宮崎口蹄疫非常事態宣言とメディアリテラシー


「ずーっと私がそれを言わなかったのは、言及してこなかったのは、現場の発生農家とか農家さんたちの気持ちがわかるからですよ。軽々に私が全頭処分って言ったら皆パニックになりますよ。だから、それは最後まで言っちゃいけないことなんですよ。私はそう理解しているんですよ」
東国原英夫・宮崎県知事 於:5/18 口蹄疫非常事態宣言記者会見

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宮崎県の東国原英夫知事は18日、拡大の一途を辿る口蹄疫に対して非常事態宣言を発表した。とうとう、赤松口蹄疫は非常事態宣言を出させるまでに拡大した。とんでもない事態。

被害の中心地のひとつである川南町は、畜産農場へ続く道が封鎖され、幹線道路に検問所が設けられている。石灰は大量にまかれ、通行する車は消毒液の散布を受けなければならない状況になっている。

非常事態宣言が出た18日の夕方、川南町の夕の地元商店街は人影がまばらで「ゴーストタウン」のような静けさだったそうだ。

だけど、今は兎に角、感染拡大を防ぎ、被害を極力抑えることが第一。

非常事態宣言発表の記者会見上で、東国原知事と一部の新聞社との間で、激しい応酬があったようだ。それについて、まず2、3の記事をみてみたい。以下に引用する。

○ 読売新聞(5/18付)

東国原知事、声荒らげ「ケンカ売っているのは…」

口蹄疫の感染拡大を受け、宮崎県の東国原英夫知事は18日、非常事態宣言を発表。

 「我々は毎日寝ずに話している。(マスコミは)対応が甘かったとか、防疫措置がどうかとかいうが、一生懸命やっている」と時折涙を浮かべ、いら立ちをあらわにした。

 記者会見で、今後の防疫について方法や時期を重ねて問われた知事は、顔を紅潮させて「帰ります。ケンカを売っているのはそっちだ」と声を荒らげ、席を立つ場面も。再び席に戻り、その後の質問に「封じ込めに失敗したとは思っていない。感染源は多岐にわたり、完璧(かんぺき)なディフェンス(防御)はできない」と強調した。

 非常事態宣言では、畜産関係者に対し不要不急の外出自粛や消毒の徹底を要請。全県民に対しても公共施設での消毒徹底や、不特定多数の人が集まるイベントの自粛などを求めている。

(2010年5月18日21時58分 読売新聞)




○読売新聞(5/19付)

東国原知事 記者会見で涙、いら立ちもあらわに

 口蹄疫の感染拡大を受け、宮崎県の東国原英夫知事は18日、非常事態宣言を発表。「我々は毎日寝ずに話している。(マスコミは)対応が甘かったとか、防疫措置がどうかとかいうが、一生懸命やっている」と時折涙を浮かべ、いら立ちをあらわにした。

 記者会見で、今後の防疫について方法や時期を重ねて問われた知事は、顔を紅潮させて「帰ります。ケンカを売っているのはそっちだ」と声を荒らげ、席を立つ場面も。再び席に戻り、その後の質問に「封じ込めに失敗したとは思っていない。感染源は多岐にわたり、完璧(かんぺき)なディフェンス(防御)はできない」と強調した。

 非常事態宣言では、畜産関係者に対し不要不急の外出自粛や消毒の徹底を要請。全県民に対しても公共施設での消毒徹底や、不特定多数の人が集まるイベントの自粛などを求めている。

(2010年5月19日 読売新聞)

URL:http://kyushu.yomiuri.co.jp/news/national/20100519-OYS1T00202.htm
※5/18と5/19の記事で内容が同じで見出しだけ差し替えていることに注目



○産経新聞

東国原知事「寝てない!けんか売ってんのか!」 大荒れ記者会見 2010.5.18 13:42

 感染拡大が続く口蹄(こうてい)疫に対し18日、非常事態宣言を発した宮崎県。「このままでは県の畜産が壊滅する」と宣言では危機感を鮮明に出した。一方、会見した東国原英夫知事は、連日の拡大防止などへの対応に疲労困憊(こんぱい)の様子。今後の対応を迫る報道陣に対し、「けんかを売ってるのか」と声を荒らげ、退席しようとする一幕もあった。

