自民と民主の危機管理能力の差(西日本豪雨災害について 前編)
先日来の西日本を中心とした集中豪雨で、お亡くなりになられた方々に深く哀悼の意を表します。
静岡大学防災総合センターの牛山素行准教授によれば、岐阜県での豪雨は、短時間降水量も長時間降水量も共に大きいという危険性の高い豪雨だったようだ。
また、土砂崩れによる被害が発生した地域では、避難勧告と土砂崩れの発生がほぼ同時で、避難が遅れたらしいのだけれど、これについても、土砂災害警戒情報に基づいた避難勧告を、その対象地域を細かく指定しようとし過ぎたのが原因で、避難勧告そのものが遅れたのではないかと指摘している。
まぁ、いずれにしても、これまでとは違った災害対策が必要になることは確かなことで、政府も率先して取り組んでゆく必要がある。
だけど、やはりというか、なんというか、危機意識の低い民主党政権は、また後手を踏んでいる。
政府官邸は、14、15日の時点ではまだ情報収集に努めていて「見守っている」だけ。翌16日に人的被害がぽつぽつ出始めてから、空き菅@けものへん殿が、お見舞いと激励のために、岐阜入りする、と発表した。
この時点でもまだ、災害対策本部を設置するでもなく、情報収集と対応に万全を期すというだけ。
ところが、自民党はといえば、15日に、石破茂政務調査会長を本部長とする、「平成22年豪雨災害対策本部」を設置して、翌16日には初会合を開いている。
野党で動きやすいとはいえ、15日の時点で対策本部を設置するか否かで、自民と民主の、危機察知能力というか、危機管理能力の差が如実に表れているように思える。
というのも、先の静岡大学の牛山素行准教授によれば、15日正午の時点では、消防庁から全国の被害集計は発表されておらず、また、福岡県と広島県から15日10時~11時の時点の被害状況が入っているものの、このレベルは、まだ例年起こっている規模の被害だという。
そうであるならば、15日の状況では、まだ政府として動ける段階ではない、という判断もあるのかもしれない。
だけど、この15日の時点で、自民党は災害対策本部を設置している。この差は何か。
恐らく、自民党は、早くから、県連や県議から、豪雨に遭っている現地の情報を逐一収集して分析を続け、15日の時点で、これは大事になる、と判断したのではないか。
民主党だって、県連があって県議もいる筈なのに、15日に対策本部が設置できなかったということは、少なくとも、そうした自民党並みの被害予測能力、危機管理能力がないということを意味してる。
だから、政治というものは、ただ閣僚らが官邸にいればそれで良しという訳ではなくて、党本部や知事、県連、県議、市議らを含めて、一体となって組織を形作り、それら全体を纏め、束ねてゆく中で、ようやく行われ得るものなのだ、と改めてそう思う。
要は、都市部は勿論のこと、地方隅々にまで血を通わせ、目配りをしないととても国家運営など出来ないということ。
今の民主党政権は、豪雨災害でこの体たらくなのだから、ひとたび有事あらば、何もしてくれないことはかなりの確率で覚悟しなくちゃいけない。
命を落としてから、激甚災害指定だの首相に花束を手向けられても、何にもならない。それがきちんと対応できていれば、救える命だったら、尚更のこと。
お灸を据えた積りが、自分がお灸を据えらていたという喜劇は、今にしてじわじわと現実のものになりつつある。
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平成22年7月14日(水)午後 西日本を中心とした豪雨について
現在、西日本を中心に極めて強い豪雨が降り続いておりまして、1時間で70ミリを超える激しい雨の降っているところがおありにあると。局地的には50ミリから70ミリ、1時間。そういう激しい雨が見込まれておるようであります。そういうことで、24時間体制で情報収集に努めておるわけでありますが、引き続き緊張感を持って情報収集をしたいと。で、今後の対応については、今の状況を注視しながら万全を期していくということでございます。で、先程も午前中、北橋北九州市長にはお見舞いの電話、それから「政府がなすべきことがあれば連絡して欲しい」という電話をしたんでありますが、当然のことながら大変お忙しいようで、留守電にその旨連絡しておきましたら、「被害の様子が掴めるまでにはまだ時間がかかる」と、「お見舞いの電話ありがとうございました」という返事が返ってきたということでございます。
