「そこで、その、弱い者を助けるために、これは富の再配分政策という形でおやりになる、もっと言うと、セーフティネットの再構築ということだと思いますが、セーフティネット論の落とし穴というのは、全体の経済成長戦略、GDPをどう上げるかということがなければ、お金持ちから貧しい人にお金を流すだけで、国力、これ自体が上がりません。ですからそういうセーフティネット論の落とし穴について、明確な経済成長戦略をどのようにお持ちになっているのかお答え下さい。」外添要一 11月6日 参議院予算委員会・基本質疑にて
人間のための経済への主な論点は、下記5点。
D-1) 合理性や成長率に偏った評価軸で経済をとらえるのをやめる
D-2) 金融機関の中小企業への貸し渋り、貸しはがしを是正するための法案を提出する
D-3) 緊急雇用対策を行う。社会が、支え合いの精神で雇用確保に向けた努力を行うべき
D-4) 子供手当、ガソリン税の暫定税率の廃止、高速道路の原則無料化など家計への直接支援
D-5) 低炭素型産業、先端分野の研究開発、人材育成強化など、科学技術の力で世界をリードする
まず、驚きなのは、D-1)の経済活動において、合理性や成長率を否定したこと。具体的にどういう評価軸になるのかが提示されていないので、何ともいえないこともあるのだけれど、経済活動で合理性を否定してしまうと、まず事業計画が成り立たない。
例として、入札を例に取って見る。入札は、売買・請負契約など締結するために複数の契約希望者に内容や入札金額を書いた文書を提出させて、最も有利な条件を示す者を選ぶ方法のことだから、純粋に合理性そのものに沿った方式なのだけれど、これを否定するということは、競争ではない方式によって契約を結ぶことになる。
依頼者が任意で相手を選ぶ方式は、一般に「随意契約」と呼ばれるのだけれど、これは、民主党が野党時代から、独立行政法人の随意契約を、再三再四問題視して与党を追及していたくせに、その随意契約を、自分達がやると言っているに等しい。
D-2)は例のモラトリアム法案。以前「何に対するモラトリアムか 」のエントリーで触れたので割愛する。
D-3)については、その骨子は次の3つからなっているのだけれど、どうみても「緊急」な対策とは言い難い。
(1)介護労働の雇用者数拡充
(2)公共事業削減に伴う建設・土木労働者の農林業などへの転職支援
(3)生活保護の受給促進などの「貧困層」対策
介護や、農林業への転職というけれど、言葉でいうほど簡単じゃない。医者や看護婦とは云わないまでも、介護職だって立派な専門職だし、農林業だって、素人がイキナリ入ってホイホイできるものじゃない。資格取得の支援を国がやったとしても、実際に資格を取っまである程度の時間がかかる。いくら資格取得費用を国が負担したところで、時間まで支給できない。
D-4)については、何度も指摘されているように、財源の問題がある。子供手当については、11年度の試算では約5兆3000億円と見積もられているし、高速道路も全国6社での料金収入が約2兆4000億円、それが無くなる上に、毎年の道路のメンテナンス料が2000億円かかる。これらについて、毎年安定して確保できる財源をつくらなきゃいけない。
だから、扶養者控除の廃止だとか、自動車税を5万円上げるとかなんとか言ってる。そこまでして行う対策であるからには、国民に与える痛み以上の経済効果があるという見込みをきちんと示さなくちゃいけない。でないととても国民は納得しないだとうけれど、経済効果についてのアナウンスはないし、本当に効果があるのかも怪しい。
子供手当の経済効果については、三橋貴明氏が試算しているけれど、それによれば、消費性向が0.35として約1.615兆円の効果だそうだ。5兆円以上の財源を確保しても、その経済効果が1.6兆円そこそこでは、やらないほうが良いのではないかと思われる。
