ネットが社会を変える鍵は「3次の隔たり」

 
2007年、ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メデシンに「肥満が伝染する」という興味深い報告が掲載された。

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米国・ハーバード大学医学部のニコラス・クリスタキス教授とカリフォルニア大学サンディエゴ校政治学科のジェームズ・ファウラー教授は、2003年に、マサチューセッツ州のフレーミングハムのとある倉庫で発見された、健康調査に基づく、心臓研究の被験者グループ男女5124名分の個人記録を調査した。

その記録には、参加者の友人や職場の同僚、家族についても詳細に記録されていて、追跡調査まで行なわれていた。

そこでクリスタキスとファウラーは、「この記録から “人間関係” がわかるのではないか」と考え、その “人間関係” を、人を点で表し、そのつながりを線で表すことで図示していった。

そして、その図に個々人の喫煙率や肥満の度合、や参加者が感じている幸福度なども反映してみると、驚くべきことに、喫煙や肥満、幸福度がまるで “ウィルス”のように、拡散していたことが分かった。

たとえば、ある参加者が禁煙すると、その友人も禁煙する傾向がみられ、逆に、誰かが初めて喫煙を始めると、その友人が喫煙を始める可能性は36%増加する結果となった。

また、ある参加者が太りだすと、その友人も太る確率が57%も上昇し、更にその友人の友人が太る確率も20%上昇した。

更に、幸福度についても同様に、幸せな友人一人増えると、9%陽気さがアップするが、不幸な友人が一人増えても7%しか気分が沈まないことが分かった。

面白いことに、この現象は物理的な距離は関係ないという。どんなに離れていても、この現象が見られるそうだ。

この「幸福化」の作用を見ると、もっとも効果が強いのが「近くに住む親しい友人」で、次が「隣人」、その次が「近くに住む普通の友人」、その次に「近くに住む同朋」が来て、「一緒に暮らす配偶者」は5番目にくるという。

そして、この幸福にも賞味期限があって、直近の六か月に一人の友人が幸福になると、人の幸福度は45%上昇し、一方、直近の一年間に友人が幸福になった場合、その効果は35%にすぎなくて、時が経てばそれも消えてしまうと報告されている。

この研究では、社会的な繋がりの中で、不幸な人と接する人々は不幸に、幸福な人と接する人は幸福になる傾向があると結論づけられている。

これは、「類は友を呼ぶ」という諺を研究で証明したようなものなのだけれど、この研究によると、その影響は友人の友人まで及ぶというのがポイント。無限に影響が及ぶわけではないらしい。

まぁ、友人の友人くらいまでなら、ギリギリ知り合いの範疇に入るかもしれないけれど、友人の友人の友人となると、赤の他人だろうと言われてもそうかな、という気がしないでもない。

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だけど、筆者が特に注目したいのは、この「類は友の友まで呼ぶ」傾向は、距離に関係なく働くのだけれど、それは、あくまでもオフライン上の関係、実際に会うことで構築されたネットワークでの話だということ。

ニコラス・クリスタキス教授によれば、「ネット上のつながり」と「実社会のつながり」には大きく4つの違いがあるという。
1.enormity(影響力の大きさ)・・・ネット上のつながりは膨大。
2.communality(共有性)・・・ネットは、他人と協力する関係を実現しやすい。
3.specificity(特異性)・・・ネットは個人を探し、見つけ出すことが簡単
4.virtuality(バーチュアル性)・・・ネットでは、現実と別のアイデンティティを持つことが可能

これだけ見ると、ネット上でのつながりのほうが遥かに影響力が強いようにも思われるのだけれど、クリスタキス教授は、「オンラインでつながっているからといって、人は誰からも影響を受けるわけではないということだ。しかし、その中でもオンライン上の友人で現実の友人でもある人、オンライン上の友人であったが、現実の友人になった人は、実際にあなたに影響を与える傾向がある。」と述べている。

これが本当であれば、単にネットだけでの知り合い、ブログやツイッター等でハンドルネームは知っているけれど、顔も名前も知らないという友人との関係は、一人の影響が友人の友人にまで、影響を与えるかどうかまでは分からないということを意味してる。

よく、ネットだけ盛り上がっていても、実社会には殆ど影響を及ぼさないとも、巷で言われることもあるけれど、クリスタキス教授のコメントは、ある意味、それを示唆していると言える。

