「日韓基本条約の考え方を確認し、その考え方を踏襲してきた。法律的な形のものはもうすでに完全に解決済みという立場だ」菅首相 於:8/10記者会見
政府は10日午前、日韓併合100年に併せた首相談話を閣議決定して発表した。全く不要な談話だと思うし、撤回できるものなら撤回すべきだとは思うけれど、一応内容を振り返ってみる。
菅談話のポイントは以下の4つと思われる。
A)日韓併合条約が締結され、植民地支配が始まった。当時の韓国の人々は、その意に反して国と文化を奪われ、民族の誇りを深く傷付けられた。
B)植民地支配がもたらした多大の損害と苦痛に対し、改めて痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明する。
C)在サハリン韓国人支援、朝鮮半島出身者の遺骨返還支援といった人道的な協力を今後とも誠実に実施する。また、朝鮮総督府を経由してもたらされ、日本政府が保管している朝鮮王朝儀軌等の図書について、韓国にお渡しする。
D)日韓両国は、民主主義や自由、市場経済といった価値を共有する最も重要で緊密な隣国同士。将来の東アジア共同体の構築をも念頭に置いたこの地域の平和と安定、および世界の平和と繁栄のために協力するパートナーの関係。両国間の未来をひらくために不断の努力を惜しまない決意を表明する。
談話自身は、過去の所謂「植民地支配」に対して、御詫びする。人道的協力は継続するし、要求のあった朝鮮王朝儀軌等の図書(写本)は渡します。といった内容。
村山談話に比べて、言及している範囲が非常に狭い。首相の「談話」というよりは、寧ろ「村山談話の補足」にしか過ぎない印象を受けた。
※村山談話の内容・ポイントについては、2008.12.20のエントリー「田母神論文と村山談話」全7回で解析を試みている。
ただ、強いて言えば、Aの部分が気になった。
Aについては、「韓国の人々は、その意に反して国と文化を奪われ…」の部分が、日本政府として、日韓併合条約自体が「武力による脅迫によって断行されたものであるという認識」を持っていると解釈されることになる。
この部分の認識については、いわゆる歴史認識に属するものであって、個人でどのような認識を持つ分については、自由だけれど、国家として、どのような認識を持つかは、その国の国益を大きく左右するから、慎重に判断する必要がある。
大抵は、どの国も、自国の国益を優先することを前提にした歴史認識を掲げるのが普通だから、他国同士で歴史認識が一致するほうが珍しい。
尤も、村山首相は1995年10月13日衆議院予算委員会で「韓国併合条約」について「双方の立場が平等であったというふうには考えておりません」と答弁し、当時の野坂官房長官も同日の記者会見で「日韓併合条約は…極めて強制的なものだった」と認めていたから、この辺りの認識は当時からあって、今回の菅談話もこれを踏襲したものだとは言える。
それでも、これまで、大きな問題にならなかったのは、日韓基本条約があったから。
日韓基本条約は、大韓帝国との間で結んだ条約の全てをもはや無効であることを確認して、韓国が朝鮮にある唯一の合法政府であることを認めた上で、国交を正常化したもの。
だから、仮に、日韓併合条約が「武力による脅迫によって断行されたもの」であったとしても、日韓基本条約でそれを無効にしている以上、そのことによって、補償なりなんなりの話になることはない。
逆に言えば、日韓基本条約さえ破棄しなければ、これ以上の国家補償は必要ない。
菅談話後の記者会見で、この点について、記者からそのものズバリの質問があり、それに対して、空き菅@けものへん殿は「法律的な形のものはもうすでに完全に解決済みという立場だ」と答えた。日韓基本条約を踏襲して、解決済みとの立場を崩さなかった。
これは、8月4日の参院予算委員会で、仙谷官房長官に対して、日韓基本条約の有効性についてどう考えているかと厳しく問いただして、それが有効であることを引き出した自民党の西田議員の功績なのかもしれないけれど、日韓基本条約を無効だと言わなかったのは、不幸中の幸い。
だから、菅談話というのは、まぁ、平たく言うと「昔のことは御詫びする」以上の事は言ってない。
逆に、韓国国民からみれば、この菅談話は、不十分に映っているのだろうと思う。もしかしたら、国家賠償を期待していたのに、またか、とでも思っているかもしれない。
菅談話に対して、韓国の市民団体は「植民地支配の被害者の補償問題に対する言及もない」「日本が本当に反省しているのか疑わしい」などと、失望の色を隠さないし、韓国大統領府も一定の評価を示したものの、韓国内の世論を考慮して、手放しで褒めるという訳にもいかないようだ。
