事業仕分けは、官僚による政権調査


様々な論議を呼び起こした、9日間にも及ぶ事業仕分けがようやく終わった。

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結果は御存じのとおり、殆どの事業が予算カットや見直しされている。

ただ、事業仕分けの対象となっている事業は、約220項目、447の事業で財務省がリストアップしたもの。

国の事業は二千とも三千ともいわれているから、全体からみればほんの10%か15%くらいのもの。

だから、本当はどういう基準で仕分け対象がリストアップされ、どれがリストアップされなかったかが重要。

というのも、リストアップされなかったものは、「人民裁判」にかけられることはないから、これまでと同様に省庁間の予算折衝などで予算が決まる。つまり8割以上の事業は、幸か不幸か官僚によって保護されている。

逆に言えば、リストアップされた事業は「財務省から見て」煮るなり焼くなりお好きなように、ということ。

大阪大学教授で経済学者の大竹文雄氏によれば、教育関係に限って、と断りをいれているけれど、『「来年から募集をやめます」とか「来年から運営費交付金をx%カットします」と言えば、それで実行が可能なものが集められている』そうだ。

確かに、行政刷新会議の「事業仕分けの対象となる事業・組織等(案)」を見ると、まちづくり「交付金」であるとか、生活保護費や保育所運営費などの「負担金」だとか、国連開発計画「拠出金」だとか、来年から「や~めた」と言えば、すぐ止められそうなものが並んでいる。

この大竹教授の指摘が本当で、かつ教育関係以外も同じ基準でリストアップされていたとしたら、「事業仕分け」なるものは基本的に全事業、全項目予算ゼロにすることすら可能になる。もちろん事業の必要性有無とは関係ない。

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この前提で考えると、仕分け人達が嬉々として予算をバッサバッサしているけれど、どれに予算を付けて、どれを付けないかという仕分け結果そのものによって、実は、政府自身が国家事業に関して如何なる考えや方針・戦略を持っているかを、万天下に知らしめさせられている。

もちろん、仕分け人や担当議員が、その事業内容とその意義を本当に理解した上で、カットや見直し指示をしているのかどうかなんかも、公に晒される。

だから、事業仕分けは、政治主導を見せつける格好の舞台だ、と思われているかもしれないけれど、その実、官僚たちによる、「現政権とは、一体如何なるものなのか」ということを調べる世論調査ならぬ「政権調査」の色合いを帯びていると言える。

事実、スパコンの予算カット騒動や、ノーベル賞受賞者達による事業仕分けに対する批判が起こっているし、ネットなんかだと、民主党政権が敵にしないものなんていない、と言われるくらいその無茶振りを指摘されている。

もはや、各種団体からは、民主党政権は、はっきりと自分達の敵である、と認識されているのではないか。

財務省官僚に事業仕分けを通じて、民主党政権の「政権調査」をしてやろう、という意図があったかどうかは分からない。だけど、もし、そうだったとするならば、財務省官僚の目論見は見事に当たったことになる。

やはり官僚の方が一枚も二枚も上手のようだ。

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画像事業仕分け:対象は447事業…刷新会議、11日作業開始

 政府の行政刷新会議(議長・鳩山由紀夫首相)は9日、首相官邸で2回目の会合を開き、行政の無駄を洗い出す「事業仕分け」の対象として447事業・組織を選定し、公表した。民主党が衆院選で「徹底的に見直す」と宣言した独立行政法人や公益法人への支出に加え、診療報酬など医療関係費や在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)の一部も含まれる。11日から実際の仕分けに着手し、概算要求で95兆円超と過去最大に膨らんだ10年度予算を3兆円以上圧縮することを目指す。

 仕分け作業は、447事業・組織を210~220の項目に分類し、11~27日の間の9日間で各事業を「廃止」「民間委託」「地方移管」などにより分ける。

 対象事業のうち、独法への支出や基金、政府広報経費から、▽「雇用・能力開発機構」「国際協力機構」への運営費交付金▽「民間都市開発推進機構」の都市再生関連基金--などを選んだ。医療関係費では、病院勤務医対策など「診療報酬の配分」や「薬価の見直し」などを挙げた。

