日本の非営利組織「言論NPO」と中国英字紙チャイナ・デーリーが日本、中国それぞれで、世論調査を実施し、中国人の対日感情が顕著に改善する一方、日本人の中国に対する負のイメージが変わっていないことが分かった。
日本側の調査は、高校生を除く18歳以上の男女を対象に6月16日から7月2日にかけて、対象者を訪問して、調査票を渡し、対象者本人の記入を依頼した上で、後日回収する方式(訪問留置回収法)で実施した。
更に、別口で、これまで言論NPOが行った議論活動や調査に参加していただいた国内の企業経営者、学者、メディア関係者、公務員など約2000人に質問状を送付し、アンケート調査を行った。
前者の有効回答数は2000人で、回答者の最終学歴は高校卒が47.7%、短大・高専卒が15.0%、大学卒が18.4%、大学院卒が1.6%。後者のそれは、大学卒が72.6%、大学院卒が19.2%で合わせて約92%。
これらは、後者を日本社会の平均的なインテリ層の姿を現していると仮定して、前者と合わせて一般的な日本人のイメージを抽出する意図で行われた。
これに対して、中国側の世論調査は、北京、上海、成都、瀋陽、西安の5都市で18歳以上の男女を対象に、6月25日から7月9日の間に調査員による面接聴取法によって実施した。
また、日本側の有識者調査に対応するものとして、北京大学、清華大学、中国人民大学、国際関係学院、外交学院の学生を対象に6月25日から7月9日の間にアンケートを行った。
前者の有効回収標本は1617。後者の回答数は1007人。
今回の世論調査についてマスコミでは、「中国人の対日感情が顕著に改善する一方、日本人の中国に対する負のイメージが変わっていない」とか、「2050年の中国経済について中国側の57%は「米国と並ぶ大国になる」と回答した。」とか報道されているけれど、筆者が特に注目したいは以下の3つの設問。
1.あなたはこれまで相手国に行ったことがありますか?
日本世論 :14.5%
日本有識者:71.0%
中国世論 : 0.6%
中国学生 : 5.8%
2.あなたには相手国民に知り合いはいますか?
日本世論:親しい知人・友人がいる : 3.7%
多少話をする知人・友人がいる程度:14.4%
知り合いはいない :81.8%
中国世論:親しい知人・友人がいる : 0.4%
多少話をする知人・友人がいる程度: 3.2%
知り合いはいない :95.9%
3.相手国に関する情報源は何ですか?
日本世論:日本のニュースメディア :94.5%
中国世論:中国のニュースメディア :84.4%
中国のテレビドラマや映画 :55.2%
中国の書籍(教科書を含む) :32.2%
※ 恐らく複数回答可の設問であったと思われる。
4.自国のメディアが「客観的な報道をしている」と思うか
日本側:客観的な報道をしていると思う :31.2%
客観的な報道をしているとは思わない:28.0%
中国側:客観的な報道をしていると思う :61.8%
客観的な報道をしているとは思わない:29.3%
これらをみて明らかなとおり、日本と中国双方共に、大部分の国民は、相手国に行った事もなければ、知り合いもおらず、情報源は自国のニュースメディアだという事実が浮かんでくる。
これは、日本人、中国人共に、相手の姿を直接には知らないということを意味してる。
これを、拙ブログで提唱している「縁起のレイヤー」構造に当てはめて言いかえると、日本と中国は、互いの最上位レイヤーである、思想レイヤーでのみ接続されていて、地域共同体・知人友人レイヤー、血縁レイヤーといった下位レイヤーは接続されていないということになる。
勿論、日中間では経済交流は盛んに行われているので、経済レイヤーは、とりあえずのところ接続されてはいるのだけれど、経済レイヤーでの接続に携わっている人は、現地法人の社員や担当者とか、中国に工場を立ててなんかいるような企業家になるだろうから、そういった人達は、「相手国民に知り合いがいる」という設問にYesと答えた人に含まれると思われる。
ただ、割合的には少数派であることは否めない。
したがって、大枠でいえば、相手国民が如何なる人であるのか、といったイメージレベルでは、日本と中国は、思想レイヤーでしか繋がっておらず、その相互情報伝達も、マスコミを媒体とした情報でしか知りえない状態にある。
もしも、その思想レイヤーを介して流されている情報が、真実を表わしているものではなかったとしたら、その眼に映る相手の姿は「幻想」だったということもあり得る。
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日本人の対中観、好転せず=実感できない関係改善-世論調査
日中両国で今年6~7月に行った世論調査の結果、中国にマイナス印象を抱く日本人は72%に達し、昨年の73.2%と比べてほぼ横ばいで対中イメージ改善が進んでいないことが14日分かった。一方、日本にマイナス印象を持つ中国人は昨年の65.2%から55.9%に減少、対日観が改善した。
調査は日本の民間団体「言論NPO」と中国紙チャイナ・デーリーが日本人1000人、中国人1617人を対象に実施した。
日中間では最近、首脳交流が進み、懸案だったギョーザ中毒事件でも中国人容疑者が逮捕・起訴された。しかし、調査によると、相手国に「良くない印象を持っている理由」として「食品問題などで中国政府の対応に疑問がある」と答えた日本人は71.1%に達し、「過去に戦争をした」とする中国人も69.9%に上った。(2010/08/14-18:21)
URL:http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2010081400180
中国人、対日感情改善 日本人の対中観は好転せず 2010/8/14 19:47
日中NPOが世論調査
日本の非営利組織(NPO)「言論NPO」と中国英字紙チャイナ・デーリーが今年6、7月に日中両国で実施した世論調査によると、中国人の対日感情が顕著に改善する一方、日本人の中国に対する負のイメージが変わっていないことが明らかになった。中国に対して「良くない」または「どちらかと言えば良くない」印象を持っている日本人は72%と昨年とほぼ同水準だったのに対し、中国人で同様に答えた人は55%で前年比で10ポイント改善した。
日本で対中関係を重視する民主党政権が誕生したことが背景にあるとみられる。両国民の温度差は東アジア共同体への見方にも表れた。「将来、アジアは欧州連合(EU)のようにひとつの経済圏として統合していくか」との問いに「そう思う」と答えたのは、中国人が44%だったのに対し、日本人は7%にとどまった。
2050年の中国経済について中国側の57%は「米国と並ぶ大国になる」と回答。ただ、回答者を大学生に絞ると「中国経済が米国に並ぶのは難しい」とする人が32%となり、前年より12ポイント増えた。東大大学院の高原明生教授は「自国のことを客観的に見られるようになっている証拠」と分析している。日中で4124人から回答を得た。
URL:http://www.nikkei.com/news/headline/article/g=96958A9C9381959FE3E0E2E1EA8DE3E6E2EAE0E2E3E2E2E2E2E2E2E2
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