いずれにしても、日本と韓国の間の国家観の補償問題は解決された、という基本線が維持された以上、これ以上の補償をやりたければ、裏でこそこそやるしかない。
産経新聞によれば、今回の菅談話は、仙谷官房長官が民主党内の反発を押さえ込んで、執念で閣議決定にこぎつけたらしいのだけれど、8月4日の記者会見で、仙谷官房長官は「日韓基本条約は1つのけじめだが、市民レベル、庶民レベル、民族レベルで色々なものが残る。未来志向の障害となるものを取り除く努力をすべきだ」と明言している。
だから、なんだかんだと援助とか支援と言う名の補償を画策する可能性は依然ある。
この辺りはしっかりと国民が見ておく必要があると思う。


菅直人首相は10日午後の記者会見で、日韓間の補償・請求権の問題について、「日韓基本条約の考え方を確認し、その考え方を踏襲してきた。法律的な形のものはもうすでに完全に解決済みという立場だ」と述べ、日韓併合100年に伴う首相談話を受け、改めて補償問題を議論する考えはないことを強調した。
URL:http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/politics/politicsit/426484/

日韓併合100年にあわせた首相談話は、仙谷由人官房長官が民主党内の反発を押さえ込み、執念で閣議決定にこぎつけた。過去の植民地支配への「反省とおわび」を改めて表明することは、昭和40年の日韓基本条約に伴い、「完全かつ最終的」に解決済みとなった個人補償請求問題を再燃させかねない。仙谷氏の“暴走”は政権を揺るがすだけで済むのだろうか。(加納宏幸)
「北朝鮮の拉致や核の問題を解決するには日韓関係を未来志向で強化しなければならない。これは戦略的判断なんだ」
仙谷氏は新たな首相談話を機に補償問題が再燃することを危惧(きぐ)する議員をこう説得して回った。「平成7年の村山談話の踏襲にすぎない」とも強調した。
だが、仙谷氏は4日の記者会見では「日韓基本条約は1つのけじめだが、市民レベル、庶民レベル、民族レベルで色々なものが残る。未来志向の障害となるものを取り除く努力をすべきだ」と明言した。「市民レベル」の補償問題はなお残るとの考えはなお崩していないのだ。
仙谷氏と政治行動をともにしてきた枝野幸男幹事長は9日の記者会見で「いつまで謝罪を続けるのか」と問われ、唐突に元寇襲来を持ち出し、強弁した。
「モンゴルの方と会った時に『先祖が元寇と呼ばれる形で日本に迷惑をかけた』という話が出た。それをもって、いつまでも謝罪を引っ張っているという話にはならない!」
だが、これまで返還に応じなかった朝鮮王室儀軌を引き渡すことは、日韓基本条約の土台を揺るがし、決着済みの賠償請求問題を再燃させかねない。
それだけに、党内の保守系議員は談話の閣議決定に強く反発する。6日に首相官邸で行われた仙谷氏との昼食会では、松原仁、笠浩史両衆院議員が慎重な対応を求めた。9日夕の政府・民主党首脳会議でも玄葉光一郎公務員制度改革担当相(党政調会長)が「補償につながらないようにしてほしい」と念を押した。
首相談話は、多様なイデオロギーが雑居する民主党の脆(もろ)さを露呈するとともに、菅直人首相がもはや仙谷氏の「傀儡(かいらい)」となりつつあることを示した。9月の代表選で「菅降ろし」の導火線になる可能性もある。
だが、外交に関わる政治判断の誤りは政権内にとどまらない。日本、そして日本人の将来に禍根を残す結果を招かなければよいのだが…。
URL:http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100810/plc1008100025000-n1.htm

【ソウル10日聯合ニュース】日本の菅直人首相が10日に韓日併合100年を迎え植民地支配と関連し、「心からのおわび」を表明する談話を発表したが、韓国の市民団体は一斉に失望感を示した。また、日本政府が「朝鮮王室儀軌」など朝鮮半島由来の図書に対する返還意思を明らかにしたことに対しても、「当然のこと」だと厳しい評価を下した。
勤労挺身隊として戦時に日本企業で労働を強いられた韓国人女性らの救済を求める市民団体「勤労挺身隊ハルモニ(おばあさん)とともにする市民の集まり」は、韓日併合100年という政治的に重要な時期の意味を見過ごした談話だとし、過去より進展した内容とは言い難いと評価した。
植民地支配の被害者の補償問題に対する言及もない、言語的修辞にとどまったことが残念だとし、全体的な流れから見ると、韓国と日本間の不信と障壁を乗り越えるには不十分だったとした。
