
5/9の日経新聞に「軽すぎた約束」という記事があった。その冒頭部分が、日本の財政状況を家計に例えたものなのだけど、それについて少し・・・
まずは、その件の記事を引用する。
「軽すぎた約束」袋小路の政権公約(1)財源なき夢物語―現実直視か放漫加速か。2010/05/09日本経済新聞朝刊
約束は守るもの、果たすもの。無理なだけの約束は禍根を残す。民主党政権8カ月。マニフェスト(政権公約)に、設計と見通しの甘さがにじむ。夏の参院選への公約づくりは、現実を見つめ直す好機となる。
――我が家の借金総額はもうすぐ1千万円になる。今年の収入が46万円から37万円に減った一方で、借金は33万円から44万円に膨らんだ。みんなの人気をとろうとしたのか、父が「小遣いを4年間で17万円増やす」と宣言した。
家族の不安をよそに「1割くらいすぐ節約できる」と皮算用。「来年も小遣いが増えるぞ」と無邪気な父をみて、誰ともなく「稼ぎより借金が多いなんて。先のこと、考えてるのか……」との声が出る。
甘い帳尻合わせ
借金してまで小遣いを増やす家計などあり得ない。だが「万」を「兆」に変えれば日本の現実だ。
《以下略》
軽く読み流してしまうと、この部分で、何か物凄く大変な事態が起こっているようにも思えるのだけれど、一部書き直すだけで、実は大分文脈が変わると思われる。
この記事冒頭部分の借金について、借り手、貸し手は誰なのかに注意しながら、筆者なりに書き直してみると次のようになる。
――我が家の父の借金総額はもうすぐ1千万円になる。今年の収入が46万円から37万円に減った一方で、借金は33万円から44万円に膨らんだ。借金は全部妻からのもの。父の借金は額面こそ1千万円だが、貸しているのが妻なので、一家の家計で見ればプラスマイナスゼロ。
やり繰り上手の妻は、主人の陰で、在宅ビジネスで大当たり。僅か数年で1400万円以上稼いだ。しかし妻は根っからの貧乏性で、稼いだお金を溜めこむばかりで、全然使わない。
それをみていた父は妻から毎年少しずつ借りては、畑を耕し野菜を栽培をしている。特に去年あたりから、妻の在宅ビジネスも不調になり、あまり稼げなくなっていた。
見かねた父は畑を増やそうと大目に妻からお金を借りて新しい土地耕やしていたのだが、何を思ったか、今年から、食事を減らせば、小遣いが増やせるぞ、と言いだした。そして、朝食はご飯を半分にしようだの、味噌汁を無しにしようだの、どんどん食事の品目を減らしていく。
それじゃ栄養が偏るわとの妻の不安をよそに、「食事を1割減らすなんてすぐできる」と皮算用。「来年も小遣いが増えるぞ」と無邪気な父をみて、誰ともなく「蛸が自分の足を食べても、小遣いは増えないよ。何を考えてるのか……」との声が出る。
甘い帳尻合わせ
食事を減らして小遣いを増やす家計など意味がない。だが「万」を「兆」に変えれば日本の現実だ。
この日経の記事は、日本の国家財政を家計に例えているのだけれど、誰が何処から借りているのか、という視点が曖昧だと、誤解を招く恐れがある。
国債発行の殆ど全てが、国内で消化されている現状を踏まえると、父が妻のへそくりを借りている形になる。それを一家の家計としてみた場合、破綻してると言えるのかそうでないのか、ということ。
まぁ、へそくりが尽きたら、どうなのかという問題はあることはあるけれど、いまのところはまだ、へそくりは残ってる。
それよりも、毎日の食事を減らして、小遣いを増やす、というやり方のほうがよっぽど気になる。増えた小遣いを何に使うか分からないけれど、食事を減らして小遣いが増えても、病気になったら元も子もない。少しばかり増えた小遣いよりも、病気の治療費のほうがうんと掛かるのが普通。
やはり、食事はきちんと取って、へそくりがあるうちに畑を耕して、収穫を増やして安定供給に持っていくのが良いと思う。
もしも、貴方がこの家族の一員だったとしたら、父に何と助言しますか?