だけど、逆に言えば、ネットだけでなくて、直接、オフラインで会って、友人関係を構築すれば、一人の影響がその友人の友人まで及んでゆくのだとも言える。

自民党の石破政調会長が、初めての選挙で5万4千件余の個別訪問をして、獲得した票が5万6千票余りだったと言っているけれど、この研究結果を裏打ちしているといえなくも無い。

とすると、ネットでの繋がりを具体的な実社会での影響力に変換するには、オフ会などを通じた、リアルな繋がりを持つ事が大事ということになる。

尤も、この研究では類を呼ぶのは、「友の友」までだから、実際に会うと言っても、それほど無理する必要もない。

一人が変われば、「友の友」までその影響が及び、その「友の友」が変われば、更に、その「友の友」へと数珠繋ぎで変化してゆく。

そうした、オンラインの繋がりとオフラインの繋がりが、重複する度合いが広がるに従って、実社会への影響力として見えてくるのだろう。

近頃、しばしば見られるようになってきた、ネットでの呼びかけによる大規模OFF会やデモ活動などを見るにつけ、その時は着実に近づいて来ていると思う。


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画像肥満も禁煙も幸福も伝染する! ハーバード大学の超人気教授が説く目からウロコの“アナログ”絆(きずな)論

~フェイスブックやツイッターでは得られない“オフライン”ネットワークの驚くべき力

『つながり』著者ニコラス・クリスタキス教授インタビュー
ハーバード大学のスター教授は何も「白熱教室」のマイケル・サンデル教授一人ではない。2009年に米タイム誌の「世界で最も影響力のある100人」に選ばれたニコラス・クリスタキス教授(医学部・教養学部教授で現役の医師)もその一人であり、学部生による「好きな教授」の人気投票では常にトップクラスの得票率を誇る。その偉才が昨年、カリフォルニア大学の政治学者とともに、肥満も幸せもすべて“伝染する”と説く共著「CONNECTED」(邦題『つながり】(講談社刊)を出版し、あらためて全米で注目を集めている。インターネット世界だけでは得られない人と人とのつながり、すなわち社会的ネットワークが持つ驚くべき力について、縦横無尽に語ってもらった。(聞き手/ジャーナリスト、大野和基)


ニコラス・クリスタキス (Nicholas Christakis)
ハーバード大学医学部及び教養学部の教授。同大学提携病院の現役の内科医でもある。学生が選ぶ人気教授ランキングでは常に上位につける。2009年には米タイム誌の「世界で最も影響力のある100人」にも選ばれた。著書に、ホスピス内科医として終末医療に携わった経験をまとめた『死の予告 医療ケアにおける予言と予後』(ミネルヴァ書房)などがある。


――著書のテーマである「ソーシャル(社会的)ネットワーク」とは何か、分かりやすく説明してほしい。

 こう考えると分かりやすいだろう。一人の男性の妻には友人がいて、その友人には夫がいて、その夫には同僚がいて、さらにその同僚には兄弟がいて、兄弟には友人がいる。人びとはそうした広大な社会的ネットワークでつながっている。

 ここで大事なことは、社会的影響は知っている人のところで止まるわけではないということだ。あなたが友人に影響を与え、その友人がさらに友人にその影響を“伝染”したとすれば、われわれは人生で一度も会ったことのない人たちに影響を与えていることになる。

 今回、ジェイムズ(『つながり』共著者のジェイムズ・ファウラー カリフォルニア大学サンディエゴ校政治学科教授)と書いたことはまさにそうした社会的ネットワークが持つ驚くべき力についてだ。

――どのような発見があったか。 

 実は、この分野の研究は100年以上前から行われており、人が他人に影響されることは分かっている。ただ過去の研究対象は数人単位から多くとも数十人単位の社会的ネットワークにとどまっていた。一方、今回われわれが興味を抱いたのは、数千人、数万人、数百万人単位の社会的ネットワークだ。規模からして、新しい発見だらけだったと言える。

 特に驚かされたのは、特定の種類の音楽が好きといった好みだけではなく、広大な社会的ネットワークを通じて人が直接付き合いのない他人から体重や感情まで影響を受けることだった。友人の友人の友人の体重が増えると、その人の体重も増える――、友人の友人の友人がタバコをやめると、その人もいつのまにか禁煙している――といったことが実際に確認できた。投票活動でも、ある人の投票が友人の友人の投票に影響を受けているケースもあった。

社会的ネットワークは、知れば知るほど、複数の個体から形成されていながら、1つの個体であるかのように存在し機能する“超個体”だったのだ。感情、肥満、幸福、不幸、怒り、笑いといったさまざま事象がそのネットワークの中を伝播する。