URL:http://www.kantei.go.jp/jp/tyoukanpress/201007/14_p.html
平成22年7月15日(木)午前 西日本を中心とした豪雨について
私(官房長官)の方からはご報告すべき事項はございませんが、西日本の水害と言うか豪雨がですね、何か、昨日申上げた時以降、ちょっと雨の降る地域が北の方へ上がったんでしょうか、山口県が相当、今日の7時までの降水量、13日の0時からでありますけれども、400ミリ台の降水量になっておりまして、心配をしながら昨日も申し上げましたように、おさおさ警戒怠りなく注視をしているところでございます。大きな災害にならないように祈っているということでございます。
URL:http://www.kantei.go.jp/jp/tyoukanpress/201007/15_a.html
平成22年7月16日(金)午後 西日本を中心とした豪雨及び菅総理の岐阜県出張について
2点申し上げたいと思います。13日から西日本を中心とした豪雨が今も集中的に降っているところはございますが、豪雨で多いところでは450ミリを超える雨量となっております。昨日は、岐阜県八百津町で5時間で203ミリの集中的な豪雨が見られました。このため、岐阜県八百津町で自宅裏山が崩れ、3名が行方不明、可児市で3名が行方不明となっておりまして、現在、懸命に救出作業が行なわれております。また、島根県松江市で3名が生き埋めとなっておりまして、1名は救助されましたが、2名は死亡が確認をされたところでございます。13日からの雨によるこれまでの被害は合わせて死者が6名、内1名は災害に起因するかどうか確認中でございます。行方不明者が8名となっております。亡くなられた方々のご冥福を心からお祈り申し上げると共に、行方不明の方々に一刻も早い発見、救出及び負傷された方々の一日も早いご回復をお祈り申し上げます。今後の降雨の見通しは、東海と北陸地方で16日夜にかけて局地的に1時間当たり20ミリから40ミリの激しい雨が見込まれております。引き続き、土砂災害等に注意が必要でございまして、官邸においては引き続き情報収集に努めて、対応に万全を期していくつもりでございます。そこで、菅総理大臣は7月18日、この梅雨前線の豪雨により被災された方々へのお見舞いと関係者に対する激励のために、岐阜県に出張をする予定でございます。詳しい日程については調整中であります。
URL:http://www.kantei.go.jp/jp/tyoukanpress/201007/16_p.html
あふれる濁流、自然の猛威にぼうぜん 広島・庄原の豪雨災害で住民証言 2010.7.18 17:04
「普段は幅2メートルの川があっという間に幅100メートルの濁流に変わった。逃げようにも、どうしようもなかった」。広島県庄原市で16日発生した豪雨災害で、同市西城町の農業、伊藤克裕さん(61)は、降り始めからわずか約2時間半で目の当たりにした自然の猛威について生々しく語った。
雷が鳴って、ぽつぽつと雨が降りだしたのは16日午後3時すぎ。1時間後、強風とひょうがまじった大粒の雨に変わったかと思うと、いつもとは比較にならないほど増水した川に無数の流木がダムのように高く積み重なり、流れをせき止めた。流木を乗り越えるように濁流があふれ、低い土地に土石流が一気に押し寄せたという。
小降りになった同6時すぎ、地区が孤立していることに初めて気付き、「えらいことが起きた」とぼうぜんとしたという。
URL:http://sankei.jp.msn.com/affairs/disaster/100718/dst1007181706015-n1.htm
2010年07月18日08:45 木曽川まで捜索拡大 可児市の豪雨災害
可児市土田の鉄道高架下の道路で濁流によって3人が行方不明になった豪雨災害で、可児署は17日、行方不明の主婦細田由里さん(46)=同市広見=と会社員佐藤正二さん(54)=同市緑ケ丘=の乗用車2台を、現場から下流の可児川付近で発見した。いずれも車内に人はいなかった。警察と消防は可児川が合流する木曽川下流にも範囲を広げて捜索を続けているが、3人は見つかっていない。
同署によると、細田さんの車は、現場から約300メートル下流の可児川で、水没した状態で発見。佐藤さんの車は、現場から約1・2キロ下流の同川右岸で、岩場に引っかかって止まっていた。
