「最小不幸社会」は解にはならない

 
「私は国民が不幸になる要素、世界の人々が不幸になることを少なくする『最小不幸社会』を目指すとしてきた」
菅首相 於:首相就任会見


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菅@けものへん殿は6月8日の就任会見でこうのべた。

「最小不幸社会」だなんというと何やら良いことのように聞こえるけれど、「最大幸福」と「最小不幸」とでは、その行き着くところは大きく異なる。なぜかと言うと、幸福あるいは不幸というものを計測するのは、極めて難しいから。

幸福であるとか、不幸であるとかは個人の価値観・主観によって大きく変わる。

バリバリ働いて大金を稼いで幸福感を感じる人もいれば、自分の時間を大切にして、身入りは少なくても、自由な時間を楽しむことで、幸福感を感じる人もいる。

だから、幸福だの不幸だのを、他人が物差しで測るように計測するなんて、殆ど不可能だといっていい。

では、国は何を持って「幸福」だと定義し、何を持って「不幸」だと定義しようとしているのか。そして何の「不幸」を最小にすると言っているのか。

本当は、議論の前に、その定義をはっきりしておかなくちゃいけないのだけれど、少なくとも、何某かの事象に対して、第三者が「不幸」だと、ある程度、客観的に判定できるものでなければ、「不幸なるもの」を最小にすることなんてできないことは確か。

基本的に、幸福感や不幸感が個人の価値観に大きく依存している限り、それを「絶対値」として、第三者が認識することは難しい。

だから、「幸福」や「不幸」なるものは、往々にして、彼我の差である「相対差」に置き直して捉えられてしまう事が多い。相対値なら傍目にも良く分かるから。

たとえば、Aさんは高級車を持ってるけど、Bさんは持ってない、というとき、AさんとBさんとの間には、高級車という「差」があることは誰でも分かる。Aさんが高級車を持っている、という事実が「第三者からみて」幸福であるとするならば、BさんはAさんに対して「相対的に」幸福でない、すなわち不幸である、という解釈が成り立つ。

これは、第三者からみても認識でき、判定できることだから、最小不幸を実現しようとした場合、BさんにAさんと同じ高級車を与えればいい。

そうすることで、AさんとBさんの相対的な差はゼロになるから、第三者からみて計測できる、「不幸の相対値」は最小になる。

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この例では、BさんにAさんの高級車を与えることで相対差をなくしてゆく例だけれど、逆にしても同じことが成り立つ。つまりAさんから高級車を取り上げる方法もあるということ。

高級車なんて贅沢品なんだ、持っていても、毎日24時間乗っているわけでもないし、ガソリン代も掛かれば、税金だって取られる。あんな高級車は目立つし、いつか泥棒に盗まれるかもしれない。だから、車を持つことは一見、幸福そうにみえるけれど、実は不幸なことなんだよ、とかなんとか言って、Aさんから高級車を取り上げてしまう。

これでも、AさんとBさんの相対差は無くなってしまうから、この方法でも第三者からみて計測できる「不幸の相対値」は最小になる。

つまり「最小不幸社会」なんていうものは、かなりの確率で、「最小《格差》社会」にすり代わってしまう危険があるということは、押さえておくべきだと思われる。

これに対して「最大幸福」という概念には、その目指す方向に、格差を否定するものがない。各々が各々の幸福を追求して了、とする精神があるだけで、別に格差を無くせとは言っていない。

各々が各々の幸福を追求すれば、当然、極限まで幸福を極める人もいれば、そこそこの幸福を得る人も出てくるのだけれど、それは大した問題じゃない。

なぜなら、幸福の総量が増大していけば、その社会全体が底上げされるし、各々の幸福レベルも上昇するから。

たとえば、2000年前の王侯貴族が享受していた生活と今の日本の一般庶民が享受している生活との間に、どれくらいの差があるのか、又はないのかを考えてみれば良く分かる。

