「我々は各方面から圧力を受けます。毎年そうなので、これは想定内です。中国共産党は批判されないと政治体制が変わりませんし、その方が弊害を除けます。腐敗や管理のミスなど、言論の自由は民主化において極めて重要です。」ノーベル委員会 トルビョルン・ヤーグラン委員長
「私が中国側に告げたようにノーベル委員会はノルウェー政府から独立した組織です。政府は干渉する権利がなく、我々も政府の反応を気にしません。だからこれは完全に独立した委員会の決定です」ノーベル研究所 ゲイル・ルンデスタッド所長
ノルウェーのノーベル賞委員会は10月8日、2010年のノーベル平和賞を中国人人権活動家で作家・詩人の劉暁波(リウ・シアオ・ポー)氏(54)に授与すると発表した。
劉暁波氏は、1989年の天安門事件で、指導的知識人として脚光を浴び、その後、何度も逮捕されながら民主化運動を続け、劉氏には普段から当局の監視がつき、共産党大会や全国人民代表大会の前後には自宅から一歩も出られなかったという。
2008年12月9日には、劉暁波を始めとする中国作家303人の連名による、中国共産党の一党独裁の終結、三権分立、民主化推進、人権状況の改善などを求めた宣言文、所謂「08憲章」を起草した。
この「08憲章」の起草によって、2010年2月に当局から「国家政権転覆扇動罪」で有罪となり、懲役11年の実刑判決を受けて服役している。
中国在住の中国人がノーベル賞を受けるのは、自然科学系も含めて劉氏が初めてで、ノーベル賞委員会は、劉暁波の受賞理由として「中国における基本的人権のために長年、非暴力的な闘いをしてきた」を挙げている。
そして、劉氏への授与の決定は有罪確定時の今年2月の時点で「不可避の状況になっていた」ことと、選考は全会一致であったことなどを発表している。
劉氏のノーベル平和賞受賞に対して、中国は猛反発し、中国外務省の馬朝旭報道局長は「劉暁波は犯罪者だ。その行為はノーベル賞の趣旨に逆行する。こうした人物への授与は平和賞への冒涜だ。中国とノルウェーの関係に損害をもたらすだろう」と、ノルウェー政府を揺さぶる方針を打ち出した。
その一方、劉氏の受賞を「なかったこと」にしようとあの手この手で、大規模なメディア規制を掛けている。
劉氏の妻、霞さんの自宅には8日の夕方から海外の報道陣約100人が殺到したのだけれど、警官隊が現れて規制。
受賞決定を伝えるNHKニュースや、生中継していた米CNNや英BBCといった欧米テレビ局の放映画面を真っ黒にした。
更に、インターネット上でも、劉氏や平和賞に関する情報を検索できないようにしているという。なんでも、中国の主要ポータルサイトにあった、ノーベル賞特設ページがいきなり消えた、という話さえある。
今の時期に、中国の民主運動家の劉暁波氏にノーベル平和賞を授与するということは、明らかに中国の一党独裁主義への牽制だと思われるのだけれど、その引き金になったと思われるのは、近年、露わにしてきた中国の覇権主義にあると思われる。
ノーベル賞選考委員会は、今年2月には、劉氏の受賞はほぼ決まっていた、なんて言っているけれど、その最後のトドメとなったのは、やはりノルウェー政府に、劉氏に平和賞を受賞させないように圧力を掛けていたことと、尖閣問題での日本への恫喝外交にあったのではないかと思う。
あれで、世界中は中国の野心とその危険性に気が付いた。
以前「中華封じ込め戦略」のエントリーの中で、アメリカはその世界戦略として、中国を封じ込めにかかったのではないかと言ったけれど、それが世界レベルで認識された感がある。
世界が、本気で中国を包囲に掛かる腹を固めたと見る。
中国はこれから、具体的にノルウェー、場合によってはEUに対して、なんらかの制裁、たとえば、自身の市場を頼みにした経済的な制裁を掛けてくるかもしれないけれど、今後の行方には注目している。
なぜかといえば、単に経済摩擦と言うレベルではなくて、大きくみれば、平和と独裁、自由と抑圧、もっと、ぶっちゃけていえば、正義と金のどちらを選ぶのか、という選択をかけた喧嘩になると思っているから。
今の欧米および世界の大半の価値観は、民主主義。それを「正義」として掲げている。
