中華封じ込め戦略(アメリカの世界戦略について その5)


仮に、アメリカが、アジアのことはアジアで決めてくれ、と決めたとしても、今までどおり、アジア市場は開放されていて、貿易を続けられるようになっていないと、アジアから引いた意味がない。これは、大きくみれば、ドルの影響力が及ぶ市場の囲い込み戦略であり、「ドル覇権」の維持に絡む話。

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太平洋や東アジアに展開している軍を引いて、折角軍事費を削減したのに、アジアの市場を失って、それ以上の損失を出すなら本末転倒。地域経済圏をまるまる失うことは、ドル基軸通貨体制に陰を落とすことになる。

日本がこれまでのような繁栄を続けるための条件は、大きく2つ。1つはシーレーンの確保。もうひとつは国防体制の強化。

日本のエネルギー自給率は、原子力を含めても僅か20%程度、そして輸入される石油の9割近くは中東からのもの。

もしもシーレーンが閉ざされて、日本に石油が入ってこなくなったとしたら、日本はあっという間に干上がってしまう。日本国民は、お金を握り締めたまま、江戸時代くらいにまで後退する。

だから、シーレーンが確保されているかというのはとても大事なことで、ここを誰が守っているのか。どうやって守っているのかを国民は常に認識している必要がある。どこかの友愛首相ではないけれど、蛇口を捻っても石油は出てこない。あの海域を守って、輸送してくれている存在があるから、石油が入ってくる。

もう一つの国防体制の強化だってそう。去年は、北朝鮮の核実験とミサイル事件があった。有事の際、今の国防体制で日本を守りきれるのか、MDや次期FX選定はどうするのか。難題が山積してる。

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もし、そこに、東アジアと太平洋で「地域覇権国」となって、平和と安全を守り、資本主義に基づいた経済圏を築いて、拡大繁栄させる意思と力を持った国があったとしたら、アメリカはその国と友好関係を結び、G2体制を組んで共存共栄を望んでも、ちっともおかしくない。

条件的には、日本がその「地域覇権国」に一番近かったのだけれど、肝心の日本に全くその気がない。ロシアは北にありすぎて、東アジア諸国、特に東南アジアへの影響力を持たせるのは難しい。地理的に東アジアの地域覇権国となるには不利にすぎる。

そこに、近年、中国が台頭してきた。だから、アメリカが中国に目をつけるのも当然なことだともいえる。

中国は、地域覇権国となる意思がありそうだし、その力もつけつつある。あとは不十分ながらも民主国家に移行してくれれば、なんとかなるかもしれない・・・

その為には、中国に資本投下して、中国製品をどんどん買ってやりながら、中国を民主化させてしまえばいいのではないか。アメリカには、そんな意図があったのかもしれない。

それについて、一昨年来のサブプライムを発端とした経済危機を通じて、中国に、東アジアの地域覇権国の資格と意思があるかどうかを見極めようとしていたのではないか、と今にして振り返るとそう思える。

だけど、かの国には、そんな意思はなかった。自ら地域覇権国を望むものの、自らの政治体制を壊してまでも民主国家に移行することは拒絶した。そして、世界からの再三再四の人民元切り上げ要請を無視している。

そして、とうとう、昨年のCOP15に至っては、CO2排出量削減の具体的義務を負うことを拒否し、オバマ大統領に実質上の「敗北」宣言を出させることとなった。

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事ここに及んで、アメリカは腹を括ったように思える。中国の喉元に刃(やいば)を突きつけて、地域覇権国を望むのならば、その責任と義務を果たす必要がある。果たしてその気があるのか回答せよ、と迫っているように見える。

それが、先ごろの台湾への武器売却、2月下旬に設定されているダライラマ睨下との会談、グーグル撤退の後押しなどの現象となって現れてきているのではないかと思う。

アメリカは、ハードパワー、ソフトパワー共に使って、はっきりと、中国に圧力を掛け始めている。民主国家になって、大国の責務を果たさなければ、これ以上の勢力拡張は許さない、と。

そして、中国を封じ込めている間に、日本や東南アジア圏への影響力を強化して、アジア市場の囲い込みに掛かっていると見る。

もしも、今の日本の政権が麻生政権のままであったとしたら、東アジア地域覇権国の候補は中国だけではなかっただろう。そして、今、行なわれている、中国封じ込めの一端は日本が担っていた可能性すらある。

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画像米中首脳会談 「大国」に問われる責任 '09/11/18

 「G2」と言い「チャイメリカ」との造語もある。米国と中国を指す。超大国・米国が世界を仕切る時代は終わり、これからは成長著しい中国と米国の協調と役割分担が欠かせない。そんな意味を込めた言葉である。

