近大マグロは全身トロ(クロマグロの養殖について 前編)

 
カタールの首都ドーハで開かれていたワシントン条約締約国会議で、心配されていた大西洋・地中海産のクロマグロの輸出入を全面禁止する提案が否決され、25日に全体会合で正式承認された。

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国際取引禁止案が否決されたのは、同案に反対する日本などが懸命の多数派工作を繰り広げ、中東やアフリカ、中南米などの途上国を中心に反対票を積み上げたためだとされている。

ひとまずは安心といったところだけれど、まだまだ予断は許さない。何れは国際圧力に抗えない時がこないとも限らない。

2002年に世界で初めて、人工ふ化から育てたクロマグロの産卵を確認して「完全養殖」に成功したというニュースが駆け巡って以来、マグロの養殖研究は着実に進んでいるようだ。

クロマグロは太平洋を横断するほど運動性が高く、飼育しにくい大型魚。

クロマグロは、皮膚が弱く大変デリケート。稚魚は特に皮膚が弱く、手でつかんだだけで死んでしまう。また、光や音にも過敏で、隣の生け簀のタイやハマチは平気なのに、夜間生け簀に自動車のヘッドライトが当たっただけで、パニックを起こし、網に突っ込んで死んでしまう。

また、秋の台風などでは産卵を期待していたクロマグロが海上に流れ出た泥水によりって視界を遮られるなどでパニックを起こして、100尾が死ぬこともあった。これまでクロマグロの完全養殖は不可能だとされていた。

それだけに、2002年の完全養殖の成功は関係者を驚かせたに違いない。



養殖クロマグロは、近畿大学水産研究所大島実験場などで研究が続けられ、「近大マグロ」とも呼ばれている。

今では近大マグロは、一部の百貨店や飲食店などに出荷されるまでになっている。近大水産研究所では、孵化して2~3年経った40Kg前後のものを多い週には15~20匹出荷しているそうだ。

もっとも、週に何度も釣り上げると、釣り上げ船のエンジン音を聞いただけでマグロは海中深くに潜るようになるようで、餌を代えたり、エンジン音を消して近付いたりもするという。

近大マグロは、“全身トロマグロ”と呼ばれるほど脂が多く、赤身も中トロ並み。今では脂の多さを売り物にしている。

また、餌の履歴がハッキリしていて、水銀濃度が低く抗生物質を使っていない、といった特徴がある。

食の安全や食糧安保が叫ばれる昨今。クロマグロの完全養殖が軌道にのり、クロマグロ自給率が100%を超える日がくることを期待したい。



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画像クロマグロ禁輸案否決のワシントン条約会議、最大の勝者は日本-韓国 2010/03/27(土) 12:56

  カタールの首都ドーハで開かれていたワシントン条約締約国会議は25日、閉幕を迎えた。同日には全体会合で、大西洋・地中海産のクロマグロ(本マグロ)の輸出入を全面禁止する提案を否決した委員会決定が正式に承認された。韓国の複数のメディアがこれを伝えている。

  韓国のメディアは、今回の会議では、北極グマ、マグロ、珊瑚など主要海洋生物に対する商業的取引を禁止する7種類の提案は全部否決された。そして、今回の会議の最大の勝者は日本だったと報じている。

  また韓国メディアも「マグロと寿司を守り通した、執拗な日本のロビー力」「絶滅危機種国際会議閉幕、勝者はやはり日本」と題してこれを伝えた。

  日本のロビー活動にも触れ、それは今までの日本人像とは違い、攻撃にも見えるものであり、その激しさが大西洋産クロマグロ国際取引規制案を否決させた。また、中国などいくつかのアジア国家と連帯して珊瑚とサメ取引規制も否決させたとして、日本の功績に賛辞を送っている。(編集担当:李信恵・山口幸治)

URL:http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2010&d=0327&f=national_0327_013.shtml



画像水産研究所 世界初 クロマグロ完全養殖に成功 前人未到の成果を発表 32年の歳月 産卵に歓喜

 「完全養殖」とは、人工ふ化から育てた成魚が産卵し、卵を人工ふ化、仔魚から稚魚、幼魚、成魚に育て、またその魚が卵を産むというサイクルを確立すること=図。これまで、養殖したクロマグロの卵から人工ふ化させ、成魚まで育てることには成功していたが、卵を産むには至っていなかった。

 産卵が期待できる水温が20度を超えてきた6月中旬から、日没時にいけす内でオスがメスを追いかける産卵行動が見られるようになり、ついに6月23日、待ちに待った産卵が確認され、関係者らは歓喜に沸いた。この日、採取された卵は5,000粒。その後も、次々と産卵。合計193万2,000個の卵を採取。内173万尾の人工ふ化に成功し、6万5,000尾が成長している(7月31日現在)。

 クロマグロは太平洋を横断するほど運動性が高く、体長3mに達する飼育しにくい大型魚。さらに、皮膚が弱く簡単に触れないなど、大変デリケートな魚。光や音にも過敏に反応し、夜間いけすに自動車のヘッドライトが当たっただけで、パニックを起こし、網に突っ込んで死んでしまうこともある。
 また、雷や台風など自然災害も魚の養殖にとっては大きな障害。昨年秋の台風では産卵を期待していたクロマグロが海上に流れ出た泥水により、視界を遮られるなどしてパニックを起こし、100尾が死ぬなど、養殖は非常に難しい。

 飼育を担当している岡田貴彦・技術主任は「気の抜ける日は1日もなかったが、人工ふ化から育て、いけすで無事成長したあの子たち(成魚)が卵を産み、完全養殖が達成されたことは何よりうれしい」と育ての親は目を細める。

