日本のアイデンティティ(鳩山首相の所信表明演説を解析する その4)

 
私の思い起こすことには、我が皇室の祖先たちが国を御始めになったのは遙か遠き昔のことで、そこに御築きになった徳は深く厚きものでした。我が臣民は忠と孝の道をもって万民が心を一つにし、世々にわたってその美をなしていきましたが、これこそ我が国体の誉れであり、教育の根本もまたその中にあります。

あなた方臣民よ、父母に孝行し、兄弟仲良くし、夫婦は調和よく協力しあい、友人は互いに信じ合い、慎み深く行動し、皆に博愛の手を広げ、学問を学び手に職を付け、知能を啓発し徳と才能を磨き上げ、世のため人のため進んで尽くし、いつも憲法を重んじ法律に従い、もし非常事態となったなら、公のため勇敢に仕え、このようにして天下に比類なき皇国の繁栄に尽くしていくべきです。これらは、ただあなた方が我が忠実で良き臣民であるというだけのことではなく、あなた方の祖先の遺(のこ)した良き伝統を反映していくものでもあります。

このような道は実に、我が皇室の祖先の御遺(のこ)しになった教訓であり、子孫臣民の共に守らねばならないもので、昔も今も変わらず、国内だけでなく外国においても間違いなき道です。私はあなた方臣民と共にこれらを心に銘記し守っていきますし、皆一致してその徳の道を歩んでいくことを希(こいねが)っています。


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支え合って生きていく日本の部分の論旨は以下2点。

C-1) 地縁、血縁型の地域共同体は、失われつつあるので、新しい共同体のあり方を編みなおす。
C-2) 人を支える役割にも国民一人ひとりが参加する。政治の役割は、それほど大きくない。

C-1)については、拙ブログでなんどか提唱している「縁起のレイヤー」の観点から見てみると色々見えてくるところがあるのだけれど、それについては、またの機会に譲りたい。
※参考として次のエントリーを参照されたい「相互信頼とは何か 日比野庵離れ


ここで、特に注目したいのは、C-2)の部分、「人を支える役割に国民が参加する、政治の役割は大きくない」、としている点。

昨日のエントリーで、友愛な社会を成立せしめるには、自助自立した、支えてあげられる側の人間を増やし、教育し、それに報いることのできる社会でなければならないと言ったけれど、その為の政治の役割はとてつもなく大きい。教育と社会的補助の問題に関わってくるから。

「友愛」を仮に、人を思いやり、助けあう精神だ、と定義すれば、その為に必要な教育は、昔ながらの伝統的な教えになる。鳩山首相も、支え合いという日本の伝統を現在に沿った形で立て直す、と言っているから、たとえば、教育勅語を復活させろ、とは云わないけれど、それに近い内容のなんらかの教育を施す必要がある。

教育勅語には、「博愛衆ニ及ホシ」と皆に、「友愛」とほぼイコールと思われる、「博愛精神」を発揮せよとも説いているけれど、その前に為すべきことが説かれている。それは、父母に孝行し、兄弟仲良くし、夫婦は調和し、という部分。つまり家族・家庭から始めよとしている点。

だから鳩山首相の云う、支え合いという日本の伝統は、忠と孝の道、云わば血縁・地縁を出発点として、そこからまず助け合い、後に世のため、人のため、という順に為すのが筋。要するに、普段いつも接する家族をまず良くすることが出来ずに、たまにしか会えない他人をどうして助けることができようか、ということ。実に理にかなっている。

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鳩山首相は、地縁、血縁型の地域共同体は、失われつつあるので、新しい共同体のあり方を編みなおす、なんて言っているけれど、日本の伝統を踏まえるのであれば、血縁・地縁を蔑ろにした、共同体の構築は、そもそもその順序が逆であり、家族と比べて圧倒的に接触時間が少ない、ボランティア活動などによる新しい共同体の構築は、非常にハードルが高いものになる。

それ以前に、民主党は、夫婦別姓法案を進めているから、ますます血縁での結び付きを破壊しようとしている。日本の伝統といいながら、一番大切なものを壊そうとしているのだから支離滅裂という他ない。

先日の予算委員会で加藤紘一氏は質問に立ち、「日本のアイデンティティは何なんだろう。我々も提示し得ていないが、そちらも提示し得ていない。友愛はまだそのレベルに達していない。」と鋭く指摘しているけれど、鳩山首相ならびに内閣が本気で「友愛」な社会を日本に作りたいと思っているのであれば、これに対してきちんと答えをださなくちゃいけない。

政策を見れば、理念が分かるという考えもあるかもしれないけれど、正直、民主党の政策はただのバラマキにしか過ぎないから、その理屈でいけば、鳩山首相の「友愛」とは、ただの施し、助け合いレベルのものにしかならない。加藤紘一氏の指摘する日本のアイデンティティにさえも踏み込んでいない。



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