 このほか、「地方交付税交付金」や「義務教育費国庫負担金」、思いやり予算のうち、基地従業員の給与負担を加えた。政府は財務省の査定を本格化させ、類似性や共通性のある他の事業にも適用する。仙谷由人行政刷新担当相は会合後の会見で「仕分けは全事業の一部なので、(他の事業への)波及について考える」と述べた。【谷川貴史、小山由宇】

URL:http://mainichi.jp/select/seiji/news/20091110k0000m010099000c.html



画像2009年11月12日 12:32 法/政治 事業仕分けという人民裁判

きのうから行政刷新会議の始めた「事業仕分け」の実態は、ネット中継やツイッター中継までされたが、予想以上に混乱した会議の状況を見て唖然とした。こんな乱暴な人民裁判を続けるのは、民主党政権の恥だ。

まず問題なのは、仕分けの対象になったのは概算要求に出ている約3000の国の事業のうち15%足らずの447事業にすぎないということだ。残りの85%は仕分けの対象にならないので、勝負はこの段階でついている。これを選んだのは、実質的には財務省の主計局である。予算書というのは細かい数字の並ぶ膨大な書類で、素人が読んでもわからない。

しかも対象になった事業をみると、大竹文雄氏も指摘するように、期限付きの事業で来年度からやめることが容易なものが多い。こういう事業には恒久的な要員がついていないため廃止しても人件費は減らないので、官公労も反対しない。要するに本当に不要な事業を俎上に乗せたのではなく、民間企業の「派遣切り」と同じく、切りやすいものを切っているだけなのだ。

それに、わずか11日間でやるものだから、1事業の査定にかける時間は、2億円の健康増進対策費も9兆8000億円の診療報酬も一律に1時間。そもそも査定対象として切り出した段階で財務省がつぶすつもりだから、初めに結論ありきでインターネットまで動員して官僚を「抵抗勢力」として血祭りに上げる儀式だ。おまけに仕分けの結果には法的拘束力がなく、財務省の査定の参考資料になるだけだから、政治主導どころか国会議員が主計官の下請けをやっているわけだ。

特に問題なのは、どういう政策を廃止するのかという戦略もなく、何が無駄なのかという基準も決めずに、いきなり個別の事業仕分けをやっていることだ。これは先日の記事でも郵政省の元高官が指摘したように、ソフトウェアの設計を決めないでデバッグをやるようなもので、問題点を論理的に洗い出せないので、多数決でバグを決めるという乱暴な結果になる。当然、各官庁は「本番」の査定までに財務省に「復活折衝」をやるだろうから、最終判断は主計官がやることになる。

要するに、この事業仕分けは、脚本・演出は財務省で「民主党は仕事してますよ」と国民にアピールする茶番劇に過ぎない。初日の作業では約500億円を削減できたそうだが、この調子で11日間やってもたかだか数千億円。95兆円以上の概算要求を92兆円に削減するという目標には遠く及ばない。問題はこんな枝葉ではなく、子ども手当2兆3000億円や農業所得補償6000億円などの「幹」を落とすしかないのだ。

それは「マニフェスト違反」にはならない。もともと子ども手当も農業所得補償も、中期政策だったものを選挙目当てに来年度に前倒ししたので、これを見直して「財源措置ができてから実施する」という常識的な手順を踏めばよいのだ。いま民主党に必要なのは拙速に手柄を立てることではなく、落ち着いて政策の優先順位を考え直し、何が幹で何が枝かを決めることだ。今もっとも重要なのは、効果の疑わしいバラマキ福祉を棚上げし、史上最大の900兆円規模にふくらむ政府債務を削減する戦略を立てることである。

URL:http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51310943.html



画像2009年11月12日 (木) 事業仕分けをみて思ったこと

行政刷新会議の事業仕分けが始まった。

様子をネットやテレビで見ると、どこかのテレビ番組みたいで、面白いことは間違いない。「悪役」の官僚が説明をして、正義の味方が批判をして、多数決で判決が即座に言い渡される。今まで、大きな利権のために、誰もが無駄だと思っていても、なかなか削減できなかった事業があぶりだされるという効果もあるに違いない。ただ、テレビ番組のようによくできたショーを見ていて、心配になったこともある。

