「1980年代から、中国の軍事戦略は『戦略的フロンティア』という考え方に基礎を置いてきました。一言で言えば、この危険な考えは国境や排他的経済水域(EEZ)は国力で決定づけられるというものであり、中国の経済が成長を続ける限り、その勢力範囲は拡大を続けるとするものです。これをドイツの概念『レーベンストラウム』と結びつけて考える人もいるかもしれません」安倍晋三元総理 於:10/15 ワシントン・ハドソン研究所での講演にて
安倍元総理のこの発言に対して、中国が反発している。
中国外務省の馬朝旭報道局長は19日の定例記者会見で、安倍元総理が米国で行った演説で中国をナチスドイツと同列に論じたことに対し「荒唐無稽の極みだ」と批判して、「平和発展路線を堅持している」と主張した。
まぁ、主張するのは、結構だけれど、であればそれを証明せよ、と言いたくなる。自国の周りが、誰もいない無人の荒野で、所有する人も国もないのであれば兎も角、少なくとも、中国国境の周りには、そんなものはない。
「レーベンストラウム」すなわち、「生存圏」とは国家にとって生存するために必要な地域のことで、この「生存圏」という言葉は、ナチス党首であったヒトラーの著書「我が闘争」の中で言及されている。
もしも、生存圏にあたる地域が、国土の範囲内に収まっていれば、その国は自給自足できることになるから、それ以上の拡張を必要としないけれど、生存に必要な地域が国土のそれを超えてしまうようになれば、それへの対策が必要とされる。
その対策とは大きく2つ。
ひとつは、生存に必要な地域を、他の何らかの手段を用いて、国土内に収めること。もうひとつは、生存に必要な地域と同じくらいに国土を広げること。
前者は、技術革新による生産性やエネルギー消費効率の向上、又は、他国との貿易などの相互依存関係を構築・強化することで実現されるし、後者は、自国内での未開拓地域の開発もしくは、他国を侵略・占領して、領土を広げることで実現される。
今の世界は、前者を基本としていて、後者のやり方は「帝国主義・植民地主義」として否定されている。
安倍元総理は、ハドソン研での講演で、中国の軍事戦略は、この後者のやり方ではないのか、と釘を刺した。
すなわち、遅れてきた帝国主義は止めよ、と。
それを荒唐無稽というのであれば、中国は、その生存圏を自国領土内に収める努力をしなくちゃいけない。
まかり間違っても、自分の意見を通すために、相手国の国民を人質に取ったり、自国がほぼ独占する商品なんかを盾にとって脅しを掛けるような真似はしてはいけない。
日本は、生存に必要な資源の大半を輸入に頼っている国ではあるけれど、同時に、絶えざる努力によって、技術革新を積み重ね、エネルギー消費効率では、世界のトップクラスにある。
2006年のデータではあるけれど、GDPあたりの一次エネルギー供給量では、日本は0.1トンであり、中国の0.9トンと比べて、わずか9分の1。
だから、中国も、資源を買い漁ったりする前に、やれること、やるべきことは沢山ある。何より、日本というお手本が隣にある。
確かに、他国の富や技術を分捕ることで、自国の生存圏を確保する、というやり方は簡単ではあるけれど、そういうやり方は、いつかは自分自身に、その刃が向けられることを意味してる。
作家の三橋貴明氏のブログに興味深い記事があるので、次に一部引用する。
グローバリズム華やかな時代、ある国(アメリカ)のバブルが崩壊し、世界は恐慌のどん底に叩き込まれました。
そんな中、ある独裁国は積極的な財政出動に転じ、見る見るうちに経済を立て直し、世界における発言権を強めていきます。
その独裁国の近くに「島国」がありまして、民主主義国の弱みから適切な景気対策を打ちにくく、次第に自信を失っていきます。その島国は、近隣の独裁国に対し、譲歩的な政策を繰り返し、結局、独裁国の暴走を引き起こすことになりました。
引用した文章の中の島国と独裁国とは、一体何処のことを指しているのか。もちろん、三橋氏のブログに、答えは書いてあるのだけれど、実は、解答は2通りある。
ひとつは、1930年代のイギリスとドイツ。もうひとつは、今の日本と中国。
「歴史は繰り返す」とはよく言われることだけれど、悲惨な歴史を繰り返す必要は全然ない。
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「中国はレーベンストラウムを追求」、安倍元首相が米国で講演 2010年10月19日 21:00 発信地:ワシントンD.C./米国
