引き続き、尖閣衝突事件についてです。
尖閣衝突問題絡みで、外交戦が加熱してきた。中国の強力な報復措置とやらは何か分からないのだけれど、SMAPのコンサートが延期されたり、日本青年上海万博訪問団の受け入れが拒否されたり、だんだん影響が表面化してきている。
そこへ来て、朝鮮日報で「中国漁船拿捕、日中の外交戦エスカレート」という9/21付の記事があるのだけれど、ちょっと注目すべき部分があった。以下に引用する。
北京の外交関係者は20日、「中国外務省はさまざまな報復措置を取ったが、そのレベルは高いものではない。尖閣諸島を紛争地域化するという意図がある程度達成されれば、両国は互いの名分を考慮し、関係回復に入るのではないか」と分析した。中国が日本政府の措置に強く反発したのは、尖閣諸島が国際紛争地域であることをアピールするという戦略によるもので、適当な時期に妥協を目指す可能性が高いとの見方だ。朝鮮日報 9/21 「中国漁船拿捕、日中の外交戦エスカレート」
「中国の「尖閣諸島係争地化」戦略」のエントリーで、中国の強硬姿勢は、まず尖閣諸島を係争地化することで、結果的に米軍の介入を防ぐ布石だ、といったけれど、この記事では、ズバリ、「尖閣諸島が国際紛争地域であることをアピールするという戦略によるもの」となっている。
こういう記事を日本のマスコミから見かけないのは情けないところなのだけれど、それはさておき、やはり、中国の「尖閣諸島係争地化戦略」は益々信憑性が高くなってきた。
当然、それに呼応して、中国は情報戦の主たるロビー活動も行っているとみるべきだろう。
米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は10日と20日付の2回、ニコラス・クリストフ記者の尖閣諸島問題に関するコラムを掲載したそうなのだけれど、その内容は「中国に分がある」「尖閣諸島の紛争で米国が日米安全保障条約を発動する可能性はゼロ」などというものなのだそうだ。
これに対して、駐NY日本総領事館が、従来の日本政府の立場を示した反論文をクリストフ記者に直接手渡し、クリストフ記者も20日の記事でその一部を公開している。
日本としても、反論は当然しておかなくちゃいけないし、クリストフ記者も、反論を載せるだけのフェアさがあったことは認めてもいいとは思うけれど、こうしたコラムが出る時点で、半分くらいは、尖閣諸島が係争地化していると見たほうがいいように思われる。
勿論、クリストフ記者のコラムが、中国のロビー活動の結果だという証拠があるわけではないけれど、結果として、先の朝鮮日報の記事にあるような、中国の「尖閣諸島が国際紛争地域であることをアピールするという戦略」は半ば達成していると見えなくもない。
尤も、この尖閣諸島係争地化戦略を100%防ぐことは、そもそもにして難しい。
こっちが騒がなくても、相手がどんどん騒ぐから、完全には止められない。だから、相手のプロパガンダに関しては、その度にマメに打ち落としておく必要はある。
朝鮮日報の記事では、「尖閣諸島の係争地化が済めば、適当な時期に妥協を目指す可能性が高い。」となっているけれど、筆者はそれは甘いと思っている。
なぜなら、中国の狙いは、前原大臣潰しにシフトしてきているであろうから。
昨日の「試される前原大臣」のエントリーで指摘したように、中国は、ありとあらゆる手を使って前原大臣を潰しにきていると見ている。
それに対して、例の衝突ビデオを公開すればいいじゃないか、という意見もぼちぼち散見されているのだけれど、公開しても決着にはならない、という見方もある。
※公開しても決着にはならないという見方については、こちらを参照ください。筆者もこの辺り、まだ認識が甘かったようです。
さて、情報戦で遅れを取っている状況で、日本はどう対処すべきか。
ひとつは、情報レベルではなく、やはり物理レベルで対応をすべきだろうと思われる。すなわち、尖閣諸島付近の警戒レベルを上げて、出来れば、尖閣諸島に人なり施設なりを置いて、実効支配の事実を補強する「現物」を配置すべきだと思う。
共同通信によると、20日の記事で、防衛省は、年末に策定する新たな「防衛計画の大綱」に、陸上自衛隊の定員を現在の15万5千人から16万8千人へ1万3千人増やす方向で調整しているという。
まぁ、この記事自体も、19日に複数の防衛省、自衛隊関係者が明らかにした、というから、如何にも今回の衝突事件を利用して、具体的に、島嶼部の防衛態勢を推進しようとしていると思われる。流石は官僚というべきか。
でも、これは別に進めておいて悪いものじゃない。
日本政府は、中国に「冷静な対応を呼び掛ける」なんて言っているようだけれど、あまり反応はないものと思われる。おそらく前原大臣を潰すまでは終わらない。