16日には行方不明の会社員三宅秀典さん(26)=同市中恵土=の車が現場から約1・1キロ下流の同川の河原で見つかっているが、車内に人はいなかった。
警察と消防は17日、木曽川の捜索範囲を海津市付近まで広げたが、3人を発見できず、この日の捜索を打ち切った。18日は午前8時から捜索を再開する。
流されたトラックが重なり合っていた可児市土田の鉄道高架下道路では、クレーンで撤去作業を行い、道路をふさいだすべてのトラックを撤去。17日夜、通行が可能となった。
一方、土砂崩れによる家屋倒壊で、一家3人が死亡した加茂郡八百津町野上地区は、避難指示から避難勧告になったが、2世帯6人が避難している。
URL:http://www.gifu-np.co.jp/news/kennai/20100718/201007180845_11196.shtml
菅首相:岐阜豪雨の被災地視察 可児市と八百津町 2010年7月18日 20時24分 更新:7月18日 21時28分
菅直人首相は18日、豪雨による浸水やがけ崩れなどで大きな被害が出た岐阜県可児市と八百津町を視察した。八百津町では民家の裏山が崩れ3人が亡くなった現場を訪れ、献花し黙とうをささげた。
首相は視察後、記者団に、西日本を中心とした今回の豪雨被害を、災害復旧事業への国からの補助率をかさ上げする「激甚災害」に指定する可能性について「内閣のメンバーがそれぞれ(被災地に)出かけており、精査したうえで国民にしっかり対応できたと言われるよう努力したい」と述べ、検討する考えを示した。【葛西大博】
URL:http://mainichi.jp/select/today/news/20100719k0000m010094000c.html
激甚災害指定を検討=岐阜の豪雨被災地を視察-菅首相
菅直人首相は18日、豪雨による土砂崩れなどで大きな被害が出た岐阜県可児市と八百津町を視察した。この後、首相は記者団に対し、西日本を中心とした今回の豪雨を激甚災害に指定する可能性について「国民の皆さんにしっかりした対応ができたと言われるよう努力したい」と述べ、検討する考えを表明した。
古田肇同県知事らから被害状況の説明を受けた首相は、河川のはんらんで多数の車が水没し、死者、行方不明者が出た可児市の現場を視察。さらに、民家の裏山が崩れ3人が亡くなった八百津町の現場を訪れた。首相は献花し、黙とうをささげるとともに、警戒に当たる地元消防団を激励。被災した住民に「ここが危険ということは、多少分かっていたのですか」などと尋ねては、発生時の状況などについて耳を傾けていた。(2010/07/18-17:24)
URL:http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2010071800087
【菅ぶら下がり】岐阜の豪雨被災地視察「自然の脅威感じた」(18日)(1/4,2/4) 2010.7.18 20:26
菅直人首相は18日、集中豪雨が襲い、犠牲者が出た岐阜県可児市などの被災地を視察し「自然の脅威、怖さを感じた」と述べた。視察先である同県八百津町の災害現場で、記者団の質問に答えた。
ぶら下がり取材の詳細は以下の通り。
【冒頭】
「きょうは、岐阜に大雨の視察にやってまいりました。(可児市と八百津町の)2カ所、視察をしたわけですが、いずれの所も亡くなられた方が出ているということは大変、悲しいことで、心からお悔やみを申し上げたいと思います。この非常に短時間にこれまでの記録にもないような大雨がそれぞれ降って、従来でいうと、考えられないような場所で水が出て、あるいは土砂崩れなどになりましたので、これからこうしたことに対してもしっかりと対応できるように。今後のことも、知事、市長、町長をはじめ、そういう皆さんの話も聞きましたので、しっかりと国としても取り組んでまいりたい、こう思っております。私からは以上です」
【今後の防災体制】
--現場を見ての感想と、中山間地域の防災対応についての認識、今後の対応をお聞かせください
「こういう災害を防ぐ、あるいは被害を防ぐには一つには、ハード面というかですね、堤防とか遊水池とか、そういうものの整備がどの地域にどの程度必要か、ということと、もう一つはやはり、避難を含めてですね、被害を最小限に食い止めるための情報というものとの2つの面があると思います。