 歴史の潮目を背景にオバマ大統領が初めて訪中し、胡錦濤国家主席と、就任3回目の会談をした。

 地球温暖化や北朝鮮の核問題などで協力していくことが確認された。双方が、世界に強い影響力を及ぼす「大国」としての責任と覚悟を示した、と受け止めたい。

 声明では両者とも、冒頭で環境問題に触れた。胡主席は「エネルギー、環境分野で協力を拡大する」と、オバマ大統領は「COP15(気候変動枠組み条約締約国会議)の成功に向けて、ともに努力する」と述べた。

 両国は世界で1、2位の温室効果ガス排出国。合わせて4割を占めるにもかかわらず、京都議定書の枠外にあった。

 しかし米国は、政権交代によって温暖化対策への積極姿勢に転じている。中国も、先進国の資金や技術支援を前提にしながらも2020年に向けて大幅削減に動こうとしている。

 それを再確認したのが声明だ。両国は、これを具体的な形にすることで世界の温暖化対策を加速させなければならない。

 北朝鮮問題では、胡主席が「朝鮮半島の非核化、6カ国協議のプロセスを堅持する」と述べた。

 北朝鮮の核は、日本のみならず米中にとっても絶対に認められない存在だ。ただ中国にとっては北朝鮮は韓米に対する一種の「緩衝国」でもあり、必ずしも強い態度を取りにくかった面もあろう。

 米中の関係が強まることで、北朝鮮への圧力がかけやすくなると期待したい。オバマ大統領も、近くボズワース特別代表を平壌に派遣するという。6カ国協議への復帰を求める米中の共同歩調を歓迎する。

 声明には、中国政府とダライ・ラマ14世の「早期対話の再開」を大統領が支持することも盛り込まれた。米国債の最大保有国に対して、大統領も「人権」の腰が引けるのではとの観測もあっただけに評価したいが、なお今後を見定める必要があろう。

 中国はこれまで「新興国」「途上国」の顔を使い分けていた。しかし米中会談によって、米国との協調によって世界をリードする役回りという印象を、世界に与えたことは間違いない。

 であればこの際、国内の人権問題だけでなく、援助などをからめた独裁国からの資源調達など、世界での自らの振る舞いを振り返る機会にもしてほしい。

 G2体制で日本の影が薄くなったと思う人もあろう。しかし日米は共通の価値観で結ばれ、日中は近い上に歴史的つながりがある。また日本には先端的な環境技術や魅力的なソフトパワーといった独自資源がある。米中協調の時代の中でこそ発揮できる個性を磨き、存在感のある国を目指したい。

URL:http://www.chugoku-np.co.jp/Syasetu/Sh200911180143.html



画像【COP15】中国の独壇場 オバマは「敗北」宣言 2009.12.18 22:14

 【コペンハーゲン=木村正人、粂博之】地球温暖化対策を協議する国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)首脳級会合は中国が途上国を率いるグローバルプレーヤーとしての力を誇示する場と化した。先進国のリーダーとして米中首脳会談に臨んだオバマ米大統領は中国が仕掛けたパワーゲームの厳しい現実を突きつけられた。G2(米中)の攻守は完全に逆転したことを世界中に印象づけた。

 ■明暗

 16日夜に現地入りした中国の温家宝首相は、17日に予定されていた記者会見を土壇場でキャンセルするなど隠密行動に徹し、18日の首脳級会合全体会合で初めて公に発言した。

 「会議の結果がどうなろうとも中国は自らが定めた目標を達成し、さらに上積みすることを確約する。これはあくまで自発的なものだ」。温首相は会場を見下ろすように言い放った。

 まもなく演壇に立ったオバマ米大統領の表情はこわばり、「各国による温暖化対策を検証する方法が担保されない合意など、ただの紙切れと化すだろう」と怒りをあらわにした。怒りの矛先は明らかに温首相に向けられていた。

 オバマ大統領は18日朝、大統領専用機でコペンハーゲン国際空港に到着するや否や隣接するホテルにこもって首脳外交を展開。温首相とも会談した。前日まで中国は、米国が提案する実質的な温室効果ガス削減を担保する「測定・報告・検証可能」な仕組みを受け入れる構えを見せていたが、温首相は一転拒否した。


■別動隊

 「竹のカーテン」に隠れて姿を見せない中国の別動隊として先進国を揺さぶったのがアフリカ諸国を中心に130の途上国が参加するグループ77(G77)だ。COP15では「G77&中国」を名乗り連日、午前と午後に協議を重ねた。

