間口を狭めている自民党(自民党の再生について 後編)
なにかの勝負で敗北したあとは、まず自らの敗因を分析することが大事。
そのあとで、対策と方針を決めることになる。その分析が甘かったり、敗因が分からなかった場合何をするかというと、大抵は次の二つの方法を考える。
ひとつは、原点に戻ってやり直す。もうひとつは、その分野で成功した人に学んで真似をすること。
前者は、自民党でいえば、結党時の精神に戻って自身のあり方を見つめなおすということ。これは安倍元総理あたりが主張してることで、戦後レジームからの脱却とか自主憲法制定あたりになるだろうか。
後者の成功者に学ぶというのは、手っ取り早く言えば、民主党が政権を獲ったやり方をこちらもやるということ。具体的には政権再奪取を掲げて、支援者にはどぶ板。国会にあっては、なんでもかんでも反対して批難しまくって国会を空転させて、ネジレさせては支持率を落すという「民主党」な手法をすることになる。
ただ、この手を自民党も使うとなれば、まず批難されることは間違いないだろうし、「上品」な谷垣総裁が、こんな下衆な手段を選ぶとも考えにくい。そうでなくてもボロを出しまくってる鳩山政権は、普通に批難するだけで十分だとはいえる。
したがって、今の自民党の再生の方針は、傍から見る限り、どうも前者に重点を置いているように見える。つまり真の保守とは何かを考え、党の理念を再構築するのだ、と。
原点に戻ってやり直す場合に、ひとつ注意する点がある。それは、党とか組織を何かの理念で一元化しようとすると、却って間口が狭くなってしまう危険があるということ。いわゆるナントカ原理主義。やりすぎると先鋭化する。
自民党は一党独裁だとかなんとか言われていたけれど、「相反する2つの立場を抱え込む自民党」で指摘したように、政策レベルにおいては、様々な考えを許容して纏めた、派閥連立政権だったといえる。
歴代の自民党は、その時々で、最適な考えを持つ派閥を表に出して、内部政権交代をやっていた。
ところが先の総選挙で、大幅に議席を減らし、派閥はすっかり壊れてしまった。派閥連立政党ではなくなった。
ゆえに、なにかの軸でまとまり直す必要があり、それゆえに、結党の精神を、という原点回帰を選んだ、というのは理解できる。だけどそれゆえに、その方針に従えない輩はどんどんそぎ落とされてしまう危険を孕む。
理念の構築も大切だけれど、あまりに厳格にやりすぎると、ついてこれる人がどんどんいなくなって、小政党になってしまう。
自民党は12月3日に、先の衆院選で落選した前職ら計約130人を党本部に集め、衆参両院議員と共に新たな理念づくりを目的に政権構想会議を開いたけれど、党執行部は、出席者から危機感がないと批難を浴びた。
それは、おそらく、落選議員達は再選を目指しているし、現役議員も政権奪取を第一に望んでいる。だから、執行部はきちんと選挙に勝つ算段をしてほしい。その為には、支持層や保守層の掘り起こし、無党派の取り込みをどうするかなど方針策定を期待していた。ところが再生会議で話されたのは、前者の原点回帰。理念づくりだったものだから、がっかりしたのだろうと思われる。
政権奪取せねばという危機感があると、党内引き締めと大同団結、そして、支援団体回りと政治献金の確保などを第一にやることになる。
政権与党でない政党は、自身の足元を固める努力を疎かにすると、あっと言う間に瓦解してしまう。なんといっても野党である現実は重い。何もしなくても向こうから各種団体が陳情にきてくれた政権与党の思い出に浸っている時間はない。
もたもたしてると離党者がどんどん出ることになる。
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自民党再生「中堅・若手中心に」 会議座長に山本氏 2009年9月9日11時21分
自民党は9日、総選挙の敗因を分析する「党再生会議(仮称)」を発足させ、初会合を開いた。座長に山本有二・元金融相(当選7回)、座長代理に茂木敏充前行革相(当選6回)を選出。新総裁を決める28日まで連日会合を開いて党再建策を検討する。
