「尖閣での漁船衝突事件をみてもわかるように中国の情報戦略は、第1段階として、問題がない事象に言いがかりをつけ、第2段階で国をあげて騒ぎたてる。第3段階で、懐柔策として問題の棚上げを提案し、結果的に問題自体を既成事実化する。・・・直接的な戦争ではないにせよ、尖閣問題を契機に、史上最大級の高度な情報戦争を仕掛けられた。ウソ、デマ、ねつ造。ありとあらゆる情報を駆使して相手国を追い込み、自国の富を引き寄せるのは国際社会では当たり前の駆け引き。」元航空幕僚長・田母神俊雄氏
土壇場になって一方的にキャンセルされた、日中首脳会談。
最終的には10分間の「懇談」は行われたようだけれど、正式な会談ではないから、声明も協議も何もなく、まぁ、アリバイ会談とでもいうべきだろう。
この中国側の拒否の原因について、色々な憶測がされているのだけれど、そのひとつに、昨日のエントリーでも取り上げた、前原大臣潰しというのがある。
前原大臣の発言や行動が中国にとって気に入らないから、ということなのだろうけれど、まぁ、他国の人事に口を出すのは内政干渉以外の何者でもない。
前原大臣については、国民新党の下地幹郎幹事長が「前原誠司氏はもう、外相を辞めた方がいいのではないか」と発言し、民主党の中堅幹部も「日中両国のために前原はつぶした方がいいというメッセージじゃないか。中国に言われてすぐに辞めさせるのはよくないが、前原が外相をやるのは無理だ」とコメントしていると報道されている。
向こうの言い分を勝手に憶測するだけなら兎も角、「前原は潰した方がいい」などと、連立を組んでいた相手や、身内から言いだすようでは、話にならない。
何も、下地氏や民主党の幹部が中国のスパイだなどとは言わないけれど、結果として、中国の代弁者となっている。
前原大臣を辞めさせるのが、本当に国益に資することになるのであれば兎も角、そうした議論が為されないまま、ただ日中関係が拗れるからなんて騒ぐのは、その時点で既に中国の手に載せられている。
少なくとも、中国が会談を拒否した理由のひとつとされる「他国と結託」、すなわち、クリントン米国務長官との日米外相会談で、「尖閣諸島は日米安保条約の防衛義務の対象」との言質を引き出したことは、前原大臣の仕事の一つであったことは確か。
アメリカに、尖閣諸島も日米安保条約の防衛義務の対象と言わせたことが、如何に日本の国防に資することになっているか、抑止力になっているか、という議論や説明も無しに、前原が悪い、とか、外相は辞めた方がいいとかいうのは、少々一方的に過ぎるというもの。
こうした傾向はマスコミも同様で、前原大臣に問題があるという報道はあっても、アメリカとの連携による国防に対する前原大臣の貢献という論調は、とんと見かけない。
最近になって、尖閣沖で巡視船に衝突した中国漁船の船長が衝突する前に酒を飲んで、泥酔していたなどという、報道が出てきたようだけれど、これなんかも情報操作、情報戦の一環だと思われる。
恐らくは、例の尖閣ビデオの一部公開に伴って、事実の一旦が明らかにされると不利だと見た中国当局が、「いや、あれは酒のせいだったのだ」とダメージコントロールしようとしていると見る。
だいたい、海上保安官が立ち入った際にも、自分では歩けないほどだったなんて、帰国した乗組員14人が中国政府に証言していたと「中国の当局者が」明らかにした時点で、半分以上眉唾もの。
なぜ、そんな情報が「今頃」になって出てくるのか。自分で歩けないほど酔っているなら、立ち入った海上保安官も分かっている筈だから、日本のマスコミは、海上保安庁なりに取材に言って、本当に酔っていたのか確認すればいいだけのことだし、そうすべき。
そうしたこともせずに、向こうの言い分だけ垂れ流すのは、たとえそうだと意識していなくても、結果的に相手の情報戦の片棒を担いでいることになる。
それに、中国漁船の船長が逮捕されたのは、領海侵犯し、公務執行妨害したことが、その理由であって、酒に酔っているいないは全く関係のないこと。
酔っていたら何でもかんでも許されるのなら、たとえば、酔った警官が、秋葉原の中国人観光客に片っ端から暴行したって許されることになる。
だから、田母神氏が指摘するほどの史上最大級の情報戦争を中国に仕掛けられているかどうかまでは分からないけれど、大枠でみると、情報戦の最中にあるということはいえると思う。
情報戦の中にあって、相手の一方的な情報ばかり流して、こちらからの反撃の情報を展開しなかったら、行きつく先は、情報戦での全面敗北しかない。


日中関係がこじれている時こそ、首脳同士がじっくり話し合い、事態の打開を図ることが重要ではないのか。
わずか10分の“懇談”で終わったのは極めて遺憾だ。
ハノイで行われた菅首相と中国の温家宝首相との非公式会談のことである。東アジア首脳会議の会場控室で急きょ持たれた。日中が引き続き戦略的互恵関係を推進することを確認したが、中身のある協議には至らなかった。