太平洋戦争犠牲者遺族会も、「本当に期待に及ばない内容だ。日本が本当に反省しているのか疑わしい。談話にある『痛切な反省』も信じられない」と述べた。
文化財返還と関連しては、国際法改正で日本が保有したくてもできなくなっていると指摘し、日本は韓国から持ち出した文化財をすべて返還すべきだと強調した。
韓国挺身隊問題対策協議会もまた、植民地支配で苦痛を受けた被害者問題に対する明確な見解を明らかにせず、謝罪だけするのはまったく意味がないと強調。歴史問題を真実で解決しようとするなら、被害者への補償と立法措置を行うべきだと提案した。
談話発表時期に対する批判の声も上がった。
民族問題研究所の朴漢竜(パク・ハンヨン)研究室長は、謝罪談話文は8月15日か、併合条約締結日の同22日など歴史的な日に発表するのが原則だと指摘。その前に談話文を発表したのは、終戦記念日の15日を、韓国を排除した日本だけの行事にし、国恥日(8月29日、韓国併合条約公布日)は無視する意図があるようだと分析した。また、アジア諸国への植民地支配と侵略を謝罪した1995年の「村山談話」以上の内容はなく、「非常に失望しており、だまされた感じ」だと話した。
一方、学界も「要点を避けた談話」と手厳しい評価を下す。金泳鎬(キム・ヨンホ)柳韓大学総長、李泰鎮(イ・テジン)ソウル大学名誉教授、姜万吉(カン・マンギル)高麗大学名誉教授らは、韓国併合条約の違法性を認めなかった点、慰安婦の強制動員への言及がなかった点などを挙げ、今回の談話は村山談話水準にとどまったと指摘した。
URL:http://japanese.yonhapnews.co.kr/relation/2010/08/10/0400000000AJP20100810001900882.HTML

【ソウル10日聯合ニュース】李明博(イ・ミョンバク)大統領は15日に発表する光復節(日本植民地支配からの独立記念日)を祝う言葉のなかで、日本の菅直人首相が発表した談話に対する韓国政府の立場を明らかにすると伝えられた。
政府関係者は10日、同日に日本が発表した首相談話への回答を李大統領が光復節を祝う言葉の形で示す案を、韓日両国政府が共感の下に進めていると明らかにした。
日本の首相談話について、青瓦台(大統領府)が「過去の談話より一歩進んだ」と1次評価を出したことから、光復節の言葉も、談話内容の評価を下げるものにはならない見通しだ。ただ、韓日併合の痛みや苦痛を記憶している韓国国民の期待には大きく及ばなかったという国内世論を考慮し、楽観一辺倒の評価にもならないだろうと、政府側は説明している。韓国と同様に、自国内の保守世論を意識しなければならない日本政府の立場も考慮してこそ、実質的な後続成果が出せるという判断も、光復節の言葉の草案過程で反映されるだろうとしている。
このため光復節に李大統領が発表する言葉は、日本首相の談話をおおむね肯定的に評価しながら、韓日関係が未来志向的に発展するには日本政府の実践意思が重要だと強調するものになると伝えられた。
ただ、違法な韓日併合過程の無効を直視していない点、天皇の訪韓など象徴的な措置が言及されなかった点など、首相談話の不足部分を指摘するか、指摘するならばどの水準にするのか、代案を提示するかなど、敏感な問題については、最終段階まで慎重に議論していくとされる。
政府関係者は「光復節の言葉で日本の作品をどの水準で評価し、どの程度のトーンで語るかはまだ確定していない」とした上で、肯定的な水準、若干トーンを調整する方向で決まりそうだと話した。
URL:http://japanese.yonhapnews.co.kr/relation/2010/08/10/0400000000AJP20100810004400882.HTML

【ソウル10日聯合ニュース】日本の菅直人首相が10日、韓日併合100年を機に談話を発表したが、両国関係が大きく進展するとみるのは時期尚早のようだ。
歴史問題を前向きに解決しようとする誠意と努力をみせたことは評価されるが、韓国併合条約の違法性と無効の自認を求める韓国国民の期待に大きく及ばないのは事実だ。政府筋は、「菅首相の談話が日本による韓国併合の違法性までを認めたわけではない。韓国国民の期待に完ぺきに応えたとは言えない」と手厳しい評価を下す。
実際、菅首相は談話で「植民地支配がもたらした多大の損害と苦痛に対し、ここに改めて痛切な反省と心からおわびの気持ちを表明する」と表明し、植民地支配そのものではなく、それがもたらした結果に対して謝罪するという、1995年の「村山談話」の基調を維持した。