 「『G77&中国』は世界の人口の80%以上を占め、中国やインド、ブラジルで暮らす数百万人がアフリカよりも貧しい生活を送っている」。G77交渉団代表を務めるスーダンのルムンバ・スタニスラウス・ディアピィング氏は本紙に対しG77の存在感と中国との連帯感の強さをこう表現した。

 スーダンに対して米政府は1993年、テロ支援国家に指定。一方、中国は石油利権のため国際刑事裁判所(ICC)がダルフール紛争をめぐる戦争犯罪で逮捕状を出したバシル大統領を支援しているとして国際的に非難されている。

 クリントン米国務長官が17日、2020年まで先進国で年1千億ドルを拠出する構想を表明した後も、ディアピィング氏は「(災害対策を除く)排出削減策だけで年4千億ドル必要だ」と平然と言ってのけた。

 同氏は会議4日目の10日、議長国デンマークの議事進行を不服として退場したのをはじめ、14日もアフリカ諸国を中心とした交渉のボイコットを主導。16日には途上国から先進国寄りだと突き上げられていたデンマークのヘデゴー気候変動・エネルギー相がCOP15の議長を辞任し、ラスムセン首相に交代した。

 ■グローバルプレーヤー

 会期終盤の16日、日本を含む先進各国の交渉担当者が集まり、交渉を前進させるために「中国は何を求めているのか。とにかく中国と話をしなければならない」と知恵を絞った。

 日本政府関係者の1人は「中国政府幹部は手分けしてアフリカ各国を毎年訪問し関係を深めている。資源開発で援助もしている」と語る。2年前には中国・アフリカ協力フォーラム首脳会議を北京で開き、多数のアフリカ諸国首脳が“北京詣で”を行った。

 昨年の北京五輪でも各国首脳を招き、主要国首脳会議(G8)では拡大会合に必ず顔を出す。高度経済成長を維持する一方で、途上国のリーダーとしての地位も手放そうとしない。

 先進国側は最後の最後まで、意味のある「政治合意」を目指して中国を説得する糸口を探す一方で、手分けして途上国の「切り崩し」に乗り出し、会議への協力と資金支援の実行が不可分であることをほのめかした。日本もアポ無しで途上国代表団を回ったが、大勢は変わらなかった。

 大混乱の交渉がもたらした結果は何だったのか。

 別の日本政府交渉筋は「中国は排出削減責任を負わされるというリスクから途上国を守り、先進国からの資金支援を勝ち取らせた」と総括する。これこそ中国の狙いだったのだろう。

 オバマ大統領は2016年夏季五輪開催地を決める国際五輪委員会(IOC)総会で涙をのんだ因縁の地コペンハーゲンで再び何の成果も上げられなかった。 ギブズ大統領報道官は事前に、「中身のない合意を持ち帰ることになれば手ぶらで帰国した前回より事態は深刻だ」と語っており、多国間協調主義を掲げるオバマ大統領の影響力低下は避けられない見通しだ。

URL:http://www.sankeibiz.jp/macro/news/091218/mca0912182217033-n1.htm



画像先進国翻弄 勝者は中国 途上国をリード 削減義務回避 2009.12.19 05:00

 COP15は、序盤から最終局面まで混乱を極めた。議長国デンマークの会議運営のまずさが、先進国主導で議論が進むことに対する途上国の反発を呼んだためだ。拍車をかけたのは途上国のリーダー役、中国と目され、先進国は手分けして水面下で途上国グループを切り崩していった。攻防の鍵は資金支援だった。

 会期終盤の16日、日本を含む先進各国の交渉担当者が集まり、交渉を前進させるために知恵を絞った。


▼懸命の切り崩し

 「中国は何を求めているのか。とにかく中国と話をしなければならない」

 連日、午前と午後にアフリカ諸国を中心に約130の途上国が参加するグループ77(G77)&チャイナが、交渉方針を協議していたのだ。

 ある日本政府関係者は、「中国政府幹部は、手分けしてアフリカ各国を毎年訪問し関係を深めている。資源開発で援助もしている」と指摘する。昨年の北京五輪では各国首脳を招き、主要国首脳会議(G8)では拡大会合に必ず顔を出す。高度経済成長を維持する一方で、途上国のリーダーとしての地位も手放そうとしない。