菅首相は記者会見で、「日中間にいろいろな出来事が起きているが、友好関係は継続できると確信する」と述べたものの、当初の目算が狂ったのは否定できない。
首脳会談は、29日午前の外相会談による事前調整を受けて、その夜に開かれる予定だった。ところが、土壇場になって中国の外務次官補が中止を公表した。
次官補は、尖閣諸島について、「日本が他国と結託し、問題を煽(あお)った」ことや、外相会談の内容説明で「中国の立場を歪曲(わいきょく)した」ことを理由に挙げた。
「他国と結託」とは、クリントン米国務長官が、尖閣諸島について日米安保条約の防衛義務の対象と明言した27日の日米外相会談を指すのだろう。だが、これは何ら目新しいものではない。
「立場を歪曲」とは、仏AFP通信が配信した「外相会談でガス田条約交渉再開を合意」の記事とみられる。しかし、AFPは誤報記事として訂正した。
首脳外交を取りやめるにしてはあまりにもお粗末な理由と言わざるを得ない。中国国内の対日強硬派の反発を恐れて、理由にならない理由を並べて会談を避けた、とみられても仕方あるまい。
今回の会談拒否は、結果的に、中国が扱いにくい国であるとの印象を強めることになった。
中国も、10分とは言え、会談に応じたのは、正式な首脳会談を拒否したままでは“中国異質論”がますます広がり、国際的に孤立すると危惧(きぐ)したのだろう。
11月中旬には、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に出席するため、胡錦濤国家主席が訪日する。
中国は、今回のような事態を繰り返してはならない。正式な日中首脳会談を開き、一方的に中断したガス田条約交渉の再開や、レアアース(希土類)輸出の正常化など、具体的な行動で「互恵」を示してほしい。
日本は、いつでも対話に応じる姿勢を維持し、冷静に対処することが肝要だろう。
(2010年10月31日01時17分 読売新聞)
URL:http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20101030-OYT1T00958.htm?from=y10

中国が29日、ハノイでの日中首脳会談を拒否したことに対して、政府・民主党から、さまざまな声が出た。
政府高官は同日夜、困った表情で「分からない。分からない」と繰り返し、会談拒否の理由は中国の国内事情との見方を示した。そして、「たぶん、首脳(会談)はできない」とぽつり。
11月1日に、尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件のビデオ映像が、一部国会議員に公開される件との関連を推測する議員は多かった。
閣僚の1人は「よく分からないけど、ビデオの影響じゃないか」。閣僚経験者は「きょうビデオの公開を決めたからだ。シナリオを立てずにやるからだ」と述べた。
これに対し、前原誠司外相への批判もあった。
党中堅幹部は「日中両国のために前原はつぶした方がいいというメッセージじゃないか。中国に言われてすぐに辞めさせるのはよくないが、前原が外相をやるのは無理だ」と、中国そっちのけで外相批判を展開した。
別の若手は「前原がTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)で中国包囲網みたいなことを言ってきたから、牽制しているのだろう」との見方を示した。
一方、中国内の権力闘争が原因との分析もあった。
外務省出身の議員は「中国の国内事情だ。菅(直人首相)さんと仲良く映る姿が本国に伝われば、温家宝首相はまた弱腰だと批判される。外交日程のキャンセルはだいたい国内事情であって、ビデオ公開や前原さんの態度はあまり関係ない」との見立てを示した。
中国への不信感、警戒感を示す議員は多かった。中堅は「中国お得意の揺さぶりだ。領土に関して中国は絶対譲らない。日本は、『会ってくれないと顔が立たない』みたいな軟弱なことではだめ。原則論を主張し、毅然とするしかない」と語った。
保守系若手は「中国の言いがかりで、あきれてモノが言えない。日本は毅然としていればいい。中国は冷静になった方がいいんじゃないか」と語った。
URL:http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/101030/stt1010300122001-n1.htm

国民新党の下地幹郎幹事長は29日夜、中国に日中首脳会談を拒否されたことに関連し、「前原誠司氏はもう、外相を辞めた方がいいのではないか」と都内で記者団に語った。
