アメリカが研究・開発を進めている新抑止力計画の中で比較的実用に近いものがいくつかある。
その一つが、CSM(Conventional Strike Missile)と呼ばれるもの。通称、非核攻撃ミサイル。
このCSMミサイル構想の最大の特徴は、その弾道。
通常のICBMは、発射後、数百kmの高度までロケット噴射させ、速度、飛行の角度等を調整して目標地点に設定している。そして、ロケット燃焼終了後、ロケットブースターを切り離して、残った弾頭部分が自由落下状態で目標地点に着弾するようになっている。目標までの到達時間は、7,000カイリ(約12,640km)で51分、 9,000カイリ(約16,250km)だと76分必要だった。
これに対して、CSMミサイルは、ICBMのように、一度空に打ち上げて、落とすという弾道ではなくて、ほとんど地球の丸みに沿うような、とても低い飛翔経路を取る。これによって、目標到達時間も短縮され、CSMは、7,000カイリで45分、9,000カイリでは52分で目標へ到達するという。
これくらいの時間となると、核ミサイルの発射準備を始めたのを察知してから発射するまでの間に目標を破壊する事も可能になるそうだ。
よって、このCSMミサイルが実用化されると、こちらが核攻撃を受けてから報復攻撃を行うというのではなくて、攻撃を受ける前に相手のミサイルを叩くことが可能になる。相手が打つ気になったことを確認してから、先手を取る方法だから、批難も浴びにくい。武術でいうところの「後の先」。
だけど、折角、「後の先」を取って反撃できたとしても、相手のミサイルサイロが地下深くにあったりしても破壊できるのかどうかという問題がある。
CSMが非核ミサイルであるならば、その弾頭には何を使うのか。
今計画されている弾頭案は、次の3つ。
1.センサーフューズクラスター弾(SFW)
2.ロッズ・フロム・ゴッド
3.ヘルストーム
1.は、対戦車用に開発された、誘導型クラスター爆弾ともいうもの。SFWは、1万メートル以上の高度から投下された後、40個の子爆弾を放出し、それらの子爆弾に搭載された熱センサーが目標を探知して個別に攻撃する。目標をロックオンした子爆弾は空中で起爆して、自分の形を弾丸状に変えてから着弾(自己鋳造弾)する。
このSFWは、実際、イラク戦争で使用され、多大な戦果をあげたという。
2.と3.は、タングステンなどの重い金属を弾頭に持つただの棒、又は小片をばら蒔くというもの。
2.のロッズ・フロム・ゴッドは、現在の計画では、長さ6メートル、直径30センチのタングステンカーバイト棒を衛星誘導を使って、毎秒3700mで命中させるというもの。その命中精度は7.5mで、貫通能力は地下9mに及び、強化掩蔽壕(えんぺいごう)でさえ破壊すると言われている。
ロッズ・フロム・ゴッドは、CSMの弾頭だけでなく、攻撃衛星に積んで、宇宙空間から攻撃するという案もあるらしい。
3.のヘルストームは、今度は、マッハ20以上の速度で、約24,000平方mの範囲に数千発の様々な大きさのタングステン片を均一に散布するタイプで、広域破壊兵器といえる。
ここまでくると、もうSFも真っ青の世界であって、実戦配備された暁には、他国はアメリカに正規戦では、全く手が出せなくなる。
こうした兵器を発想し、開発・配備できる国と同盟を組んでいる、という意味を、鳩山政権は、もう少し自覚すべきだろう。


オバマ米大統領個人の「核なき世界」への情熱は疑いのないものですし、その理念は崇高なものです。一時的なムーブメントではなく、ロシア、中国、イラン、そして北朝鮮などの他の核保有国をも取り込み、その理想がいつか現実のものとなることを願わずにはいられません。
しかし、客観的に見るとその実現可能性には懐疑的にならざるをえず、そうした見方は決して少数派ではありません。例えば、今年4月、米国の外交方針に影響力を持つ米外交問題評議会が核政策に関するレポートとして『U.S. Nuclear Weapons Policy』を発表したのですが、この中でタスクフォースのレポートは、ロシアや中国との核軍縮交渉、CTBTの批准、IAEAの強化、兵器級核燃料の生産を禁止する新条約など短期的に核の脅威を削減していく措置を提言する一方、「世界を核廃絶に向かわせるような地政学的環境は今のところ存在しない」と結論付け、タスクフォースに参加したメンバー間でも「オバマ大統領が掲げる核廃絶という目的が現実的かどうか、また、その路線が望ましいかどうか」を巡っては、コンセンサスが得られなかったという事実が明らかにされています(Source: U.S. Nuclear Weapons Policy, Independent Task Force Report No.62, Council on Foreign Relations)。
もちろん、このCFRのレポートだけで懐疑論を主張するわけではありませんし、これとは反対の立場に立った検証があることも看過すべきではありませんが、米国が「世界平和」を究極的目標として核軍縮を考えているというのは本質的な間違いがあると言えるでしょう。J.J.ミアシャイマーが言うように、「平和は目的ではなく副産物」としての状態に過ぎません。米国の核軍縮政策はあくまで米国の国益を満たすためのものであることを忘れるべきではありません。