同会議は細田博之幹事長ら党執行部が設置を表明。メンバーは当選7回以下の各期ごとに話し合って1~4人ずつを選んだ。古屋圭司広報本部長や小池百合子元防衛相、小野寺五典、梶山弘志両副幹事長ら衆院議員17人から構成され、今後参院議員から5人程度が加わる。9日の会合では「2年前の参院選の敗因を総括したが実行できなかった」「野党になったことにあわせて党の政務調査会や国対についても見直しが必要だ」などの意見が出た。
茂木氏は会合後、記者団に「あくまで中心になるのは中堅・若手。ここで失敗したら自民党の再生はないという思いで取り組んでいきたい」と語った。
URL:http://www.asahi.com/politics/update/0909/TKY200909090118.html
いま自民党に必要なのは「政権交代ある民主主義」への対応力だ 上久保誠人(早稲田大学グローバルCOEプログラム客員助教)【第34回】 2009年10月13日
鳩山政権がスタートし、補正予算約2兆5000億円分の執行停止、八ツ場ダムなど止まらない公共事業の停止、来年度予算の概算要求の白紙見直しなど、「脱官僚支配」の具体策を次々と打ち出している。また、亀井郵政金融相などの言動も、よくも悪くも注目を集めている。
一方、自民党は谷垣禎一新総裁が誕生したが、「鳩山劇場」政権の陰に埋没しているようだ。しかし、今後「政権交代のある民主主義」が成熟していくには自民党の再生が不可欠だ。そこで今回は、今後自民党が進むべき方向は何か論じてみたい。
安倍晋三元首相など自民党議員の間から、自民党は「結党の精神」に戻るべきだという意見が聞こえてくる。そもそも自民党とは、1955年の社会党統一に対抗して自由党、民主党など保守政党が合併したものである(「保守合同」)。つまり自民党の「結党の精神」とは、東西冷戦が激化した時代に、共産主義に政権を渡さないということを決意するものだった。その自民党が今、「結党の精神」を強調する意味は、新たな政権政党となった民主党を、東西冷戦期の「革新政党」のような、政権を渡すには危険な政党だとみなして戦おうということだ。実際、故・中川昭一氏のHPには、民主党政権の誕生で「日本が危ない」という意味のことが掲載されていた。
しかし、「結党の精神」への回帰は、「政権交代ある民主主義」実現という時代の潮流に対する認識を完全に誤っている。確かに鳩山政権が、外交・安全保障政策などで安定感に欠けている面はあるだろう。しかし日本は危なくない。国民が「失政を犯した政権を選挙で交代させる」ことを知ったからだ。
鳩山政権が安定感を欠いたまま国際社会で信頼を失い国民生活を不安に陥れたなら、次の総選挙で国民によって政権の座から引きずり降ろされるだろう。かつてのように自民党がどんなに失政や汚職を繰り返しても下野させることができない「危ない時代」は去ったのだ。
◆「お仕置き」は民主主義の真髄
自民党は総選挙の結果について、「自民党に対するお仕置き」「民主党が支持されたわけではない」「自民党の政策は支持されている」などと考えている。一時的なものと軽視しているし、民主党が失敗すればすぐに政権の座に戻れると思っている。しかし、その認識は甘く、民主主義に対する理解が欠けている。
「政権に対する国民のお仕置き」は軽視すべきではない。「失政を犯せば政権の座から降ろされる」と、政治が国民に対して緊張感を持つことは、政治の質を向上させる民主主義の真髄だからだ。世界的にみても、政権交代は国民による政策の詳細な検証の結果というより、国民の政権に対する「お仕置き」として起こることが多く、それは民主政治の健全性を保たせるのに有効に機能しているのだ。
今後日本でも、自民党が政権復帰したとしても、国民からの「お仕置き」に緊張し続ける「政権交代ある民主主義における二大政党の一角」にすぎなくなる。革新に政権を渡さないことを大義名分として、少々の失政やスキャンダルは許してもらえるという時代に戻ろうというのは、幻想にすぎないことを自民党は認識すべきだ。