 非常事態宣言は「懸命の防疫措置を講じてきたが、拡大が止まらない」として、消毒を徹底することや県民に対し不要不急の外出を控えることを記した。

 会見で東国原知事は、殺処分かワクチン接種かなど今後の防疫体制について「検討します」との言葉を繰り返した。

 しかし記者から、知事の判断ではないかと問われると、徐々にヒートアップ。最後には「我々は一生懸命やっているんです。毎日寝ずに」と怒鳴り、机をがんと叩いて「以上です」と会見を打ち切ろうとした。

 制止する報道陣に対し、「けんか売ってるのはそっちだ」と声を張り上げたが、職員らに促されて再び、会見の席に着いた。

 国の支援策などについて聞かれると、ようやく落ち着きをみせ、最後には「速やかに一歩踏み込んだ対策を出したい」と話した。




○産経スポーツ

東国原知事ブチッ「けんか売ってんのか!」 2010.5.19 05:03

 感染拡大が続く口蹄疫に対し18日、会見で「このままでは県の畜産が壊滅する」と非常事態宣言を発した宮崎県の東国原英夫知事(52)が会見途中でブチ切れた。

 東国原知事は、今後の防疫体制について「検討します」との言葉を繰り返した。記者から、知事の判断ではないかと問われると、徐々にヒートアップ。最後には「我々は一生懸命やっているんです! 毎日寝ずに!!」と怒鳴り、机をがんと叩いて「以上です」と会見を打ち切ろうとした。制止する報道陣に対し「けんか売ってるのはそっちだ!!」と声を張り上げた。

 まるで2000年7月4日、大阪を中心に起きた雪印の集団食中毒事件を巡り会見した当時の石川哲郎社長がエレベーターに乗り込む際、詰め寄る記者団に「私は寝てないんだよ」と言い放ち、2日後に辞任に追い込まれた“光景”を思い出させるシーンだ。

 東国原知事は職員らに促されて再び会見の席に着き、最後には「速やかに一歩踏み込んだ対策を出したい」と落ち着きを取り戻して話したが、連日の拡大防止などへの対応に追われているのは分かるが、あまりに大人げない対応だった。

 非常事態宣言では、発生地域内では一般住民にも不要の外出は控えることを要請。発生地域外でも多くの人が集まるイベントや大会は「可能な限り延期すること」とした。ただ、宣言は法律に基づくものではなく「お願いレベルの段階」(東国原知事)という。


と、まぁ、このように報道されているのだけれど、実際の会見の様子は以下の動画を参照されたい。

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これらを見て、色々な印象があるとは思うけれど、こうして実際の動画を見た上で、各社の報道をみると、どこまでが事実で、どこからが記者(新聞社)の主観なのかよく分かる。

まぁ、普通、スポーツ紙なんかは刺激的な記事を書いたりするものだけれど、こうして比較するとさもありなんと思わせる。

売り上げを上げたいのは分からなくもないけれど、報道の使命を忘れて、印象操作に血道をあげるのであれば、CIAなりなんなりの情報機関になればよく、何も報道機関である必要はない。

さて、本題に入る前に、非常事態宣言について、その定義を確認したい。WikiPediaではこう説明されている。

非常事態宣言(ひじょうじたいせんげん)は、国家の運営が何らかの理由により破綻の危機に瀕したことに対し、平時から制定されている、緊急事態における特別法を発動すること。かかる特別法は往々にして一般法の諸原則を覆す効力を有することが多く、法に則らない統治と思われがちであるが、緊急事態法というべき特別法もしくは条項に則った統治であり、法に則らない訳ではない。しかし、かかる法は行政権の恣意を許すことが多くあり、「法の支配」とは呼べない。

《中略》

日本における運用 [編集]
日本の現行法には非常事態宣言が規定されておらず、占領期にGHQによって発令されたことがあるのみである(阪神教育事件)。そのため有事法制の議論の中でその必要性を唱える意見もある。

また今日の日本では地方自治体によってしばしば「交通死亡事故多発非常事態宣言」、「ごみ非常事態宣言」などが出されている。これは上記の非常事態宣言とはまったく異なり、特別法が発動されるものではない。


と、まぁ、世界標準で非常事態宣言というと、平時とは異なる特別措置法が適用される状態で、ほとんど戒厳令みたいなもの。だけど、日本では、そういう意味合いで使われるわけでもないようだ。

ただ、それでも個人の自由がある程度制約される事態であることには変わりない。

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次に今回の宮崎口蹄疫についての非常事態宣言の内容をみてみたい。非常事態宣言は、宮崎県庁HPに掲載されているけれど、以下に引用する。