 しかし、32年に及ぶ関係者の努力により「完全養殖」は達成されたが、クロマグロの安定した養殖技術の確立はまだこれから。「毎年産卵をさせるにはどのような条件をつくればよいか」「人工ふ化からの生存率をさらに高めるにはどのような手を加えればよいか」「味の良いものを育てるにはどのようなえさを与え、飼育すればよいか」など、ビジネスとして軌道に乗せ、採算ベースにできる安定したクロマグロの養殖・供給の実現への道程は長い。  

 「安くておいしい養殖マグロを供給していきたい。天然物がおいしいという既成概念を払拭するほどの養殖マグロを育てていきたい」と完全養殖を達成した喜びをかみしめながらも、熊井英水所長の目はその先をしっかりと見つめている。


クロマグロ完全養殖までの歴史
昭和45年(1970) 水産庁の依託研究としてクロマグロの養殖・研究に着手
昭和54年(1979) 天然採捕していけす内で飼育していた5歳魚が産卵 
昭和55年(1980) 産卵
昭和57年(1982) 産卵。ふ化後57日(体重11.2g、全長9.8cm)まで飼育

平成6年(1994)
昭和62年(1987)に天然採捕した7歳魚が12年ぶりに産卵。
ふ化後246日(体重1327.7g、全長42.8cm)まで飼育
平成7年(1995) 産卵。現在6尾生残(体重110~150kg、全長183~200cm)
平成8年(1996) 産卵。現在14尾生残(体重70~120kg、全長167~187cm)
平成10年(1998) 産卵。現在30尾生残(体重30~90kg、全長110~160cm)
平成13年(2001) 産卵。現在300尾生残(体重2~5kg、全長47~61cm)
平成14年(2002) 6月23日、人工ふ化から育てた6、7歳魚20尾がいるいけす内で5,000粒の産卵を確認。ついに「完全養殖」に成功

(近畿大学大学新聞 第435号 1面 平成14年8月1日発行)
(トピックス・ニュース 平成14年8月1日)

URL:http://www.ecp.kindai.ac.jp/press/435/learning/maguro.htm



画像クロマグロ完全養殖成功から1年。気軽に食せる日も間近!? ~近畿大学水産学部大島実験場を訪ねて~

美しくサシが入ったクロマグロ(本マグロ)の大トロ。口にすれば、きれいな脂の甘みがとろけるよう。しかしお値段、2カン2500円也…。そんな大トロが安価に、回転寿司でも気軽に味わえるようになる──!?

▼最後の砦、クロマグロ

[世界初!マグロの王者・クロマグロの完全養殖成功!]──世界中にこのニュースが配信されたのは昨年6月。マグロを県魚とする和歌山で達成されたとあって、県内は沸き上がった。
 完全な養殖とは、人工孵化から育った親魚が産んだ卵を再び孵化させることをいう。海に泳ぐ天然マグロの稚魚を獲ってきて、イケスで売れる大きさにまで育てて出荷する養殖とは異なる。海の資源を獲るばかりでなく、増やすことができるということだ。希少なクロマグロでこれを実現する意味は大きい。既にほとんどの魚で成功している完全養殖。「あとはマグロのみ」と、研究者なら皆が狙っていた最後の大物だった。


▼苦難の32年
 快挙を成し遂げたのは、近畿大学水産研究所の1つ、和歌山県串本にある大島実験場。
 世界最大のマグロ消費国である日本は、マグロ捕獲で世界を席巻し、ひんしゅくを買っていた。1970(昭和45)年、水産庁はマグロ養殖プロジェクトを打ち出す。近畿大学の他、幾つかの大学や試験場が挑戦したが、試験研究期間後も近大は独自に研究を続けた。「何しろ難しい」と、近大水産研究所長の農学博士・熊井英水さん。稚魚は特に皮膚が弱く、手でつかんだだけで死んでしまう。繊細で、車のヘッドライトや船のエンジン音、水の濁りですぐパニックに陥り、イケスの網に衝突する。「隣のイケスのタイやハマチは平気なのに」とスタッフを嘆息させた。「しかし生物には適応性がある」。それは、ハマチに始まりシマアジ、クエ、ブリ…、ありとあらゆる魚の養殖で培ってきた経験と技術の蓄積に裏打ちされた自信だった。そして遂に3代目が孵化。32年の月日が経っていた。なお、この研究は、文部科学省による世界最高水準の研究教育拠点づくりを推進するCOE(センター・オブ・エクセレント)に選定された。 


▼市場での評価は?
世界初の貴重な3代目のマグロたちを見に行った。イケスで産まれた親マグロが産んだ135万個の卵の中から、生き残った1400匹だ。彼らは体長60センチほどに成長していた。生のアジやサバを投げてやると、銀色の肌をきらめかせて、ものすごい速さでキャッチする。「160キロのスピードで太平洋を泳いでるらしいですよ。ここでは狭いからそこまで出ないですけどね」と熊井所長。その迫力を体感できる養殖体験は、観光客に人気だという。
 で、肝心の味は?「結構、評価は高いんです」と所長は自慢する。まだ僅かな量だが、3年目の30~40キロ級のものが、キロ4000~5000円で東京・築地や大阪・木津に出荷されているという。「生のエサで運動量が少ないので、やはり脂質が多く身が白っぽい。赤身文化の東京より、大阪で人気がありますね」。
 しかし、孵化して40日目までの生存率がまだ0.1%。これが10倍になって始めてビジネスとして採算ベースにのるのだという。
「実現する日?そう遠い夢じゃないですよ」。事実、その日のために(?)今春、養殖魚の加工販売などを行う(株)アーマリン近大が学内に設立された。希少なはずのクロマグロが、当たり前の顔をして回転寿司店で回り始める日が楽しみだ。

URL:http://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/000200/ren/web/ren7/maguro.html

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