「最小不幸」と「強い経済」は両立しない

 
「不幸の最小化こそ、政治権力を使ってやるべき仕事だ」
菅首相 於:6/20 町田市街頭演説

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もし、政府が本当に「最小不幸社会」なるものを目指したとしても、それは、必ず国が面倒を見ることにならざるを得ない。民間企業で出来ることじゃない。

なぜなら、「最小不幸」というものを最小格差に置き換えた場合、その実現は、究極的には同一賃金化を意味する事になるから。

企業は利潤の最大化を目指して営利活動を行うのだけれど、どんなに利益を上げても、どんなに業績に貢献した社員がいたとしても、賃金が同じなのであれば、従業員の士気は上がらず、やがてその企業の生産性は落ち、倒産してゆくことになる。

それは、とうの昔に社会主義国、共産主義国で失敗した歴史を辿れば明らか。

だから、「最小不幸社会=最小格差社会」を実現するためには、国が税金を取って、それを再配分することでしか為し得ない。

どの程度まで格差が無くなることをもって、「最小不幸」と定義するかにもよるのだけれど、格差を限りなくゼロにするためには、金持ちからはうんと税金を取って、貧乏人に配る政策を取ることになる。その行きつく先は、超重税国家。

冒頭で引用したように菅@けものへん殿は、最小不幸社会は、政治権力を使ってやるべき、なんて言ってるから、もうやる気満々。

麻生元総理は、菅@けものへん内閣をして、本格的左翼政権の誕生だと言っているけれど、そのとおり。どんな綺麗事を言っても、左翼政権ではこうなると思った方がいい。



菅@けものへん殿は、また、第3の道として、強い経済、強い財政、強い社会保障の一体的実現を新内閣の方針とするとしているけれど、この方針は、菅@けものへん殿自らが力説する「最小不幸社会」と真っ向から対立する。

まぁ、何を持って「強さ」と定義するのかにも依るのだけれど、強い経済にせよ、強い財政にせよ、何某かの対象を強くするためには、それを「鍛えて強くする場」が必要不可欠であることは言うまでもない。

国が税金を取って、再分配する作業は、格差を無くしたり、セーフティーネットの役目を果たすことは事実としてあるのだけれど、少なくともそこに「競争」はない。当然、経済を「鍛える場」も存在しないから、富の再配分によって、経済が弱くなることはあっても、強くなることは有り得ない。

むしろ、何もしなくてもお金がもらえる分、怠けてしまって、弱くなる方向に行く可能性のほうが大きいと言える。

国の経済が弱くなると、税収が減るから、財政政策の取り得る幅も狭くなって、財政も弱くなるし、国家財政が弱ると、社会保障も出来なくなって、これもまた弱くなる。

経済を「鍛えて強くする場」とは何かと言うと、勿論、それは市場そのもの。

市場原理に良い面があるとすれば、競争による優勝劣敗の法則が働くことで、最終的に「より強いもの」が残ってゆくということ。激しい競争の中で勝ち残ろうと努力を積み重ねる中に、強さが磨かれてゆく。

市場原理において、負けたものは市場から退場させられる運命にあるのだけど、別の面からみれば、市場は、必要で無くなったものは、即刻排除してしまうという「自動リストラシステム」だと言えなくもない。

今の政府は事業仕分けだなんだなんて、気勢を上げているけれど、民間企業は、あんな半年に一度とか年一回とか言う風な、「のんびりした」仕分けじゃなくて、年中無休24時間、市場によって仕分けされ続けている。

だから、どちらがより厳しい仕分けなのかなんて、言うまでもないのだけれど、そうであるが故に、その仕分けに生き残った者たちで構成される「経済」が強くない筈がない。

だから、強い経済、強い財政、強い社会保障を目指すのであれば、「最小不幸」なんかじゃなくて、市場原理を是とする「最大幸福」を目指さなくちゃいけないし、「最小不幸」を優先するのであれば、経済、財政、社会保障がみんな揃って弱くなることは覚悟しなくちゃいけない。

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画像「不幸の最小化」力説=菅首相

 「不幸の最小化こそ、政治権力を使ってやるべき仕事だ」。菅直人首相は20日、東京都町田市などで行った街頭演説で、就任会見の際に掲げた「最小不幸社会」について力説した。
 首相は「人の幸せにはいろいろな形があり、それを決めつけ、押しつけるのは政治のあるべき姿ではない」と強調。その上で、「最小不幸社会」について「決して消極的な意見ではない。戦争を起こさない、貧困をなくすといった不幸の最小化は、最も積極的な政治の方向性だ」と訴え、「縮み志向」「弱者切り捨て」といった野党の批判に反論した。(2010/06/20-21:49)

URL:http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2010062000345

この記事へのコメント

  • とおる

    菅首相の「最小不幸社会」を耳にして、最初に思ったのが、「北朝鮮」です。
    まあ、社会主義国とした方が良いのかもしれませんが、菅首相が、以前、北朝鮮の拉致実行犯の釈放嘆願書に署名したり、日頃の言葉を聞いていると、北朝鮮を好意的に見ているのではないかと思っていたので、「最小不幸社会」=「北朝鮮」と想像してしまった次第です。
    それにしても、「最小不幸社会」を問題にしているテレビ番組を、まだ見たことがありません。先日、BSフジ「Prime News」で質問をメールしましたが、相手にされませんでした。
    2015年08月10日 16:48

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