だから、その正義なるものが、中国がチラつかせるであろう「経済的利益又は不利益」によって、転ぶのかどうかを試されるのではないか。
冒頭のコメントにあるように、ノーベル委員会はノルウェー政府から独立した組織となっているから、政府は干渉する権利がないし、委員会もそれを気にかけない。
民主国家は、法と自由の秩序を護っているという建前がある。日本は先の尖閣問題で、あっと言う間に崩れてしまったけれど、ノルウェー政府はどうするのか。崩さずに突っ張りきれるのか。その点に注目している。
ただ、ノーベル賞には、尖閣問題のように日本の国内法云々とは決定的に異なる点がある。
それはノーベル賞には「権威」があること。
ノーベル賞が創設されて以来、この賞を受賞することは、非常に栄誉なことであり、世界中から称賛されるべきものである、という世界的コンセンサスがあって、それが確立している。
そこが大きく違う。日本の国内法、公務執行妨害にはそこまでの権威はない。
だから、ノーベル平和賞を受賞した劉氏への授与を妨害し、それに反発するという中国の態度は、そうした「世界的権威」に楯ついていることを意味している。
だから、これは、ある意味、「権威」と「権力」の闘いでもあるといえる。
以前「しずかちゃんに成りかけていた日本」のエントリーで、日本が世界に対する、神聖にして侵すべからずという何らかの「権威存在」となることが出来れば、それが抑止力として働くのではないか、と述べたことがある。
と、同時にこの方法は「権威を無視する国」には一切通用しないとも言ったのだけれど、今回のノーベル平和賞に関する限り、正に中国は、この「権威を無視する国」に該当している。
その意味において、このノーベル平和賞という「権威存在」がそれを無視して圧力を掛けてくる国に対して、どのような抑止効果を発揮するのかについて、非常に注目している。
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劉暁波氏の妻、公安当局監視下で夫の刑務所へ
香港公共ラジオは、ノーベル平和賞を受賞した服役中の中国の民主活動家、劉暁波氏(54)の妻の劉霞さん(49)が8日夜、公安当局の監視下で、劉氏が収監されている遼寧省錦州に向かったと伝えた。
中国当局は劉霞さんの行動を制限して外部との連絡を阻止しており、到着は確認できていない。現地の刑務所前では9日午前、公安当局が取材に訪れた一部記者を連行するなど、厳重な警戒が続いている。
(2010年10月9日12時25分 読売新聞)
URL:http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20101009-OYT1T00328.htm
ノーベル平和賞の劉暁波氏、10日にも妻と面会か 2010/10/9 21:03
【香港=吉田渉】ノーベル平和賞の受賞が決まった中国の民主活動家、劉暁波氏(54)の妻、劉霞さん(49)は9日朝、劉暁波氏が服役中の刑務所がある遼寧省錦州市に到着した。劉氏を支援する香港の人権活動家らが明らかにした。10日にも劉氏と面会する予定とされるが「劉霞さんの携帯電話は不通で先行きは不透明な状況」(関係者)という。
劉霞さんは8日夜、公安当局の監視の下で北京の自宅を出発。錦州市の刑務所周辺では既に厳重な警戒態勢が敷かれており、混乱を避けるため面会場所は周辺のホテルなどになるとの情報がある。
香港は「一国二制度」の下で自由な言論が認められており、中国の民主化運動を支援する市民が多い。香港各紙は9日付朝刊で劉氏の足跡などを詳しく報道。香港メディアは、北京市で劉氏の受賞決定を祝った民主活動家十数人が当局に拘束されたと伝えた。
URL:http://www.nikkei.com/news/category/article/g=96958A9C9381959FE2EBE2E0EA8DE2EBE3E2E0E2E3E2E2E2E2E2E2E2;at=ALL
中国指導部に大きな試練 劉暁波氏のノーベル平和賞受賞 2010.10.8 18:23