だから、今となっては、それを逆用して、表向きは「あらゆるチャンネルを使って(民主党にそんなチャンネルがあるのか疑問ではあるのだけれど)解決を図る」と言っておいて、裏では着々と島嶼防衛態勢を充実してゆくのがいいように思われる。その意味では、この事件の解決が長引けば長引く程、日本に有利になるように持って行く必要がある。
つまり、尖閣諸島を係争地化することと引き換えに、日本国民の多くに中国の「本性」を認識させ、真っ当な国防を考える世論を形成すること。そして、それなりの防衛体制を整えるように持って行くこと。
中国からみれば、威力偵察で、ちょっと藪をつついてみた程度だったのが、蛇どころか、竜と虎が一緒に出てくれば、いくらなんでも考える。
そこまで考えての政府の発言であれば、1ミリグラムくらいは見直しても良いのだけれど、中国の強硬姿勢にただ慌てふためくだけなら、きちんと日本を守れる政党に、政権を譲っていただきたい。
余談だけれど、この共同通信の記事で、当初アップされた02:02の記事では、その最後に「今回の措置はこれまでの流れに大きく逆行することになる。」なんて、さも、これまでの軍縮の流れに逆らうのが悪いかのような一文が添えられていた。
それが、16時更新の記事では削除されていた。共同通信の自主判断なのか、外務省からクレームが入ったのかは分からないけれど、こんなところからも情報戦が仕込まれていることは意識しておきたい。
←人気ブログランキングへ
中国漁船拿捕、日中の外交戦エスカレート
東シナ海の尖閣諸島(中国名・釣魚島)で今月7日、日本の海上保安庁の巡視船が中国漁船を拿捕した事件は、日中韓の全面的な外交戦へと発展している。民間交流も次々と中断され、一触即発の危機感も漂う。
日本外務省は20日、中国政府が19日夕、在中日本大使館に対し、21日に日本を出発予定の青少年交流団1000人の訪中を受け入れないと一方的に通告してきたと発表した。この交流行事は今年5月、日中首脳会談で温家宝首相が日本側に提案したもので、一行は上海万博などを訪れる予定だった。
日本政府は、現在拘置中の中国人船長、セン其雄容疑者(41)を釈放するよう求める中国側の要求を受け入れない意向を明確に示している。20日付読売新聞は、外務省関係者が「日本政府としては、厳正に対処するだけであり、妥協はしない」と語ったと報じた。これに先立ち、沖縄県の石垣簡裁は、セン容疑者の拘置期限を29日まで10日間延長した。日本政府は、問題の漁船が日本領でかつ日本が実効支配する尖閣諸島付近の領海で不法操業していただけでなく、退去を要求する巡視船に2回にわたり船体を衝突させた現行犯であるため、日本の国内法に従い処理する方針だ。
日本のマスコミは、満州事変から79周年を迎えた18日、中国国内で大規模な反日デモが起き、中国政府が事実上それを放置したと大きく報じた。また、中国による反発が長期化した場合、10月末にハノイで東南アジア諸国連合と日中韓(ASEANプラス3)首脳会議、11月中旬に横浜で開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で日中首脳会談が開かれない可能性があるとの分析を示した。
中国は今回の事件に関連し、日本の丹羽宇一郎駐中大使を5回にわたり呼び出した。19日には閣僚以上による交流を中断する措置も取った。
北京の外交関係者は20日、「中国外務省はさまざまな報復措置を取ったが、そのレベルは高いものではない。尖閣諸島を紛争地域化するという意図がある程度達成されれば、両国は互いの名分を考慮し、関係回復に入るのではないか」と分析した。中国が日本政府の措置に強く反発したのは、尖閣諸島が国際紛争地域であることをアピールするという戦略によるもので、適当な時期に妥協を目指す可能性が高いとの見方だ。
日本は米国が1972年に沖縄の施政権を日本に返還した際、尖閣諸島も範囲に含めており、同諸島が日本領であることは明確だとの立場だ。一方、中国は明、清の時代から台湾に属しており、米国による72年の措置は、第2次世界大戦終結当時の合意に反し、不法なものだと主張している。
東京=辛貞録(シン・ジョンロク)特派員
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
URL:http://www.chosunonline.com/news/20100921000016
外務省、尖閣問題で「中国に分がある」コラム掲載のNY紙に反論 2010.9.21 09:48
