「本日宮崎市を中心とする移動拠出制限を解除したことにより、県内全域がこれまでのような危機的な状態から脱したと判断させて頂きまして、非常事態宣言を27日午前0時を持って全面的に解除することにしました」東国原宮崎県知事 7/27
宮崎県は7月27日、口蹄疫の防疫対策のための移動・搬出制限区域および非常事態宣言を全面解除した。ようやく、赤松口蹄疫はひとまず終息した。
それでも、28万9千頭が口蹄疫の犠牲になった事実は変わらない。
今の民主党政権の駄目さ加減は今更いうこともないのだけれど、10年前に宮崎県と北海道で起こった口蹄疫では、当時の政府の迅速な対応によって、わずか700頭の殺処分で済んだ。この差は何か。
こちらのサイトでは、2000年の自民党政権の口蹄疫への対応と、民主党の口蹄疫への対応を比較しているのだけれど、この比較表をぱっと見した限りでは、筆者には、正直何処に差があったのかよくわからなかった。
ただ、よく読んでいくと、次のような違いがあることが見てとれる。
1.口蹄疫感染の疑い発表後の初動対応で、2000年では疑いの段階で早々に殺処分に取りかかったのに対して、今回のは、殺処分の穴から地下水が出たため、殺処分を断念するという不運もあったが、殺処分そのもの対応が進まず、消毒の強化のみに留まったこと。
2.前回の発生は農家のまばらな地域だったが、今回は密集する地域で、豚も感染していたこと。
3.前回発生の口蹄疫ウイルスは、反芻動物、とくに乳牛、緬・山羊に対しては病原性が低く、ウイルス伝播も起こりにくいタイプだったこと。
ということで、前回は口蹄疫ウイルスが弱いのに加えて、農家のまばらな地域での発生した状況にも関わらず、県や政府が感染疑いの段階で殺処分に踏み込むなど、先手先手の対応を取ったことが、700頭の殺処分で済んだのだと見ていいように思われる。
ところが、今回のは、口蹄疫が強く、また農家の密集地域で起こったのに加えて、殺処分への取り組みが遅かったことが、結果的に致命傷になったのではないかと言わざるを得ない。
口蹄疫の強さの違い、発生地域の密集度の差など、口蹄疫の発生状況に差があるのは、もう自然現象としては仕方ないことなのだけれど、それでも、殺処分などの対応については、県や政府でできる部分。
今回の例でいけば、前回以上の危機意識と対応をしなければならなかったことになるのだけれど、時間はもとに戻らない。これは今後の教訓とするしかない。
翻って、2000年当時の自民党政権での対応はどうだったかというと、擬似感染の疑いの段階で、政府がきちんと責任を持って、殺処分の指示を出していたことがやはり大きい。
当時の自民党政権は、初期の段階から非常な危機意識を持って口蹄疫に対応していた。当時宮崎で発生した口蹄疫は、しばらくして北海道に飛び火したのだけれど、自民党は100億の金を用意して、口蹄疫の抑え込みに掛かった。その結果、費用は、37億円で済んだのだという。
当時、北海道の口蹄疫の対応をした、元参議院議員で、今は「たちあがれ日本」に所属する中川義雄氏は、5月19日の「たちあがれ日本」の記者会見で次のように述べている。
「擬似感染の中にあってですね、全て擬似感染、国際的に陽性か陰性かわからない、ごたごたごたごたしている時に「全頭殺処分にしろ、というその経費その他については全部党が責任を持つ」言っていたんです。それでそこで収まってたと思っていたら、それが北海道に飛んだ十勝の本別町というところに700頭以上の肉牛を飼っている農家でした。
当時、江藤隆美さんは私を呼んで、「すぐ北海道へ飛べ」と 「およそ、科学者だとか治験が少ないから、陰性だとか陽性だとか言って、もたもたしているはずだ」と「みんな戸惑っているはずだ。」
当時は、陽性か陰性だとかいう判断を国際的に何週間もかけてようやく陽性だとか陰性だとかという話がでた。宮崎では陽性でも陰性でもないうちに殺処分して結果的に陽性ということがあとでわかった。 北海道でも陽性か陰性かわからない擬似感染という段階で全頭処分させる。これはたいへんなことなんです。
700頭の大きな牛を全部埋めてやることは、獣医さんもそしてまた牛も異常に気がついて動かなくなるんです。ですから農業大学校の生徒だとか先生あらゆる人を動因して殺処分して結果としてこれが全部陽性であることがわかった。
擬似感染の段階で全部処分してしまった。ですから、そこで終わったんです。
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当時は、立派な政治家が日本にいて、山中貞則さんて人が牛肉の自由化を許す代わりに、牛肉の関税を全部、畜産振興事業団に基金として預けておいて、畜産業界がたいへんなことになったらそれを機動的に使えるお金を用意していたからできたんです。5月19日 「たちあがれ日本」記者会見より
この会見をみて強く思うことは、やはり、政治家の決断力の有無がいかに大きな差となって表れるか、そして、その決断を実現させる予算なり金の確保が如何に大切であるか、ということ。
