ASEAN諸国のアメリカシフトと見直される自由と繁栄の弧

 
昨日のエントリーの続きです。しばらく、このシリーズが続くかもしれません。

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4.ASEAN諸国のアメリカシフトと見直される自由と繁栄の弧

今回の日本政府の船長釈放は、周辺諸国、とりわけ、東南アジア諸国に大きな衝撃を与えました。彼らは既に、南シナ海において、中国の圧力を受けているからです。

たとえば、南沙諸島は、中国、フィリピン、ベトナム、マレーシアなどが領有権を争っていますけれども、1995年に、中国は、ミスチーフ礁等フィリピン主張の島を占領して軍事施設を構築し、それ以降、周辺海域を中国が実効支配しています。

それまでは、フィリピンは、中国漁船を拿捕、漁民を拘束したり、中国漁船を撃沈したりして対抗していたのですね。

ところが、1992年にアメリカ軍がフィリピンから撤退し、中国が施設を建設してからというもの、フィリピン軍による中国漁船の拿捕はなくなっていきました。アメリカという後ろ盾を無くし、中国軍に対抗できる力が無くなったからです。

中国が南沙諸島に軍事施設を建設した経緯については、先日、石原都知事が会見でコメントしていましたけれども、なんでも、秘密部隊が夜中に海の中に潜って、中国の古銭や土器の破片を海中にばら撒いて、次に調査団が行って潜ってみたら、お金が出てきた、土器の破片が出てきた、と嘯く。そして、元々、ここは中国の領土だと言い張って基地を作ったということですね。

まぁ、力づくのやり方としか言い様がありませんけれども、中国は、島を獲ろうとしたら、そこまでするのだ、と警戒して置くに越したことはないと思うのです。

ASEAN諸国はその経済力からいって、単独では、中国の軍事的圧力に対抗することは、残念ながらできません。その意味では、今回の尖閣沖衝突事件で、中国と同程度以上の経済力がある日本が中国の圧力にどう対抗するのか、ということを固唾をのんで見守っていたはずですね。

ところが、結果はご覧のとおりです。



日本が中国に屈したとなれば、ASEAN及び東アジアにおいて、中国に対抗できる国は存在しません。ASEAN諸国は青ざめたと思います。

となると、残るはアメリカしかない。

先日、ニューヨークで開かれたオバマ大統領とASEAN首脳との昼食会では、南シナ海問題についての討論が行われ、ある首脳は、「中国は南シナ海のほぼ全域に対して主権を主張している」と、もらしたといわれています。

今後、ASEAN諸国、或いは、オーストラリアもそうかもしれませんけれども、アメリカとの関係を強めてゆく、所謂、「アメリカシフト」を起こしてゆくはずです。

今回のことで、日本は、ASEAN諸国の信頼を落とすことにはなりましたけれども、かといって、彼らから見捨てらたというわけでもないのです。彼らは、引き続き、中国の領土拡張に対する牽制の一翼を担ってほしいと思っているはずですね。

なぜなら、日本はアメリカと同盟を結んでいるからです。日米同盟があり、沖縄に米軍基地をおいて、第七艦隊を整備できる横須賀という母港まで備えている。このことは、ASEAN諸国にとって重要な意味を持ちます。

昔、日米安保条約は日本の軍国主義を封じ込めるためのものであるという、いわゆる「壜の蓋」論というものがありましたけれども、ASEAN諸国からみれば、在日米軍は、中国の領土拡張政策を封じ込める「壜の蓋」にもなっているということです。

昨今、思いやり予算だなんだ、とやり玉に挙げられますけれども、少なくとも、日本は、東アジアにおいて、在日米軍および第七艦隊を稼働できる環境を提供している唯一の国です。その役割はますます増大するものと思われます。

今後、ASEAN諸国のアメリカシフトと連携する形で、日本でも、かつて麻生総理が提唱していた、「自由と繁栄の弧」構想が見直されると思います。

つまり、インド辺りから、ASEAN、日本へと繋がる大きな連携がアメリカをバックに構築される流れが起きてくると見ています。

要するに、中国に対する包囲網ですね。これが徐々に作られていくことになると思います。


この記事へのコメント

  • mayo5

    スプラトリーを南沙と呼ぶこと自体がすでに中国の術中。日本人には呼びやすいのですけれど。
    東海とか毒島とか・・
    2015年08月10日 16:48
  • ちび・むぎ・みみ・はな

    > 要するに、中国に対する包囲網ですね。
    > これが徐々に作られていくことになると思います。

    麻薬と一緒. 威張り出したら辞められない.
    従って, 覇権国家はその覇権故に亡びていく.
    2015年08月10日 16:48
  • 白なまず

    愈々始まりそうですが、暫くはどうにも成らない状況になりそうです。

    ひふみ神示 第05巻  地つ巻 第二十八帖 (一六五)
     神の国には神の国のやり方、外国には外国のやり方あると申してあらうがな、戦もその通りぞ、神の国は神の国のやり方せねばならんのざぞ、外国のやり方真似ては外国強いのざぞ、戦するにも身魂みがき第一ぞ。一度に始末することは易いなれど、それでは神の国を一度は丸つぶしにせねばならんから、待てるだけ待ってゐるのざぞ、仲裁する国はなく、出かけた船はどちらも後へ引けん苦しいことになりて来るぞ、神気つけるぞ。十月六日、ひつくのか三。
    2015年08月10日 16:48
  • グー

    9月24日は永く記憶に残る日になりそうです。なんとも言い知れぬ空虚な感じを覚えた日でした。
    こんにちは、錚々たるコメントが増えてきましたね。
    尖閣諸島の事件を発端にして以降の流れを眺めていて本日感じたのですが、民主党のする事には極力目をつぶる、大目に見るの姿勢を維持してきたマスコミですが、ちょっと空気が変わり始めている様に思います。もう民主党政権を支える必要がない、隠す必要がないと判断でもした様に・・・。倒閣的な方向に。政権の運命などマスコミの一存で民意を誘導し、どうにでもできるとばかりの姿勢も大きな問題ではありますが、民主党に少しでも早く政権の座から退いてもらうためには、その影響力は大。
    2015年08月10日 16:48
  • almanos

    現時点では日本はあまり当てにできないとみられて仕方ない状況でしょう。なにせ、日米安保がもたらす安定が護ってくれるという幻想がありましたから。サヨクすらもだから吹きまくって良いと思っていたのでしょうね。が、そうではなくなった。グー殿が指摘されているマスコミの空気が変わり始めたのは、このままでは自分らの足場が崩れるという危機感があるからかもしれません。そして、マスコミもあそこまで無能ばかりだとは正直思っていなかったのでしょう。自分らを危うくするなら追い出しにかかる。まともな反応と見るべきなのでしょうね。アメリカとしてはこのASEANのアメリカシフトで軍事的にも、軍事関連の雇用創出という観点でもほくそ笑んでいるかもしれません。
    2015年08月10日 16:48

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