菅談話の狙いと反作用


菅談話について、もう少し続けたい。

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菅談話が発表されてから、韓国以外にも、東アジア各国で不満の声が出てきている。どうやら、韓国にだけ謝罪するとは何事だ、という理由のようだ。

台湾外務省の陳銘政報道官は、菅談話について、「『中華民国』および第2次世界大戦に日本の迫害を受けたすべての国に謝罪すべきだ」と述べているし、11日付の北京紙、新京報は「日本の植民地支配や侵略を受けたのは韓国にとどまらない。北朝鮮も冷酷な統治を受けた。中国、東南アジア諸国も同様に日本帝国主義の苦しみを味わった」と、これもまた、日本がおわびしなければならないのは韓国だけではない、としている。

更に、北朝鮮でも、平壌で12日に開催された「日軍慰安婦および強制連行による被害者対策委員会」において、「日本は歴史を清算し、過去に犯した罪に対する謝罪と賠償を行うべき」との公開書簡が発表され、談話の内容を不十分とする声が上がっていると伝えている。

尤も、これに対しては、13日に岡田外相が、菅談話について「その趣旨は朝鮮半島全体に及ぶと思う」と、政府として北朝鮮向けに新たな談話を出す予定がないことを述べている。

この辺りでも、日韓基本条約の第3条の「大韓民国政府は、国際連合総会決議第百九十五号(III)に明らかに示されているとおりの朝鮮にある唯一の合法的な政府であることが確認される。」の部分を抑えていることが伺える。

とはいえ、菅談話が東アジア諸国のナイーブな部分に火を付けたことは確かで、韓国のみならず、中国、台湾その他の国々から謝罪と賠償を求める動きが出てくる可能性はある。

ただ、やはりというか、中国はこの菅談話に隠された狙いに気づいているようだ。



昨日の「菅談話のポジティブな側面」のエントリーの中で、菅談話にポジティブな側面があるとすれば、日韓の連携を強化する意思があると「対外的」にアピールすること、引いては、日米韓の連携強化を戦略的に行うことで、日本もアメリカが進めている中国包囲網に参加する、という意思表示ではないか、と指摘したのだけれど、中国の人民網が同様の指摘をしている。以下に一部引用する。
 日本の菅直人首相は10日午前、「日韓併合条約」100周年に際する首相談話を発表し、韓国への植民地支配に対して謝罪した。この件は一見、中国とは関係ないように思えるが、中国の人が色々なことに考えをめぐらさないわけにはいかない。…

…この数カ月に多くの疑いや不安が、東北アジアひいてはすべての西太平洋地域に積み重なり、中国に焦点を合わせた様々な配置が見えつ隠れする。また韓国も中国から遠く離れ、米国に傾く情勢だ。日本の侵略をめぐる歴史の争いの中で、中韓は共に日本を糾弾する盟友であったが、いま日韓は歴史に関して「和解」したようであり、日本とすべての隣国との和解がスタートしたのか、それとも日韓は休戦して日本は単独で中国に立ち向かうのか、そしてさらには日韓が協力して中国に対応するという転換点なのだろうか。

 韓国巻き添えにして中国をけん制?

…一部のメディアが、韓国への「お詫び」は、東北アジア地域における中国の影響力を抑制し均衡をとることだと報道していることについて劉江永副所長はこう考える。「急いで結論を出すべきではない。いま日本の政権を握っているのは民主党で、その政策は中国と仲良くし、米国とアジアの間の均衡をとることで、韓国と共に中国に立ち向かうことではない」

中国網日本語版 2010年8月12日「菅首相の韓国だけへの謝罪に神経を尖らせる中国」より引用 

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このように、韓国巻き添えにして中国を牽制するのではないかと警戒をしている。それにしても、国内のマスコミで、この部分を報じているところが殆どないというのはどういうことか。筆者が色々検索したところでも、産経が僅かに触れている程度で、その他マスコミ報道では見つけられなかった。むしろ、朝鮮日報のほうが、よほどしっかりと報道している