政治家の資質とはかくも重要なものであり、国民の側も、たった一度の政治の失敗が取り返しのつかない事態を招くということがあることを、もっと自覚する必要があるだろう。


口蹄(こうてい)疫問題で宮崎県は十七日、口蹄疫対策特別措置法に基づき、高鍋町の農場経営薦田(こもだ)長久さん(72)が飼育する民間種牛六頭の殺処分を終了した。農場から排せつ物などを運び出し、畜舎の消毒も実施。県は十八日午前零時に、感染多発地で最後に残っていた同農場から半径十キロの移動制限区域を解除した。
感染多発地域の家畜の制限区域は四月の発生確認から三カ月ぶりにすべてなくなり、残りは宮崎市の発生農場を中心とする区域だけ。新たな発生がなければ二十七日午前零時に解除され、計約二十八万九千頭が犠牲になった口蹄疫は終息を迎える。
薦田さんは十七日午後、「種牛の命を守れなかったのは残念だが、この問題を通じて、一生懸命頑張っている農家の気持ち、畜産の姿をいろんな人に分かってもらえたのではないか」と話した。
薦田さんは、政府と県が五月に実施したワクチン接種に同意せず、「種牛は公共性が高い」と保護を求めていた。
URL:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2010071802000077.html

宮崎県の東国原英夫知事は、県庁前で27日午前0時に記者会見し、宮崎市で発生した農場を中心とする家畜の移動、搬出制限区域を全面解除した。発生地域の住民に外出自粛などを求めてきた非常事態宣言をも解除した。
東国原知事は「本日宮崎市を中心とする移動拠出制限を解除したことにより、県内全域がこれまでのような危機的な状態から脱したと判断させて頂きまして、非常事態宣言を27日午前0時を持って全面的に解除することにしました」と発表した。
4月20日の発生確認以来、およそ3か月ぶり宮崎牛ブランドを支える種牛を含め約29万頭の牛・豚が犠牲となり、地元の経済に甚大な被害がでた。また観光業界では宿泊キャンセルが相次ぎ大きな打撃を受けた。
東国原知事は「県内にとどめた一歩も出さなかったのは、本当に県民の皆様や県内外の応援の方々の大変な御尽力の賜物だと、こういう事例が二度と起こらないように十分に検証しマニュアルや予行演習などをして、万全の体制を構築していくことが日本の畜産界のためになる」と述べた。
県は非常事態宣言の全面解除後も、農場の消毒徹底や一般車両の消毒ポイントへの立ち寄りを引き続き求め防疫対策を取っていきたいとしている。
URL:http://jp.ibtimes.com/article/biznews/100727/58096.html

■平沼先生のホームページの動画のひとつ『口蹄疫の対処で見るように危機管理のなさが露呈した民主党』(2010年5月24日)を、勝手ながらテープ起こしさせて頂いた
ニュースで、民主党人気が回復してきたことを知った。
これに驚いて、居てもたってもいられなくて、以下、述べさせて頂く。
平沼赳夫先生のホームページがある。
私は、時折覗かせて頂いているし、平沼先生のご著書もアマゾンで入手して(苦笑)、気分転換を兼ねて、出来るだけ読むように努めている。
そして、この記事には仰天した。
平沼先生のホームページの動画のひとつ
『口蹄疫の対処で見るように危機管理のなさが露呈した民主党』(2010年5月24日)
を、勝手ながらテープ起こしさせて頂いたものである。
「自由民主党」ときちんとおっしゃっているところを「自民党」に直したりなど、言葉通りではないことをお断りしておく。
今夕の「姚江の会」の支度もあって時間がないので、以下は「前篇」である。
■「この100億を使って、一気にこれを収束を迎えるように手を打て」
「口蹄疫(こうていえき)というのは、蹄(ひづめ)が二つに割れている動物に起きる伝染病です。ですから、牛とか豚に起こりますが、馬には起こりません。症状は、蹄のところに潰瘍が出来たり、それが皮膚病に広がったり、あるいは口からよだれを出して、足が痙攣したりして、大変な症状を呈します。
ウイルスが媒介をして、伝染力が大変強烈です。
まだ、自民党が政権を持っている時に、立派な政治家がおりました。私も尊敬しておりましたけれども、山中貞則(ていそく)先生です。
この方は、畜産ということで、非常に力を入れられた方です。
そしてこの国の税制に関しても大変な知識をお持ちでして、当時の大蔵官僚も、税制の事を勉強するのに、わざわざ山中先生のところへ行って勉強した、そんな逸話も残っております。
そして、牛肉をこの日本に輸入する時に、山中先生は、当時の大蔵官僚を説得して、関税部分を、国庫に積まないで、畜産振興事業団にお金をプールするような仕組みを作りました。
4000億円のお金が蓄積されておりました。何で蓄積したかと言うと、非常事態に対処するためのお金として用意したわけです。
皆さま方もご記憶があるかと思いますが、狂牛病、鳥インフルエンザという問題もありました。
そして今からちょうど10年前に、口蹄疫が日本で発生したわけです。
