大事に至る前に治してしまうのが統治能力(無駄とは何か 後編)

 
皇帝が雇鵲の名声を聞き、彼に尋ねた。

「お前は三人兄弟で皆、医者だそうだが誰が一番有名か?」。

 雇鵲が答えて言う。
「長兄は皆に、今のような生活のしかたではいずれ病気になるから生活を改めなさい、と養生法を説いてまわっています。ですからちっとも有名ではありません。
 次兄は病気を軽いうちに治して大事に至る前に治療してしまいます。ですからこれまた有名ではありません。
 ところが私、雇鵲は死にかかかった病人に刃を用い、強力な薬、時には毒薬さえもうまく使って治しますから世間では一番有名です」
『史記』


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山中貞則氏は、当時の大蔵官僚を説得して、関税部分を、国庫に積まないで、畜産振興事業団にお金をプールするような仕組みを作っていて、実に4000億円のお金がプールされていたという。これは口蹄疫のような非常事態に対処するためのもの。

こうしたお金の裏付けがあったからこそ、2000年の口蹄疫の時には、中川義雄議員(当時)にぽんと100億を預けて、対応してこい、と言えたのではないか。

今の民主党政権は、やれ無駄遣いの排除だ、事業仕分けだ、なんてやっているけれど、その「お金が無駄だ」なんていう台詞は、そのお金がなくても、やるべきことをちゃんとやれて始めて言えること。

今回の赤松口蹄疫のように、28万9千頭も殺処分しておきながら、ちゃんと対応できたとは思わない。

不測の事態は、「前もって予測」することが不可能であるが故に、「不測」というのであって、その為の備えの元となる予算は、たとえ無駄に見えたとしても、ある程度は確保しておかなくちゃならない。

国の予算の中で「予備費」という項目があるけれど、これは、こうした予定外の支出や予算を超過した支出へ対応するために準備しておく費用。だから、一見無駄のように見えても、緊急時のセーフティネットの役目を果たすから、ゼロにするのは危険極まりない。

それなのに、民主党は昨年復活させた、生活保護世帯への「母子加算」の財源に21年度予算の予備費などから約60億円を充当した。そして更に、事業仕分けで公立の小中学校の耐震化事業費を大幅削減しておいて、地方には、10年度予算予備費を使っての、耐震化事業の実施を促している。

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7月21日に文部科学省の調査で、全国の公立小中学校の施設12万4238棟のうち、震度6強以上の地震で倒壊する危険性が高い建物が、4月1日時点で推計7498棟に上ることが明らかになったと報告されている。

その対応に政府は、予備費を使えという。

繰り返しになるけれど、予備費は不測の事態に備えるためのもので、あらかじめ危ないと分かっているものに対しては、それ用に予算を取ればいいだけのことだし、そうすべきもの。それを予備費から充当するのは、本来の趣旨から大きく外れてる。

被害が大きくなってから、慌てて対応してなんとか治めたとしても、そこまで悪くしてしまった時点で、日本の国益を損なっているし、その回復には、莫大な費用が必要になる。

これは、冒頭の「雇鵲の話」ではないけれど、三男の雇鵲が、死にかかかった病人に刃を用い、強力な薬、時には毒薬さえもうまく使って治す、というようなもの。本当は、長兄や次兄のように、大事に至る前に治してしまうのが最上。

こうしてみると、2000年当時の自民党は、長兄とは言わないまでも、次兄くらいの腕はあったのだと思う。それ故に、自民党政権の統治の腕は「ちっとも有名」ではなく、マスコミらも報道することはなかった。

だけど、今や民主党政権になって、漸く国民も、雇鵲の兄の治世を過ごしていたのだ、という有り難さを身に沁みて感じているはず。

最早、ジミンガーといっても誰も信用しない。

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画像●公立小中、7498棟が倒壊の恐れ 2010年07月22日17時48分 

 公立小中学校の校舎や体育館などの施設12万4238棟のうち、震度6強以上の地震で倒壊する危険性が高い建物が、4月1日時点で推計7498棟に上ることが21日、文部科学省の調査で分かった。2009年度中に1682棟の耐震化が完了した半面、耐震診断が進んだ結果、1871棟が新たに危険と判定され、危険な建物は前年同期から189棟増加した。
 調査結果によると、全体の耐震化率は73.3%で、前年から6.3ポイント改善した。耐震性に問題があるとされた26.7%(3万3134棟)の内訳は、耐震性がなく未改修が3万1665棟、耐震診断未実施が1469棟。
 このうち、危険性の高い推計7498棟(診断未実施分も含む)の都道府県別内訳は、大阪が最多の545棟、次いで北海道503棟、埼玉394棟など。耐震化率は、神奈川(96.1%)、静岡(94.3%)、宮城(93.5%)などが高く、山口(53.0%)、広島(53.3%)、茨城(55.7%)などが低かった。
 調査には、09年度補正予算などで工事中の建物や、10年度当初予算などによる耐震化事業は含まれていない。政府は10年度予算予備費も活用した耐震化事業の実施を地方に促しており、これらの工事が完了すれば、耐震性に問題のある建物は、約9400棟減り、約2万3700棟になる見込みだ。 (了)

URL:http://book.jiji.com/kyouin/cgi-bin/edu.cgi?20100722-4



画像2009/10/22 木曜日 at 5:59 PM 母子加算、12月復活決定 就学・学習支援費も存続

生活保護のひとり親世帯に対する「母子加算」が、12月から復活することが決まった。長妻昭厚生労働相と藤井裕久財務相が21日夜、電話で協議し、今年度支給される4カ月分の財源として予備費から60億円を充てる方向を確認した。23日の閣議で正式決定する。

長妻氏は、後期高齢者医療制度や障害者自立支援法の「廃止」など暮らしにかかわる公約の実施を次々と表明しているが、実現するのは母子加算の復活が初めてのこと。生活分野では、最初の政権交代の「果実」と言える。

母子加算は、18歳以下の子どもがいるひとり親世帯の生活保護費に上乗せされるもので、約10万世帯が対象。都市部で子ども1人なら月2万3260円が支給されていたが、今年4月に全廃された。財務省は財源を圧縮するため、母子加算復活の条件として、高校の就学費や小中高生の学習支援費などの事実上の廃止を求めたが、最終的に存続させることとなった。

母子加算の復活は、民主党のマニフェスト(政権公約)や与党3党の連立政権合意に盛り込まれている。長妻氏は就任直後から「年内復活」を明言しており、財務省と財源の調整を進めていた。

来年度分は180億円が必要となるが、厚労省は来年度予算の概算要求の中で金額を示さない「事項要求」にしている。

URL:http://www.asahi.com/politics/update/1022/TKY200910210554.html

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