亀井金融大臣の「モラトリアム法案」が、金融機関に大きな衝撃を与えている。
モラトリアム法案の詳細は、まだ発表されていないけれど、「貸し渋り・貸しはがし対策法案として、中小企業向け融資の元本返済を、4~5年程度に猶予する線で提出されるようだ。
勿論、こんな法案が通ってしまえば、銀行の融資査定はうんと厳しくなって、逆に貸し渋りが加速するだろうし、新規に借りたい人がいたとしても、借りにくくなってしまって、設備投資も進まなくなるから、景気後退は間違いない。
どちらかというと、今借りていて返済に苦しんでいる人に対しての法案というべきで、新しく富を生み出す発想じゃない。いうなれば、大怪我した人に、痛み止めを打って、しばらく持たせるだけのことで、根本治療じゃない。
4~5年で返済できれば、問題ないのかもしれないけれど、それならば、今の経済危機の対策をきちんとうって、4~5年以内に経済成長させる国家戦略がないと意味がない。
5年も猶予があれば、返済できるだろう、と多寡をくくっていたら、90年代のバブル崩壊後のように、長期の不況が10年も続いたらどうするのか。痛み止めを打ったけれど、結局駄目でした、では洒落にならない。
だから、この手の法案は、一時凌ぎには有効かもしれないけれど、いつまでも続ける類のものじゃない。
尤も、金融庁の幹部によれば、「最初に大きくぶちあげ、最終的に現実路線に落ち着くのが亀井さんのやり方。」だそうだから、最終的には、落ち着くところに収まる可能性はある。
ただ、これは、逆にこれから大きく景気後退することを予測したうえで、中小企業の連鎖倒産を食い止めるための一手だと考えられなくもない。それは、民主党政権の政策以外の原因による経済的打撃を睨んでのことなのかもしれない。
とはいえ、それほどの経済危機になってしまったら、銀行そのものだって危なくなるのだけれど。


亀井静香金融相は16日の会見で、中小企業向け融資の返済を猶予する「貸し渋り・貸しはがし対策法案」での猶予期間を、「貸し手と借り手の間で成立する話」として、4~5年程度を軸に、柔軟に対応していく方針を明らかにした。当初は最長3年と想定されていた。また同法案は1年間の時限立法として臨時国会に提出、成立後、年内の施行をめざしているが、亀井金融相は「経済状況が改善されなければ、延長することもありうる」との意向を示した。
また亀井金融相は中小零細企業の支援策は「返済猶予だけでは対応できない」として、来週にも公正取引委員会の幹部を呼び、大企業が下請け、孫請けとなる企業に、優越的な立場を利用して圧力をかけないよう要請するとした。
一方で金融庁は、返済猶予の対象となった企業を不良債権とみなさない方向で金融検査マニュアルの改訂作業を進めている。亀井金融相は「金融機関としての社会的責任を果たしているか、借り手のコンサルタント的立場で融資がされているかどうか」と、金融機関が融資先を支える視点での改訂を進めるとし、同日には金融庁検査局の検査官たちからヒアリングを実施した。
URL:http://sankei.jp.msn.com/economy/finance/091016/fnc0910162241028-n1.htm

