょっとこうしたらいいのではないか”と、皆さんと“衝突”と言ったら過激だが、そういうことを申し上げるかもしれない」なんて発言したとか、報道されているけれど、本当にそうであるなら、前者の、ある意味理想的な、政治家による外交への道は遠いを言わざるを得ない。

だけど、実際はどうかというと何ともいえないところがある。それは閣僚人事を見ることによって、少し垣間見ることができるように思われる。

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画像鳩山政権「反米的」 日本専門家ら分析 米政府は期待 2009年9月1日(火)8時0分配信 産経新聞

 【ワシントン=有元隆志】米政府は8月30日の総選挙を受けて、民主党政権との間で「強固な日米同盟」を継続し、北朝鮮の核問題やアフガニスタン問題など諸課題で連携することに期待感を示した。しかし、日本専門家らの間では米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)に掲載された鳩山由紀夫代表の論文が「あまりに反米的」と、「深刻な懸念」が広がっている。

 「鳩山氏は極めて興味深い世界観の持ち主だ。一つとして同意する点はない」


 米政府元高官は27日のニューヨーク・タイムズ(電子版)に掲載された「鳩山論文」を読んだ感想をこう語った。日本専門家らの間では瞬く間に「鳩山氏が驚くべき論文を書いた」との評判が広まったという。


 それまで日本専門家の多くが、民主党が「対等な日米関係」を掲げてきたのは「国内向け」とみて、政権を獲得したら現実路線をとるとみていた。しかし、論文はそうした「甘い期待を裏切った」(ある日本専門家)。


 この専門家は「(論文が)エマニュエル大統領首席補佐官ら大統領側近の目に留まらないことを祈る。仮にエマニュエル氏が読んだら、『反米政権を相手にする必要はない』とオバマ大統領を説得するだろう」と懸念を示した。


 もっとも、米側が政権交代そのものを否定的にみているわけではない。ルース駐日大使とも親しいスタンフォード大のダニエル・オキモト名誉教授は「ほぼすべての主要先進国で本格的な政権交代があったなかで、日本はユニークな存在だった」と述べ、政権交代は健全なことと指摘する。


 オバマ大統領の対日外交政策顧問団の一員だった米シンクタンク「外交問題評議会」のシーラ・スミス上級研究員も「これはマイナスではなく前向きに受け止めるべきこと」と語る。


 ただ、オキモト氏もスミス氏も民主党が代替案も示さないまま、一方的にインド洋での給油活動を中止するのではなく、代替となる貢献策を早期に提示することを求めている。


 スミス氏は鳩山氏がオバマ大統領に核を日本国内に持ち込ませないよう説得する考えを表明したことについて、「核の傘による拡大抑止が、日本の安全保障にどれだけ必要か明確にすべきだ。明確な日本の安全保障に関する理解がないまま、(核持ち込みという)手続き論が優先すると、ワシントンの混乱を招く」と注文をつけている。

URL:http://news.nifty.com/cs/world/worldalldetail/sankei-m20090901042/1.htm



画像鳩山・オバマ電話会談、外務省は「蚊帳の外」

 3日未明の民主党の鳩山代表とオバマ米大統領の電話会談は、米側が在日米大使館を通じて直接民主党に持ちかけて実現した。

 外務省は事実上、“蚊帳の外”だった。

 関係者によると、外務省には、米政府から会談を行う、との事前連絡があったが、同省は調整に関与しなかった。通訳を含む職員の同席も見送った。ただ、民主党の求めに応じ、大統領の人物像と米国の国情に関する資料は提供したという。

 外務省は先月31日に鳩山代表が李明博韓国大統領と電話会談した際にも関与しておらず、民主党の「政治主導」手法の表れと受け止める向きもある。

(2009年9月3日11時37分 読売新聞)

URL:http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20090903-OYT1T00452.htm?from=navr



画像頂門の一針 1662号  09・09・07(月)発行日: 2009/9/7

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  わたなべりやうじらうのメイル・マガジン「頂門の一針」 1662号
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《中略》



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反     響
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《中略》

 3)5日の読売新聞によれば、鳩山氏はオバマ大統領との電話会談に外務省の役人を同席させず、民間の通訳を使ったとか。また、秘話装置などの盗聴防止への配慮も皆無であったようですね。

これでトップ同士の個人的信頼関係が構築できるのでしょうか。

菅直人氏の国家戦略局準備室にも民主党事務局から5名程度の企画職員が入るようですが、同党職員は大部分が元社会党事務局出身者で、かねてより中共・北鮮との関係が懸念されているようです。

盧武鉉政権時代の韓国は北鮮への機密情報流出が噂され、米国は機微な情報を渡さなかったそうですが、今度は日本がそのように做されるのではないかと危惧されます。

これでは腹を割った日米安全保障対話が出来るとは到底思えません。官僚支配排除の思想が先立つあまり、技術的な助言さえ素直に聞く耳を持たないようでは先が思いやられます。(藤原徳太郎)