第一に、数多い事業のなかから対象事業がどうやって絞り込まれたかが不透明なことである。第二に、個別事業だけを判断することはより包括的な事業の効率性を歪める可能性があることだ。

それを感じたのは、大学関係の対象事業をみたからだ。以下にあげたものが大学関係で事業仕分けの対象にされている。

▽国立大学法人運営費交付金
▽大学教育・学生支援推進事業
▽グローバルCOEプログラム
▽グローバル30
▽組織的な大学院教育改革推進プログラム
▽戦略的大学支援プログラム
▽大学等奨学金
▽科学技術振興調整費(革新的技術推進費、先端融合領域イノベーション創出拠点の形成)
▽同(若手研究者養成システム改革)
▽科学研究費補助金(若手研究S~B、特別研究員奨励費)
▽特別研究員事業
▽女性研究者支援(科学技術振興調整費「女性研究者支援システム改革」)
▽世界トップレベル研究拠点プログラム

ここに挙げられているものは全て、期限付きの競争的資金か独立行政法人への運営費交付金である。つまり、本来の事業が必要かどうか、という判断で対象が集められたというよりも、「来年から募集をやめます」、とか「来年から運営費交付金をx%カットします」と言えば、それで実行が可能なものが集められているように思えるのである。

期限付きの競争的資金が増えてきたのは、組織に自動的にお金を配分するよりも、研究を活性化したり、若手研究者の自立性を高めたりすることが目的である。私学助成の在り方も含めて、大学での教育・研究の仕組みの変更だったはずである。本来、そうした制度変更の効果があったのか否かをできる限りきちんと評価して、その制度変更の効果を検討すべきものだ。新しい制度を始めるのはいいけれど、それを評価する仕組みができていないため、削減しやすい個別事業を取り上げて、効果がないと判断していくことにならないだろうか。

成果主義の導入で失敗した企業は、本当は賃金カットをしたかっただけなのに、まともな評価もしないで成果が足りないといって賃金をカットしたところが多かったのではないだろうか。非正規雇用が雇用調整の対象になったり若年雇用が悪化したのは、既存正社員の働きぶりをきちんと評価していなかったり、働きぶりに応じた賃金や雇用調整ができていなかったことが原因ではないだろうか。

もし、有効でない事業ではなく「止めやすい事業」がストップされやすいということであれば、役所のインセンティブは、つぎのようになるはずだ。今後の新規の事業はできるだけ、いつ止められても問題ないものばかりにする。本当は無駄だけれども止めるのが面倒な既存の事業に比べて、もっと意味のないものを常に新規事業として用意する。

なんだか日本の非正規雇用が増えてきたこととそっくりだ。非正規が増えすぎて、企業の力が弱くなってしまったことと同じようなことが、国にも起こらなければよいのだが。中身をきちんと評価して、本当に無駄なものをなくしていってほしい。

2009年11月12日 (木) | 固定リンク

URL:http://ohtake.cocolog-nifty.com/ohtake/2009/11/post-3079.html



画像事業仕分け:電源交付金 原子力関連は「満額」 使途、地方裁量に/福井

 ◇原発推進、民主の思惑も

 政府の行政刷新会議の「事業仕分け」最終日の27日、仕分けの対象になった「電源立地地域対策交付金」(経済産業省、概算要求1149億円)のうちの原子力関連は満額認められた。使途についても「自由化して地方の裁量に任せる」と明記され、全国最多の14基の原発が立地する福井県に有利な結果になった。

 論点は二酸化炭素を多く排出する火力発電所への支出の是非に終始。原発関連はほぼ争点にならなかった。温室効果ガス削減目標を掲げ、原発を推進したい民主党の思惑も見え隠れした。

 取りまとめ役の枝野幸男衆院議員は「原発の是非を論ずる場ではない。他の住民の電力を作っている地域へ一定の配慮をするという(交付金の)趣旨は理解してほしい」と、冒頭から議論をけん制。経産省も「原発という一種の迷惑施設を抱える苦労がある。国策に協力してきた地域の信頼を踏みにじることになる」と訴えた。