「口蹄疫」非常事態宣言 平成22年5月18日 宮崎県口蹄疫防疫対策本部 本部長 東国原 英夫

 宮崎県内における「口蹄疫」発生に対し、これまで、国、県、市町村、農業団体等が一丸となり、懸命の防疫措置を講じてきたが、いまだ、その拡大を止めることができない状況にある。
 このままでは、本県畜産が壊滅することはもちろん、隣県、九州、さらには全国にも感染が拡大する可能性を否定できない事態となっている。
 このため、ここに非常事態宣言を発し、県内のあらゆる機関、団体、個人が一丸となって感染拡大を阻止し、口蹄疫を早期に撲滅するため、下記の対策を可及的速やかに実施することとする。
 なお、今回の措置は、口蹄疫は人に発症することはないものの、人を介して偶蹄類に伝播することがあり得ることを前提にしたものであることを理解いただきたい。
 本措置は、県民生活に多大な影響を及ぼすものであるため、県民すべての皆様に、この事態の深刻さを受け止めていただき、十分な御理解と御協力をいただくことを切にお願いする。

第1 疑似患畜の発生地域(発生市町村及びその周辺地域)における感染防止措置の徹底的な強化
(1)畜産農家において徹底をお願いしたいこと
市町村の内外を問わず、不要不急の外出を極力控えること。特に他の畜産農家との接触は絶対に避けること。
家畜、畜舎、えさ、車両の内外の消毒及び踏込消毒槽の設置等感染防止のために必要な対策を徹底して実施すること。
畜舎への出入りは極力控え、出入りする場合は、マスクを着用するとともに、その前後において手足の洗浄(例えば、身近な消毒方法として、食酢(3~5%)を10倍以内に希釈したものも有効)、うがい等を励行すること。
(2)畜産農家以外の方々にお願いしたいこと
不要不急の外出は控えること、特に畜産農家への訪問は差し控えること。
一般車両を含め車で移動する場合は、必ず管内の消毒ポイントで消毒を受けること。
イベント、大会、集会等は、当面の期間延期すること。やむを得ず開催する場合は、出入り口での消毒など防疫措置を徹底すること。




第2 発生地域外における感染防止対策
(1)畜産農家において行うべきこと
家畜、畜舎、えさ等の消毒を徹底すること。
発生地域への出入りは自粛すること。特に畜産農家との接触は絶対避けること。
発生地域外においても畜産農家同士の交流は極力自粛すること。
(2)畜産農家以外の方々にお願いしたいこと
一般車両を含め車で移動する場合は、消毒ポイントにおいて消毒を受けること。
多くの人が集まるイベント、大会等は、可能な限り延期すること。実施する場合には出入口での消毒など防疫措置を徹底すること。




第3 共通事項
(1)公共施設等における消毒の徹底
公共施設、小売店舗、学校など人が集まる場所では消毒マット等の方法により消毒を徹底すること。

(2)家庭等における留意事項
家庭における手足の洗浄、うがい等を励行すること。


と、同宣言では、次の3つの対策を打ち出している。

 1.疑似患畜の発生地域(発生市町村及びその周辺地域)における感染防止措置の徹底的な強化。
 2.発生地域外における感染防止対策。
 3.共通事項として、公共施設などでの消毒の徹底、家庭における手足の洗浄、うがいの励行など


これは、宮崎県に対する非常事態宣言ではあるのだけど、非常事態宣言はこれ以上被害を拡大させないために出されるものだから、当然他県から宮崎に来た人達にも適用されるし、予防措置として宮崎以外でも行なわれてしかるべきもの。

特に、口蹄疫のキャリアにならないように、消毒ポイントにおいて消毒を受けることや、人が多く集まるイベントを延期もしくは参加を控えたりするようなことは徹底すべきことになる。

これらを踏まえて、非常事態宣言時の記者会見の質問と回答のポイントを整理すると以下のとおり。


・記者の質問
Q1「防疫対策一所懸命やってますけど、このまま今の方法を続けるのか、それともワクチンなのか、それとも強制処分なのか、一定地域の中で。これは検討されてますか」

Q2「ワクチン使用について、赤松大臣が大分踏み込んだ発言をされたようなんですよ。優先順位として、防疫指針の中にあげてあるワクチン使用が第一段階、次の段階としてもう視野にはいっているんでしょうか」