【10月19日 AFP】訪米中の自民党(Liberal Democratic Party、LDP)の安倍晋三(Shinzo Abe)元首相は15日、ワシントンD.C.(Washington D.C.)のシンクタンク、ハドソン研究所(Hudson Institute)で、日中関係などについて講演した。
講演で安倍氏は、東シナ海(East China Sea)などにおける中国海軍の拡大について、「1980年代から、中国の軍事戦略は『戦略的フロンティア』という考え方に基礎を置いてきました。一言で言えば、この危険な考えは国境や排他的経済水域(EEZ)は国力で決定づけられるというものであり、中国の経済が成長を続ける限り、その勢力範囲は拡大を続けるとするものです。これをドイツの概念『レーベンストラウム』と結びつけて考える人もいるかもしれません」と述べた。
レーベンストラウム(生存圏)とは、ドイツは、成長するためのもっと多くの土地、特に東のスラブの土地を持つにふさわしいと考えていたアドルフ・ヒトラー(Adolf Hitler)の思想におけるひとつの主要な信条。
安倍氏は、アジアの「平和と安定につながる形であれば」中国との協力は今も支持していると述べ、「これが中国が従うべき原則であり、中国がこの道からはずれたならば、忠告せねばならない」と語った。
さらに、安倍氏は、尖閣諸島(Senkaku Islands、中国名:釣魚島)沖における中国漁船の衝突事件で、複数の企業が日本の産業に不可欠なレアアースの輸出停止だったとしている出来事などを通して圧力をかけてきた中国に対し、中国人船長の釈放で応じた菅直人(Naoto Kan)首相の対応について、「非常に愚かな行動だった」と批判した。
だが複数の米政府当局者は、菅首相は日中間の緊張緩和を試みた優れた指導者だとして称賛している。(c)AFP
URL:http://www.afpbb.com/article/politics/2767560/6344102
中国、安倍元首相を批判 勢力拡大をナチスに例える
【北京共同】中国外務省の馬朝旭報道局長は19日の定例記者会見で、安倍晋三元首相が米国で行った演説で中国をナチスドイツと同列に論じたとの質問に対し「荒唐無稽の極みだ」と述べ、批判した。馬局長は「(中国は)平和発展路線を堅持している」と主張した。
安倍氏は15日、米ワシントンのシンクタンク、ハドソン研究所で講演し、東シナ海などでの中国海軍の活動拡大に言及。
中国の軍事戦略について「国力が国境や排他的経済水域を決めるという立場であり、中国が経済成長を続ける限り、活動可能な地理的範囲が広がるという極めて危険な論理だ。これを聞いて、かつてのドイツにおける『レーベンスラウム(生存圏)』という考え方を思い起こす人もいるかもしれない」と述べた。
2010/10/20 00:59 【共同通信】
URL:http://www.47news.jp/CN/201010/CN2010101901001111.html
この記事へのコメント
almanos
>支那(と朝鮮)は封建国家時代を通過しなかったため,
>中華の概念を祖国と言う概念で置き換えることに失敗.
>それが全ての原因だろう.
中世を経験していないという事は確かです。元々、帝国以外の成立が困難な地で中華の概念を「国民国家」として適用しようとしている。で、国境の概念が無い。これが全ての問題。チベットやウイグルの弾圧は帝国として運営するつもりなら絶対にやらない大ポカの連続ですから。自分らが清代初期に髪型のために殺し合いやった事をきれいに忘れている。
アメリカと中国が根っこは似ているのも確かですが、だからこそ一時は組めても最後にはどちらかが倒されないとやってらんないです。で、現在の覇権はアメリカにある。で、どっちがマシかというとアメリカのほうがまだマシ。北東アジアで血が流れそうで欝です。
ちび・むぎ・みみ・はな
「今は」どちらを選ぶかならその通りですね.
最終的には支那とも米国とも等間隔に独立して
行かなければならないと思いますが,
自分が精神的に独立しないことには叶いません.
> 北東アジアで血が流れそうで欝です。
逆説ですが, 血を流したくないなら, 「己の血を流す覚悟」
が必要になるでしょう.
民主党政権(マルキスト)の弱点は, 人の血は平気だが,
自分の血は流したくないことでしょうね.
白なまず