また、高速道路無料化についても反対意見が多い。最近の世論調査でも、反対が過半数を超えている。反対意見の多くは、渋滞によって、却って物流コストが高くなる、とか交通量の増加によって、CO2ガス削減に逆行する、とか。このあたりも必要な財源以上の経済効果がある、ということをしっかりと示す必要がある。
最後にD-5)についていえば、科学技術の力で世界をリードする、と威勢はいいけれど、先の無駄遣いを3兆円も減らしたと鼻高々だった、補正予算の執行停止事業の中に、その科学技術の最先端研究プロジェクトなどがごっそり入っている。研究予算を付けずに、科学技術の力で世界をリードするなどど、言うことと、やることが、これほど乖離していることも珍しい。


鳩山内閣が雇用情勢悪化を受けて策定する雇用対策の概要が8日、明らかになった。(1)介護労働の雇用者数拡充(2)公共事業削減に伴う建設・土木労働者の農林業などへの転職支援(3)生活保護の受給促進などの「貧困層」対策などが柱。週明けに「緊急雇用対策本部」(本部長・鳩山由紀夫首相)を設置し、「緊急雇用創造プログラム」(仮称)として、10月下旬の臨時国会開会までに最終決定する方針だ。
財源として、今年度補正予算に計上された「緊急人材育成・就職支援基金」(7千億円)や予備費などを活用。同基金は補正予算の執行見直しでも約3500億円を対象外として残しており、財源として一部を活用する見通しだ。
プログラムでは、年末や年度末に向けて、雇用情勢がさらに悪化した場合の緊急対応を想定。介護労働の雇用者数の拡充では、介護施設で働くための職業訓練の支援策を充実させるほか、研修生の生活支援なども検討する。
建設・土木労働者の転職支援策も盛り込む。鳩山内閣は「八ツ場(やんば)ダム」の建設中止に加え、1兆円超の公共事業費の削減を打ち出している。このため、地方を中心に建設労働者などの失業が急増する可能性があり、農林業などへの転職支援の仕組みを新たに設ける方向だ。
また、派遣契約を打ち切られ、仕事や住まいを失った派遣労働者らが続出した昨年末の状況を踏まえ、「貧困層」対策として、職業紹介や生活保護受給、住居確保などで利用しやすい制度を整える。就職できない来春の高校、大学新卒者への対応も検討課題に上がっている。
8月の完全失業率は5.5%で過去最悪の水準。年末から年明けにかけて経済情勢が悪化し、失業率が「6%」に達する懸念もあり、雇用対策で後手に回れば、政権運営に痛手となりかねない。「緊急雇用対策本部」の本部長代行には菅直人副総理が就き、各省大臣が副本部長として参加。雇用対策を早期にまとめることで、鳩山内閣として雇用問題を最優先課題としていることを示す狙いがある。
URL:http://www.asahi.com/politics/update/1009/TKY200910080562.html

時事通信社が17日まとめた世論調査によると、民主党が衆院選マニフェスト(政権公約)に掲げた主要政策のうち、賛成が最も多かったのは「公務員の天下り根絶」の73.0%。反対が最も多数を占めたのは「高速道路の無料化」の50.3%だった。
調査は9~12日に全国の成人男女2000人を対象に個別面接方式で実施。九つの政策の中から、「賛成」、「反対」の政策を自由に挙げてもらう方法で行った。回収率は67.4%。
それによると、「天下り根絶」に次いで賛成が多数だったのが「子ども手当創設」(44.4%)で、「ガソリン税などの暫定税率廃止」(43.1%)、「温室効果ガスの25%削減」(40.0%)が続いた。反対の政策では、「高速無料化」のほか、「八ツ場ダム、川辺川ダム建設中止」(24.6%)や「子ども手当創設」(21.1%)を挙げた人が多かった。
それぞれの政策を支持政党別にみると、「天下り根絶」は民主党支持の80.1%、自民党支持の67.2%がそれぞれ賛成するなど、支持政党にかかわらず高い評価を受けている。一方、「高速道路無料化」については社民党支持の66.7%、民主党支持の50.0%が反対だった。同党支持の中で次に反対が多かったのが「子ども手当」の18.4%だったことをみても、高速無料化の不評ぶりが浮き彫りになった形だ。