【ワシントン=佐々木類】沖縄・尖閣諸島をめぐり、米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は10日と20日付の2回、ニコラス・クリストフ記者のコラムを掲載した。内容は、「中国に分がある」「尖閣諸島の紛争で米国が日米安全保障条約を発動する可能性はゼロ」などというものだ。駐ニューヨーク日本総領事館から反論文が寄せられたことも紹介している。
クリストフ記者は、ニューヨーク・タイムズ東京支局長の経験があり、米ジャーナリズム界で最高の名誉とされるピュリツァー賞を2度受賞している。
クリストフ氏は10日付のコラムで、「太平洋で不毛の岩礁をめぐり、緊張が高まっている」と指摘。その上で、「1972年に米国が沖縄の施政権を日本に返還したため、尖閣諸島の問題で日本を助けるというばかげた立場をとるようになった。米国は核戦争の危険を冒すわけがなく、現実的に安保条約を発動する可能性はゼロだ」とした。
また、「はっきりした答えは分からないが、私の感覚では、中国に分があるようだ」とした。
ちなみに、尖閣諸島に岩礁はあるものの、少なくとも魚釣島や南小島は岩礁ではなく、沖縄県宮古島の漁民らがカツオブシ工場などを経営していた島だ。
次に20日付で、10日付のコラムに対し、日本の外交当局から反論文が寄せられたことを紹介した。クリストフ氏は、尖閣諸島が歴史的、国際法上も日本の固有の領土であることを指摘した反論文を一部掲載、読者に反応を呼びかけた。
読者からはさっそく「日本政府は歴史を改竄(かいざん)するのが得意だ」(カリフォルニア在住の男性)という書き込みがあった。
駐ニューヨーク日本総領事館によると、反論文は17日付で、従来の日本政府の立場を示したものだ。同総領事館の川村泰久広報センター所長名でクリストフ記者に直接手渡した。
総領事館は「そもそも尖閣諸島をめぐる領土問題は存在しない。にもかかわらず、希薄な根拠をもとに中国に分があるような記述をしていたため、直接会って反論した」と話す。
URL:http://sankei.jp.msn.com/world/america/100921/amr1009210949003-n1.htm
中国漁船衝突、防衛相「ビデオ公開すべきだ」
北沢防衛相は21日の閣議後の記者会見で、尖閣諸島沖の日本領海内での中国漁船衝突事件に関し「漁船がこちらに衝突してきた。それが中国の政府の中、あるいは国民に正確に伝わっているかどうか、なかなか疑問だ。実情をハッキリと伝えることが重要だ」と述べた。
衝突の様子を海上保安庁が撮影したビデオの公開を念頭に置いたものと見られる。ビデオは刑事裁判になれば証拠資料として提出する可能性があるため、海保が公表を控えている。
一方、閣僚からは21日午前の閣議後の記者会見で、中国側が閣僚級以上の交流停止などを決めたことについて、日中双方に冷静な対応を求める意見が相次いだ。
仙谷官房長官は「日本も中国も、偏狭で極端なナショナリズムを刺激しないよう政府の担当者は心すべきだ。エスカレートしないような格好で解決していく要請を、あらゆるチャンネルを使ってやっていきたい」と述べた。
(2010年9月21日12時02分 読売新聞)
URL:http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20100921-OYT1T00457.htm?from=rss&ref=rssad
陸自の「南西シフト」進む
31日に発表された防衛省の概算要求には、陸上自衛隊第15旅団(司令部・那覇市)の増員など、島嶼(とうしょ)部を中心とした南西地域の防衛態勢を強化するための費用が盛り込まれた。冷戦終了後も「北の守り」は重視してきた陸自だが、西部方面隊(総監部・熊本市)が実施する実動演習に初めて北部方面隊(同・札幌市)の要員を参加させるなど、訓練面でも「南西シフト」を進める。(2010/08/31-23:13)
URL:http://www.jiji.com/jc/zc?k=201008/2010083100736
防衛省、陸自1万3千人増検討 新防衛大綱で調整難航も
防衛省が流動化する東アジアの安全保障情勢や国際テロ、災害への対処能力を向上させるとして、陸上自衛隊の定員を現在の15万5千人から16万8千人へ1万3千人増やす方向で調整していることが分かった。複数の防衛省、自衛隊関係者が19日、明らかにした。年末に策定する新たな「防衛計画の大綱」に盛り込みたい考えで、来年度から増員すれば1972年度以来、38年ぶりの規模拡大となる。
定員増は陸上幕僚監部の強い意向を踏まえ、防衛省内局で検討。陸幕は日本近海での中国海軍の動きの活発化に伴い、中国沿岸から距離的に近い南西諸島での島しょ防衛強化が特に必要と説明。天然ガスなど東シナ海の資源獲得をめぐる日中摩擦も生じており、政府、与党の理解が得やすいと判断したようだ。