他にも、キッシンジャー博士らによる『核のない世界』 (Nonproliferation for Global Security Foundation)という論文において、「前線配備向けに設計された短距離核兵器」(short-range nuclear weapons designed to be forward-deployed)の禁止が提唱されているのですが、最近の米露間の核軍縮交渉ではこの種の「戦術核兵器」は含まれていません。1987 年のINF条約で一部が規制されてはいますが、事実上放置されています。もちろん、戦術核についても今後段階的に削減されていくことは否定できませんが、現在のところそうした動きがないのが実情であり、米国の核軍縮の性格の一端が垣間見える一例です。
そもそも、米国が核軍縮を進める背景には、(1)核兵器の使用はハードルが極めて高い(使えない)、(2) 核兵器維持の財政的負担、(3)通常兵器における米国の圧倒的な軍事的優位状況といった要素を鑑みる必要があります。こうした観点から、米国はかねてより核兵器に代わる新抑止能力を模索しており、その中にPGS(Prompt Global Strike)構想というものがあります。PGS構想には、米空軍がDARPA(国防先進研究計画局)と協同で進めているFALCON(Force Application Launched from Continental United States)という計画などがありますが、今のところ実用段階のものはありません。そういった構想の中で最も早い運用が見込まれる兵器が、 CSM(Conventional Strike Missile:非核攻撃ミサイル)です。
CSMのロケット本体については、ミニットマン3を改良したものが基になるという資料もありますが、まだ公式決定はされていないようです。ICBM級の6,000km以上の射程があり、特徴はその飛翔経路で、ICBMとは異なり非常に低い飛翔経路をたどります。これにより目標到達までの時間が短縮され、弾道飛翔では7,000カイリ(約12,640km)の射程で目標までの到達時間は51分、 9,000カイリ(約16,250km)で76分必要であるのに対し、CSMは7,000カイリで45分、9,000カイリでは52分で目標へ到達します。これは例えば、ある国が核ミサイルの発射準備を始めたのを察知してから発射するまでの間に目標を破壊する事も可能という事です。(Source: http://www.dtic.mil/ndia/2007psa_apr/gregjones.pdf)
スカッドやノドンの発射に用いられるTEL(Transporter-Erector Launcher)の捕捉が難しいことは湾岸戦争における“スカッド狩り”で実証されましたが、CSMならば、その「即時(prompt)」性能が発揮され、発射準備中のミサイルを破壊することも可能となります。このCSMは、FALCON計画の中で運用研究が着実に進められているようで、超音速で飛翔するCSMのペイロードを保護するPDV(Payload Delivery Vehicle:ペイロード運搬体)が2012年には飛行実験されるとのことです(Source: 2009/7/6 air-force magazine.com)。
今のところ、PDVの形状は明らかにはなっていませんが、2008会計年度に承認されたCSM研究予算1億ドルの中では、3種類の弾頭案が研究されることとなっています。1つは、テクストロン・システムズ社のBLU-108センサーフューズ子弾を用いるもので、自己鍛造型の貫通スキート子弾4発を納めるコンテナ10発を搭載します。もう1つは、サンディア国立研究所の「ロッズ・フロム・ゴッド(rods from god)」で、3つめはローレンス・リヴァモア研究所の「ヘルストーム」というものです。最後の二つは多数の運動エネルギー弾を目標に降らせるもので、「ヘルストーム」案では、マッハ20以上の速度で、約24,000平方mの範囲に数千発の様々な大きさのタングステン片を均一に散布します。ちなみに、どちらの研究所も核兵器の開発に関わってきた研究機関として知られています(Source: 『軍事研究』2009年10月号)。
「核なき世界」を主導する米国が、自国の安全保障を放棄してまで平和を志向すると考えるのは、あまりにナイーブです。ロシアも中国も、そして北朝鮮も、米国がそのような甘い相手ではないことを知っており、ある者は「核抑止」政策を堅持する姿勢を見せ、ある者は「ポスト核抑止時代」への準備に取り掛かっています。そうした国際政治の現実の中で、日本の看板が“友愛”一辺倒であることの危うさを、この国の指導者は一体どれほど認識しておられるのでしょう・・・。
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URL:http://www.news.janjan.jp/world/0912/0912054078/1.php