◇政策課題への評価
【政策課題】 賛 成 反 対
郵政事業の抜本見直し 30.1% 15.4%
ガソリン税などの暫定税率の廃止 43.1% 9.4%
核持ち込み疑惑の解明 36.2% 5.7%
温室効果ガスの25%削減 40.0% 10.3%
子ども手当創設 44.4% 21.1%
後期高齢者医療制度の廃止 39.8% 14.5%
八ツ場ダム、川辺川ダムの廃止 20.0% 24.6%
公務員の天下り根絶 73.0% 3.4%
高速道路無料化 18.4% 50.3%
(2009/10/17-16:17)
URL:http://www.jiji.com/jc/zc?k=200910/2009101700188

所得制限 与党にズレ
鳩山政権が目玉に据える「子ども手当」を含めた子育て支援策は、国民の関心が高いものの、財源問題など実現までに解決すべき点は多い。
子育ての現場には、政策の継続性に対する不安もある。誰をどう支える制度を作るのか、政策理念を明らかにし、政府・与党内の合意を急ぐ必要がある。(生活情報部 榊原智子、政治部 高橋勝己、経済部 久保庭総一郎)
■進まぬ制度設計
鳩山政権は、中学生まですべての子どもに月2万6000円を給付する「子ども手当」を掲げるが、詳細な制度設計は進まない。民主、社民、国民新の連立3党は「来年度実施」で一致しているが、所得制限や支給額をめぐって意見にズレがあるからだ。
社民党党首の福島少子化相は20日、記者団に「社民党と国民新党は所得制限を設け、そこで生まれたお金を保育所整備に振り向けたらどうかという考えだ。所得制限のメリット・デメリットを大至急整理し、厚生労働相、財務相と協議したい」と述べた。
長妻厚労相は「(民主党の)マニフェストでは(所得制限を)設けないということで衆院選を戦ってきた」と主張を貫く構えだが、足元の省内にも福島氏に賛同する意見は強い。
今後の調整は、関係省庁の大臣で政策課題を協議する「閣僚委員会」で進む見通しで、福島氏も早い時期に開催を求めていく考えを示している。
一方、生活保護の母子加算復活について、政府は10月中の実現に向け、作業を急ぐ考え。山井和則厚労政務官はメールマガジンで、「(母子加算の廃止で)全国の10万世帯、16万人の子どもが苦しんでいる」と意気込む。鳩山政権下で初の国政選挙となる参院神奈川、静岡選挙区補選(10月25日投開票)を前にして、「政権交代の成果を早急に示したいのだろう」との見方も関係者にはある。
~放課後クラブ支援どうなる
■厚労省のとまどい
新政権発足前の今月上旬、厚労省の雇用均等・児童家庭局は、民主党の事務局に対し、子ども手当関連の「12のポイント」を提出した。同党の要請に応えて作成したもので〈1〉恒久的な財源確保の方策をどうするか〈2〉手当の目的を法案にどう明記するか〈3〉全額国費で賄う根拠をどう整理するか〈4〉支給額や対象、所得制限なしの根拠は――など法案作成の際の論点を並べたが、民主党からの打ち返しはなく、論議は進んでいない。
民主党は、新たな財源で子ども手当をスタートする考えだが、現行の児童手当の廃止に伴う、未整理の課題も浮かび上がっている。
児童手当は現在、税金である国庫負担と地方負担、事業主拠出金の一部を財源としている。一方、子ども手当は、全額税で賄う仕組みとされる。
事業主拠出金はこれまで国の「児童育成事業」にも充当され、「放課後児童クラブ」や「病児病後児保育」、「地域の子育て支援拠点(子育てひろば)」などの支援に使われてきた。こうした事業にかかわる現場からは、「拠出金がなくなって、支援が先細りになるのでは」と不安な声も漏れる。
ただ、年金問題で激しく対立してきた長妻厚労相を迎えた同省では、職員側は「指示待ち」に徹する構え。「財源の問題を整理するのは財務省なのか、国家戦略室なのかもわからない。私たちは大臣のご指示に従うのみ」と、幹部らは表情をこわばらせている。