【北京=伊藤正】ノルウェー・ノーベル賞委員会が、中国の反体制作家、劉暁波氏にノーベル平和賞授与を決めた背景には、中国が経済発展の陰で、国民の民主的権利を抑圧しているとの国際的批判の高まりがある。中国政府は「内政干渉」と反発するだろうが、国内でも政治改革への圧力が強まる中、中国指導部は劉氏受賞への対応に苦慮しているとみられる。
劉暁波氏が平和賞の有力候補と伝わった後、ある中国の知識人は「もし受賞すれば、共産党のおかげだな」と話した。劉氏に対する懲役11年の判決には、世界各国から批判と抗議の声が上がり、劉氏は一党独裁体制の犠牲者、民主化運動の殉教者として同情と共感を集めたからだ。
1970年代末に改革・開放に転じて以来、中国は経済発展のために、対外開放路線を取り、国際化を進める一方、党に対抗する言論や活動は弾圧し続けた。改革・開放開始直後の79年、一党独裁を批判した魏京生氏を懲役15年に処したのに始まり、89年には、民主化運動を武力鎮圧した天安門事件が起こった。
魏氏に適用された「反革命宣伝扇動罪」は、97年の刑法改正で国家政権転覆扇動罪と名称を変え、今回の劉暁波氏の罪名になったが、党批判を封じ込める本質は不変だ。弾圧は、言論にとどまらず、党の意に沿わない宗教活動や人権擁護運動にまで及んだ。
中国の民主的権利や人権の抑圧には、欧米諸国、特に米国が批判し、改善を要求してきた。中国は、公式には「内政問題」として突っぱねる一方、天安門事件の政治犯を「病気治療」の名目で出国させるなど圧力を交わす取引に応じた。
しかし中国が経済大国化し、発言力を増した近年は、欧米の対中圧力は著しく弱まった。昨年春以降、訪中した米国のペロシ下院議長やクリントン国務長官は人権問題に触れず、中国の知識人層を失望させた。11月に訪中したオバマ大統領も同様で、その翌月、劉暁波氏に重刑判決が出た。
劉氏へのノーベル賞授与が、中国の民主化や人権問題への国際的関心を高めるのは間違いない。それは中国が軍事拡張を続け、北朝鮮やミャンマーなどの独裁政権と親密な関係を築いていることへの懸念も背景になっている。
中国は天安門事件後、一党独裁下で、経済は急成長したが、同時にさまざまな矛盾が噴出、社会には不満が充満している。市場経済化に見合った政治改革が停滞し、少数の特権階層が果実を独占する腐敗構造が形成された結果である。
中国指導部は社会各層から政治改革の圧力を受けており、「08憲章」で一つの方向を示した劉暁波氏の影響力を恐れたのが重刑を科した理由だった。その劉氏の受賞が国内に与える影響は、徐々に大きくなっていく可能性が高い。
1984年のロサンゼルス五輪で中国選手が金メダル1号を獲得したとき「ゼロの突破」と国中がわいた。ノーベル賞も中国の悲願だが、今回の「ゼロの突破」は国内報道も規制されるだろう。
経済はじめ多くの分野で国際標準化しながら、普遍的価値観を拒絶する中国を「異形の大国」と表現したのは、ある改革派の知識人だ。劉氏の受賞にどう対応するかは、内政問題も絡み中国指導部の試練になりつつある。
URL:http://sankei.jp.msn.com/world/china/101008/chn1010081824003-n1.htm
党中央が平和賞報道禁止か=中国
【香港時事】米国の中国語ニュースサイト・博訊新聞網は米国時間の8日、中国の民主活動家、劉暁波氏へのノーベル平和賞授与決定について、共産党中央が関係各部門に報道を禁じる緊急の指示を出したと伝えた。
同サイトによると、指示は胡錦濤国家主席(党総書記)と李長春党政治局常務委員(宣伝担当)の意向による。報道規制のほか、公安当局はデモがあれば鎮圧するよう命じられたという。
また、香港各紙によれば、北京、上海などでは8日夜、劉氏の受賞を祝う会合を開いた活動家が警察に連行されたり、会合が禁じられたりした。(2010/10/09-16:12)
URL:http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2010100900247
中国“ノーベル平和賞潰し”受賞者は政治犯として服役中 2010.10.09
ノルウェーのノーベル賞委員会が今年のノーベル平和賞を中国で政治犯として服役中の民主活動家、劉暁波(りゅう・ぎょうは)氏(54)に決めたのを受け、中国当局は“平和賞潰し”に躍起となっている。受賞を伝える海外テレビ局の放送やネット検索をいきなり遮断するなど、徹底した言論統制で本来ならば中国人初の栄誉ある受賞を“なかったこと”にするつもりのようだ。
