鳩、脱藩

 
「縁の下の力持ちでいい。できるだけいいメンバーを引きつけることができる坂本龍馬のような接着剤的なことができたら本望だ」
3月15日 鳩山邦夫

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鳩山邦夫元総務相の自民党離党と新党結成表明は、発表当初こそ、大きな波紋を呼ぶかに見えたけれど、日を追うにつれ、その勢いが萎んできた。

14日時点ではテレビで、5月の大型連休前にも新党を結成する意向を表明して、15日に離党届を出した直後までは新党結成に必要な国会議員5人の確保について「間違いない」と言っていたのだけれど、翌16日には、単独行動で終わるかもと一転して弱気になった。

というのも、連携をあてにしていた議員の反応が芳しくないから。

舛添前厚生労働大臣は「新党を作るとか、誰と組むとかを先にやるからおかしくなる」と距離を置き始めたし、与謝野元財務大臣は「何が起きているのかちょっと見てから考える」と言って、鳩山邦夫氏が求めていた会談を見送った。

また、小池百合子元防衛相にも新党参加への声を掛けていたようなのだけれど、これも断られている。

自民党内でも友愛首相殿と同様に、実母から巨額の資金提供を受けていた邦夫氏への批判は強いようで、「首相への資金提供を脱税だと追及しているのに、同じ問題を抱える邦夫氏についていけるわけがない」とか「鳩山マネーをあてにして、ついていく人がどれだけいるのか」と、反応は必ずしも芳しくない。

こうしてみると、新党結成に必要な国会議員5人の確保なんて本当にできる目算があったのか疑わしい。

筆者は、3/12のエントリー「新党陽動作戦」で述べたように、舛添氏と与謝野氏の新党結成を模索する動きは、自民党へ注目を集めんがためのポーズではないかと見ているので、鳩山邦夫氏の新党結成の流れに慎重な姿勢を取っていること自体、別段驚くことでもないと受け止めている。

寧ろ、もう少し新党だなんだと騒いで注目を集める予定が、鳩山邦夫氏が自分勝手に飛び出したことで、却って自分の立場を明確にしなければならなくなった、余計な事しやがって、と内心苦々しく思っているかもしれないとさえ。



最近の世論調査でも、次期首相にふさわしい政治家として舛添氏がダントツの一位を取っていたから、もしも鳩山新党に舛添氏が参加するのなら新党の顔になったであろうことはほぼ間違いない。

ところが御覧のとおり、袖にされてしまった。与謝野氏も小池百合子氏も有力どころの議員の参加は、今のところ望めそうにない。

ならば、鳩山五人衆ならばどうかといえば、これもちと怪しい。

鳩山五人衆とは、田村憲久、河井克行、吉川貴盛、戸井田徹、馬渡龍治の各代議士で、鳩山元総務相の側近中の側近と呼ばれている。 中でも、田村憲久議員は先の子供手当ての強行採決の際に質問に立っていたので記憶しておられる方も多いと思う。

彼らもまだ同調するような動きは見せていない。ただ、側近中の側近だから、大分前から自民党離党と新党結成の話はしていた可能性がある。

というのも昨年12月の時点で、鳩山五人衆の一人である馬渡龍治前衆議院議員が、自身のブログでそれを匂わせる発言をしていたから。次に引用する。

・・・自民党は間違っています。政治家になる人物を選定する基準が、惜敗率とは。
《中略》
・・・他にも様々な理由がありますが、私は自民党から国政に出ないということは決めました。覚悟を決めたので、ここにご報告させていただきます。

とまぁ、はっきりと「自民党から」国政に出ない、と発言している。鳩山五人衆の一人が自民党から出ないということは、普通に考えれば、五人衆を「辞めて」民主党なり、無所属なりで出馬するか、鳩山邦夫氏と行動を共にして出馬、つまり鳩山新党から出馬するかしかない。