中小・零細企業の借金返済を猶予する「モラトリアム法案」をぶちあげた亀井静香金融・郵政改革担当相が16日、就任から1カ月を迎える。周囲の批判をはねのける強硬姿勢ばかりが目につく中、実効性ある法案を作れるか、手腕が問われる。
≪周囲の慎重論一蹴≫
「『貸付条件の変更』には返済猶予が入るに決まっている。住宅ローンは千差万別だ。今、詰めている最中だから言うわけにいかない」。亀井金融相は13日の閣議後の記者会見で、声を荒らげた。
モラトリアム法案には、国が強制的に金融機関に返済猶予を迫るイメージが先行した。与党三党の政策合意に返済猶予に関する記載がなく、藤井裕久財務相や平野博文官房長官が難色を示した経緯がある。
収益悪化の懸念から金融界も反発し、全国銀行協会の永易克典会長が慎重論を要求。銀行株の下落について「株式市場全体の下げ要因」(市場筋)との見方も出た。
これに対し、亀井氏は強気の姿勢を貫き、閣内の慎重姿勢にも、「鳩山由紀夫首相が私を更迭すればいい」と一蹴(いっしゅう)。銀行界を「私の発言で株価が下がるような脆弱(ぜいじゃく)銀行は銀行業を営む資格はない」と切り捨てた。
大塚耕平金融副大臣によるとモラトリアム法案として臨時国会に提出する「貸し渋り・貸しはがし対策法案」は、金融機関と企業との交渉で貸し付け条件の変更に応じる「努力規定」に近いという。
融資先の破綻(はたん)に備え、政府保証を付ける“アメ”と金融検査・監督を徹底する“ムチ”で、金融機関に返済猶予に応じるよう仕向ける狙いだ。
≪国民理解得られるか≫
亀井氏を知る金融庁幹部は言う。「最初に大きくぶちあげ、最終的に現実路線に落ち着くのが亀井さんのやり方」。こわもての印象が強い亀井氏だが、法案化作業では硬軟織り交ぜた対応をみせているという。
ただ、政府保証のツケは最後には国民に回るだけでなく、返済猶予に応じる基準もあいまいだ。猶予対象は不良債権とみなさない緩和策は、世界的な金融規制強化の流れに逆行しかねない要素をはらんでいる。
亀井氏の根底に横たわるのは旧自民党政権、特に小泉純一郎政権の「真逆を行く」姿勢だ。貸し渋り・貸しはがしの原因として、亀井氏は小泉政権下で加速した不良債権処理が原因と銀行界を批判。自民党寄りとされた日本経団連にも「大企業経営が下請け企業を苦しめ、社会の風潮をすさませた」という趣旨の発言で物議をかもした。
代表をつとめる国民新党が与党内で埋没しないようにする狙いも透けてみえるとはいえ、新政権発足後、初めての法案に国民の理解をいかに得るか、正念場は続く。 (藤沢志穂子)
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【亀井金融相の主な発言】
▽9月16日
「3年くらい借入金の返済を猶予する措置を取るべきだ」
▽9月27日
「私の発言で株が下がるほど脆弱(ぜいじやく)な銀行は、銀行業を営む資格はない」
▽10月1日
「金太郎あめを切るみたいに貸借関係をパーにするとは言ってない」
▽10月5日
「(日本の大企業経営者は従来の日本型経営を捨て)人間を利益を得るための道具のように扱っている」
▽10月6日
「日銀はときどき寝言みたいなことを言う」
URL:http://www.business-i.jp/news/kinyu-page/news/200910140018a.nwc

鳩山由紀夫首相が中小企業対策として「元本返済猶予」を軸とする「モラトリアム新法」の検討に着手した。亀井静香金融相が打ち出したときは、市場も巻き込んで大騒動となったが、首相は29日、こともなげに「私も都議選の時からそう思っていた」と言い放った。モラトリアム-。舞台裏で何があったのか。
■2人だけ
「鳩山首相も『やりましょう』と言っている。発端は沖縄でね、1000人の前で言っちゃったでしょ? 真実は1つしかない」
亀井氏は29日、金融庁で約1時間にわたって閣議後の記者会見をしたが、大半がモラトリアム法案の正当性を強調するものだった。
亀井氏の指摘通り、鳩山氏は、衆院解散直前の7月19日、民主党代表として臨んだ那覇市での民主・国民新両党の合同総決起集会で「しばらくの間、返済を猶予する元本返済猶予法を考えている」と語っていた。
この総決起集会の直前、亀井氏は鳩山氏に「元本だけでは駄目。利息(金利)まで(返済猶予を)やれ」と迫ってもいる。さすがに鳩山氏は金利までは踏み込まなかったが、民主党金融対策チームが今年3月にまとめた「緊急資金繰り対策」に元本返済猶予措置が盛り込まれていた経緯もあり、鳩山氏は亀井氏に法案の検討を約束していた。
■花を持たせる
鳩山氏はこの後も、衆院選の応援演説などで、元本返済猶予法を制定することを繰り返し公言。首相にとっては、実は織り込み済みの政策だったことになる。
結局、「元本返済猶予」は、民主党の衆院選マニフェスト(政権公約)には盛り込まれず、国民新党のマニフェストにだけ明記された。この事情を、民主党政策調査会関係者は「うちがマニフェストに入れなかったのは、国民新党に花を持たせるためだった」と解説する。
その後、今月9日の民主、社民、国民新の3党連立合意は中小企業対策として「返済期限の延長、貸し付け条件の変更を可能とする」とした。この中には「返済猶予」の表現がなかったため、民主党の藤井裕久財務相や平野博文官房長官は、モラトリアム法案に批判的だ。だが、亀井氏にしてみれば、首相が選挙戦で繰り返した発言は「動かぬ証拠」なのだ。
■動き出した現実
亀井氏の「モラトリアム法案」発言は、金融機関に大きな衝撃を与えた。
「実現すれば、中小企業の追加融資要請には応じられなくなる。かえって中小企業の資金繰りを圧迫する」。むしろ貸し渋りの加速につながるとの懸念する声が金融界には多い。
東京商工リサーチによる8月の倒産調査では、負債額1億円未満の倒産が前年同月比10・2%増の819件となり、中小・零細企業の倒産が増加傾向にある。友田信男上席部長はモラトリアム政策については「銀行の貸しはがしを牽制(けんせい)する効果がある」とする一方で、「銀行の融資態度が厳しくなる心配もある」と指摘する。
日本商工会議所の岡村正会頭が15日の記者会見でモラトリアム法案を「朗報」と語ったように歓迎する向きもあるが、すでに中小企業向け融資に消極的なメガバンクが、今回の騒動を奇貨として、貸し出し抑制に動いているという観測もある。
実際に、元本返済猶予が実行されたら、銀行側はどう動くのだろうか。
予想されるのが、返済猶予対象となった企業に対する格付けの引き下げだ。融資返済や利払いが猶予された時点で「経営が正常であっても、管理区分が健全貸出先から不良債権のシマに移ることもある」(都銀幹部)という。
そもそも、亀井氏の求めていた法案が、借金棒引きの「徳政令」のようなイメージで広まったことが、今回の混乱の原因だ。
ただ、厳しい経営状況に直面している中小零細企業と、銀行の営業担当にとっては、融資返済をめぐる話し合いは現在進行形だ。
「汗を流している現場をよそに、政治や業界団体が混乱を引き起こす事態は避けるべきではないか」-。
ある銀行幹部は、モラトリアム法案をめぐる今後の展開に懸念を強めている。(加納宏幸、吉村英輝)
URL:http://sankei.jp.msn.com/economy/finance/090930/fnc0909300031001-n1.htm