「成長こそが全ての解」というのは、不幸を最小にするのではなくて、幸福を最大化するからこそ「解」になる。

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画像2010/06/08 強い経済、強い財政、強い社会保障へ 菅新総理が就任会見で

 菅直人新総理は、8日午後首相官邸で就任会見し、閉塞状況にある日本を元気にするため、強い経済、強い財政、強い社会保障を一体的に進めると、新内閣の基本方針を述べた。

 菅新総理は、「私は国民が不幸になる要素、世界の人々が不幸になることを少なくする『最小不幸社会』を目指すとしてきた」と述べ、「政治は貧困、戦争をなくすことに力を尽くすべき」とまず、自らの政治哲学を披瀝した。

 また、「バブル崩壊以後の20年は閉塞感が高まり、押しつぶされそうな日本だ」と総括し、その原因は、政治のリーダーシップの欠如であり、国債発行による経済効果の乏しい公共事業を続けてきたことにあると分析した。

 これを建て直すために、強い経済、強い財政、強い社会保障の一体的実現を新内閣の方針とするとした。さらに、(1)ライフイノベーション、グリーンイノベーションによる成長、アジアの成長を国内の成長に取り込むことによって強い経済を目指すこと、(2)財政の建て直しは経済成長の前提であり財政再建を図ること、(3)社会保障によって雇用を生み出すとことと説明した。そのうえで、「この三つを統一して強くすることは必ずできると信じる」と強調した。

 外交面では、日米基軸が原則であるとしたうえで、アジアとの関係を深めること、ヨーロッパ、アフリカとも連携を進めるとした。沖縄普天間基地の問題については、日米合意に基づいて進め、同時に沖縄の負担軽減に取り組まなければならないとした。

 さらに、自らの総理としての仕事に関連して、若い人々を党役員、閣僚として起用したことに触れ、「こうした人は普通のサラリーマンの子ども。志を持ち努力すれば、政治の世界でも活躍できる。これが本来の民主主義。私の仕事は、一つの方向性を示し、議論するところは議論し、納得し、皆の力を結集すること」だと述べた。

 最後に、「日本という国のため、世界のため、より良い日本、世界をつくるため、全力を尽くす」と結んだ。

 記者の質問に答え、政と官の関係について「官僚を排除して政治家だけでモノを決めればいいということではない」として、官僚のプロとしての知識や経験を十分に生かし、一方で政治家が国民の立場をすべてに優先して決定するような、「政と官の力強い関係」を目指すとした。

 消費税に関する質問に、財政は超党派で議論すべき課題であるとの認識を示した。

 また、自らの内閣のキーワードについて、自らが山口県出身であることを踏まえ「奇兵隊内閣」と答え、奇兵隊は藩士以外の武士・庶民からも参加していたことを紹介し、自ら指名した閣僚、党役員、議員も奇兵隊同様に幅広い層の人が揃っているとして「奇兵隊のような志をもって勇猛果敢に闘ってもらいたい」と答えた。また、奇兵隊を組織した高杉晋作になぞらえ、「高杉は逃げるときも攻めるときも速い。果断な行動で明治維新を成し遂げる大きな力を発揮した」として、「今の日本は停滞を打ち破るために果断な行動が必要」と語った。

URL:http://www.dpj.or.jp/news/?num=18331

この記事へのコメント

  • sdi

    「最小不幸社会=誰も幸せになれない社会」ですね。「社会全員で全員の不幸を分かち合おう」ということでしょう。皆むが不幸になれば誰を妬むこともなくなる、というところまで逝ってしまうかどうかわかりませんが。
    最近、今の民主党の行動原理の根底にあるのは「社会主義」というイデオロギーでなく「嫉妬」「恐怖」という感情なのではないか、と思えてきました。
    2015年08月10日 16:48
  • クマのプータロー

    誰かに与える、若しくは誰かから取り上げる時点で、自民党政権より強い権力を指向すると言うことになります。
    菅は絶対神になりたいようです。
    2015年08月10日 16:48

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