北朝鮮の瀬戸際外交の巧みさ(韓国哨戒艦沈没事件の深層 前編)
韓国海軍の哨戒艦「天安」が、3月20日に、韓国西方の黄海で沈没した事件から約2ヶ月経ってからの5月20日、韓国政府は北朝鮮潜水艦による魚雷攻撃を受けたものと断定した。
軍民合同調査団は、北朝鮮の魚雷攻撃と決定づける証拠として、沈没現場から回収した魚雷後部スクリュー内部にあった「1番」というハングル表記が北朝鮮の魚雷表記方法と一致したほか、回収された魚雷の破片が、北朝鮮が輸出向けに配布している武器紹介パンフレットに記載されていた魚雷「CHT-02D」の大きさや形態と一致したことを挙げている。
この報告を受けて、韓国政府は、国連安保理での北朝鮮制裁決議を提起する方針を固め、着々と準備を進めていたのだけれど、6月2日に行われた、韓国の統一地方選挙で、予想に反して野党が大躍進の勝利を収めた影響で、韓国政府は北朝鮮に対する強硬姿勢が取りづらくなってしまうという事態に陥っている。
また、肝心の安保理での議論も、中国やロシアの慎重姿勢のためになかなか前進しない事態となっていて、韓国政府には焦りの色も見えてきた。
特に中国は、6月8日に訪中した韓国外交通商省の千英宇次官との会談で、「安保理が沈没問題に関与する際には慎重かつ適切に対応すべきだ」として慎重姿勢を説明するに留まっている。
更に、韓国から、韓国軍と民間専門家の合同調査団への参加の打診を受けていたそうなのだけれど、それも断っている。全く取りつくしまもない。
その影響もあって、韓国は、制裁決議採択を断念して、北朝鮮に謝罪や挑発行為の再発防止を求める「非難決議」に切り替えて、協議を続けようとしているのだけれど、その安保理の全体会合をも「非公式相互対話」形式で開かれることになり、大きく後退している。
そして、6月30日にその「非公式相互対話」が行われ、議長国メキシコのヘラー大使が、報告を行っているのだけれど、大使は、哨戒艦が「攻撃によって沈没した」結果「域内外の緊張が高まった」と述べただけで、北朝鮮の魚雷攻撃によるものだった、とは発言しなかったという。
これだけでも、随分と後退していることが伺える。
とりわけ、6月2日の韓国の統一地方選挙で与党が敗北したことは、韓国政府与党にとっては、大きな打撃となったと思われるのだけれど、そこに北朝鮮の工作があったことが明らかになっている。
北朝鮮は、韓国国民の住民登録番号を盗用して、韓国の主要なインターネットサイトに「韓国哨戒艦『天安』沈没事件は捏造(ねつぞう)」とする書き込みを集中的に行って、牽制をしていたし、、北朝鮮の統一運動団体「祖国統一民主主義戦線」はもっと露骨に、韓国民向けの公開書簡として、統一地方選で李明博政権の保守与党ハンナラ党に投票しないよう呼び掛けていた。
また、JBPRESSによると、選挙当日には、選挙に関心を示さなかった若者がツイッターの書き込みで次々投票所へ駆け込んだそうだ。
若者に人気の高い文化人や芸能人が、ツイッターを通して呼び掛けた、この運動は、投票日直前から始まって、投票当日にピークとなったのだけれど、選挙当日の午後に若者の投票が急増したという。
投票に行った多くの若者は、安全保障と経済政策に対する不満から野党候補に投票したと見られているのだけれど、これとて、北朝鮮の工作なのかもしれない、と勘ぐってしまう。
こうした動きをみるにつけ、やはり北朝鮮の瀬戸際外交というか、韓国を手玉にとる手並みというか、相変わらず侮れないものがある。
今では、北朝鮮潜水艦による魚雷攻撃自体が本当なのか、と韓国が発表した調査結果に対する疑いの声が一部で上がっているという。
もし、安保理が出す結論が「非難決議」ではなくて、「議長声明」に終わるのであれば、この件では、完全に北朝鮮の勝ち、と言わざるを得ない。
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哨戒艦沈没、北の魚雷攻撃と断定 韓国調査団 南北間の緊張高まる 2010.5.20 11:21