約束は守るもの、果たすもの。無理なだけの約束は禍根を残す。民主党政権8カ月。マニフェスト(政権公約)に、設計と見通しの甘さがにじむ。夏の参院選への公約づくりは、現実を見つめ直す好機となる。
――我が家の借金総額はもうすぐ1千万円になる。今年の収入が46万円から37万円に減った一方で、借金は33万円から44万円に膨らんだ。みんなの人気をとろうとしたのか、父が「小遣いを4年間で17万円増やす」と宣言した。
家族の不安をよそに「1割くらいすぐ節約できる」と皮算用。「来年も小遣いが増えるぞ」と無邪気な父をみて、誰ともなく「稼ぎより借金が多いなんて。先のこと、考えてるのか……」との声が出る。
甘い帳尻合わせ
借金してまで小遣いを増やす家計などあり得ない。だが「万」を「兆」に変えれば日本の現実だ。
「国民の生活が第一」。そんな看板を掲げた民主党。マニフェストは実施する政策と時期、財源を明示して政権選択をしやすくする手法。民主党が取り入れたやり方は新鮮だった。
しかしつまずいた。一因は実現困難な設計にある。公約は4年間で「16・8兆円」の新規政策を約束している。2011年度は子ども手当倍増や農家への所得補償など5・5兆円の政策を実行に移すという。野党時代に広げたままの大風呂敷が、財源不足という現実から遊離しているのだ。
当時、政調会長だった直嶋正行経済産業相は「箱の中のリンゴをすべて外に出して新鮮なリンゴを入れる」と話した。従来の予算を削り新たな政策の財源に充てるという意味だ。ところが10年度予算で約束通り削ったのは公共事業だけ。
事業仕分け第1弾で生み出した財源は1回限りの返納金を含めて2兆円弱。一方で与党議員らは族議員と化して予算獲得に走り、人件費や補助金は削るどころか膨らんだ。古いリンゴはそのまま、箱は前より大きくなった。「予算の組み替えで巨額の財源を生み出すというのは夢物語だった」。公約の担当者が言う。
政権が描いた甘い帳尻合わせ。高齢化で社会保障費は放っておいても膨らむ。特別会計の埋蔵金は使えばなくなる。11年度予算では少なく見積もっても10兆円の新たな財源が要る。
かつて年金財源へ消費税3%上げを掲げた民主党。06年、代表に就いた小沢一郎現幹事長は「財源なんてなんぼでもある」とし、07年参院選で増税論にフタをした。以来、年金制度にも財源の説明が付かない。
格付け会社フィッチ・レーティングスはリポートで「日本国債の信用が中期的に低下するリスクがある」と警告した。市場は問う。日本に財源を増やす政策はあるのか。財政は持続可能なのか。奔放に支出を膨らませたギリシャは、戦略も青写真もない強制的な増税に追い込まれる。
小沢氏がクギ
フランスのミッテラン元大統領は就任後、企業の国有化や社会保障の拡充などの政策に着手した。財政赤字とインフレを受け翌年には政策を転換。経済は安定し、14年間政権を担った。マニフェスト発祥国の英国にも、実態をみつめながら修正を重ねる伝統がある。
公約と財源問題。一部の与党議員が議員会館の一室に集まったのは4月半ば。「恒久財源がないのに子ども手当の満額支給なんてムリだ」「埋蔵金だってあてにできない」。ほころびは明らかだ。「正直に国民に説明し、謝るしかない」。ただし一体、いつ、誰が。
同じころ、小沢幹事長は参院選公約を担当する細野豪志副幹事長らにくぎを刺した。「マニフェストは変えちゃダメだからな」。一徹ぶりが信頼を呼ぶとは限らない。直すべきは直し、国の未来を描いてほしい。(関連記事3面に)
URL:http://y-sonoda.asablo.jp/blog/2010/05/09/5074927
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こたつがめ