少し古い話になるのだけれど、財団法人新聞通信調査会が昨年実施した「メディアに関する全国世論調査」の結果が纏められている。
これの結果をみていくと、やはり新聞離れ、特に夕刊離れが顕著。夕刊を読まない層は、2008年は46.8%だったのが、2009年では56.8%と10ポイントも上昇している。これでは、新聞各社が夕刊の廃刊を考えてもおかしくない。
だけど、この調査をもう少しみていくと面白いことが分かる。それは次の4項目。
1.新聞を読む理由
2.メディアの信頼度
3.記事の満足度
4.信頼できる記事
1.の新聞を読む理由のトップはなんと「新聞を読むのが習慣になっている」で51.6%。次が「新聞で世間の動きがだいたいわかる」で47.8%、そして、「新聞は自分が好きなときに読める」が45.6%。
一般人が、世の中の情報を効率良く知りたいと思った場合、その媒体に求められる性質には大きく2つある。一つは、広く世の中の動きを網羅して、さらにそれらの情報が簡潔に「纏まっている」こと。
もうひとつは、その媒体が持ち運びやすく、また、使用者の都合に合わせて好きな時に好きなだけ使える様になっていること。利便性が高いこと。
こうした観点からみれば、新聞、特に全国紙はこれらの要素を大枠で満たしているように思われる。
全国紙ともなれば、その名のとおり、世の中全般の話題を扱わないといけないし、それが求められるもの。全国一律に販売されるのだから当たり前。
もしも、北海道の話ばっかり載っている全国紙(この時点でもう全国紙とは呼べないけれど)があったとしたら、その新聞は北海道で売れたとしても、その他の地方ではさっぱり売れないだろう。
また、そうした多くの情報を限られた紙面に押し込まないといけないから、必然的に記事は簡潔に纏まらざるをえない。
次に利便性についてだけど、これは改めて言う必要もないくらい。文字情報の持つ利点については「ネットにおけるコミュニケーションについて」「指向性と置換性」のエントリーでも触れているけれど、文字情報には、情報を圧縮して、小さく畳めてしまう利点があるから、多少の情報の劣化があるにせよ、利便性という意味では非常に優れている。
だから、新聞を読む理由として、「世間の動きがだいたいわかる」とか、「好きなときに読める」とかが上位にくるのは非常に納得できる結果。
だけど、新聞を読む理由のトップはそれらではなくて、「習慣になっているから」というのが1位。
確かに習慣になっているから続けるというのが理由にあがること自体は否定しない。習慣の力は凄いもので、たとえばスポーツでも勉強でも、「習慣化」することで、「特に意識することなく」いつの間にか、体が強くなったり、豊富な知識が身についたりする。
だけど、注意しないといけないのは、この「特に意識することなく」ということそのものにある。それは、新聞を毎日、「意識することなく」習慣で読むということは、その内容をいつしか無批判で受け入れてしまっている可能性があるということ。
その無批判で受け入れている情報がいつも正しければそれでもいいかもしれないけれど、そうでなかった場合には大変なことになる。
勿論、新聞はいつも「批判的に読むこと」を習慣にしている人はその限りではないことはそのとおり。
だけど、批判的に読むことを常にしている人、すなわち、新聞を批判的に読む程、意識して情報を取っている人が、新聞を読む理由に「習慣になっているから」と答えるとは考えにくい。
だから、やっぱり、習慣で情報を取る人は、時折、気づかないうちに情報に対して受身になっている自分になっていないか自問自答する必要があると思う。
明日につづきます。
←人気ブログランキングへ
この記事へのコメント