【ソウル=水沼啓子】黄海で3月下旬に起きた韓国海軍哨戒艦沈没について原因を究明してきた軍民合同調査団は20日午前、北朝鮮の魚雷攻撃と断定する調査結果を発表した。これを受け、韓国政府は国連安全保障理事会に問題提起する手続きに着手するとともに、独自に対北朝鮮制裁措置を実施する構えで、南北間の緊張が一気に高まるとみられる。
合同調査団は、北朝鮮の魚雷攻撃と決定づける証拠として、沈没現場から回収した魚雷後部スクリュー内部にあった「1番」というハングル表記が北朝鮮の魚雷表記方法と一致したほか、回収された魚雷の破片が、北朝鮮が輸出向けに配布している武器紹介パンフレットに記載されていた魚雷「CHT-02D」の大きさや形態と一致したことを挙げた。
また、沈没のシミュレーションをした結果、水深6~9メートル、哨戒艦の中央機関室の下あたりで、高性能爆薬250キロ規模の魚雷が爆発したことによって沈没したことも確認された。
さらに哨戒艦沈没当時、北朝鮮の小型潜水艇と支援する母船が黄海の海軍基地を離れており、沈没から2、3日後に基地に復帰していたことも確認された。
調査団はこれらの物証や状況証拠から「哨戒艦は北朝鮮製魚雷の水中爆発によって沈没したという結論に到達した」とし、「魚雷は北朝鮮の小型潜水艇から発射された以外にはありえない」と結論づけた。
調査団は韓国の軍関係者や民間専門家のほか、米国や英国、オーストラリア、スウェーデンの4カ国の専門家も加わっていた。
これを受け、李明博大統領が来週初めにも国民向けの談話を発表し、断固とした姿勢を示すほか、韓国政府は南北経済協力の中断など対北朝鮮制裁措置を実施する方針だ。26日にはクリントン米国務長官が訪韓、柳明桓外交通商相らと会談し米韓連携強化を再確認する。
調査結果について、北朝鮮が激しく反発するのは必至だ。北朝鮮の核をめぐる6カ国協議再開を模索する動きも中断するとみられる。
哨戒艦は3月26日、黄海上の南北境界線付近の韓国領海で沈没、46人が犠牲となった。
URL:http://sankei.jp.msn.com/world/korea/100520/kor1005201004003-n1.htm
対北政策にブレーキ? 韓国地方選、与党敗北 2010.6.3 21:28
【ソウル=黒田勝弘】2日に行われた韓国の統一地方選挙は、事前の予想に反し野党が大躍進し与党の実質的敗北となった。野党の勝利は李明博政権に対する世論の批判を意味しており、李政権にとっては韓国哨戒艦撃沈事件をめぐる北朝鮮に対する強硬姿勢など、今後の対北政策でブレーキをかけざるをえない情勢となった。
地方選とはいえ今回の選挙戦は韓国艦撃沈事件が大きな争点になった。与党ハンナラ党は「北の脅威」を強調し安保重視を訴えた。これに対し野党民主党は南北対決の危険性を強調し、政権・与党の対北政策を批判した。
結果は「戦争か平和か」を訴えた“平和志向”の民主党が、終盤段階で北朝鮮に融和的な考えの若い世代の支持を集め、票を伸ばした。政権・与党にとっては「北の脅威」の強調が裏目に出たかたちだ。
選挙結果は、焦点のソウルなど主な知事・市長16人のうち、ハンナラ党が6人、民主党7人、自由先進党1人、無所属2人で野党が大勢を占めた。与党は首都圏でソウル市長と京畿道知事が再選を果たし辛うじて面目を保った。
今回の選挙は「北風」と「盧風」の対決といわれた。保守与党のハンナラ党は哨戒艦事件という「北風」を利用したのに対し、革新野党の民主党は盧武鉉前政権の主要メンバーが再起を目指して多数出馬。今も盧武鉉ファンが多い若い世代に期待をかけた。
結果的には宋永吉・仁川市長、金斗官・慶尚南道知事、李光宰・江原道知事、安煕正・忠清南道知事をはじめ学生運動出身者など盧武鉉系の若手が相次いで当選。ソウル市長選でも女性の韓明淑・元首相がハンナラ党の呉世勲市長をわずかな差まで追いつめた。