 一方で使途については、県内のケースを例に挙げ自由化を訴えるケースが目立った。長隆・東日本税理士法人代表社員は、敦賀市立病院が同交付金を使って増床したのに医師が増えていない点を指摘し「ハコモノだけで人に金をかけていない」と批判。飯田哲也・環境エネルギー政策研究所長は国が使途や時期を細かく縛っていることを挙げ、「山のような無駄が出ている。もっと生きた形で使ってほしい」と要望した。「立地地域とそうでない地域との差が大きすぎる」(海東英和・前滋賀県高島市長)「1149億の算定根拠が妥当なのか」(水上貴央弁護士)など批判的な意見も出たが、広がらなかった。

 仕分けに対し、全国の原発立地市町村で作る「全国原子力発電所所在市町村協議会」(全原協)会長の河瀬一治・敦賀市長は「原子力立地の視点を含めた議論が進められた。より良い方向への使途見直しにつながることを期待する」とコメントした。【酒造唯】

URL:http://mainichi.jp/area/fukui/news/20091128ddlk18010656000c.html



画像事業仕分け:思いやり予算「見直し」 装備品は判断避ける

 政府の行政刷新会議(議長・鳩山由紀夫首相)は26日、予算の無駄を洗い出す「事業仕分け」8日目の作業をし、在日米軍の駐留経費の一部を肩代わりする「思いやり予算」の「駐留軍等労働者の給与水準」(防衛省、概算要求額1233億円)を「見直し」と判定した。一方、地上配備型迎撃ミサイル(PAC3)の追加配備を含む「装備品の調達」(同、8655億円)については「仕分けに適さない」として判断を避けた。

 この日は環境、国交、経産、防衛4省の25項目47事業を議論。4項目4事業(計53億円)を「廃止」と判定。「予算計上見送り」も3項目3事業あり、「廃止」と合わせた予算縮減額は262億円に上った。

 仕分けの対象になった在日米軍の日本人従業員の給与は▽司令部事務員▽運転手▽警備員▽食堂や売店の従業員--など計2万3055人分。仕分け人からは「民間企業の給与と比較するデータが不足している」などの批判が相次ぎ、基地のある地域ごとに、民間の同一職種の給与を調べた上で見直すよう防衛省に求めた。ただ、具体的な削減幅は示さなかった。

 だが、従業員給与の見直しには、米国や労働組合との交渉が必要で、難航も予想される。北沢俊美防衛相は「すでに米側と話を進めている。仕分け人から言われる話ではない。思いやり予算全部が議論になっているメッセージを発することになり、政治的にマイナスだ」と語った。

 このほか、防衛省が護衛艦など第一線部隊に限定して約3500人の充足を目指す「自衛官の人員増」(72億円)について、公務員全体の人員を削減する中「例外は認められない」ことを理由に「予算計上見送り」と判定。「廃止」と「予算計上見送り」を合わせた縮減額は8日間で計2052億円となった。

 仕分け作業最終日の27日は、財務省所管の国立印刷局、造幣局などの事業を取り上げる。【鈴木直、仙石恭】

URL:http://mainichi.jp/select/seiji/news/20091127k0000m020101000c.html



画像事業仕分け初の満額 児童劇巡回事業 2009年11月17日 朝刊

 行政刷新会議の事業仕分けで十六日、初めて「概算要求通り」の判定が下された。厚生労働省が金額を明記しない「事項要求」で継続を求めた優良児童劇巡回事業で、本年度当初予算額は二億一千七百万円だった。

 厚労省所管の財団法人「児童健全育成推進財団」に委託し、児童劇や映画を全国の児童館などで公演・上演している。

 財務省が「文化庁の事業と重複している」と指摘したのに対し、厚労省は「文化庁は交響楽団や能を扱う。児童劇は子どもが主体的にかかわる」と反論。一部の民間仕分け人からも「優良な児童劇や映画に触れる機会をつくるのは重要だ」と削減に慎重な意見が出た。

 仕分け人十二人のうち六人は見直しを求めたが、取りまとめ役の菊田真紀子衆院議員が「子どもたちに直接、夢と希望を与える事業は大切にすべきだ」と異例の政治判断を下した。

URL:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2009111702000088.html

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