劉氏は民主化運動が武力弾圧された天安門事件(1989年)の指導者の一人。国家政権転覆扇動罪で今年2月に懲役11年、政治的権利剥奪(はくだつ)2年の実刑判決が確定し、服役している。中国外務省の馬朝旭報道局長は「劉暁波は犯罪者だ。その行為はノーベル賞の趣旨に逆行する。こうした人物への授与は平和賞への冒涜だ。中国とノルウェーの関係に損害をもたらすだろう」と、さっそく尖閣問題と同様に政治問題の土俵に乗せてノルウェー政府を揺さぶる方針を打ち出した。
劉氏の妻、霞さん(49)が住む北京市中心部の自宅には8日夕、海外の報道陣約100人が殺到した。支援者らも集まり、西側メディアから受賞の一報を聞くと歓声が上がったが、警官隊が現れて規制をかけた。
当局は発表と同時に大規模なメディア規制を実施。受賞決定を伝えるNHKニュースの関連部分や、生中継していた米CNNや英BBCといった欧米テレビ局の放映画面を真っ黒にした。
インターネット上でも、授賞発表直後から劉氏や平和賞に関する情報を検索できないようにするなどの措置を取った。このため、中国のネットユーザーは劉氏受賞のニュースを報じたサイトを画像で取り込み、掲示板にアップロードしたり、個別にショートメールを送ったりして事実を確認している。
中国在住の日本人ジャーナリストは「中国の主要ポータルサイトにノーベル賞特設ページがあったが、いきなり消え去った。特設ページが残っているサイトも平和賞には触れていない。平和賞を報じた日本のニュースサイトは問題なく閲覧できるが、中国人ブロガーは当局の盗聴や介入を恐れてほとんどこのニュースに触れていない。みんな穏便に済ませたいようだ。ネットを使えない人は、受賞を知る術がない」と話している。
URL:http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20101009/dms1010091259009-n1.htm
この記事へのコメント
ちび・むぎ・みみ・はな
> 日本が世界に対する、神聖にして侵すべからずという何ら
> かの「権威存在」となることが出来れば、それが抑止力と
> して働くのではないか、と述べたことがある。
別に権威的存在にならずとも日本にはノーベル賞を越える
「権威」がある. もちろん「皇室」です.
皇室を敬愛することが日本の存在感を確実にする.
せみまる
almanos
天人相関説でしたか。天災の頻発という形で王朝交代すべしと天が告げるという。後は「カルラ舞う」でしたかねぇ。悪い気が増えると災害が増える。で、悪い気は我欲にひた走る人間から出ていくそうですな。この線でいくと改革解放以降10億以上の人が悪い気を出しまくっている状態。天災がおきない訳が無い。おまけに公害も深刻ときては。大地の気も枯れて更なる状況の悪化が進む。トドメに水が枯れてきている。共産党は五行説でいくなら紅い天、火徳の王朝。ですが、ゴリ押しした陛下との習近平で黄色の花が会談の席にあった。黄色は五行では土、五行では火生土。つまり火が終わって土が生まれる。つまり、こんなことをする紅い天が終わるという暗示とも取れます。単純に宮内省の典礼官達の意趣返しともとれますがね。
日比野
>何よりもヤバイのは戦争という経済政策を行う恰好の相手になってしまっている事。レヴィの台詞ではないですが「中国が無くても地球は回るぜ」な状況をつくるべく動き出している。
そうなんです。着々と世界規模で中国包囲網が形成されてきてます。ただ、中国を全く無視することも難しい。まずは封じ込めからでしょうけど、いろいろと危ない時代に突入しそうです。
白なまず
almanos様ご解説有難う御座います。勉強になります。儒教の天人相関説とは初めて知りました。なんとも無知でお恥ずかしいかぎりです。私のオカルト発言はこの様な知識を元にしている理由ではなくインスピレーション(イメージを強制的に見せられる)で頭がオーバーフローしてそれを整理する為にコメントしていますので、、、今後とも宜しくお願い致します。