親北・左派系の「盧風」が、保守派が期待した「北風」を押し返したかたちだ。これは若い世代を中心に多くの国民がもはや、「北の脅威」にはそれほど動かされないという韓国の政治状況をあらためて示したものだ。
選挙結果を受け、5年任期の3年目の李政権はハンナラ党とともに体勢立て直しを迫られている。
今後、2012年の次期大統領選を目指した動きも出始める。与野党とも“次期政権戦略”を構想することになるが、親北・革新系の政権奪還に向けた勢力復活に拍車がかかるのか、それとも防戦の反北・保守系が巻き返しに成功するのか、韓国政局は新たな流動期に入った。
URL:http://sankei.jp.msn.com/world/korea/100603/kor1006032129007-n1.htm
哨戒艦沈没で韓国、安保理「非公式対話」に落胆
【ソウル=仲川高志】韓国海軍哨戒艦の沈没事件で、国連安全保障理事会の全体会合が「非公式相互対話」形式で開かれることになったことについて、韓国政府関係者は12日、「公式の場できちんとした議論が行われることを期待していただけに大変失望した」と落胆の色を隠さなかった。
安保理での議論が、中国やロシアの慎重姿勢のためになかなか前進しない事態に、韓国政府内には焦燥感が広がっている。
韓国は既に、千英宇(チョンヨンウ)・外交通商次官が「安保理の追加的な対北朝鮮制裁決議は実益がない」と述べるなど制裁決議採択を断念。現実的な対応として、北朝鮮に謝罪や挑発行為の再発防止を求める「非難決議」を視野に入れている。
韓国にとって、安保理の措置で北朝鮮の責任を明確にし、再度の軍事挑発を許さないとの国際社会のメッセージを送ることは譲れない一線だ。韓国の世論調査では、韓国政府の取るべき措置として、8割近くが「国連安保理などでの国際協力を通じた制裁」を挙げている。安保理議論の行方次第では、李明博(イミョンバク)政権は苦しい立場に立たされる。
(2010年6月13日16時17分 読売新聞)
URL:http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20100613-OYT1T00456.htm
議長国メキシコ「安保理は攻撃を非難するだろう」
【ニューヨーク=吉形祐司】韓国の哨戒艦沈没事件を巡り、国連安全保障理事会は6月30日、非公式協議を開いた。
議長国メキシコのヘラー大使は、各理事国などとの個別協議後の評価として、「安保理は攻撃を非難することになるだろう」とした報告を行い、迅速な対応を求めた。3月26日の事件から3か月を過ぎても、安保理が本格協議に入れない状況が続いているが、議長国が評価を伴う報告を行うのは極めて異例だ。
外交筋によると、同大使がまとめた報告は2ページ。報告は記録に残らない非公式なものだが、大使は哨戒艦が「攻撃によって沈没した」結果、「域内外の緊張が高まった」と述べた。ただ、沈没が北朝鮮の魚雷攻撃によるものだった、との認識は示さなかった。
事件を巡っては、日米韓を中心に北朝鮮非難の文書作成が進む一方、これに慎重な中国への説得が難航している。報告に対し、中国は沈黙を保ったが、ロシアは趣旨説明を求めるなど敏感に反応したという。
記者会見したヘラー大使は、「当面は(安保理が出す文書の)内容に関する合意が重要。今は決議になるか、議長声明にとどまるのかは言えない」と述べた。
(2010年7月1日20時21分 読売新聞)
URL:http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20100701-OYT1T00862.htm
「天安事件は捏造」、北朝鮮が韓国サイトに書き込み 6月1日17時15分配信 聯合ニュース
【ソウル1日聯合ニュース】北朝鮮が韓国国民の住民登録番号を盗用し、韓国の主要なインターネットサイトに「韓国哨戒艦『天安』沈没事件は捏造(ねつぞう)」とする書き込みを集中的に行っていたことが分かった。政府当局関係者が1日に明らかにした。