しかし、谷垣総裁は国民からの「お仕置き」による緊張感をネガティブに捉えているようだ。それは「絆」という言葉を重視していることでわかる。「絆」とは、これまで自民党を支えてきた、良質の保守層というべき「家庭や家族、地域の絆を大切にする方々の期待にこたえる」という意味だそうだ。
しかしそのウェットな感覚は、農協、建設業界、特定郵便局長会などと自民党の長年の癒着の関係を維持しようとすることにつながらないだろうか。これからの「政権交代ある民主主義」では、政党は国民の「お仕置き」を避けるために政策立案と実行の能力を磨き続けるものだという、ドライな感覚を持つことが重要なのではないだろうか。
そして、自民党が進むべき方向は、「政権交代ある民主主義」に対応する、「透明な意思決定」「説明責任、情報公開の徹底」「政策中心の候補者選定」などのシステムを持つ近代政党だろう。それは、かつて小泉純一郎元首相が目指したものと一致する。
自民党内には麻生太郎前首相など「古き良き自民党をぶち壊したのは小泉氏」と恨む人が多いようだ。しかし、小泉氏が政権交代の元凶という認識では党再生は難しい。小泉氏は「自民党をぶっ壊す」と言いながら、実際は二大政党制への変化という日本政治の構造変化を的確に捉え、それに対応する近代政党に自民党を変えようとしたのだ。自民党の下野は小泉氏のせいではない。自民党が小泉氏の考える近代政党になれなかったからだ。
◆自民党は「政治改革大綱」の精神に立ち戻れ
自民党が近代政党に生まれ変わるには、今回の政権交代の原点である「政治改革大綱」(第31回)の精神に立ち戻ることである。「政治改革大綱」は、自民党政治の問題点が与野党勢力の永年固定化で政権交代がなく、政策よりも利益誘導を重視することで政治腐敗を招いていることだと総括し、その解決策は小選挙区制の導入による政権交代ある民主主義の実現であると主張していた。今回の政権交代は、20年前に自ら身を削り、血を流す覚悟で断行しようとした政治改革が実現したものだということを、自民党は思い出すべきではないか。
その意味で、今回総裁選に出馬すべきだったのは石破茂氏だった。20年前に「政治改革大綱」作成に関わったメンバーの中で、石破氏は現在自民党の幹部クラスとして残っているほぼ唯一の政治家だからだ。総裁選で争点となるべきは谷垣氏の「全員野球」でも河野太郎氏の「世代交代」でもなく、「政権交代ある民主主義へどう対応していくか」であるべきだったのだ。
石破氏は党の政調会長に就任した。政調会の部会長に若手を起用して国会の各委員会の次席理事を兼務させ、政府提出法案の対案作りに取り組むという方針を打ち出している。石破氏がどのように政権交代を総括し、党の近代化を考えるかが、自民党再生のキーとなるのだろう。
URL:http://diamond.jp/series/kamikubo/10034/
「危機感足りぬ」執行部火だるま 自民再生 議論するはずが… 政権構想会議 非公開にも異論 2009年12月4日 00:26
自民党は3日、衆参両院議員、先の衆院選で落選した前職ら計約130人を党本部に集め、新たな理念づくりを目的に政権構想会議を開いたが、政権奪還への足掛かりが見えない状況に執行部への不満が噴出。会議を非公開とした党運営にも異論が相次ぐなど、思わぬ展開になった。
「執行部は危機感が足りない」「参院選に負けたら谷垣(禎一総裁)さんは政治家を辞める覚悟でやってくれ」
再生に向けて党の理念を議論するはずが、執行部に飛んできたのは批判の矢だった。
「党三役の顔をみると嫌になると地元で言われる」との声も。民主党の支持率が低落傾向なのに、それが自民党の回復につながらない現状に、議員たちのいら立ちは募っている。「党三役は公募制にすべきだ」。松浪健太衆院議員は、大島理森幹事長ら三役に公然と“だめ出し”した。
「公開意見交換会」にもかかわらず、司会の河野太郎衆院議員は総裁あいさつの後、「それではマスコミは退席願います」。「公開って書いてあるじゃないか」。やじが飛び交った。