Q3「具体的に今どのような、検討をして、それがどういうタイミングでいつ判断なされるのかって言うことを知りたい」



・東国原知事の回答

A1「まだ決断はしておりません。検討しております。一歩踏み込んだところ。国の協力が無かったら、いいですか全頭殺処分でいくらかかるか知ってますか。慎重にやらなくちゃ。地元の対策も地元の同意も得なければいけなない。地元の人たちにね、同意をひとりずつ取っていかなくちゃいけないんですよ。査定もしていかなくちゃいけない。それに対してエネルギーだとか人員とか埋設場所だとかその予算だとかコストだとかそりゃ尋常じゃないんですよ。私独断で、はいやります、やらないですってそりゃ現場を知って、現場の人と話さなくちゃ分からないでしょ。」

A2「その入ってます。ワクチンも全頭殺処分も、強制屠畜。あるいはそれを複合してやるのか、数種類の判断がありますよね。一歩踏み込んだってのはそういうことですよ。じゃあそれをどのタイミングで、どういうふうにご地元の皆さんに理解を得ながら、予算処置をしながら、もしトラブった時の法的処置はどうするのか、裁判訴訟になったときはどうするのか。そういうところをきっちり詰めないと、前には進めないんですね。見切り発車できないんですよ。それをずっと検討しているわけですよ。でもこれは、判断にですね、地元の農家の発生農家のあるいは処分される方たちの健康な牛、いや豚をですね。殺処分しなくてはいけない。その気持を考えた時に、早々軽々にはできないんですよ」

A3「非常事態宣言で皆さんにご認識をいただくっていうのはですね、こういう状態なんだということを発生地域外の方たち、あるいは一般の方たちにも分かっていただいて、大変なことなんだと、そしたら一番最善な方法はどういうことなんだろうと。これ以上拡大を防ぐためにですね。それを皆さんの意見を聞きながら、最終的に私が判断しなければいけないわけです。地元のですね、何万件もある県内の地域でしょうけども、同意を一軒ずつとっていく。これをしなくちゃいけないですね。でも、どこまで同意をとるのか、そういったことの難しさを考えれば、全頭殺処分となったときに埋却地はどうするのか、人員はどうするのか、1日2日じゃできませんよ。その時に、どう係留しておくのか。様々な事がある。だからそれを考えながらやらなきゃいけないんです。ですからどのタイミングでというのは私はですね、現場の意見あるいは国、市町村、関係団体、農協JAさん含めてですね、考えなきゃいけないと思っています。ですからいつだとは言えません。」

記者の質問をみると、これから殺処分を続けるのか、ワクチンを使うのか、今後どのようにしていくのかに関心が集中している。

それに対して、東国原知事は、現状を調査しながら慎重に検討をしている段階なので、まだ言えない。ただ考えうる対策は皆検討している。ただ、非常事態宣言をしたのは、こういう状態であることを広く一般の人達に理解していただいて、意見を聞きながら対応することで、これ以上の拡大を防ぎたいからだ、と答えている。

東国原知事の対応は、もう宮崎だけの問題ではなくなってきたから、非常事態宣言を出して、国全体の問題として、理解を持って対応いただきたいというもの。知事としては至極尤もな発言だといえる。

だから、宮崎の非常事態宣言を、その本来の目的と、知事の意図に沿って報道するならば、非常事態宣言の内容と対策について述べ、協力を呼びかけるものでなくちゃならない。

ひらたく言えば、宮崎県庁のHPにあるような内容に近いものになるはずだということ。

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それを踏まえた上で、非常事態宣言についての他社の報道が実際どうだったかをみると、次のとおり。

○ 読売新聞

東国原知事、口蹄疫拡大で「非常事態宣言」

 口蹄疫問題で、東国原英夫・宮崎県知事は18日の定例記者会見で「ここに非常事態宣言を発し、県内のあらゆる機関、団体、個人が一丸となって感染拡大を阻止する」と述べた。

 知事は、「県民に広く危機意識をもってもらい、自衛をお願いしたい」と、畜産関係者だけでなく県民全体に、消毒などの防疫措置への協力を要請。不特定多数の人が集まるイベントなどの開催も当分自粛するよう呼びかけた。

          ◇

 記者会見では、東国原知事が口蹄疫の防疫対策をめぐり、一部報道機関と激しく応酬する一幕もあった。

(2010年5月18日11時40分 読売新聞)