「後の先」とは、相手が動いて初めて自分が動き勝ちを取る。ことを云う。
敵と睨み合う。我はみだりに動くことせず、安全な間合いを保ちながら相手の攻撃を待ち、相手が仕掛けてきた時点ではじめて動く。
動きとしては、敵の武器・拳足をいなすこともあるし、受け止めることもある。あるいはかわしてから間合いに入り技を決めることもある。
いずれにしても、「後の先」は、相手の出方を見て、これを捌いた後に技を繰り出すことになる。要するに自分の技は「反撃」という形を取ることになるのだ。この「後の先」は、武術の形や演武ではよく見られる。武術・武道の技術としては普遍である。
「後の先」を取る利点はいくつかあるが、安全性が最も大きい、相手と自分の体勢が五分五分である場合、先に動くことは極めて危険である。
動き=隙である。技の起こりは特に狙われやすい。
しかし、「後の先」を取る限り、そうしたリスクは背負わなくても済むのだ。また、相手は技を外されるのだから態勢的にも精神的にも不安定になる。そこを衝くのだから「実を以って虚を打つ」形になる。決まれば効果の程は云うまでもない。
「後の先」は、完璧な護りのあとに攻撃に転じる技術」といえるが、完璧を望むのは難しい問題もある。要するに動く時期である。相手の攻撃をいつまで待つかである。早く動きすぎると相手は攻撃の軌道修正が効く。誘導ミサイルの如く動いた方向に追ってくるであろうし、受けのために出した武器、部位を外しつつ攻めてくるはずである。かと言って引き付け過ぎると攻撃をまともに食うことになりかねない。
つまり、「後の先」の攻撃が成功するか否かは、自分がいつ動くかにかかっており、その見切りが各武術流派では重要な技術として位置付けられている。
URL:http://plaza.rakuten.co.jp/asukajuku/7002

ペンタゴンの構想によれば、22世紀の“砲艦外交”の主役は、空軍宇宙司令部が言う“宇宙配備プラットフォーム(砲台)”であり、“大砲”はありとあらゆる“新型”兵器と運搬手段に取って代わられるだろう。(頭上の各種スパイ衛星は別だが)宇宙はまだ軍事利用されていないが、アメリカは、砲艦外交の風変わりな天国版代表選手、天上を単独航行する未来の“宇宙戦艦”を計画している。国家偵察局を束ねるピーター・B・ティーツ空軍次官が上院軍事委員会の証人席で開陳した「2004年における国家安全保障のための宇宙利用計画5大優先事項」のなかで、もっとも印象的かつ予言的な項目は、「宇宙空間で行動の自由を確保する」手段のくだりだ。自由といっても、これはアメリカ限定の行動の自由であり、他国の行動は完全に封じ込める自由なのだ。
ドナルド・ラムズフェルドは、かねてから宇宙支配の考えに取りつかれている。例えば、まだ設計段階だが、“神の痛棒”と通称される宇宙兵器が完成すれば、宇宙は彼の手中に収まり、未来の帝国が天翔ける虚空の大洋になると構想されている。“神の痛棒”諸元をお見せしよう
――『種別:軌道プラットフォーム発射タングステン棒。
長さ:おそらく6メートル、
直径:30センチメートル。
機能:地球上どこにでも数分以内に衛星誘導で目標に激突。
命中精度:7.5メートル。衝突速度:3700メートル/秒。
能力:地下数階を貫通し、強化掩蔽壕(えんぺいごう)でさえ破壊する衝撃力』
レーガン政権のころ、1980年代に始まった、宇宙を征服し、軍事利用する“高所フロンティア”信奉者たちの計画は、今、(マッド・サイエンスの類だが)リアリズムの新しい水準に到達した。防衛情報センターのテレサ・ヒッチェンスが最近サンフランシスコ・クロニクルに書いた記事『わが国の兵器を制限する』を見てみよう――
「2月17日、新しい“米空軍トランスフォーメーション・フライト・プラン(変換飛行計画)”が公表され、軍の手のうちが明らかになった。この文書は、次の10年間の開発目標になる、驚くべき新型兵器の長いリストを詳述している。低高度軌道の衛星を破壊する空中発射ミサイルがあり、ミサイルや衛星を破壊する地上設置型と宇宙配備型のレーザー砲、さらには(通称で“神の痛棒”と呼ばれる)“超高速貫通棒集束兵器”がある。単に宇宙における米国の将来性を確保する意図をはるかに超えて、これら数々の兵器は先制的な第一撃を托されるものになる」
1898年にH・G・ウェルズが『宇宙戦争』を書いて以来、わたしたち人類
は、超絶兵器を装備した無慈悲なエイリアンが宇宙から襲来して、地球を壊滅させるシナリオを空想してきた。だがその無慈悲なエイリアンがわたしたち自身であったと判明すれば、あるいはそう遠くない将来、まるで16世紀のように、アメリカの“砲艦”が地球の“海岸”に“宇宙から襲来”し、プログラムにしたがって、破壊の限りを尽くすとすれば、どうだろう。もちろん、これは蒙古襲来の現代版悪夢そのものだ。
URL:http://groups.yahoo.co.jp/group/TUP-Bulletin/messages/289?threaded=1&expand=1
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