最近は政府の方でも、たとえば、車で逃げるといったことがわりと一般的に行われていたことに対して、逆に車が危ないんだと。今回、最初の所(可児市)のように道路がぐっと高架下で下がっているところで、結果として被害に遭われる方もおられますし、今回も考えられないような大きなトラックが流された。そういう、車を使っての避難などは控えるようにといったことも、政府の方からも申し上げておりますが、そういった情報的な面での、ある意味でのきめ細かさというものも、これは全国的なレベルでもしっかりとした、場合によってはマニュアルなどの、そういったものももっと整備してですね、確かなものにしたいと思っております。
それから激甚災害については今、この間だけでも北九州とか山口とか、広島とか鹿児島とか、わが内閣のメンバーがそれぞれ視察に出かけてくれておりますので、明日、明後日、そういうものを集約する中でどういう対応ができるか、農業の関係と、いろんな、河川とか道路の関係と、いろいろあります。そういうものをきちっと精査した中で、できるだけ国民の皆さんにしっかりとした対応ができたと、いわれるように努力したいと思います」
【現場視察の感想】
--現場を視察しての感想は
「きょうはもう、こんなに晴れてですね、川でいえば水の量も少なくなり、こちらの山もほとんど水が流れていない状況ですが、やはり、自然の脅威、怖さというものと、やはり、十分、そういう危険性を予測する力というかですね、それによって防げるものもたくさんあります。そういうものがやはりより必要だなと改めて感じました」
URL:http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100718/plc1007182035006-n1.htm
【平成22年 7月16日】■ 豪雨災害対策本部を設置 被害対策に全力を 自由民主党平成22年豪雨災害対策本部
九州から中国地方へと伸びる梅雨前線による局地的豪雨で日本各地に多大な被害が広がっていることを受け、わが党は15日に平成22年豪雨災害対策本部を設置し、翌16日、初会合を開いた。同本部長に就任した石破茂政務調査会長は会議の冒頭、「今までの尺度では考えられない異常な災害が多い。情報伝達の方法など今までと全く違うやり方も考えていかなければならない。わが党として立法も必要であればきちんと対処していきたい」との方針を示した。会議に出席した谷垣禎一総裁は「お亡くなりになられた方、被害にあわれた方にお見舞いを申し上げたい。災害に強い国土づくりを粘り強くやっていかなければならない。しっかり対策に努めていきたい」とあいさつした。
URL:http://www.jimin.jp/jimin/daily/10_07/16/220716a.shtml
2010年7月12日 (月)最近の大雨について
一部メディアの報道を見ていると,連日日本各地で「記録的な豪雨」が発生し,大変なことになっているかのような印象を受けそうです.しかし,客観的に見て,本年はまだ「記録的な豪雨」が多発している状況ではなく,「豪雨による災害」も多発している状況にはないと筆者は考えています.
目立って報道されている,鹿児島県南大隅町で発生した土石流は,崩壊の規模,生産土砂量などはかなり大規模なものであることは間違いありません.しかしながら,社会的に大きな被害にはつながっていません.この事例に限定せず,今年になってから鹿児島県で発生した豪雨による被害として,鹿児島県から発表されているものは以下の通りです.
7/3~5 死者2名,全壊3棟,半壊1棟,床上浸水1棟
6/18~23 死者無し,全壊無し,半壊無し,床上浸水3棟
つまり,「避難に成功したから被害が目立たないのではないか」と思うかも知れませんが,その面も否定はしませんが,そもそも家屋の被害自体が比較的軽微で,「避難したから被害を免れた」とは言い切れない状況にあります.
降水量自体も,まだそれほど「記録的」にはなっていません.2010年1月1日から,7月8日までの時点で,全国AMeDAS観測所のうち統計期間20年以上の観測所を対象に集計すると,降水量の最大値を更新した観測所は次の通りとなっています.
1時間降水量 5箇所
北海道・上富良野,岩手県・荒屋,長野県・大町,鹿児島県・吉ケ別府,鹿児島県・佐多
24時間降水量 3箇所
北海道・森野,兵庫県・福崎,鹿児島県・上中
72時間降水量 2箇所
鹿児島県・川内,鹿児島県・東市来
地点数自体,あまり多くはありません.また,短時間降水量の記録更新と,長時間降水量の記録更新が同時に発生した地点もありません.