○ 産経新聞

【口蹄疫】宮崎県に非常事態宣言 東国原知事 2010.5.18 12:14

 宮崎県の東国原英夫知事は18日の記者会見で、感染が拡大している口蹄(こうてい)疫について「拡大を止めることができない状況。九州や全国にも感染が拡大する可能性を否定できない」として、県として非常事態を宣言した。

 宮崎県によると、伝染病による非常事態宣言の発令は初めて。

 宣言により、県民に一層の拡大防止の協力を訴える。口蹄疫の発生している地域では、車両の消毒を畜産農家以外の一般車両にも徹底。発生していない地域でも発生地域同様に、イベントなど人が集まる機会の延期や、不要不急の外出の自粛、マスクの着用や手足の洗浄、うがいなどを呼びかける。




○ 朝日新聞

口蹄疫問題、宮崎・東国原知事が「非常事態宣言」2010年5月18日11時48分

 宮崎県で発生している口蹄疫(こうていえき)の問題で、東国原英夫知事は18日、「非常事態宣言」を出した。ただし法律などに基づくものではなく、東国原知事が独自に県民に「危機」を訴える目的という。同日の定例記者会見で知事は「懸命の防疫措置を講じてきたが、拡大を止めることができない」としたうえで、発生地域やその周辺の県民に対し「不要不急の外出は控え、感染拡大防止に協力願いたい」「消毒の徹底を」などと呼びかけた。




○ 毎日新聞

口蹄疫:東国原知事、宮崎県内に非常事態宣言

 東国原英夫知事は18日、家畜伝染病の口蹄疫問題で非常事態宣言を宮崎県内に発令した。知事は会見し「このままでは本県畜産の壊滅はもちろん、隣県や九州、さらには全国にも感染が拡大する可能性を否定できない」と理解を求めた。

 非常事態宣言では、畜産農家には不要不急の外出を控え、一般県民にも農家訪問の遠慮や車の消毒、各種イベントの延期を求めた。口蹄疫ウイルスは人には感染しないが、人を介して偶蹄(ぐうてい)類に広がる可能性があるためだ。今回の非常事態宣言は法的根拠に基づくものではなく、協力依頼に当たる。


宮崎県庁のHPで出している3つの対策を全部載せたところはほぼ皆無。(産経新聞の報道が、唯一それに近い)

畜産関係者に対し不要不急の外出自粛や消毒の徹底を要請。全県民に対しても公共施設での消毒徹底や、不特定多数の人が集まるイベントの自粛などを求めている。」などと書いているけれど、これでどれだけ分かるのか。肝心要の情報は2~3行しかない。

こんな記事では他県の人にとっては、何がなにやら現場の深刻さは伝わらない。ふーん、よくわかんないけど、大変そうだね、くらいにしか思わないだろう。

これらの記事には、非常事態宣言とその対策について記載している宮崎県庁のHPのアドレスすら載っていない。だから、非常事態宣言の報道としては、不足に過ぎる。

そして、この非常事態宣言の記事と同じかそれ以上の分量でもって、先ほどの「ブチきれ会見」の記事を出している。確かに「ブチ切れ」を見出しに使えば、それはそれ刺激的だから、多少は新聞の売り上げに貢献するかもしれない。だけどそれはまぁ、はっきり言って、そこらのスポーツ紙と変わらないレベルの記事。

肝心要の情報は、ほんの2~3行で、それ以外はスポーツ紙並みの記事を載せている。一体、読者に何を報道したいのか。

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それにひきかえ、東国原知事のブログでは、簡潔にきちんと非常事態宣言について述べている。以下に引用する。

2010-05-18  非常事態宣言

 本県における「口蹄疫」発生に対し、これまで、発生農場や農業関係者は勿論、国・県・市町村・農業団体等が一丸となって懸命の防疫措置を講じて来ましたが、いまだにその拡大が止まりません、

 このため、ここに県内全域に非常事態宣言を発することに致しました。

 口蹄疫感染拡大を阻止し、一日も早く、撲滅・終息できますよう、県民の皆様並びに県内のあらゆる機関・団体・企業・組織の方々に、一層のご理解・ご協力をお願いするものであります。