ただ、中国にとっては、菅談話を引き合いに、日本に謝罪せよと反日を煽って、迫り過ぎることは、返って、日本国内の反中国感情を刺激することになるし、下手をすれば、民主党政権をぐらつかせる遠因とも成りかねないので、政府レベルでのあからさまな抗議は控えるのではないかと思う。

それよりは、台湾や北朝鮮、更には韓国の市民団体あたりを焚きつけて、日韓、日台関係の分断を図ったほうが効率がよいし、日米関係をぐらつかせるためには、やはり普天間問題で足を引っ張らせたほうがずっとスマート。

だから、今後は、こうした動きを警戒すべきだろうと思われる。

それでも、日本政府が、しっかりとしたスタンスを持って、それらを表向きでは撥ね退けつつ、裏では台湾、アメリカ、韓国と連携してがっちり手を握っている…というのが理想ではあるのだけれど、今の政権はどうなのか。甚だ心もとない。

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画像「中華民国」にも謝罪しろ!「菅談話」に台湾でも不満の声―仏メディア 2010年8月13日9時0分配信

2010年8月12日、台湾外務省の陳銘政(チェン・ミンジョン)報道官は、菅直人首相が日韓併合100年に伴い「韓国に対する植民地支配を謝罪する」談話を発表した件について、「『中華民国』および第2次世界大戦に日本の迫害を受けたすべての国に謝罪すべきだ」と述べた。仏国営ラジオ局ラジオ・フランス・インターナショナル(RFI)の報道として中国紙・環球時報(電子版)が伝えた。

陳報道官は「菅談話」について、「日本の第2次世界大戦に対する反省であり、地域の平和と安全維持にとって非常に重要な効果をもたらす」と評価したものの、「日本に本当に誠意があるのなら、『中華民国』および大戦中に日本の迫害を受けたすべての国に謝罪すべきだ」と述べた。

報道によれば、台湾ではこれ以外にも日本の首相による謝罪が韓国にのみ向けられたことに不満を表す声が多い。「日本に植民地にされたのは韓国だけではない、なぜ『中華民国』に謝らない?」「すべての国に謝らなければ、日本の誠意や善意は感じられない」と言った声が水面下で高まっているという。

記事によれば、日清戦争後の1895年に調印された日清講和条約(下関条約)で、清朝が領有していた遼東半島(中国遼寧省)、台湾全島、澎湖諸島の主権を永遠に日本に割与することなどが定められ、台湾は1945年まで日本の植民地支配を受けた。(翻訳・編集/NN)

URL:http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=44536



画像韓国併合100年の首相談話、中国「歓迎する」2010年8月12日7時44分

 【北京=峯村健司】韓国併合100年をめぐる菅直人首相の談話について、中国外務省の姜瑜・副報道局長は11日、朝日新聞の取材に「日本が歴史について直視と反省をし、アジアの隣国との友好関係を発展させることを歓迎する」と書面で回答した。

URL:http://www.asahi.com/politics/update/0811/TKY201008110374.html



画像【首相談話】中国紙も高い関心「日本のおわびは韓国だけでない」2010.8.11 13:30

 11日付中国各紙は、日韓併合100年を受けた菅直人首相の談話について、第一財経日報が1面に菅直人首相の写真を掲載し「日本が謝罪」と大きく報じるなど高い関心を示した。各紙は談話を評価する見方を紹介する一方で「日本がおわびをしなければならないのは韓国だけではない」(新京報)とも指摘している。

 新京報は、論評記事の中で「植民地支配や侵略を受けたのは韓国だけにとどまらない」として、北朝鮮のほか中国、東南アジア諸国も「同様に日本帝国主義の苦しみを味わった」と指摘した。環球時報は「日本は中国に謝罪するか」と問題提起した。

 各紙は「民主党政権下で脱右傾化している」(新京報)と評価したほか、菅内閣の全閣僚が15日の終戦記念日に靖国神社に参拝しないことを伝えた。(共同)