 先進国側は、手分けして途上国の“切り崩し”に乗り出した。日本はアポ無しで途上国代表団を回った。

先進各国は水面下で「会議の失敗は、温暖化対策の遅れを招き、途上国のためにならない」など、会議への協力と資金支援の実行が不可分であることもほのめかした。

 「G77&チャイナは世界の人口の80%以上を占め、中国やインド、ブラジルで暮らす数百万人はアフリカよりも貧しい生活を送る」

 G77交渉団代表を務めるスーダンのルムンバ・スタニスラウス・ディアピィング氏は本紙に対し、G77の存在感と中国との連帯感の強さをこう表現した。


▼議長国、劣る調整力

 先進国を揺さぶり続けたG77&チャイナ。最大の目的は先進国からの資金支援をできるだけ多く取り付けることだ。

 クリントン米国務長官が17日、20年まで先進国で年1000億ドルを拠出する構想を表明した後も、ディアピィング氏は「(災害対策を除く)排出削減策だけで年4000億ドル必要だ」と言い放った。

 デンマークは、各国に削減目標や行動計画作りを義務化する新しい議定書の採択をあきらめ、「拘束力のある」政治宣言を目指してCOP15に臨んだ。

 しかし、開幕すると議論は紛糾、議事の進行にさえままならなかった。「デンマークのやり方はいかにもまずい。途上国を取りまとめようとするリーダーシップも感じられず、議長国としての信頼を失った」(交渉筋)

 日本政府の交渉担当者は、「中国は排出削減責任を負わされるという危険から途上国を守り、先進国からの資金支援を勝ち取らせた」と振り返った。(コペンハーゲン 木村正人、粂博之)

URL:http://www.sankeibiz.jp/macro/news/091219/mca0912190502010-n1.htm



画像中国、COP15批判に反論 2009.12.26 05:00

 中国国営の新華社通信(英語版)は、今月開催された国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)に関する論説記事で、中国は「責任ある」国として行動し、会議終了後に批判を受けるいわれはないとの見解を報じた。

 新華社通信は「温家宝首相はコペンハーゲンを訪問し、演説で中国の気候変動対策の実績と将来の計画に関する詳細を説明した」と指摘。「温首相は演説で、気候変動対策協議の進展に向け中国の誠実さと決意を示した」と報じている。

 英国のミリバンド・エネルギー・気候変動相は20日、英紙ガーディアンで、中国は、世界の温暖化ガス排出量を2050年までに50%削減、あるいは先進国が80%削減するとの合意案を拒否し、交渉を「ハイジャックした(乗っ取った)」と非難した。

 新華社通信はミリバンド氏の見解に対し「この主張とは極めて対照的に、中国はコペンハーゲンでの交渉が広く受け入れられる合意に到達するよう、多大な努力をしてきた」と反論した。

 この論説記事は、スウェーデンのカールグレン環境相による批判も引用している。(ブルームバーグ Stuart Biggs)

URL:http://www.sankeibiz.jp/macro/news/091226/mcb0912260507017-n1.htm



画像中国は「世界の保安官代理」にはならない指導的な役割を期待しても無駄? 2010.01.29(Fri)(2010年1月28日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

近頃、人々は中国に大きな期待を寄せている。中国政府は、核の野望を放棄するよう米国政府が北朝鮮とイランを説得(あるいは強要)するのを助けることを期待されている。炭素排出量の削減に関する発展途上国の行動計画を策定するよう期待されている。

 米国債を買い続けることを求められる一方で、米国人に対して彼らがもはや買う余裕のなくなった様々な消費財を売りつけることで国債購入に必要な黒字を生み出すことはしないよう求められている。

 こうした仕事に精を出している間にも、今度はギリシャを救済するよう期待されている。ああ、それから、年間10%という猛スピードで中国経済を急成長させ続けることも期待されている。要するに、中国は世界を救済することを求められているのである。


▼ 世界を救済することを求められている中国だが・・・

 問題は、中国が物事を全くそのようには見ていないことだ。こうした期待が大きく高まっているダボス会議で中国の政府高官らが明確にするかもしれないが、中国政府は自らに押しつけられた指導的役割を務める準備ができていないし、務める意思もない。

 北京で耳にする話の特色をよく表しているのは、中国社会科学院欧州研究所の周泓所長のコメントだ。「外部の期待と中国の能力との間には、今後長きにわたって大きなギャップが存在し続けるだろう」と周所長は言う。「中国は大きい。だが貧しい。中国の最大の関心事は当面は国内の問題だ」と。