ただ、日本の植民地支配が強制的だったことを間接的にでも認めたことは、ある程度評価に値するというのが大方の見方だ。菅首相は「三・一独立運動などの激しい抵抗にも示されたとおり、政治的・軍事的背景の下、当時の韓国の人々は、その意に反して行われた植民地支配によって国と文化を奪われ、民族の誇りを深く傷つけられた」と明言している。
だが、併合そのものの違法性や強制的な併合を認めたわけではないため、韓日併合は合法的なものとして残された。このため、韓国国民が望んでいる日本政府による補償問題は解決の可能性が高くないと予想される。
植民地時代に朝鮮総督府を経由して持ち出され、現在日本政府が保管している朝鮮王室儀軌などの図書を返還する意向を示したことも、日本に散在する数多くの韓国文化財の返還問題を解決したとは言えず、限界を露呈した。その一方で、返還方針の表明は文化財問題解決に向けた第一歩として意味があるとの見方もある。
また、菅首相が日本国内の保守勢力の抵抗や党内部の複雑な事情など、難しい状況に置かれていたにもかかわらず、誠意を示そうと努力したことは評価しなればならないとの指摘も出ている。
政府当局者は、菅首相の談話で韓日関係は一歩進んだといえるが、楽観視するのは早いと指摘。「両国関係を未来志向的なパートナー関係に発展させるため、文化財返還をはじめ、両側が努力する部分がまだ多く残っている」と述べた。
URL:http://japanese.yonhapnews.co.kr/relation/2010/08/10/0400000000AJP20100810002000882.HTML

政府は10日午前、日韓併合100年に併せた首相談話を閣議決定し発表した。首相談話では、日本による韓国の植民地支配に対し「多大の損害と苦痛に対し、ここに改めて痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明いたします」と明記した。談話の全文は以下の通り。
◇
本年は、日韓関係にとって大きな節目の年です。ちょうど百年前の八月、日韓併合条約が締結され、以後三十六年に及ぶ植民地支配が始まりました。三・一独立運動などの激しい抵抗にも示されたとおり、政治的・軍事的背景の下、当時の韓国の人々は、その意に反して行われた植民地支配によって、国と文化を奪われ、民族の誇りを深く傷付けられました。
私は、歴史に対して誠実に向き合いたいと思います。歴史の事実を直視する勇気とそれを受け止める謙虚さを持ち、自らの過ちを省みることに率直でありたいと思います。痛みを与えた側は忘れやすく、与えられた側はそれを容易に忘れることは出来ないものです。この植民地支配がもたらした多大の損害と苦痛に対し、ここに改めて痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明いたします。
このような認識の下、これからの百年を見据え、未来志向の日韓関係を構築していきます。また、これまで行ってきたいわゆる在サハリン韓国人支援、朝鮮半島出身者の遺骨返還支援といった人道的な協力を今後とも誠実に実施していきます。さらに、日本が統治していた期間に朝鮮総督府を経由してもたらされ、日本政府が保管している朝鮮王朝儀軌等の朝鮮半島由来の貴重な図書について、韓国の人々の期待に応えて近くこれらをお渡ししたいと思います。
日本と韓国は、二千年来の活発な文化の交流や人の往来を通じ、世界に誇る素晴らしい文化と伝統を深く共有しています。さらに、今日の両国の交流は極めて重層的かつ広範多岐にわたり、両国の国民が互いに抱く親近感と友情はかつてないほど強くなっております。また、両国の経済関係や人的交流の規模は国交正常化以来飛躍的に拡大し、互いに切磋琢磨しながら、その結び付きは極めて強固なものとなっています。
日韓両国は、今この二十一世紀において、民主主義や自由、市場経済といった価値を共有する最も重要で緊密な隣国同士となっています。それは、二国間関係にとどまらず、将来の東アジア共同体の構築をも念頭に置いたこの地域の平和と安定、世界経済の成長と発展、そして、核軍縮や気候変動、貧困や平和構築といった地球規模の課題まで、幅広く地域と世界の平和と繁栄のために協力してリーダーシップを発揮するパートナーの関係です。
私は、この大きな歴史の節目に、日韓両国の絆がより深く、より固いものとなることを強く希求するとともに、両国間の未来をひらくために不断の努力を惜しまない決意を表明いたします。
URL:http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100810/plc1008101141007-n1.htm
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almanos