URL:http://sankei.jp.msn.com/world/korea/100811/kor1008111332003-n1.htm



画像菅談話反応 「韓国だけではない」/「おわびを」98% 中国、謝罪要求の機運 2010年8月12日(木)8時0分配信 産経新聞

 日韓併合100年で菅直人首相が発表した謝罪談話について韓国や中国のメディアは11日付紙面などで大々的に報道した。中国各紙は「中国への謝罪の言葉はひと言もない」など謝罪を促す見解を掲載、韓国メディアも評価の一方、強い不満を示した。両国では首相談話をきっかけに日本の戦争責任や歴史認識を改めて問題視しようとする機運がさらに広がる可能性もあり、日本政府は難しい対応を迫られそうだ。

 【北京=川越一】中国国営新華社通信は10日、産経新聞の社説を引用し、菅首相の謝罪で韓国側が新たな賠償を求める可能性を示唆した。しかし、中国各紙は、談話を日中間の問題にすり替えて報じている。

 11日付の北京紙、新京報は「日本がおわびしなければならないのは韓国だけではない」と題する論評の中で、「日本の植民地支配や侵略を受けたのは韓国にとどまらない。北朝鮮も冷酷な統治を受けた。中国、東南アジア諸国も同様に日本帝国主義の苦しみを味わった」と主張し、今回の謝罪は政治的な道具と断じた。

 清華大国際問題研究所の専門家は国際情報紙、環球時報に対し、「日本は中国に対し、反省は示しているが、謝罪の言葉はひと言もない」と述べた。

 謝罪によって日韓関係を強化し、北東アジアにおける中国の影響力を牽制(けんせい)する狙いがあるとの指摘もある。

 昨年夏、江蘇省南京市の南京大虐殺記念館で日本の漫画家による「私の八月十五日展」が催された。外交筋によると、終戦前後の体験を描いた漫画は好評を得て、今年は中国各地の虐殺記念館で展示される予定になっている。

 同紙が10日、談話発表を受けて実施したアンケートによると、回答者の98%が「日本は中国人民に対し、侵略戦争問題について正式に謝罪し、おわびすべきだ」と答えた。中国人の一方的な歴史認識に変化の兆しが表れていた矢先、菅首相の談話は対日謝罪要求の動きを再燃させかねない。

URL:http://news.nifty.com/cs/headline/detail/sankei-snk20100812061/1.htm



画像菅首相の「談話」、日・韓・朝で「総スカン」―中国メディア 2010/08/13(金) 15:05

  環球時報はこのほど、菅直人首相(写真)によって発表された日韓併合100年に関する談話が、日本、韓国、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)のいずれにおいても「不満を招いている」と報じた。

  同紙では、「日、韓、朝3カ国、菅直人首相の談話に不満」とのタイトルで菅首相の談話に対する3カ国の反応を紹介。「菅直人首相は、朝鮮半島を併合したことに対して、まさか、日本、韓国、北朝鮮の“3方向”から強烈な“お叱り”に遭うとは思っていなかっただろう」などとして、「(菅首相の談話は)誠意が足りない」といった韓国世論や、韓国の主要紙による「菅首相は談話において、日韓併合の違法性や、植民地支配の無効化、従軍慰安婦問題、強制連行した韓国人労働者に対する賠償問題など、韓国がはっきりさせたい問題に何も触れなかった」など、談話に対する厳しい論評を掲載した。

  また、北朝鮮でも、平壌で12日に開催された「日軍慰安婦および強制連行による被害者対策委員会」において、「日本は歴史を清算し、過去に犯した罪に対する謝罪と賠償を行うべき」との公開書簡が発表され、談話の内容を不十分とする声が上がっていると伝えた。

  同紙はこのほか、日本国内においても、政治家や政治ジャーナリストらを中心に、菅首相の談話を「後ろ向き」、「談話のタイミングが唐突すぎる」、「ひとつの国に何回も謝罪する国がほかにあるだろうか」、「謝罪外交」などとする酷評があることにも触れ、談話における関係国や周辺国での評価の低さを示した。(編集担当:金田知子)

URL:http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2010&d=0813&f=politics_0813_005.shtml



