尖閣諸島衝突事件で、日本側は衝突ビデオの一般公開をしない方針を決めたけれど、それをよいことに、中国国営通信社や共産党系のサイトで、海保の巡視船側が中国漁船に衝突したとする図などが掲載されているようだ。
勿論、中国の一方的な主張を“既成事実化”することを狙ったものだろうけれど、まぁやりたい放題にやられている。
日本政府は、尖閣問題に関しては、全く及び腰で、反論らしい反論すらしていない。ネットその他では、政府の弱腰対応に批難の声も上がってはいるのだけれど、渋谷のデモすら報道されない。それが、この国の現状。
まぁ、マスコミでも騒がれて、支持率が20%を割るくらいにまで低下すれば、何らかの動きがある可能性が無くもないけれど、今のところ、政府はのらりくらりと逃げ続けて、世論の沈静化を図っているようにも見える。
なぜ、そんなに情けないのか。
勿論、左翼がかった民主党政権だから、というのも理由のひとつだとは思うけれど、それ以前に、政治家や国民の意識の中から、「世界の中の日本」という感覚や、「世界の中で、一体日本は何を為すべきか」というビジョンが欠落しているからなのではないかと思えてならない。
その根本には、「今が安泰でありさえすればいい」という事無かれ主義に似た感覚。それがあるのではないか。
兎にも角にも、事を荒立てることを極力避けたいという心理。それが働いているようにも思える。
これは、ある意味において、先の大戦の敗北によって、精神的なものまで含めて、戦前の日本を全否定したことによる、ツケが回ってきているのではないか、と筆者は感じている。
地政学の世界には、戦略の7階層、又は、8階層と呼ばれる考えがある。
これは、上から順に「世界観」、「政策」、「大戦略」、「軍事戦略」、「作戦」、「戦術」、「技術」で、各々の階層は次の性格を持っている。
世界観 …人生観、歴史観、地理感覚、心、ビジョン等
政策 …生き方、政治方針、意思、ポリシー
大戦略 …人間関係、兵站・資源配分、身体など
軍事戦略…仕事の種類、戦争の勝ち方など
作戦 …仕事の仕方、会戦の勝ち方など
戦術 …ツールやテクの使い方、戦闘の勝ち方など
技術 …ツールやテクの獲得、敵兵の殺し方など「”悪の論理”で世界は動く!」 奥山真司著 より引用
となっていて、これらの7つの要素で7階層。この世界観の更に上位に「宇宙観」を置いて8階層とする場合もあるそうだ。
これらは、階層構造を為しており、上位の要素が下位の要素を規定する性質を持っている。
地政学では、7階層での、上から3番目、すなわち「大戦略」を扱うのだけれど、その前提として、最上位の「世界観」又は「宇宙観」が地政学を考える上で絶対的に必要になるという。
地政学上で扱うところの世界の現状を説明する「地理上の概念」や「地図」は人間が主観的に構築するものであるから、作った人間や国家の「世界観」や「ビジョン」が反映される。
従って、国家が如何なるビジョンを持って国家運営にあたっているかは非常に重要な問題であって、そのビジョンに基づいて、政策が導き出されることになる。
先日、地政学学者の奥山真司氏から聞いたのだけれど、先の尖閣問題での日本政府の「国内法によって粛々と…」等という対応は、戦略の7階層のずっと下の方の、いわゆるテクニカルな話ばかりであって、戦略的な考えからいけば、最上位の「世界観」の話を主張すべきなのだそうだ。
たとえば、尖閣諸島での中国の振舞は「あの行為によって、東アジア、ひいては世界の自由貿易体制が危機に瀕している。だから、我々はそれを守る必要がある」等と世界に訴えかけるべきだった、と。
そうすることで、世界を日本に引き付けることが出来ただろうと奥山氏は語っていた。
これはその通りであって、一つの事象が、世界にどのように影響し、それが各々の国の国益にどう関係するのかをきちんと説明出来るのと出来ないのとでは、世界に対する説得力の度合いはまるで違ってくる。
要するに、世界観が欠落した国家は、主体的な行動を取ることは難しく、下手をすると相手の行動に流される、又は、ただ反応するだけの「クラゲ国家」になっていく恐れがあることを意味している。
昨今の情勢を見るにつけ、日本が世界観、国家観をしっかりと持っていないと、この先行き詰るであろうことは容易に想像できる。
先の尖閣衝突事件で、日本の多くの国民が、安全保障についての現実に目覚め出したのは良いことだとは思うけれど、その前提として必要な「世界観」を如何に構築することがポイントになるだろう。
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【尖閣敗北】ビデオ公開ない間に中国は一方的主張を展開 2010.10.11 01:23
沖縄・尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件で、海上保安庁が撮影したビデオ映像の公開を日本政府が先延ばし続けるなか、中国国営通信社や共産党系のインターネットサイトで、海保の巡視船側が中国漁船に衝突したとする図などが掲載されている実態が10日、明らかになった。日中首脳会談が4日に行われたにもかかわらず、中国当局も放任を続けており、中国政府の一方的な主張が“既成事実化”する恐れも強まっている。(原川貴郎)
