航空自衛隊の次期主力戦闘機として、F35が採用される見通しだとの報道があった。
どうやらF22は諦めざるを得なかったようだ。
以前「F22とF35はガンダムとジムくらい違う」で指摘したのだけれど、F22とF35は同じステルス機でも、前者は格闘・制空戦に秀でていて、後者は汎用型(マルチロール)という違いがあり、ガンダムとジムほどに違う。
もちろん、F35も優れた機体ではあるのだけれど、何に使うのか、という目的によってその良し悪しは変わる。
F35はアメリカとイギリス、イタリア、オランダ、オーストラリアなどによる共同開発の機体で、大きく3種類ある。
1.F35A 通常離着陸:F-16の後継機及びF22の補佐機 航続距離:2,220 km
2.F35B 短距離離陸・垂直着陸:ハリアー後継機 航続距離:1,670 km
3.F35C 艦載型 :F-18後継 航続距離:2,220 km
F35Aがベースとなる基本形で、F35Bが小型空母艦載向け、F35Cが正規空母艦載向けといったところになろうか。
ただ、F35に正式採用になったとして、防衛省がどのタイプのF35を選定するかによって、日本の防衛に関する考えが見えてくる。
日本のように専守防衛を則とする国家だと、相手が日本の領空に接近してきて始めて、その要撃に出撃することになる。領空侵犯に対する要撃を考えたとき、スクランブルからいかに素早く接敵できるかが鍵を握るから、日本の制空戦闘機に求められるのは、離陸してから高高度到達までの上昇速度の速さや航続距離の長さ。
空自の主力戦闘機であるF15の航続距離は巡航速度で3,450 km、燃料の増槽タンクをつければ、 4,630 kmにもなる。海面上昇率は15200m/minで、2万mまで2分3秒、3万mまで3分18秒で到達する。
同世代の他国戦闘機と比べても、上昇率こそ劣るものの、航続距離の長さは群を抜いている。これは海岸線の長い日本では必要とされるもの。
その点、F35は航続距離において不安がある。また、エンジンが単発だから、F15のように双発エンジンを積んだ戦闘機と違って、片方が壊れても、もう片方で飛ぶなんてことができない。
ただでさえ、人員が少なく、ましてやパイロットが貴重な空自にとって、これは不安材料。
であれば、まだ航続距離が巡航で3.706 kmあり、双発エンジンで、スーパークルーズも備えたユーロファイターがよさそうに思うのだけれど、F35にするというのであれば、致し方ない。
ただ、もしかしたら、防衛省は別の可能性も念頭においているのかもしれない。それは将来、日本も空母を持つ構想があるということ。
もしも、空母艦載形のF35BかCあたりを選定するのなら、選択肢としてそれを持てることになる。
空母を持つことは、莫大な金がかかるけれど、軍事プレゼンスおよびシーレーン防衛に大きな力にはなる。
今後のなりゆきに注目である。


防衛省は航空自衛隊の次期主力戦闘機(FX)について、次世代戦闘機F35を採用する方向で調整に入った。12月から選定作業を本格化させ、2011年度の概算要求にF35の契約金など関連経費を盛り込みたい考えだ。複数の防衛省・自衛隊関係者が22日、明らかにした。
F35はレーダーに捕捉されにくいステルス機能が最大の特徴。中国が最新の第4世代機など航空戦力を増強させる中、防空能力の向上が不可欠と判断した。最終的には40機程度の取得を想定している。
ただF35は開発中で配備が10年代半ばと見込まれる。このため性能の確定まで契約を先送りすべきだとの慎重論があり、12年度予算へ先送りされる可能性も残っている。
政府は新たな「防衛計画の大綱」とそれに基づき部隊規模や経費などを明示する中期防衛力整備計画(中期防)の策定について、来年12月へ1年先送りを決定している。次期中期防には、F35の調達計画を明記する見通しだ。
鳩山内閣は1年先送りに伴い、装備品や自衛隊の運用で暫定的な基本指針を取りまとめ、10年度予算にはFXの調査費だけを計上する予定。
FXは、老朽化が進む空自F4戦闘機の後継。現行の中期防衛力整備計画(05―09年度)はF4の後継7機の調達を明記しており、09年度までに導入の予定だった。日本は当初、最新鋭ステルス戦闘機F22の導入を目指してきたが、米側は輸出を禁じており生産中止の方針も表明。このため機種選定が遅れた。F35配備までのF4の退役分については、F15改良型を軸に埋める案が出ている。
空自はF35のほか、F15改良型、FA18や英国、ドイツなどが共同開発したユーロファイターなど6機種を選択肢とし、大手航空機メーカーや関係国が日本に売り込みを掛けている。
URL:http://www.nishinippon.co.jp/wordbox/display/7012/
この記事へのコメント
タカヤン
下手すると他の国がF-35開発計画から脱退する可能性すら出てきた。
日本はF-2開発時の痛い経験を元に、英断をもってユーロファイター採用に打って出るべきだ。