具体的には、中国が領有権を主張する尖閣諸島(沖縄県石垣市)への対応を視野に、防衛態勢が手薄とされる同県の宮古島以西への部隊配備を検討。沖縄本島の陸自部隊は現在約2千人だが、これを2020年までに南西諸島を含めて2万人規模とする構想も浮上している。
今回の措置はこれまでの流れに大きく逆行することになる。
2010/09/20 02:02 【共同通信】
URL:http://www.47news.jp/CN/201009/CN2010091901000470.html
※最後の一文が、16時更新時には消えていることに注目。
防衛省、陸自1万3千人増検討 新防衛大綱で調整難航も
防衛省が流動化する東アジアの安全保障情勢や国際テロ、災害への対処能力を向上させるとして、陸上自衛隊の定員を現在の15万5千人から16万8千人へ1万3千人増やす方向で調整していることが分かった。複数の防衛省、自衛隊関係者が19日、明らかにした。年末に策定する新たな「防衛計画の大綱」に盛り込みたい考えで、来年度から増員すれば1972年度以来、38年ぶりの規模拡大となる。
定員増は陸上幕僚監部の強い意向を踏まえ、防衛省内局で検討。陸幕は日本近海での中国海軍の動きの活発化に伴い、中国沿岸から距離的に近い南西諸島での島しょ防衛強化が特に必要と説明。天然ガスなど東シナ海の資源獲得をめぐる日中摩擦も生じており、政府、与党の理解が得やすいと判断したようだ。
具体的には、中国が領有権を主張する尖閣諸島(沖縄県石垣市)への対応を視野に、防衛態勢が手薄とされる同県の宮古島以西への部隊配備を検討。沖縄本島の陸自部隊は現在約2千人だが、これを2020年までに南西諸島を含めて2万人規模とする構想も浮上している。
2010/09/20 16:42 【共同通信】
URL:http://www.47news.jp/CN/201009/CN2010091901000470.html
官房長官 冷静な対応呼びかけ 9月21日 12時22分
仙谷官房長官は記者会見で、沖縄県の尖閣諸島の漁船衝突事件で中国側が反発を強めていることについて、「偏狭で極端なナショナリズムを刺激すべきではない」と述べ、冷静な対応を呼びかけました。
沖縄県の尖閣諸島の日本の領海で中国の漁船と海上保安庁の巡視船が衝突し、裁判所が逮捕された中国人船長のこう留延長を認めたことを受け、中国側は、日中間の閣僚級の交流を一時停止するなどの対抗措置を打ち出して反発を強めています。これについて、仙谷官房長官は記者会見で、「何よりも重要なのは、日本も中国もほかの国も含め、偏狭で極端なナショナリズムを刺激しないことを、政府の担当者として心すべきだ」と述べました。そのうえで、仙谷長官は「中国側には、日本の司法手続きや仕組みを理解していただくための説明作業をするしかない。東アジアやアジア太平洋地域の平和と発展の観点から、あまりエスカレートしないような形で解決するよう、あらゆるチャンネルを使って要請していきたい」と述べました。また、北澤防衛大臣は「これ以上、事態がエスカレートするのは好ましくなく、中国側に実情をはっきりと伝えることが重要だ。漁船が衝突したときの状況が、中国政府や国民に正確に伝わっているかどうか疑問があり、日本としてもあらゆるルートを通じて明らかにする努力が必要だ」と述べました。
URL:http://www.nhk.or.jp/news/html/20100921/t10014103191000.html
この記事へのコメント
ちび・むぎ・みみ・はな
> 考える世論を形成すること。
これは民主党政権の自爆装置にスイッチを入れるに等しいので,
民主党はまずやらんですね.
いざとなれば戦争状態もあり得ることを覚悟する必要あり.
しかし, 日本国大使の力量が問われる時に一番不適当な大使.
そして, 覚悟が必要な自衛隊に対して反戦防衛大臣.
民主党政権になってから良いことなどひとつもない.
白なまず
sam
almanos
ここは尖閣での違法操業船が凶悪化しているからという理由で、海保と海自に連携を取る。つまり、中国の漁業監視船がでても海自からの協力して活動中のの船が出て「戦争やりたいならいいよ。海自の船相手に勝てる自信あるならね」と追い返せる状態にする必要がある。あくまでも自国領内での外国の凶暴な不法操業対策として進める。もちろん撃沈許可で。アメリカも巻き込むくらいの悪どさも要りますけど。例えば尖閣諸島問題で
通りすがり
無条件釈放はさすがにあり得ないとして、公務執行妨害の場合選択肢は
・起訴
・罰金刑
・不起訴
前原外相ではなく、仙石官房長官が対応の主導権を握り始めているとするなら、「証拠不十分で不起訴」という決着に誘導されるのではないでしょうか。