下地氏は、前原氏が日米外相会談で尖閣諸島が日米安保条約5条の適用対象になることを確認したことについて、「日中関係に日米関係を持ち込むからおかしくなる」と指摘。「中国だって反日デモを抱える国内事情がある。尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件で船長を中国に戻し、日本政府が日中関係を大事にしようと取り組んでいるのだから、うまくやる方法を探ればよかった」と述べた。
URL:http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/101030/stt1010300001000-n1.htm

【ハノイ=坂井広志】日中首脳会談の拒否を直前になって通告してきた中国が理由として挙げたのは、東シナ海のガス田開発問題で両国が交渉再開に合意したとの外国通信社の誤報だった。日本政府は中国側に事実関係を説明したが、「報道されたことで会談できない」と受け入れなかったという。通信社の誤報にも便乗した格好の中国側の対応について、福山哲郎官房副長官は29日夜「根拠のない報道によって、首脳会談を中国側がキャンセルしたのは非常に遺憾だ」と語った。
日本側の説明によると、問題となったのはフランス通信(AFP)の配信記事。同通信は29日午前に行われた前原誠司外相と楊潔●外相の会談で、東シナ海のガス田問題で「交渉再開に合意した」と伝えた。
中国はこれを日本側が意図的に流したものと判断し、日中首脳会談の拒否を一方的に突きつけてきた。中国外務省の胡正躍次官補は「真実と異なることを流布し、中国側の立場を歪曲(わいきょく)した」と説明した。
しかし日本側の説明によると、前原誠司外相は交渉再開を求めただけで合意にまで至ることはなかった。日本外務省は、AFPに訂正を求め、同社も応じたという。
●=簾の广を厂に、兼を虎に
URL:http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/101030/plc1010300927005-n1.htm

沖縄・尖閣諸島沖で中国の漁船と日本の巡視船が衝突した事件で、漁船の船長が衝突する前に酒を飲み、海上保安官が立ち入った際にも、自分では歩けないほどだったことを中国の当局者が明らかにした。
中国当局者によると、先月7日、尖閣諸島沖で中国の漁船と海上保安庁の巡視船が衝突する前、漁船のセン其雄船長(41)が酒を大量に飲んでいたことを、事件の6日後に帰国した乗組員14人が中国政府に証言していたという。
中国の漁船は午前10時過ぎから11時ごろにかけて相次いで2隻の巡視船に衝突し、午後1時ごろ、海上保安官が漁船に立ち入ったが、漁船の乗組員の証言では、その際、船長はまだ酒に酔っていて、自分で歩けない状態だったという。
★セン其雄の「セン」は「擔」のつくり
URL:http://news24.jp/articles/2010/10/29/07169584.html

東南アジア諸国連合(ASEAN)関連会議でベトナム訪問中の菅直人首相と、中国・温家宝首相との日中首脳会談は29日、中国側の拒否で中止となった。依然として続く沖縄・尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件の余波。中国では反日運動が収まらず、今週末も各地のデモなど緊張感が高まっている。一方、日本では、元航空幕僚長で軍事評論家の田母神俊雄氏(62)が先頭に立って抗議運動を展開している。田母神氏の目に事態はどう映るのか、直撃した。(聞き手・小川健)
--田母神氏が会長を務める「頑張れ日本!全国行動委員会」が今月2日、東京で行った抗議集会には3000人もの人数が集まった。31日にも名古屋で抗議集会を予定している。中国も敏感に反応すると思うが
「そんなことは想定の範囲内。ただし、彼ら(中国)のデモと日本のデモは異なる。われわれは100%“民製”で、中国国民や中国国旗の尊厳を傷つけたりはしない。あくまで日本国民の怒りや憤りを行動で示している。だが、あちらは100%“官製”。尖閣や反日を利用し、共産党や指導部が、(自分たちへの)不満の矛先を変えている。海上保安庁に拘束された船長も人民軍の意を受けた工作員。まともに取り合っては、中国の思うツボになる」
--思うツボとは
「尖閣での漁船衝突事件をみてもわかるように中国の情報戦略は、第1段階として、問題がない事象に言いがかりをつけ、第2段階で国をあげて騒ぎたてる。第3段階で、懐柔策として問題の棚上げを提案し、結果的に問題自体を既成事実化する」
--いまはどの段階か
「第2段階にあたる。民衆の扇動を(日本が)深刻に受け止めた時点で、たちまち問題を既成事実化する。(日本政府は)絶対に引っかかってはいけない」
--23日に開幕した東京国際映画祭では、中国が台湾の表記をめぐり「中国台湾」にしろなどと噛みつき、台湾人女優が開会式に出席できなかった