被害の面で見ても,鹿児島県に限らずそれほど目立った被害は今のところ発生していません.大きな被害が発生し始めたときは,消防庁ホームページに被害等の総括表が掲載されますが,今年は豪雨災害についてはまだ掲載事例はありません.
繰り返し主張していることですが,「たいしたことがないから大丈夫」といっているのではありません.毎年発生する災害事例と比較してそれほど激しい状況になっていない段階で,繰り返し繰り返し「記録的」「災害多発」などということが適切でないと言いたいのです.本当に「記録的」で激甚な災害が発生しそうになったときに,その警告が「またか」と軽視されてしまうことを懸念しているのです.
九州南部では「長雨」が続いていることは確かです.鹿児島県内の本土側のAMeDAS観測所のうち,6箇所(八重山,東市来,輝北,喜入,内之浦,佐多)では,2010年6月の月降水量が,1976年以降の最大値を更新しました.「6月の月降水量としての最大値」ではなくて「通年の月降水量としての最大値」の更新です.
月降水量などの非常に長い積算降水量が多いだけでは,洪水,土砂災害には直結しませんが,その後に,1時間,24時間などの降水量が「記録的」になると,危険性が高まります.警戒を怠ることのできない状況であることは確かです.
URL:http://disaster-i.cocolog-nifty.com/blog/2010/07/post-7470.html
2010年7月15日 (木) 長時間降水量「だけ」が大きい状況
ここ数日,西日本を中心としてまとまった雨となっています.7月15日13時現在のデータでは,7月14日から15日の間に,全国のAMeDAS観測所(統計期間20年以上)で,1979年以降最大値を更新した観測所は,1時間降水量1箇所,24時間降水量2箇所,72時間降水量10箇所となっています.つまり,長時間降水量については記録更新(当該地点としては激しい量の降雨)がやや目立ったものの,短時間降水量はそれほどでもないということになります.
少し見方を変えて,1時間降水量50mm以上は,7/13~7/15の間に全国の16観測所で18回(つまり2箇所では50mm以上が2回観測された)観測されましたが,このうち,50mm以上を記録した際に,72時間降水量の1979年以降最大値が同時に更新されていた観測所は,7月15日朝の山口県秋吉台,豊田の2箇所.24時間降水量の最大値が更新されていた観測所はありませんでした.つまり,短時間降水量が激しく,かつ長時間降水量も大きな記録が生じていた観測所はほとんど確認できなかったことになります.
7月15日正午頃の時点では,消防庁から全国の被害集計は発表されていません.降水量記録から,被害が出そうな県を調べてみたところ,福岡県では,15日10時35分の資料で,死者不明者0人,住家全壊3棟,半壊0棟,床上浸水85棟とのこと.広島県では15日10時の資料で,死者不明者4名,全壊2棟,半壊2棟,床上浸水約69棟.山口県はまだまとまった資料が出てきていませんが,報道されている範囲内では,死者不明者はなく,床上浸水が100棟以上との情報もあります.今後,被害の値は増える可能性もありますが,今のところは,毎年複数回発生している規模の被害と見ていいのではないかと考えています.
豪雨による災害は,洪水,土砂災害いずれにおいてもそうですが,長時間降水量の値が大きいだけでは大きな被害には結び付きにくいものです.逆に,短時間降水量だけが激しくても大きな災害には結びつきにくい傾向にあります.被害の規模がそれほど大きなものになっていないのは,このような雨の降り方と関係しているもののようにも思えます.
繰り返し強調しておきますが,「たいした雨ではないから大丈夫」と言っているのではありません.ここしばらく雨が続き,長時間の降水量は比較的大きくなっています.たまたま,短時間降水量がそれほど激しくない(あるいは短時間降水量が激しかった地点では長時間降水量が大きくなっておらず)状況であることから,致命的かつ大規模な災害に結びついていないに過ぎません.非常に危ない橋を渡っている状況下にあることは間違いありません.