直嶋経産相との会談を終え、記者に囲まれる亀井金融相(左)=29日午後、経産省 鳩山由紀夫首相は29日、官邸で記者団に対し、亀井静香金融相が主張する中小企業向け融資や個人向け住宅ローンなどの返済を猶予する「モラトリアム法案」について「元本支払いを猶予し、金利は支払いをするという法案を考えてみたい」と述べ、元本のみの返済猶予を検討する考えを示した。
この日はモラトリアム法案をめぐる政府内の調整が本格化。法案には政府内からも異論が相次いだが、首相が新たな案を示したことで、事態が収束に向かう可能性が出てきた。
首相の案では、元本の支払いが猶予されるため、中小企業や個人はしばらく金利だけの支払い負担で済むことになる。ただ、元本が減らないため、結果的に金利を払い続けなければならない可能性もある。
同法案をめぐっては、首相が、返済猶予を一律に適用する「『モラトリアム』ということまで3党で合意しているわけではない」と明言。これを受け、亀井金融相は29日、「借金を丸ごと棒引きするとは言っていない。検討はこれからで、実効性の高いものにしたい」と、詳細は今後の関係者の協議に委ねるとしていた。
その一方で、「(首相から)『すべてお任せします』といわれた。首相の立場と何の齟齬(そご)もない」と強気の姿勢も示した。亀井金融相は各方面から広く意見を聞く方針で、直嶋正行経済産業相との会談では、中小零細企業を含む産業界に関する「知恵をお借りしたい」と協力を要請した。
また、金融庁では民主、社民、国民新党の与党3党による「貸し渋り・貸しはがし対策」検討チームの初会合も開かれた。
同チームは「(貸し付けの)条件変更が選択肢の一つになる」(大塚耕平副大臣)として、返済猶予の一律の義務付けは困難とみている。今後は3党が野党時代の昨年12月に国会に提出した「貸し渋り・貸しはがし防止法」をベースに調整を進め、臨時国会への法案提出を前提に、10月9日をめどに原案をまとめる方針だ。
URL:http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/090929/plc0909292039015-n1.htm

静かでない男、亀井静香氏がまたも突出した 鳩山由紀夫首相は28日夜、亀井静香金融相が提唱している中小企業向け融資や個人向け住宅ローンを3年程度猶予する「モラトリアム法案」について「連立与党でモラトリアムまで合意しているわけではない」と述べ、亀井金融相の主張は受け入れがたいとの姿勢を示した。
一方で首相は「中小企業が資金繰りに困っており、何らかの手だてが必要というのは事実だ。担当閣僚と担当者を中心にしっかり議論して政治主導でいい答えを見いだすことができると思う」とも指摘し、中小企業対策を早急に取りまとめるべきだとの考えも表明した。
首相官邸で記者団に答えた。
亀井氏は自身が提唱するモラトリアム法案に対し政府内で異論が出ていることに反発しており、「(首相も反対なら)私を更迭すればいい」などと発言している。
URL:http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/090928/plc0909282050011-n1.htm
この記事へのコメント
大学生
早速ですが、モラトリアム法案は鳩山首相の掲げたco2排出量25%削減案と関連性があるとは言えないでしょうか。経済学的観点から考察するならば、co2を25%削減するためには大企業の生産性を抑えるよりも中小企業の縮小を進めたほうが利潤が大きいため、これから負担を強いられる中小企業に対する予防策ではないかと。勝手な推測で申し訳ありません。