画像日韓併合100年:菅談話に中国紙が疑念提起

 日本の菅直人首相が10日、韓国に対する植民地支配を公式謝罪したことについて、中国メディアは「日本が中国を除外し、韓国に対してだけ謝罪したことには政治的背景があるのではないか」との疑念を提起した。

 11日付中国紙・環球時報はトップ記事で、「日本が謝罪した時期は非常にデリケートだ。日本が韓国に対してだけ謝罪したことは、北東アジアの神経を逆なでするものだ」と指摘した。

 同紙はまた、日本が1995年の終戦50年に際し、アジアの隣国に対して謝罪したことはあるが、中国に対してだけ謝罪したことはないと指摘。その上で、「今回の出来事は日本と韓国が手を結び、中国に対処する転換点になるのではないかとの疑念が生じる」と報じた。

北京=崔有植(チェ・ユシク)特派員

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

URL:http://www.chosunonline.com/news/20100812000040



画像菅談話「朝鮮半島全体に及ぶ」 岡田外相明言、日朝交渉に意欲か 2010.8.13 18:15

 岡田克也外相は13日の記者会見で、菅直人首相が日韓併合100年にあわせて10日に閣議決定した菅談話について、「その趣旨は朝鮮半島全体に及ぶと思う」と述べた。菅談話は韓国を名指しした内容で、日本との国交がない北朝鮮への言及はないが、岡田氏は北朝鮮に対しても「植民地支配」への反省とおわびを事実上表明した格好だ。

 岡田氏は「(日朝間では)戦後の問題についての日韓基本条約のようなものがない。そういう状況で、一方的に談話を出すことには必ずしもならない」とも述べ、政府として北朝鮮向けに新たな談話を出す予定がないことも強調した。

 北朝鮮との間では、平成14年9月に訪朝した小泉純一郎首相(当時)が金正日総書記と連名で署名した日朝平壌宣言で、「過去の植民地支配によって朝鮮の人々に多大の損害と苦痛」を与え、「痛切な反省と心からのおわびの気持ち」を表明している。岡田氏は、停滞している日朝国交正常化交渉の進展に意欲を示しているとみられるが、同氏の今回の発言を受けて北朝鮮が今後、「植民地支配」への補償を強く求めてくることにもなりそうだ。

 また岡田氏は「植民地支配から100年というときに日本政府として何も言わないことはあり得ない選択だ」と語り、菅談話の意義を強調。民主党との十分な議論を経ずに談話を発表したことについても「議論すれば当然表に出る。政府の責任でまとめるのが普通だ」と述べた。

URL:http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100813/plc1008131816004-n1.htm

この記事へのコメント

  • mayo5

    反作用(reaction)ではなく、副作用(side effect)の方が正しいのではないでしょうか。

    質的には、予想できない部分での影響です。
    量的には、反作用だったら「作用と大きさが同じ」はずでなんですが、バランスしません。

    謝罪という薬でトリップしたかったのに、もっと強い薬じゃないと効かないと・・。俺にも薬くれっていう人たちも出てきて・・
    2015年08月10日 16:48
  • almanos

    対中関係からの視点はスポッと抜けていました。問題はあの内閣では見事に裏目に出る対応に走る不安があるのですけど。ですが、見方を変えるとあの内閣だからと言う言い訳もできる。
    今までの迷走ぶりを振り返ると、民主党政権はサヨクへの幻想を粉砕し、むしろサヨクへの拒否反応を国民に刷り込む為じゃねえだろうなと思えるくらいの駄目っぷりです。このていたらくで代表選を勝てると思っているなら、管首相は鳩山前首相以上の鳥頭でしょう。
     管首相や岡田氏には、小沢氏が代表選に出ないだろうという読みがあるみたいですけど、見方を変えると「党を割るから代表選を考慮する必要がなくなった」という可能性もある。ま、小沢氏が代表になるのはもう無理でしょう。検察審査会の事もありますが、悪評がつきすぎました。盆休みだというのに目を離せないという困った状況になりそうです。
    2015年08月10日 16:48

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