 こうした認識の違いは、あからさまな摩擦とまではいかなくとも、ある種の刺々しさの源泉になってきた。

 ジョージ・ワシントン大学の中国専門家デビッド・シャンボウ教授は、バラク・オバマ大統領率いる米政権は昨年11月に署名した共同文書を非常に重視していたと話す。

 この共同文書は、世界で最も重要な問題に対して米中両国が結束して取り組むという、責任分担の新たな時代の枠組みを示していた。


▼ けんか腰の外交

 だが、「中国の外交に頑なになる姿勢」を感じ取っているシャンボウ教授は、この計画は最初から完全に失敗だったと言い、最近の中国の外交については「非常にけんか腰になってきており、時に耳障り、時に傲慢で、いつも決まって扱いにくい」と話す。

 中国のけんか腰の姿勢を示す例は――米国政府から見た場合――山ほどある。中国政府は気候変動に関するコペンハーゲン・サミットで、多くの人が破壊的だったと考える役割を演じた。イランに対する制裁を支持することには全く関心を示さなかった。また、米国政府が期待するほどには、北朝鮮を従わせる努力を払っていない。

 一方で、争点となっている東シナ海でのガス田開発を推し進めて、日本を苛立たせてきた。インドとの関係も、論争の的になっている領土を巡って悪化した。そうした事例を数え上げればきりがない。

 普通なら中国政府を支持する経済界でさえ、敵対的雰囲気が高まってきたことに不快感を示している。中国から撤退するというグーグルの脅しは、非関税障壁や恣意的と言われる規制に関するこれまで語られなかった不満を公のものにした。英豪系資源大手のリオ・ティントは、オーストラリア人のスターン・フー氏を含む、同社の従業員4人を拘束した昨年の事件についていまだ憤慨している。


▼ 力強い経済成長からくる自信

 「世界は崩壊しつつあったが、中国は見事にやった。外国人のことなど誰が気にするものか」というのが、20年間の中国経験を持つある外国の財界首脳が中国政府の新たな姿勢を説明する時に使う表現だ。

 硬化する態度に関するこのような話は、多少は本当なのかもしれない。確かに中国は、ダボスで盛んに喧伝されている自由市場モデルからは、かつて考えていたほどには学ぶことがないという結論に至ったかもしれない――そして一体誰がそれを責められるだろうか?

 また、チベットや新疆で最近暴力行為が勃発し、2012年には次世代の政治指導者らに体制が移行する緊張した時期を迎えるため、国内の安定についてこれまで以上に神経質になっている可能性もある。

だが、基本的な問題はもっと根本的なものだ。中国は、新興勢力がどのように行動すべきかについて、違った見方をしているのである。中国政府には、世界の保安官代理になる気など毛頭ない。


▼ 極力目立たないようにし、さらなる経済発展に専念

 中国の持論は「平和的な発展」だ。「平和的な台頭」という表現さえ避けている。中国の優先事項は経済発展だ。それは、中国の栄光を取り戻すために必要だからでもあるし、中国共産党の正当性にとって不可欠の要素だからでもある。

 中国政府は、なるべく目立たないようにし、産業経済を築き上げるという長く険しい歩みを断固進めていきたいと思っている。

 そのためには、ますます広範囲に広がる諸外国と、ある程度礼儀にかなった関係を保つ必要がある。こうした関係国には中国の工場に燃料、鉱物、部品を供給してくれる国もあれば、中国の完成品を買ってくれる国もある。

 中国が声高に喧伝している「不干渉」という原則(他者の意見を尊重するという儒教の価値観からきていると言われている)は、この目的にうまく合致している。中国は今後も可能な限り、国際問題で決定的と言える役割を持たない貧しい国として自らを描き続けるだろう。

 米国が中国のために用意した役割は危険なもののように見える。けんかをふっかけること、どちらか一方の肩を持つこと、そして最近の歴史が参考になるとすれば、戦争を始めることもその中に含まれるからだ。


▼ 屈辱の歴史、力を取り戻した暁には・・・

 だが、中国が豊かになり、その商業的、戦略的関心がますます国際情勢と密接に絡み合うようになるにつれ、中国がそんな不干渉主義を維持するのは難しくなるだろう。最終的には中国が、超大国に対して我々が期待するようなやり方――ただし独自の条件――で、その力を誇示し始める時が来るかもしれない。

 中国社会科学院の周所長は、近代の屈辱について次のように話す。「中国は過去1~2世紀の間、敗者だった。中国は弱かった。中国は占領された。中国は攻撃された」。中国の最優先事項は強さを取り戻すことだ。強さを取り戻したところで初めて、けりをつけなければならないやり残した仕事が出てくるのかもしれない。

By David Pillingc The Financial Times Limited 2010. All Rights Reserved. Please do not cut andpaste FT articles and redistribute by email or post to the web.

URL:http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/2665

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