■財源確保の難しさ
子ども手当実現のためには、巨額の財源をどう確保するかが大きな課題となる。
民主党は、月2万6000円の完全実施には年約5・3兆円かかり、半額を支給する2010年度でも約2・7兆円の財源が必要と見込む。完全実施なら防衛費(09年度当初予算で約4・8兆円)を上回るほどの規模で、財務省内でも、「財源確保は簡単ではない」との声が上がる。財源確保のためには、鳩山内閣が行っている09年度補正予算の見直し作業で、どれくらいの財源をひねり出せるかが当面のカギになる。
また、民主党は手当の財源確保策として、所得税の配偶者控除と扶養控除を11年以降に廃止する考えを示しているが、増税になる一部世帯から反発も出そうだ。
一方、生活保護世帯に対する母子加算を今年10月頃から復活させた場合、09年度に90億円前後が必要になる。藤井財務相は「今年度予算の予備費でも対応可能」との考えを示している。
◇ ◇ ◇
「ずっと続く制度なの?」
福井県では、3人目以降の子どもの医療費や保育料の軽減など、独自の育児支援策が充実し、多子家庭が珍しくない。
子ども手当が実施されれば、3人で年93万6000円の支給。「若い親にはうれしさの一方、戸惑いもある」。同県敦賀市の子育て支援NPO法人理事長、林恵子さん(51)は話す。
同県では出産後も働く女性が多く、「働きもしないで、パート収入並みの額がポンともらえるなんて」という違和感があるという。「手当が目当てで産む人が出るかもという冗談も聞く。親たちが求めているのは安定した雇用環境や、孤立を防ぐ支援など。新政権は現場の声を聞いてほしい」と林さんは言う。
手当の目的や財源、今後の政策の継続性が明確でないことについても、「高校や大学からお金がかかるのに」「また政権が変わったら打ち切りになるのでは」などの声が上がる。
保育所の待機児童が全国2番目に多い川崎市で、3人の子を育てるパートの女性(37)も「ずっと続く制度なのか不明で、あてにできない」と話す。3人目が生まれ「経済的に苦しい」と再就職したが、保育所に入れず一時保育を利用してきた。「まず保育所を作ってほしい。高校以降も教育費はかさむから、働かざるを得ない」と話す。
(2009年9月22日 読売新聞)
URL:http://www.yomiuri.co.jp/komachi/news/mixnews/20090922ok04.htm

全国の高速道路を一気に無料化すれば、特に首都高速や阪神高速など都市部で渋滞が想定される。
民主党は料金の割引率を順次拡大して影響を確かめながら12年度までに徐々に実施していく方向だ。このため交通量が比較的少ない地方を先行させる可能性が高い。
こうした手順を踏んだ場合でも最大の課題は財源問題だ。現在の高速道路は道路関係4公団が2005年10月に民営化された際、建設などにかかった有利子負債と高速道路資産を日本高速道路保有・債務返済機構に付け替えた。高速道路6社は料金収入(08年度約2・4兆円)のうちから機構に道路のリース料(同1・8兆円)という形で借金を返済する仕組みだ。
この借金は08年度末で約31兆円。無料化すれば道路会社の料金収入はゼロとなるため、新たな返済の仕組みづくりが必要となる。料金収入のうち約2000億円は道路の維持・修繕費に充てられており、これも新たな財源の手当てが必要だ。
民主党の計画は、機構が抱えている借金を国に付け替えて60年間で返済する。年間の元本と利子の支払いは1・3兆円ずつになる計算だ。これまでは利用者が支払ってきた高速道路の借金を税金という形で国民全体が負担することになる。高速道路を使わない人が負担を受け入れるかという「公平性」の観点からも論議を呼びそうだ。
(2009年9月13日09時50分 読売新聞)
URL:http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20090913-OYT1T00022.htm
この記事へのコメント