当然ながら、今回の鳩山邦夫氏の新党立ち上げ発言に関して、参加するのかどうかという問い合わせが殺到することになる。



事実、馬渡氏は3/16,17と立て続けに自身のブログで今回の件について記事を上げている。以下に引用する。

きのうの鳩山邦夫代議士の「新党設立宣言」と「自民党離党」に関してマスコミから多くの電話がかかってきました。ほとんどは「馬渡さんはどうされるのですか」という内容でしたが、この2か月ほど会っていないし、電話でも話していなかったので、全く知りませんでした。テレビを観ていて「えっ!そうなんだ」という印象でした。

《中略》

マスコミ以外に、この2日間で40以上の電話がかかってきました。私のことを心配してくれています。「参議院に出るのか」ともよく聞かれます。それは求められたら考えますが、「参議院に出るために何でもいいから新党を作ってほしい」とは思っていません。

「馬渡さん。何であんなへたくそなやり方で新党のことを邦夫さんにしゃべらせたの」と、電話で長年の知り合いから言われました。でも、私は最近は鳩山邦夫代議士とは離れて行動してきましたから、どういうことなのか分かりません。今回のことは私も戸井田徹先生も全く関与していないのです。

《中略》

もっと丁寧に打ち合わせを重ねていれば、新党を作るための“核”になる現職議員もいたはずです。でもこれだけの騒動になってしまっては逃げてしまう可能性があります。・・・

・・・でも、今回の騒動でいろいろ批判はあるけど、純粋な人で顔に似合わず優しい人ですから、これからも国のことを想ってがんばってほしいと思っています。

特に3/17の記事の「もっと丁寧に打ち合わせを重ねていれば、新党を作るための“核”になる現職議員もいたはずです」とか「今回の騒動でいろいろ批判はあるけど、純粋な人で顔に似合わず優しい人ですから、これからも国のことを想ってがんばってほしいと思っています。」とかなどの一節は、もうすっかり他人事の雰囲気すら漂う。

側近中の側近にこんな発言をさせているようでは、新党などとても覚束ない。龍馬に倣って脱藩するのは結構だけれど、縁の下に入ったまま出てこられなくなってしまわないことを望む。

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画像鳩山邦夫氏、GW前の新党結成を表明 「5人のめどついている」2010.3.14 22:10

 自民党の鳩山邦夫元総務相は14日、フジテレビ「新報道2001」に出演し、「新党の旗揚げの覚悟はできている」と述べ、5月の大型連休前にも新党を結成する意向を表明した。メンバーは「5人のめどはついている」と言明。同時に「与謝野(馨元財務相)さん、舛添(要一前厚生労働相)さんらが一緒にやれるように、私は(幕末に薩長連合を成功させた)坂本龍馬をやりたい」と述べた。

 14日夜には都内で記者団の取材に応じ「自民党は賞味期限切れだが(新党結成は)党内抗争でも、自民党の敵になるのでもない。同じ野党の立場で別な政党を作った方が結局は自民党にもプラスになると判断している」と述べた。また「与謝野氏は執行部一新を突きつける形で動くのではなく、もっと腹をくくっているのではないかと思う」との見方も示した。

 一方、谷垣禎一総裁は同日夕、鳩山氏の発言について、沖縄県名護市内で記者団に対し「党の中で議論するのは結構だが、外に向かって発信するのは遺憾だ」と述べた。

URL:http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/100314/stt1003141203002-n1.htm



画像鳩山邦夫氏が平沼氏との連携にも意欲 午後、与謝野氏と協議 2010.3.16 11:12

 15日に自民党離党を表明した鳩山邦夫元総務相は一夜明けた16日午前、改めて新党結成への強い意欲をみせ、連携の相手として与謝野馨元財務相、舛添要一前厚生労働相のほか、無所属の平沼赳夫元経済産業相の名も挙げた。

 鳩山氏は16日午前、都内の自宅前で記者団に対し、「平沼氏とは7割、8割以上は向かっている方向が一緒だと思う。大いに話し合っていきたい方だ」と表明した。与謝野、舛添両氏への働きかけには「とにかく一つのグループを作ることができればという思いで、縁の下の力持ちでもいいからやりたい。それが国家に対する最後のご奉公だろう」と述べた。

