次に手当についてだけれど、この手当に目的性を持たせるかどうかで、どの消費が刺激されるかどうかが決まる。
この目的性というのは、何のために使えば「得をする」または「損をする」といった、購買の動機づけを手当に埋め込んでおけるかどうか、ということ。
これについて、景気対策の一環として打ちだされた手当、麻生前政権の「エコポイント」と現鳩山政権の「子供手当」、さらには、減価する通貨である「ゲゼルマネー」について考えてみる。
「エコポイント」は、周知のとおり、エコな製品や車を買うことで、幾ばくかの補助金が出る仕組み。だから、動機づけとしては「使えば得するけれど、使わなければ得しない」仕組みだと言える。
これに対して「子供手当」は、所得制限を設ける設けない、などまだ詳細が決まっていないけれど、一度貰った手当に対して特に制約があるわけじゃない。つまり動機づけとしては「使っても使わなくても、得もしなければ損もしない」仕組みになる。
更に、「電子マネーはゲゼル化しやすい 」のエントリーでも触れた「ゲゼルマネー」は、原則一定期間立てば、金額が目減りして減価してゆくから、動機づけとしては、「直ぐに使う分には、損得どちらもないけれど、いつまでも使わないと損をする」仕組みだと言える。
「子供手当」は使っても使わなくても「損」も「得」もしないから、支給した「手当」の使い方は貰った人任せ。ぱあっと使う人もいれば、貯金に回す人だっているだろう。だから「子供手当」によって消費刺激をしようとするのであれば、その金額や支給方法を含めて、なるべく使ってくれるように慎重に決めなきゃいけない。
だけど、そうしていくら懸命にシミュレーションして「子供手当」を配ったところで、思ったほど効果がなかった、なんてことも当然あり得る。「エコポイント」や「ゲゼルマネー」と比べても、消費期待に対するリスクは高い。
それに対して、「エコポイント」と「ゲゼルマネー」は、使うことで「得」する動機づけと、使わないことで「損」する動機づけと、その動機づけの方向は反対ではあるのだけれど、少なくとも「使わせる」という意味においては、どちらにもインセンティブが働くやり方であることは確か。
ただし「エコポイント」と「ゲゼルマネー」をもう少し詳細に比較してみると、期待できる経済効果に多少違いがある。それは、対象の絞り込みが出来るか否かという点。
「エコポイント」は、使うことで「得」する仕組みだから、何に使うことで「得」するか、政府の側である程度誘導することができる。「エコポイント」は、エコを推進する「商品」に対して適用されるものだから、「エコポイント」制度を適用することで「エコ商品」に対する消費を促し、結果その産業に利益をもたらすことになる。
これは、前麻生政権で行った、土日の高速道路一律1000円制度なんかはそう。あれは、ETCを搭載した車のみ、一律1000円というインセンティブをつけたから、ETCの装置がバカ売れした。あまりにも注文が殺到して、生産が追いつかなかったほど。
だから、「エコポイント」のように、使うことで「得」する景気刺激策は、特定の利権を生む危険を孕んでいる。
逆に「ゲゼルマネー」は、エコポイントとは逆に、使わないと「損」するやり方。その「損」は、なんでも買える「お金」そのものが減価していくことで「損」が発生するから、なにか特定の商品を買ったからといって「損」が軽減されるわけじゃない。(やろうと思えばできるけれど)だから、エコポイントのように特定の産業に対する利益誘導は発生しない。
だけど、「子供手当」のように消費に対するインセンティブが乏しい政策よりは、景気刺激になることは期待できる。
景気対策って突き詰めれば、入るを計って出づるを制する。
政府は、国民の収入を増やして、国民支出を増やして貰うように、税金や手当を使って誘導する。それでも増えなければ、国債を発行したりして、国民に代わって支出を増やす。そうして市場に流れるお金の量や速度を調整することで対策をする。
こうしてみてくると、政府が行う景気対策について、マスコミはいろいろと難しい話をしたりするけれど、極端にシンプルにして考えてみると意外と単純だったりする。
政府がど~んと構えて、しっかりとした経済対策と成長戦略を示すだけで、国民のマインドはかなり前向きになる。お金を使っても大丈夫だ、と国民に思わせることも景気対策のひとつ。
そろそろ、前向きな景気対策を期待したい。

この記事へのコメント
ぷぺぷぺ
そんなことをするなら、インフレにしたほうが簡単だと思います。
地域振興券などで使うのはありですが。