左図は全国AMeDAS観測所で,日降水量200mm以上が記録された回数を年ごとに示したものです.この図に見るように,2008年,2009年と,まとまった雨が降る日数が「記録的に少ない年」が続きました.ひょっとすると「日本には梅雨というものがあって,たくさんの雨が広域で降ることは珍しくないんだ」ということが忘れ去られたのかも知れません(本気で言っているのではありませんが,一部報道への皮肉です).しかし,梅雨末期にはこのような長雨と,長雨の後の短時間の豪雨という現象がよく起こるものなのです.長雨が続いていることはけっしていい状況ではありません.まだしばらく,要注意であることは間違いありません.
URL:http://disaster-i.cocolog-nifty.com/blog/2010/07/post-4d7c.html
2010年7月16日 (金) 15日夜の豪雨は質的に異なる豪雨
本年の一連の梅雨前線に伴う大雨で,おそらく最後になりそうな豪雨が,7月15日夜に岐阜県付近で発生しました.
昨日の記事で,「たまたま,短時間降水量がそれほど激しくない(あるいは短時間降水量が激しかった地点では長時間降水量が大きくなっておらず)状況であることから,致命的かつ大規模な災害に結びついていないに過ぎません」と書きましたが,15日夜の豪雨は,今年のこれまでの豪雨事例とやや性質が異なり,短時間,長時間ともに大きいという,危険性の高い豪雨でした.
人的被害の生じた岐阜県八百津町付近にAMeDAS伽藍がありますが,ここでは15日に24時間降水量,48時間降水量,72時間降水量が1979年以降最大値を更新しました.1時間降水量の更新はなかったものの,18時46.0mm,19時42.5mm,20時25.0mm,21時54.5mmと強い降り方が続き,本事例のピーク1時間降水量である21時の54.5mmが記録されたときに24~72時間降水量の最大値が更新されるという,非常に危険な降り方でした.
この豪雨に伴い,土砂災害による人的被害,アンダーパスの浸水による車移動中の人的被害が生じている模様です.
本事例に関しては,現在情報収集中です.
URL:http://disaster-i.cocolog-nifty.com/blog/2010/07/15-059a.html
2010年7月16日 (金) これが本当ならば
この報道が本当ならば,土砂災害警戒情報を「細かく使いすぎた」事例になると思います.
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(7月16日付 中日新聞)
現場の野上地区では、15日午後8時40分の避難勧告と土砂崩れの発生がほぼ同時で、避難が遅れた。「これまで大きな土砂崩れがなく、町のマニュアルに沿って判断した」(纐纈秀行総務課長)としている。
町対策本部は、土砂災害警戒判定図の基準を超えた順に、同町東部の山間4地区は午後8時15分に、野上地区など町中心部に近い4地区は同40分に避難勧告を出していた。
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八百津町への土砂災害警戒情報は7月15日18時00分に発表されています.「土砂災害警戒判定図の基準」というのは,おそらく土砂災害警戒情報の補足情報として公開されているメッシュ毎の判定図のことだと思います.
土砂災害警戒情報自体は,実況値だけでなく,予測値も踏まえて,土砂災害の危険性が高まりつつあるとき,あるいはこれから高まると予想されるときに発表されます.一方,判定図は実況値と予測値が合わせて表記されます.その実況値を見て「まだ基準を超えていないから大丈夫」という考え方は,手遅れになります.この情報を細かく使いすぎていることになります.
当該地域において,土砂災害警戒情報自体は,十分な時間的余裕を持って発表されていました.それが生かされていなかったことが悔やまれます.
土砂災害警戒情報については「市町村単位では粗すぎる,もっと細かく」という「ニーズ」が非常につよく言われます.その「ニーズ」への答えの一つが補足情報の判定図やメッシュ情報です.しかし,それらを使って,避難勧告対象地域を細かくしよう,細かくしようというやり方は,よっぽど自信があるのであれば結構ですが,基本的には「やりすぎ」だと私は考えます.
URL:http://disaster-i.cocolog-nifty.com/blog/2010/07/post-0285.html
この記事へのコメント
クマのプータロー
理念先行はローカル・ルールを駆逐できず、より混迷へと誘っているように見えます。
日比野