 与謝野氏は都内の自宅前で記者団に対し「今の自民党に非常な危機感を持ち、自分の信念で離党したわけだから、鳩山邦夫さんとしては政治家として重大な決断をしたと評価する」と語った。ただ、離党の可能性には「すべては話を聞いてからだ。何も考えないでいるから」と明言を避けた。与謝野氏は午後、鳩山氏や幹事長代理を辞任した園田博之衆院議員らと都内で協議する。

 舛添氏は国会内で記者団に対し「何も決めていない。政治情勢でどうなるか分からない」と、当面は党内情勢などを慎重に見極める意向を重ねて示した。

 谷垣禎一総裁は自民党役員会で、鳩山氏について「党内で議論があるのは結構だが、時期を明示して新党を結成するのなら、けじめが必要だ。残念だがやむを得ない」と述べた。

 一方、衆院当選1、2回約10人の議員が党本部に急きょ集まり、党内の結束を呼びかけた。

URL:http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/100316/stt1003161116003-n1.htm



画像強気の離党から一転、鳩山氏「単独行動で終わるかも」 2010年3月16日10時57分

 新党結成を目指して自民党を離党した鳩山邦夫元総務相は16日朝、東京都内の自宅前で記者団に対し、「単独行動に終わるか、強力な野党に成長できるか、すべてはこれからだ」と語った。15日に離党届を出した直後は新党結成に必要な国会議員5人の確保について「間違いない」と強気だったが、この日は一転して「単独行動で終わってしまうかもしれない」と弱音を漏らした。

 鳩山氏が連携を呼びかける与謝野馨元財務相や舛添要一前厚生労働相は当面鳩山氏の動きを静観する構えで、党内にも同調する動きは広がっていない。与謝野氏は16日朝、自宅前で「何が起きているのかちょっと見てから考える」と記者団に語った。舛添氏も同朝、国会内で「(鳩山氏が)すぐ離党したのでびっくりした。私はあらゆる可能性にオープン。新党は手段であって、本末転倒になってはならない」と語った。舛添氏は15日夜に鳩山氏から電話で離党の報告を受けたが、新党への誘いはなかったという。


URL:http://www.asahi.com/politics/update/0316/TKY201003160134.html?ref=rss



画像「政策が基本」舛添氏、鳩山新党と一線画す

 自民党の舛添要一・前厚生労働相は17日、「政治家にとって、政策は基本だ。新党を作るとか、誰と組むとかを先にやるからおかしくなる」と述べ、鳩山邦夫・元総務相が目指す新党結成の動きとは一線を画す考えを示した。党本部で記者団に語った。

 これに先立ち開かれた、舛添氏が会長を務める「経済戦略研究会」の会合では、山本一太参院議員らから「鳩山氏から秋波を送られて、あたかも応えているような印象(を与えること)は避けてほしい」と、鳩山氏と連携しないと明示するよう求める意見が出た。

 また、小池百合子・元防衛相はツイッター(簡易投稿サイト)で、鳩山氏から先月、新党参加の誘いがあったが、断ったことを明らかにした。

 一方、与謝野馨・元財務相を中心とする「正しいことを考え実行する会」は同日、党本部で会合を開き、大島幹事長ら党幹部の刷新を谷垣総裁に求めることで一致した。

(2010年3月17日19時25分 読売新聞)

URL:http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20100317-OYT1T00866.htm



画像鳩山邦氏、新党参加者の確保難航 与謝野氏は会談見送り

 自民党に離党届を出した鳩山邦夫氏は16日、参院選前の新党結成に向けて同調者を募り始めた。自民党執行部と距離を置く勢力の結集に力を入れる構えだが、実兄の鳩山由紀夫首相と同様に実母から巨額の資金提供を受けていた邦夫氏への批判は強い。政党要件を満たす国会議員5人の参加にめどは立っていないもようだ。

 鳩山氏は同日午後の衆院本会議場で、自民党の与謝野馨氏や無所属の平沼赳夫氏らと短時間、言葉を交わした。その後は都内の事務所で側近の河井克行衆院議員と対応を協議した。(07:00)