 友人はある程度選べるが、その友人の友人は自分で選べないことを考えると、興味深い結果ではないか。

――どうやって定量的に分析したのか。

 それはもう大変だった(笑)。社会的ネットワークの力を研究するためには、社会的ネットワークの大量の実例が必要だったが、それは自分たちでかき集めるしかなかった。

 前述した友人のネットワークもあれば、大家族のネットワークもあるし、同僚のネットワークもある。またそれらをすべて含むネットワークもある。線でつなぎ絵に描こうとすれば、それらはさまざまな方向に枝分かれして複雑に入り組んだかたちになる。

 さらに、社会的ネットワークの力を分析するには、ある事象の影響が時間の経過とともにネットワーク内にどのように波及していったのか、ネットワークに属する個々人に関する具体的な情報も必要だった。分かりやすく言えば、社会的ネットワークのスナップショットではなく、映画が必要だったのだ。さもなければ、友人の友人の友人が太ると、自分が太るといったデータは検証できない。

 ちなみに、研究費はNIH(National Institutes of Health、国立衛生研究所)の一つであるNIA(National Institute on Aging、国立老化研究所)からもらった。5年間で100万ドルほど使ってデータをかき集めた。そして、さまざまな分野の分析手法を用いて、社会的影響の伝染の経緯を研究した。

――社会的ネットワーク内を流れる事象に、肥満や幸福を選んだ理由は?

 肥満、喫煙、飲酒は公衆衛生上の重要性から選んだ。たとえば、日本人が特にそうだが、飲酒は非常に社会的な行為であり、ある人が飲むかどうか、またその人が実際にどれくらい飲むかどうかは周囲の人に強く影響される。

――ある社会的ネットワークの中心にいる人が非常に幸福だとすると、周囲の人も幸福を感じるということか。

 決定力があるものではない。あなたの幸福の唯一の要因が、あなたの友人の幸福だと言っているのではない。それは間違いだ。われわれが言っているのは、あなたの幸福の要因の一つは友人の幸福であるということだ。単に友人の幸福ではなく、友人の友人の幸福が影響していると言っているだけだ。

 今ここで話しているネットワークは、フェイスブックのようなデジタルネットワークではなく、実際のネットワークだ。人類が何十万年も作ってきたネットワークだ。オンラインネットワークにはオフライン(実社会)のネットワークと共通する部分もあるが、異なる部分もある。

――どんな違いがあるのか?

 4つの大きな違いがある。一つ目はenormity(影響力の大きさ)だ。これはソーシャルインタラクション(社会的相互作用)の大きさを指す。あなたが属す社会的ネットワークの大きさは、オンライン上では何千人にもなる可能性がある。

 二つ目はcommunality(共有性)で、これは他人と協力する能力だ。オンラインの世界は、オフラインの世界に比べて、基本的に共有性を実現しやすい。たとえば、ウィキペディアは、現実の世界では組織立てるのが非常に難しい方法で、多くの人の貢献を引き出している。

 三つ目のspecificity(特異性)は個人を探し、見つけ出す能力だ。たとえば、日本の小さな漁村に住んでいれば、特定の資質や能力を持つ人を探すことは非常に難しいだろう。口コミに頼らなければならない。しかし、今もし沖縄で陶器の作り手を見つけたければ、ネットを使って数分で見つけることができる。300年前であれば、これは非常に難しいことだった。

 四つ目はvirtuality(バーチュアル性)で、オンラインでは、現実の世界では非常に実行するのが難しいアイデンティティを持つことが可能だ。たとえば、男性が女性のアバター(仮想空間における自分の分身)を持つこともできる。

――つまり、オンラインのほうが影響を広げる力は強いのではないか。

 こう答えよう。われわれが発見したことは、オンラインでつながっているからといって、人は誰からも影響を受けるわけではないということだ。それは同じ町に住む人なら影響を受けるかというとそうでないのと同じだ。フェイスブックの友達が何千人いたとしても、彼らの行動とか好みに影響を受けるかと言ったら別の話だろう。

 しかし、その中でもオンライン上の友人で現実の友人でもある人、オンライン上の友人であったが、現実の友人になった人は、実際にあなたに影響を与える傾向がある。

 本の中で「自殺」を取り上げているが、日本では他人同士が集まって集団自殺してしまうことがあると聞く。この現象はspecificity(特異性)を示している。

 自殺したいとき、自殺したいと思っている他の人を探そうとする。それはまた悲しいことにcommunalityも示している。集まると、悪い行動が強化される。こういう人たちは他人同士であることがときどきある。また、ときには集まってからお互いのことを知るようになって、そういう行動が強化される場合もある。こういう場合、オンラインの友人が現実の友人になる。もちろんこれは日本だけの問題ではない。アメリカにも自殺クラブはある。