《後略》

URL:http://www.melma.com/backnumber_108241_4601633/



画像米国務次官補:「鳩山論文、矛盾しない」

 【ワシントン古本陽荘】キャンベル米国務次官補(東アジア・太平洋担当)は2日、ワシントンのシンクタンク、戦略国際問題研究所で行われた日本の総選挙に関するシンポジウムに出席し、「日本が一定の自立志向を有することは必要なことだ。親密な同盟関係と自立志向とはなんら矛盾するものではない」と述べた。米国からの「自立」を強調した民主党の鳩山由紀夫代表の論文がニューヨーク・タイムズ紙(電子版)などに掲載され、米国内で波紋を広げていることから、事態の収拾に乗り出したものとみられる。

 キャンベル氏は、鳩山氏が提唱した東アジア共同体構想などアジアとの関係強化の方針についても、「日本がアジア諸国とより緊密な関係を構築することは米国にとっても有益だ」と支持する考えを示した。

 一方、「もし民主党に対して忠告するなら、官僚を敵視するようなことはやめた方がいい。個人的な経験から言うと、日本の官僚は非常に優秀だ」と注文も付けた。

 会場には聴衆として藤崎一郎駐米大使も出席。司会者から発言を求められ、鳩山氏の「米国主導のグローバリズムは終焉(しゅうえん)に向かう」との主張に関し、「市場経済を否定したわけではなく、市場がもたらした結果について調整が必要だという趣旨だ」などと説明した。

 国務省のメア日本部長も別のシンクタンク「アメリカン・エンタープライズ研究所」のシンポジウムに出席し、「オバマ政権が誕生した際は日本で不安の声が聞かれたが、日米間での緊密な政策協議で政権移行は円滑に進んだ。これから同じことが起こるだろう」などと発言した。

 鳩山論文の掲載後、2日付のニューヨーク・タイムズ紙が「アフガン政策など重要な米国の政策について日本が支持しなくなるのではないかと政権内で懸念が高まっている」と報じるなど、新政権への懸念を伝える報道が続いている。このため、日米政府関係者らが一斉に火消しに回らざるを得なくなった格好だ。

URL:http://mainichi.jp/select/world/news/20090903k0000e030029000c.html



画像長妻厚労相、厚労省といきなり冷戦!? 初登庁に拍手&花束なし 配信元:2009/09/18 08:15更新

 「ミスター年金」の異名を持つ長妻昭厚生労働相(49)が17日、東京・霞が関の厚生労働省に注目の初登庁。200人近い職員らが、その様子を見守ったが、「脱官僚支配」を掲げて船出した鳩山政権の“急先鋒”に対して、拍手や花束贈呈はない「脱セレモニー」のお出迎え。早くも冷戦ムードいっぱいの中、「政」と「官」の本格的な攻防が幕を開けた。

 長妻氏が登庁したのは午前10時すぎ。公用車を降りると、正面玄関前で立ち止まり同省の水田邦雄事務次官(60)とあいさつ。やや硬い表情で「よろしくお願いします」と2、3度頭を下げた。

 しかし、周辺の空気はやはり寒々。200人近い職員らが登庁の様子を見守ったが、そこに歓迎ムードは感じられない。拍手や花束贈呈などのセレモニーはなく、長妻氏は幹部らと礼を交わしたのみ。直後に、報道陣には日程を明かさないまま幹部会も開かれた。

 その幹部会で、長妻氏は舌鋒鋭く斬り込んだ。“名刺代わり”の先制攻撃だ。

 「私自身は、皆さんの長という立場である一方、国民から“厚労省がしっかりするようちゃんと監督してこい、見てこい、チェックしてこい”というような役割も課せられている」と指摘。さらに「“もうちょっとこうしたらいいのではないか”と、皆さんと“衝突”と言ったら過激だが、そういうことを申し上げるかもしれない」

 官僚への厳しい姿勢で知られる長妻氏。17日未明の就任会見では「まずは厚労省にたまったウミを出す。そして厚労省を立て直す」と“闘う政治家”を宣誓。その会見に多くの職員がくぎ付けになった。そして、改めてくぎを刺した格好だ。

 テレビで見たという幹部は「会見では激しい言葉はなかったが、今後どのような指示が来るか分からないので、気を引き締めないと」と警戒の色(!?)を強めた。

 長妻氏はビジネス誌記者の経験を生かし、2007年に「消えた年金」問題を暴き、政府、与党を追及。「ミスター年金」として名をあげた。政権交代前は厚労省とも激しく対峙してきた。

 その名にかけて、早くも“攻防”をスタートさせた長妻氏。午後には同省の大臣室で前厚労相・舛添要一氏(60)から事務引き継ぎを受け、「引き続きご指導を…。今度は追及されるほうなので」。長妻氏は険しい表情で行く末を見つめた。

■長妻氏とは対照!舛添氏に盛大拍手&花束

 舛添一前厚生労働相(60)は17日、厚労省で会見し「(大臣を)752日務めたそうです。毎日何か問題が起こり、それに一つひとつ、一生懸命取り組んできた。限られた任期の中でやれることはやった」と笑顔で語った。会見に先立ち省内の講堂で行われた職員へのあいさつでは「国民の命と生活を守る原則を重んじ、改革も念頭に置いてやってほしい。ワークライフバランスもしっかりやって」と述べた。最後は職員から花束を贈られ、盛大な拍手を受けるなど長妻氏とはエライ違いだった!?

URL:http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/politics/politicsit/303245/

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