URL:http://www.nikkei.co.jp/news/seiji/20100317ATFS1602J16032010.html



画像第3極狙う「邦夫新党」、同調の動き不透明

 鳩山邦夫・元総務相が自民党を離党し、新党に向けて踏み出した。

 民主、自民両党に不満を持つ有権者の受け皿を目指すが、課題は少なくない。

 ◆坂本龍馬になる◆

 「縁の下の力持ちでいい。できるだけいいメンバーを引きつけることができる坂本龍馬のような接着剤的なことができたら本望だ」

 鳩山氏は15日夜、幕末に「薩長同盟」を実現させた坂本龍馬になぞらえ、新たな政治勢力結集にかける意気込みを語った。

 邦夫新党の狙いは、自民党でも民主党でもない第3極の政治勢力の結集だ。

 鳩山内閣の支持率は下降する一方、自民党も低迷を脱せず、そういう中で政界には閉塞(へいそく)感が高まっている。みんなの党が支持を集めつつあるのも、民主党批判層の受け皿になっているためで、邦夫氏が視線を送るのもこの層だ。

 ただ、邦夫氏に誤算もあった。当初は与謝野氏らと離党する青写真を描いていたが、前日の民放番組で、新党結成の時期まで踏み込んだことで、1人で離党せざるをえなくなった。邦夫氏は離党届を提出する前に、与謝野氏に電話で「テレビで新党の話をした。先に出る」と伝えた。

 邦夫氏は15日、政党助成法で定める政党要件を満たす国会議員5人の参加のメドは立っていると主張した。

 自民党内では、邦夫氏の秘書出身の岩屋毅、古川禎久両衆院議員のほか、田村憲久、河井克行両衆院議員らが、邦夫氏に近いとされている。しかし、今のところ、邦夫氏に同調すると明言した議員はいない。

 そのうちの一人は、「今、この瞬間に離党ということはない。ただ、まったく新しい自民党を作る必要はある」と述べた。岩屋氏は「(離党は)ない。来いと言われたこともない」と語った。党内では、「邦夫氏の離党は、見切り発車だ」との見方が出ている。

 ◆一定の信頼関係◆

 邦夫氏が党内の連携相手と考えているのは、与謝野馨・元財務相と、舛添要一・前厚生労働相だ。特に、与謝野氏とは密接に意見交換を重ねてきており、一定の信頼関係がある。

 与謝野氏に近い園田博之・元官房副長官はこの日、幹事長代理を辞任した後、記者団に「(新党の)第1段階として(辞任を)やったわけではない」と述べ、即座に離党する考えはないとした。

 一方、邦夫氏が繰り返し秋波を送っている舛添氏は慎重な態度を崩していない。

 舛添氏は15日、「鳩山氏であれ、だれであれ、時間の許す限り意見交換したい」としながらも、「今は予算委員会で体が空かない。何も具体的な話はない」と述べた。舛添氏は、党内にとどまってポスト谷垣に就く選択肢と、新党結成との両にらみの戦略と見られる。自民党の中堅・若手には、「舛添人気」への期待も強い。舛添氏は周辺に「もう少し状況を見極める」と漏らしている。

 消費税率引き上げも含めた財政再建に力点を置く与謝野氏と、成長戦略を重視する舛添氏とは経済政策を巡る考えが一致していない。邦夫氏は与謝野、舛添両氏の仲を取り持ちたい考えだが、成否は不透明だ。

 邦夫氏は、無所属グループを率いる平沼赳夫・元経済産業相らとの連携も模索すると見られる。平沼氏は15日夜、記者団に「新しい保守の政党を作らなければいけない、と思っているから可能性としては(連携を)否定はしない」と話した。

 ◆資金提供の影◆

 邦夫氏の新党に不透明感がぬぐえないのは、兄の鳩山首相とともに母から巨額の資金提供を受けていた問題が党内に影を落としているからだ。

 若手議員の一人は「首相への資金提供を脱税だと追及しているのに、同じ問題を抱える邦夫氏についていけるわけがない」と述べた。邦夫氏は政界有数の資産家として知られるが、閣僚経験者の一人も「鳩山マネーをあてにして、ついていく人がどれだけいるのか」と冷ややかに語った。

(2010年3月16日06時22分 読売新聞)

URL:http://www.yomiuri.co.jp/feature/20100105-807334/news/20100316-OYT1T00119.htm

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