中国共産党機関紙、人民日報傘下の国際情報紙「環球時報」は、衝突事件の“実態”について、日本の巡視船の方から中国漁船に衝突したとする説明図を掲載してきた。中国政府の「日本の巡視船は中国の領海で中国漁船を囲み、追いかけ、行く手を遮り、衝突して損傷させた」(姜瑜・中国外務省報道官)との主張に沿ったものだ。
「(中国漁船が)巡視船に体当たりした悪質な事案で逮捕は当然」(前原誠司外相)とする日本側の説明とはまったく異なる。
1日ごろから同紙のサイトからはこの図はなくなったが、今も国営新華社通信のサイトほか、中国の大手ポータルサイト「新浪」の衝突事件特集サイトなど、中国ネット空間のあちこちにはり付けられている。
環球時報は9月23日から10月6日まで尖閣諸島周辺海域で活動した中国の漁業監視船2隻に記者を同行させた。記者らは次のようなリポートを送ってきた。
「われわれの船は日本側の封鎖を突破し赤尾嶼(日本名・大正島)海域への歴史的な航行に成功した」
また、インターネット上の同紙のサイトでは、「中国人が1年間、日本製品を買わなければ日本はすぐ破産する」「日本はすべて中国の領土だ!」などの過激な書き込みが今も続く。
9日夕から同紙のサイトは無料のオンラインゲーム「防衛釣魚島(尖閣諸島の中国名)」を登場させた。中国漁船を操って、日本の「軍艦」に「靴」を投げ尖閣諸島へ航行、日の丸が掲揚された灯台を倒し、中国国旗を翻せば「任務完了」-という内容だ。同サイトは「国家防衛の危険と挑戦が体験でき使命達成の快感と栄誉も得ることできる」とプレーを呼びかける。
視覚に訴える中国側の主張を打ち消すためにも、ビデオ映像の公開が有効だがためらう日本側を尻目に、中国のインターネット空間では、事実に即しない一方的な主張や「悪のり」が続くのかもしれない。
URL:http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/101011/plc1010110126000-n1.htm
※ クラウゼヴィッツ・シンポジウムの御案内
2010年10月度 クラウゼヴィッツ・シンポジウム
日時:10月16日(土) 13:30~17:30
場所:東京電機大学神田校舎7号館7507号室
http:/atom.dendai.ac.jp/info/access/kanda_map.html
参加費:会員 1,000円、非会員 1,500円
お申込・問合せ先:(1)お名前(2)住所(3)職業/勤務先(4)連絡先(電話、Fax,Eメール)を記入の上、
E-メール:kozuka.euro@nifty.com宛にご連絡ください
※2010年11月度の予定
2010年11月度は地政学者 奥山真司先生のお話しを予定しています。
日時は11月24日(水)18:30~神田学士会館です。詳細は追ってご連絡します。
この記事へのコメント
日比野
先の大戦 :第2次世界大戦
精神的なもの、戦前の日本:国家神道及び国体と戦前の教育
ですかね。イメージとしては。
要するに、宗教含めた日本の精神的支柱。宗教といって悪ければ、侍精神といった国家の背骨に当たるものが相当骨抜きになってはいないか、という意味合いです。
almanosさんが指摘しているように「八紘一宇も欧米型の受容と加工の過程で生まれたキッチュな世界観の一つ」であったとしても、世界観ではあったわけです。
ところが太平洋戦争の敗戦で、その世界観は否定されて/してしまった。
これまでは、経済成長の影に隠れて、または日米安保によって、あまり意識しなくても済んでいた。
ところが今はそういう状況ではなくなってきた。ですから、それがツケになって回ってきているのではないかと思うのですね。
almanos
白なまず
ひふみ神示 第06巻 日月の巻 第六帖 (一七九)
、、、今の経済は悪の経済と申してあろがな、もの殺すのぞ。神の国の経済はもの生む経済ぞ。今の政治はもの毀(こわ)す政治ぞ、神の政治は与へる政治と申してあろが。、、、
ひふみ神示 第08巻 磐戸の巻 第18帖 (254)
、、、悪と思ふことに善あり、善と思ふ事も悪多いと知らしてあろがな、このことよく心得ておけよ、悪の世になってゐるのざから、マコトの神さへ悪に巻込まれて御座る程、知らず知らずに悪になりてゐるのざから、今度の世の乱れと申すものは、五度の岩戸しめざから見当とれん、、、愈々善と悪のかわりめであるから、悪神暴れるから巻込まれぬ様に褌しめて、この神示よんで、神の心くみとって御用大切になされよ。
ひふみ神
ちび・むぎ・みみ・はな
日比野庵殿は踏み込んで議論されているが, 私は,
単に, 今の日本のリーダシップをとっている団塊の
世代近辺層が日本を他国のに置くことができない
人々だという理由によると思う. 谷垣自民党総裁を
見ていると良く分かる. 威勢が良さそうだけど,
外国と対決しないことを第一に考えている.
この層にリーダシップをとられている民主党も同じ.
いくら立派そうでも根源的にフヌケな人をリーダに
する限り, 組織はフヌケになります.
自民党だって, 稲田朋美総裁になれば全く変わります.
もっとも, 民主党は, 中核の経政塾出身者がもとより
格好良いことをいうフヌケなので, どうしようもない.
ス内パー
ビデオが出ないせいで実は殺人未遂(海保職員が死ぬところだった)とか
色々噂が飛び交ってますなー。
せみまる