その時に、江藤隆美先生という代議士がおられました。
「これは早期に撲滅をしなければいけない」
そして、今、申し上げたように、畜産振興事業団には4000億円のお金がある。その中から、一参議院議員に、その人の選挙区で、北海道で起こっておりましたから、「この100億を使って、一気にこれを収束を迎えるように手を打て」
こういうことで、その参議院議員は、わずか700頭を殺処分、残念ながら病原菌を持っておりますと伝搬も致しますので、殺処分しまして、終焉を遂げることが出来ました。
100億円用意しておりましたが、手の打ちどころが早かったために、37億円で終わらせることが出来たわけです。
私は、これが本当の危機管理だと思うのです。
しかるに、10年後、今の状況はどうでしょうか。
新聞でも書いておりますように、その最高責任者の農林水産大臣※は、そのことを知っていながら、9日間も海外に渡航いたしました」
「本当でしたら、責任の省にある農林水産大臣は、現地に飛んで一日も早い解決のために、大ナタを振るわなければならないのに、9日間もこの国を開けて海外に行っていた。
そうしましたら、先ほど言ったように、10年前は700頭ですみましたけれども、今や、新聞によりますと20万頭を超えている。そして、これがさらに、他の県にも飛び火する恐れがある。
そうすると、いくらお金がかかるか分からないという問題になってしまっている。
これはいまの民主党政権が危機管理という意味でこの問題をほったらかしにして、何10万頭という問題にあいなったわけです。
皆様方の一部には、事業仕分けというのは評判がいいのかも知れません。
しかし、先の事業仕分けで畜産振興事業団にある4000億は無駄だということでカットされてしまいました。
本当の危機管理ということで用意していおいたものが、帳簿だけ見て、これは無駄だという形でカットした。
例えば、科学技術立国の日本のスーパー・コンピュータの予算が
『何故1位じゃなければいけないんだ。2位でもいいでしょう』
こういう発想で、危機管理の、せっかくためたお金までカットされてしまった。
我々は、国民の皆様方と共に反省をしていかなければならないと思っており、敢えて皆様方にご報告をさせて頂いたしだいです」
以上である。
URL:http://blog.livedoor.jp/akio_hayashida/archives/1113462.html
URL:http://blog.livedoor.jp/akio_hayashida/archives/1113955.html
この記事へのコメント
日比野
いえ、暗愚です。民主党政権は。
そして、優秀だとは必ずしも言えないかもしれませんが、自民党政権は、統治という意味では合格点レベルに達していた政権だと思います。
なぜなら、政治は結果責任であるからです。自民党政権時では、口蹄疫を初期の段階で封じ込めた。民主党政権ではそれが出来なかった。それが全てです。
官僚主導だろうが、お膳立てだろうが、最終的な責任は政府にあります。官僚がいくら官権を発動したとしても、それを許す、又は許さないの権限と責任は政治家にあります。
その証拠に、政治家が「官僚は黙っていろ」といった途端、官僚は身動き出来なくなったではないですか。
それに、小泉内閣以降に「官僚は黙っていろ」となったと仰いますけれども、麻生政権時の山口豪雨災害時での対応と復旧は迅速でした。崩れた高速道路の復旧は僅か2日かそこらだったかと記憶しています。
あと、「宮崎県の知事は所詮何も分かっていない」と仰っていますけれども、何をもって何も分かっていないと判断されたのでしょうか?
もう少し説明をお願いできますか?
クマのプータロー
sunbird
持ち上げても持ち上がらないものは仕方なしです。
mayo5
・・鳩山前首相「国益にプラスなるなら」 金元工作員との面会場所に別荘提供
求められたり、実現するものではなく、単なる言葉のアクセサリー。
rie
お返事ありがとうございます。自民党政権あるいは自民連立政権を称揚したいご様子ですが、福田と麻生は裏では官僚の言いなりですよ。ただ、小泉以前との比較でいうと、官僚は動かなくなっているようです。予算も厳しく、外部委託業務も多いと聞いています。予算配分は大変だとも聞いています。
確かに自民党政府はこうした事態に慣れていたのでしょう。しかし、災害と家畜伝染病をあげつらって、それを材料に統治能力を一般化し、少なくても危機管理の点とはいえ、「自民党は優れ、民主党は劣る」主旨のご指摘は短絡の印象をぬぐいきれません。ことばが過ぎますが。。。この点ご寛容下さいね。さらに政治は、結果責任がすべてと言い切るのなら、自民党政権あるいは自民連立政権のもたらした禍を何としましょうか。
東国原は最初実態を承知せず、風評被害に関心がいったことが失策としてあるようです。宮崎県の担当者も10年前のことなので後手後手だったとか。
物事の原因はやはり「構造」としてとらえた方がよいと思うのです。
tekitou
・具体的にどうぞ
で済む話だと思うが。