 ※不要不急の外出は控えること、

 ※家畜・畜舎・えさ・車両等の消毒、

 ※畜舎等への出入りは極力控え、出入りする場合はマスク等を着用すること

 ※畜産農家への訪問・接触は差し控えること、

 ※イベント・大会・集会等は当面延期すること。やむを得ず開催する場合は、出入り口等で消毒など防疫措置を徹底すること

 ※一般車両を含め、車で移動する場合は、消毒ポイントにて消毒を受けること

 ※家庭における手足の洗浄、うがい等を励行すること

 ※公共施設・小売店舗・学校など人が集まる場所では消毒マット等の方法により消毒を徹底すること

  等々、お願い申し上げます。

 詳しくは、県のHPを参照頂けたらと思います。

  本日までに新たな確認15例、殺処分対象牛豚合わせて28,454頭。場所は、川南町・高鍋町・新富町。これまでの累計126例、殺処分対象114,177頭。


これだけ簡潔に書いていても、必要な情報は網羅されている。だから、非常事態宣言の報道に関しては、大手マスコミは東国原知事のブログの足元にさえ及ばない。

メディアリテラシーの重要性については、最近とみに言われることだけれど、こうしたところから既にコントロールが始まっていることは、知っておく必要があると思う。

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画像口蹄疫「わが子を殺され…」伝説の種牛育てた農家も悲鳴 配信元:2010/05/19 11:25更新

 殺処分の対象となる牛や豚が11万頭を超え、感染拡大が止まらない口蹄(こうてい)疫。非常事態宣言を出した宮崎県では白い防護服姿の担当者が消毒する姿があちらこちらで見られ、災害派遣の自衛隊車両が行き交うなど、東国原英夫知事が訴えたように「激甚災害」の様相を呈していた。4月20日に初確認されてから約1カ月。畜産農家は「もう手遅れ。廃業しかない」と悲痛な叫びを上げた。(天野健作)

 ■ゴーストタウン

 被害の大半、約10万頭が殺処分の対象になっている川南町。畜産農場へ続く道が封鎖されているだけでなく、幹線道路でも検問所が設けられ、通行する車は消毒液の散布を受けなければならない。また石灰が大量にまかれているため、のどがいがらっぽくなる。

 「不要不急の外出は避けるように」との非常事態宣言が出た18日夕の地元商店街は人影がまばら。まるで「ゴーストタウン」のような静けさだった。

 電話取材に応じた養豚家の50代女性は約1千頭の豚を飼育。「子豚たちがどんどん死んでいく。鳴く声を聞いてられない。もうどうなるのだろうか」とうろたえる。殺処分の日程が決まらないため、「ウイルスを培養しているようなものだ」と嘆いた。

 ■全国に愛された伝説の種牛

 全国の畜産農家にとって最も痛手だったのが、22万頭の子牛を生み出した種牛「安平(やすひら)」を失ったこと。すでに現役を引退し、余生を過ごしていたが、先月12日の21歳の誕生日にはケーキまで用意して祝うほど愛されていた。

 安平を約1年間飼育していた宮崎市佐土原町の畜産農家、永野正純さん(61)は「あんな牛に巡り合えたのは幸せだった」と声を詰まらせる。殺処分については「自分の子供と同じだから…。それ以上言わなくても分かるでしょ?」と言葉少なだった。

 ■仕事といえど無念、国の対応遅い

 殺処分をする担当者もやり切れない思いだ。作業を終えて川南町役場戻った県の職員(50)は「きょうは300頭ぐらい殺した」と語った。

 この職員によると、殺処分は牛や豚の首にロープをかけて押さえ込んだ上で、獣医が首筋に静脈注射を打つ。約800キロの牛も1分間もすれば倒れ込むという。「いくら仕事といわれてもつらい…」。職員はつぶやいた。

 地元では国の対策の遅れへの非難が強い。

 新富町の土屋良文町長は18日、山田正彦農水副大臣らの役場訪問を受け「新富で感染を食い止めたい」と消毒の徹底を要望したが、「歯がゆい思い。国がもっと早く現場を見て行動してくれていたら」と記者に打ち明けた。

URL:http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/natnews/medical/392879/

この記事へのコメント

  • とおる

    似たような報道が、小泉進次郎議員が質問していて、採決された時に、民主党の女性議員が倒れた事を何度もニュースで報道しても、
    ・自民党政権の時は「強行採決」だと批判してきたマスコミが、同じように騒がなかった。
    ・「強行採決」された法案の中身を、ほぼ報道せず。
    分かり易い偏向報道です。
    2015年08月10日 16:48
  • tamagawa3

    こういう映像も。
    これが報道映像であることに疑問。どうみても後ろのお嬢さんの足をずっと狙っている映像にしか見えない。メディアとカメラマンのモラルを疑う。
    2015年08月10日 16:48

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