焦りの色を一層濃くするのは落選者たちだ。「まだここまでかという感じだ」。衆院栃木1区で落選した船田元氏は終了後、遅々として進まない党の再生論議に落胆。同福岡2区で落選した山崎拓氏も「来年の参院選に向け、すべての総力を結集して立て直しを図ることに議論の柱を置いてやった方が良かった」と不満を述べた。
イメージ刷新を狙った党名変更論にも反対が相次ぎ、見送り濃厚だ。
執行部の面前で堂々と繰り広げられた批判を逆手に、小沢一郎幹事長が抑え込む民主党を当てこするのが精いっぱい。小泉進次郎衆院議員は報道陣に語った。「今の民主党にはできないこと。まさに党名の通り、自由で民主的な政党だなとうれしく思った」
=2009/12/04付 西日本新聞朝刊=
URL:http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/138516
■ 谷垣禎一総裁「自民党再生」で清宮龍氏と対談 【平成21年11月 9日】
谷垣禎一総裁は9日、東京都内のホテルで、内外ニュース社会長で、党機関紙「自由民主」の連載執筆者でもある政治評論家・清宮龍氏と対談し、党再生や教育問題をめぐって意見を交換した。
「自民党再生に向けて」と題されたこの対談は同社の主催。清宮氏はさきの総選挙で自民党が大敗した要因や党の再建策、来年夏の参院選に向けた戦略などを尋ねたのに続いて、「新しい人材の育成が自民党には急務だ」として、国会議員の世襲問題や派閥解消などとも絡めて、党員の教育ついて総裁としての考え方を問うた。
谷垣総裁は委員長が副委員長である若手を教育する国会対策委員会などの例を出しながら、「党内に教育機能がなくなったとは思わないが、もう少しやらなければならないのは、若手を発掘し政治的関心を持ってもらう機能を拡充すること。各県連で具体的に進めてもらうよう通知している」と答えた。
また、清宮氏は「与野党に関係なく具体的に対応してほしい課題」として教育問題を指摘し、「本来親がやるべきことを学校に押し付けている現実をどう見るか」「民主党内には日教組がたくさんいるが、いつか彼らの本性が出てくると思う。自民党としてどうするのか」と問うた。
谷垣総裁は「できるかぎり自民党としての考え方や対案を出していかなければならない」「家庭の教育力も相当落ちていると思う。子どもの可愛がり方を知らない親もかなりいるのではないか。昔、大平正芳先生が掲げた『家庭基盤の充実』をもう1度振り返ってみるべきだ」と答え、清宮氏に「そういうことに力を入れ正常に戻す努力をすることが、自民党再生のひとつのカギになるのではないか」と指摘された。
URL:http://www.jimin.jp/jimin/daily/09_11/09/211109b.shtml
この記事へのコメント
まる子
戦後60年かけて連中は我が国のあらゆる層で工作を行なってきました。工作員防止法も国家反逆罪もない日本で。それを黙ってただ眺めていたのが保守なのではないですか? もう自民党内部も相当汚染されていたようですし…いくら間口は広くと言われても反日リベラル外国勢力まで抱えて込んでいるのでは… それにたとえ政治家がマトモになっても(なろうとしても)経済界の金さえ儲かれば何でもあり主義がその上を行っていますから…
日比野
敵がマスコミだなんて、とうの昔から分かっていること。少なくとも政治系ブロガーはそう認識している方が大半だと思います。ただそれが政治家やいわゆる市井の保守の方もその認識があるとは限らないのはご指摘のとおり。
今ははっきりと、情報レベルでの戦争状態が起こっています。それを認識できている人もいる。
民主党間口を広げまくって「反日リベラル外国勢力まで抱えて込む」ことで、政権を獲りました。
少なくとも政権再奪取のためには、数は絶対です。そして、政治に関心が薄い層の取り込みもそのとおり。そして彼らをあまり意識していなかったのも事実。ただ、そうであるが故に、彼らに対して、大上段に保守を振りかざしたところで、どれだけアピールできるのかは疑問が残るところ。
彼らを含めて、何を訴えるのかが、いまいち見えてこないのが歯痒いところなんですが、あまり迷っている時間もないのですよね。それくらいは分かっていると思うのですが…