――(自殺のような)マイナスの感情のほうがプラスの感情よりも伝播力がやはり強いということではないか。

 オフラインの現実社会のネットワークの場合は違う。愛や利他主義や幸福などの好ましい特性の方が、不幸や暴力、虚報よりもはるかに広がるのが速い。つまり、つながりのある生活は損害よりも恩恵のほうを多くもたらしてくれるのだ。

――日本は“つながり”が希薄だから、孤独死が増えている?

 それは、日本だけの問題ではない。 

 正確な比率は覚えていないが、イギリスにはクリスマスを一人で過ごす人が100~200万人いるという研究結果がある。本の中にも書いたが、アメリカ人の5%は、友人がいない。この孤立の問題はフランス、イギリス、アメリカ、日本などあちこちにある。国によってかたちは異なるが、一般的な問題だ。この社会上の孤立は死のリスクになる。孤立すると、死期が早まる。

――では、われわれは社会的ネットワークをどう人生に活かしていけばいいのか。それはある程度コントロールできるようなものなのか。

 社会的ネットワークの中での自分のポジショニングについては自助努力でかなりコントロールできるが、それ以外の部分では部分的なコントロールしかできないことをまず自覚すべきだ。

 もちろん、あなたの友人が犯罪人であれば、彼との関係を切ることは恐らくいいアイデアだろう。しかし、前述したように、人とのつながりを持つことは、基本的に損害よりも恩恵のほうをより多くもたらしてくれることが分かっている。意図的に自分の社会的ネットワークを作っていくことはあまりうまくいかないだろう。

 また、禁煙するとか、減量するとか、少しでも幸せになろうとするとか、自分自身の人生にプラスの変化をあなたがすれば、それは自分の友人だけではなく、その友人の友人にまで影響を与えるという視点も大切だ。何十人というレベルではなく、何千人、何万人というレベルにまで影響を与える可能性があるということだ。

 かつてジョン・F・ケネディは“Ask not what your country can do for you; ask what you can do for your country.”と言った。同じことは社会的ネットワークにも言える。

 つまり、ネットワークが自分にどれくらいためになるかばかりを考えるのではなく、あなた自身がいかにネットワークのためになるかを考えるのが一番良いのだ。

URL:http://diamond.jp/articles/-/9592

この記事へのコメント

  • almanos

    アナログなといっても、元を正せば人間自体がアナログな生き物ですしね。出会い系が色々言われてもしつこく存続している理由は、アナログな接触に飢えている人間が存続させるだけ数でいるからなのでしょう。邦画の怪作「自殺サークル」もみんなで自殺するアナログな繋がりを描いています。ネットで出会って一緒に自殺というニュースを最初に聞いた時、この怪作映画を思い出してしまった。そういうものではないアナログとデジタルが重なった縁が、これからは当たり前になるのかもしれません。群衆の中にいなくても孤独を感じる事が当たり前になってしまっていますしね。
    2015年08月10日 16:48
  • 白なまず

    口先だけの約束や付き合いでは力が発揮されないそうです。実際に会って話をしたり親睦を深めてはじめて影響し合う。当たり前の様ですが大事な事ですね。

     心、言、行、一致であるから直ちに力する、


    ひふみ神示 五十黙示録 第04巻 竜音の巻 第十四帖

     幽界霊も時により正しく善なることを申すなれど、それは只申すだけであるぞ。悪人が口先だけで善を語るようなものであるぞ、よいことを語ったとて直ちに善神と思ってはならん。よい言葉ならば、たとへ悪神が語ってもよいではないかと申すものもあるなれど、それは理屈ぢゃ、甘ければ砂糖でなくサッカリンでもよいではないかと申すことぞ。真の善言真語は、心、言、行、一致であるから直ちに力する、言葉の上のみ同一であっても、心、言、行、が一致しておらぬと力せぬ。偽りの言葉は、落ちついてきけばすぐ判るぞ、同じ「ハイ」と言ふ返事でも、不満をもつ時と喜びの時では違ふであろうがな。われは天照太神なり、などと名乗る霊にロクなものないぞ、大言壮語する人民はマユツバもの。
    2015年08月10日 16:48

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