「イベントの主催者や監督はなぜ台湾人女優を出さなかったのか。巨大な中国市場からの締め出しを恐れて黙殺したのなら、彼らに芸術や文化としての映画を語る資格はない。非常に残念な出来事といっていい」
--官製デモの勢いはますばかり
「習近平・国家副主席が共産党中央軍事委員会副主席に選出(18日)されるのとタイミングを一にして、内陸部の都市で3日連続の大規模なデモが起きた。日中関係が修復に向けて動き出したときだっただけに、反日的な彼の意向が強く反映されたとみて間違いない。(習氏は)人民軍とつながりが深く、今後、指導部への影響力が強まることが懸念される。日中関係は、すでに『有事』と考えるべき」
--有事とはどういうことか
「直接的な戦争ではないにせよ、尖閣問題を契機に、史上最大級の高度な情報戦争を仕掛けられた。ウソ、デマ、ねつ造。ありとあらゆる情報を駆使して相手国を追い込み、自国の富を引き寄せるのは国際社会では当たり前の駆け引き。政府は、旧自民党政権時代から、こうしたシビアな状況下で、『国家国民の富を守る』という覚悟が欠如している。尖閣問題を機に、国民もその事実に目を向けて、怒りを行動で示すときだろう」
--尖閣問題の切り札になるビデオも11月1日に衆参予算委の理事が視聴することになったが、一般には実現していない
「ビデオの非公開は“人質”になったフジタ社員の釈放の引き換え条件になった可能性が高い。日本が、抑止力としての軍事バランスの均衡がとれていないことにつけ込まれた側面がある。初期対応としては即時に公開すべきだった」
--それにしても、日本は中国にやられっぱなし
「まともに取り合う必要はない。日本人の反中感情が高まると、(日本人による中国製品の不買運動などで)窮地に立たされるのは中国政府。反日デモも、すぐに矛先が(中国)当局に向かい、これを恐れ、中国政府は取り締まりを強化するだろう。中国国民も共産党のご都合主義を見抜き、自由のありがたみを噛みしめるはずだ」
URL:http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20101030/dms1010301318006-n1.htm
この記事へのコメント
sam
2.たいへんな内憂があったとしても、国家が体制崩壊することなどそうはありません。しかも、我々が知っている中国の内憂を過大評価する必要はありません。いくら内憂があろうと、国益のための国家の行動は別です。日本はそれができていない。
3.それから、かりに多くの日本人が期待しているように、中国の体制が崩壊したとして、次の政権に何が期待できるのですか。同じでしょう。中国人ですよ。
4.内憂を想像から過大評価してしまうのは、ほんとうに売国マスコミのすりこみです。
5.そんなことより、一連の中国の動き、すなわち、4月の中国民間航空機強制着陸、7月国民総動員法施行、9月尖閣事件、遺棄化学兵器処分会社のフジタ逮捕、10月大規模反日デモ、廊下外交。これらの中国の遠大な戦略をみてください。これに対して、日本は何をしましたか。
ちび・むぎ・みみ・はな
> こちらからの反撃の情報を展開しなかったら、行きつく
> 先は、情報戦での全面敗北しかない。
情報戦なのだが, 狼狽していると見えるほどの支那の反応
は何故なのだろうか. 情報戦では外見上は余裕をとり作ろう
方が良かろうに. 尖閣諸島が目標なら, 今までなら, 温首相
がオバマ大統領と対談して米国への協力を歌い挙げる下で
牽制したと思うが, 強く言って米国が引っ込むと考えるほど
支那政府は素人ではない筈.
何故かな?
almanos
とおる
・日本テレビ:中国国営通信の新華社と協力協定 放送分野で
http://mainichi.jp/select/world/europe/news/20101030k0000m040026000c.html
・続・李長春のゲンメイに平伏する「下請け」各社。 - 日々是チナヲチ。
より一部抜粋、
来日している中国共産党ナンバー5、李長春政治局常務委員(宣伝担当)夜、日本の通信社・新聞社・テレビ局14社の社長ら首脳と、都内のホテルで夕食を共にしながら懇談し、両国国民の相互理解に向けて「良好な世論を作るよう努力してほしい」と求めた。
…
一応明らかにしておきますと、上の「人民網日本語版」による記事で14社の顔ぶれが明記されています。テレビ朝日、フジテレビ、日本テレビ、NHK、日本経済新聞社、毎日新聞社、TBS、読売新聞社、中日新聞社、産経新聞社、共同通信社、テレビ東京、時事通信社、朝日新聞社……とのことです。
…
来日中の中国共産党の李長春・政治局常務委員が31日、東京・千代田区の読売新聞東京本社を訪れ、渡辺恒雄グループ本社会長・主