「完璧な守り」を行なうには条件がある

 
今日は簡単に…。ツイッターでのRTを介して、ふと、軍事ジャーナリストの神浦元彰氏のつぶやきが目にとまった。

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時節柄、サッカーワールドカップになぞらえたもので、次に引用する。

「サッカーW杯の日本チームの試合を見て思った。本当に「攻撃は最大の防御」なのかと。日本の完璧な守りを見ていると、「完璧な守りなくして攻撃なし」と思ってしまう。まさに”戦いの原則”を見直すほど、日本チームの練度と作戦は完璧だった。もし戦争で日本の守りなら自衛隊は強い。これで良かった。」
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これだけを読む限り、一見、なるほどとも思えるのだけれど、筆者的には、国防にこの論理を使うのはどうか、と引っかかった。

というのも、このコメントのポイントである、「完璧な守り」なるものが、サッカーと国防とではやはりその意味が違うのではないかと思えたから。

まぁ、上浦氏も本気でこんなことを思って発言はしていないだろうとは思うけれど、一応ツッコミというか、感想を述べておきたい。

まず、当たり前のこと過ぎて指摘するのも憚られることなのだけれど、ボールと兵器は異なるもの。だから、それぞれの攻撃に対する防御方法も異なってしかるべき。

確かに、岡田監督率いる日本はワールドカップの予選リーグ、決勝トーナメントを通じて、完璧な守備を見せていた。4試合で失点2。だから、日本チームの守りは完璧に近かった。それは事実だろう。

だけど、いくら完璧とはいえ、所詮サッカーの守備。日本の守備は、4バックに、阿部をアンカーに使った3ボランチの4-3-2-1システム。その守備は、強固な守備ブロックを作って、相手のパスコースを消したり、中沢、闘莉王の両CBを中心として、ディフェンスラインがボールをきちんと「弾き返す」ことで成り立っていた。

当たり前だけれど、サッカーでの守備は、足なり、ヘディングなりで、直接ボールに接触してクリアしたり、体を寄せて、シュートコースを変えて枠にいかせないようにして守るのが基本。

つまり、ボールや人に直接接触できるからこそ守れるのであって、別に念力ななにかでボールをクリアしている訳じゃない。



だけど、国防となると話は別。

サッカーボールはヘッドできても、ミサイルをヘディングするわけにはいかない。

基本的に、銃弾やミサイルなどの飛び道具は、着弾した時点でアウトだと考えるべき。

なぜなら、特に、ミサイルなんかの弾頭に何を使われるか分からないから。通常弾頭でも被害が出るのに、それが細菌兵器だったり、ましてや核だったりしたら、その被害は想像するに余りある。

だから、国防のレベルでは着弾した時点で負けと考えて対応しなければいけない、と思う。

仮に、MDシステムが完璧で、相手のミサイルを100発100中で迎撃できるのなら兎も角として、命中率が云々などという程度にしか迎撃できないのであれば、やはり、相手にミサイルを発射させてしまう時点で負けに等しい。

従って、国防では、相手にシュートすら打たせてはいけないということを基本にすべきだと思う。

だから、最低でも、対オランダ戦でみせたような強固な守備ブロックを作って、オランダがシュートコースを作れなくて、苦し紛れのパス回しばっかりやっていたようなところにまでは持っていかなくちゃならない。

だけど、今の自衛隊は、法律で雁字搦め。専守防衛を旨としているから、次のような制約下にある。
1.一般的な作戦において、相手の攻撃を受けてから初めて軍事力を行使する
2.軍事力行使は自衛に必要最低限に範囲にとどめ、相手国の根拠地への攻撃を行わない
3.自国領土またはその周辺でのみ作戦すること

これをサッカーに例えると次のようになるかと思う。
1.相手にシュートを打たれてから、始めて反撃できる。
2.日本の攻撃は、守備に必要な最低限に限る。敵陣内でのボールポゼッションは勿論、敵陣に入ることは禁止。入った場合は即オフサイド。
3.日本のボールポゼッションは自陣内でのみ許される。

こんなハンデをつけられたら、試合にはならないことは明らか。バルセロナだって、マンチェスター・ユナイデッドだって勝てやしない。なにせ相手陣内に入っちゃいけないのだから、どうしようもない。センターラインからシュートしたって、ゴールなんて奇跡でもおきない限り無理。



逆に、相手からしてみれば、こんなに面白いことはない。

日本が絶対攻撃してこない事が分かっているのだから、日本の陣地に入って、余裕でパス回しする。そして、シュートする振りをしてはからかっている。時にはGKさえセンターラインを越えてくる。

そんな状況なのに、日本の監督は、更に輪をかけて情けない。

自陣に相手が入ってきているにも関わらず、プレスはするな、ただ見てろ、という。

腹に据えかねた、ベテランFW「与那国」が、少しでもプレッシャーを掛けようと、自分をFWのポジションにつかせてくれ、と監督に直訴するも、相手を刺激するから、と却下する始末。

だから、自衛隊だけで考えると、事実上、相手の遣りたい放題になっているのが現実。

それでいて、サポーターの半数以上は、文句ひとつ言わない。それどころから、相手はシュートなんて打ってくるわけがないよ、ゴールをがら空きにしたって問題ない。無防備宣言すればいいんだ、なんてことを言うサポーターまでいる。

昨今、普天間問題を皮切りに、在日米軍や海兵隊の問題が一部で取り沙汰されているけれど、そうであるならば、在日米軍が完全撤退して、自衛隊だけで日本を守ることになったときのことは、当然考えておくべきだと思う。

ワールドカップで見せた日本の守備は、同じルールで戦っていた中でしたことであって、今の自衛隊のようにハンデだらけで為し得たものじゃない。

現実を直視する限り、自衛隊だけで日本を守ろうとするのなら、少なくとも、まともにサッカーができるルールにして、まともな監督を据えないと駄目。

別に、相手ゴールを割れとは言わないけれど、せめて、フォーメーションをきちんと組んで、自由に選手を動かせるようにしないといけない。

サッカーでは、ゴールされても悔しいだけだけれど、国防においてゴールを割られることは即、亡国に繋がることは忘れてはいけないと思う。

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この記事へのコメント

  • 日比野

    こんばんは。今日のエントリーの下書きでは、「逆神・神裏」氏と書いていたのですけど・・結局止めました(苦笑)
    2015年08月10日 16:48
  • sdi

    逆神「神浦」氏の言葉ですから、絶対その発言はあたりませんよ(笑)
    2015年08月10日 16:48

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