このサイトに掲載された文章は、北朝鮮の統一戦線部傘下「6・15編集社」が北朝鮮サイトの「わが民族同士」に掲載した国防委員会報道官論評と同じ内容だったという。
北朝鮮はまた、中国内の朝鮮族のサイトにも「『天安』を通じ利益を得た団体」と題した書き込みをしていた。同じ内容の文章が、韓国の一部団体のサイトにも掲載されていたと伝えられる。
北朝鮮は先週、天台宗、6・15共同宣言実践韓国側委員会などに対し、「『天安』沈没は北朝鮮の魚雷攻撃が原因だとする韓国政府の事件調査結果は捏造だ」という内容の祖国平和統一委員会報道官談話文を盛り込んだ書簡を送っている。
これに関連し、統一部は先月31日に報道官論評を通じ、「内部問題不干渉、相互ひぼう中傷禁止を規定した南北基本合意書など各種南北間合意に背く行為」だと指摘。即刻中断を求めた。
URL:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100601-00000025-yonh-kr
「韓国与党に投票するな」 北朝鮮団体が呼び掛け 2010.5.29 14:49
北朝鮮の統一運動団体「祖国統一民主主義戦線」は29日、韓国民向けの公開書簡を発表し、6月に韓国で行われる統一地方選で李明博政権の保守与党ハンナラ党に投票しないよう呼び掛けた。朝鮮中央通信が報じた。
公開書簡は、韓国の海軍哨戒艦沈没は「敵対勢力がでっち上げた謀略だ」などとあらためて主張。統一地方選で「李政権に与える票は戦争への票であり、独裁への票だ」と強調した。(共同)
URL:http://sankei.jp.msn.com/world/korea/100529/kor1005291450005-n1.htm
中国、哨戒艦沈没調査の参加断る 2010.6.10 23:28
中国共産党のシンクタンク、中央党校国際戦略研究所の張●(=王へんに連)瑰教授は10日、韓国海軍哨戒艦沈没をめぐり、中国が韓国から韓国軍と民間専門家の合同調査団への参加の打診を受けたが、断っていたことを明らかにした。訪中した海洋政策研究財団の秋山昌広会長らと北京市内で会った際に語った。
秋山氏によると、張氏は、沈没問題は国際政治の中で解決すべき問題で、白黒をつける司法裁判とは違うとの考えを強調した。その上で「北東アジアの平和と安定を乱す行為は絶対に取りたくない」と述べた。
合同調査団には米国、英国、オーストラリア、スウェーデンの専門家も参加。北朝鮮製魚雷で沈没したとの調査結果を受け、韓国は国連安全保障理事会に協議を求める書簡を提出している。(共同)
URL:http://sankei.jp.msn.com/world/korea/100610/kor1006102329011-n1.htm
中韓、哨戒艦沈没で協議 安保理慎重対応を強調 2010.6.10 20:28
中国外務省の秦剛報道官は10日の定例記者会見で、8日に訪中した韓国外交通商省の千英宇第2次官が楊潔●(=簾の广を厂に、兼を虎に)外相や崔天凱、張志軍の両外務次官らと会談し、韓国が国連安全保障理事会に提起した海軍哨戒艦沈没問題について協議したことを明らかにした。
秦報道官によると、中国側は会談で、安保理が沈没問題に関与する際には慎重かつ適切に対応すべきだとの立場を強調。「朝鮮半島の平和維持という大局に立ち、関係国(南北)が冷静さと自制を保つ必要がある」との中国の立場をあらためて説明したという。
千次官は8日から2日間訪中。慎重姿勢を崩さない中国側に安保理対応への協力を求めたとみられる。(共同)
URL:http://sankei.jp.msn.com/world/china/100610/chn1006102029007-n1.htm
この記事へのコメント
ちび・むぎ・みみ・はな
本当の危機では安心できるところに逃げ込む.
李氏朝鮮時代の事大主義は何も変わっていない.