菅首相の所信表明と宰相不幸社会

 
「こうした国際情勢の下、天然資源・エネルギーや市場を海外に依存する我が国は、如何にして平和と繁栄を確保するのか。受動的に対応するだけでは不十分です。国民一人ひとりが自分の問題として捉え、国民全体で考える主体的で能動的な外交を展開していかなければなりません。」
菅首相 於:10/1 所信表明演説

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秋の臨時国会が始まり、空き菅殿の所信表明演説が行われた。

まぁ、色んなブログなどで取り上げられているのだけれど、そろそろ、空き菅殿の無責任体質は衆目の一致するところになってきたように感じている。

先月30日の衆院予算委員会集中審議で、尖閣諸島衝突事件で逮捕した船長の釈放について、「谷垣総裁も、早く解放したほうがよかったのではないかと言っている」と、責任転嫁。そして、10月1日の所信表明演説では、今度は、外交問題を国民に擦り付けている。

まぁ、空き菅殿のこうした異常に強い自己防衛本能について、筆者は空き菅殿の首相就任直後の段階で「けものへん」の属性を持っているのではないかと指摘したのだけれど、相変わらずのようだ。

また、責任を他人に擦り付ける、言い訳についても、以前「鳴くのなら ここから出て行け ほととぎす」のエントリーで分析したことがある。次に該当部分を引用する。


自民党の石破政調会長は、「いいところだけ取って、リスクは自民党に負わせるようなことは卑怯者のすること。」とおかんむりだけれど、菅@けものへん殿はそういう御仁なのだ、と割り切って考えたほうがいい。これからも似たようなことはどんどんやると見る。

こうした、菅@けものへん殿の言い訳を大きく分類してみると、次のようになると思われる。

パタンA:自分は関係ない。
パタンB:知らずにやった。今は反省している。
パタンC:あいつが悪い。あいつもやっている。


今の臨時国会での空き菅殿の答弁も見事にこの言い訳パタンに当てはまる。

日中問題など外交課題に「国民1人ひとりが…」発言:パタンA=自分は関係ない
「谷垣総裁も、早く解放したほうがよかった…」発言:パタンC=あいつもやっている
尖閣問題で国民に「お詫びしたい…」発言     :パタンB=今は反省している

因みに、谷垣総裁のコメントは、9月24日のぶら下がり会見のことを言ったのだろうけれど、会見全体を通して聞くと、「国外退去という方法もあるけれど、国内法で粛々とやるのであれば、そうすべきであって、国内法で処理しないで処分保留で釈放というのは筋が通らない」という趣旨であるから、谷垣総裁が早く解放したほうが良かったとだけ言ったと解釈するのは多少無理がある。



都合の良いところをつまみ食いして、その場を切り抜けたとしても、直ぐばれるだけなのに、どうにも嘘が多すぎる。

それに何より問題だと思うのは、冒頭に引用した「外交課題に国民1人ひとりが考えるべきだ」発言。

何故問題かというと、責任を国民に押し付けているというだけじゃなくて、国民に判断を委ねるということは、判断出来得るに足る情報をきちんと公開しなければならないことを意味するから。

たとえば、今回の漁船衝突事件についていえば、例の衝突ビデオの公開は勿論のこと、中国からの公式非公式の要求内容と、その交渉記録その他。更には、尖閣諸島における海上保安庁の巡視の現場、や自衛隊の部隊配備の現状。更には、在日米軍との連携の計画など、その一切を国民に周知しないといけなくなる。

そういった正確な情報もなしに、正しい判断ができる筈がない。
※国民と政治家でアクセスできる情報に差があることに起因する問題点については、こちらのエントリー「政策コンテストと縁起のレイヤー」で述べているので参照されたい。

だから、現時点で、空き菅殿が「日本の平和と繁栄を国民一人一人が考えよ」というのは、海図もコンパスも無しで、大洋に放り出すようなもので、ロジック的には遭難しろ、と言っているのと変わらない。

もしも、空き菅殿が、本気でそう思っているのであれば、それこそ首相の判断で衝突ビデオを公開する、と言わなきゃいけない。

だけど、現実は、衝突ビデオの公開をどうするかで揉めていて、空き菅殿は、そのビデオすら見ていないと答弁し、対応を仙谷官房長官に一任するとしている。

どうみても、情報公開に積極的だとは思えない。

だから、やっぱり、「外交課題に国民1人ひとりが考えるべきだ」発言は口先だけのことだと言わざるを得ない。

第一、国家機密が多分に含まれる、外交に関する情報など、国民に全部公開するなんてできるわけがない。だからこそ、その判断と責任は国のトップが負う宿命にある。

首相はその責任を負うが故に、その立場にあることを許される。

だから、一国の宰相としての責任を負う気がないのであれば、即刻、首相の座から降りるべきであって、悪戯に首相の椅子にしがみつくことは、日本を「宰相不幸社会」に叩き落とすことを自覚しなきゃいけない。

空き菅殿は所信表明演説の中で「有言実行内閣」だなんて言っているけれど、まず最初に自分自身の「嘘つき」を直すところから実行すべきだろう。




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画像日中問題など外交課題に「国民1人ひとりが…」と責任を有権者に転嫁か 首相所信表明 配信元:2010/10/01 14:12更新

 菅直人首相にとって2度目となる1日の所信表明演説は約6千字と、内閣発足直後の6月の演説の約1万字から大幅に圧縮し、無駄を省いた「実務型」の内容となった。その中で目を引くのは、沖縄・尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件が起きたこの時期に、「主体的な外交の展開」を掲げ、日中関係に比較的大きなスペースを割いたことだ。

 首相は、国際社会は「歴史の分水嶺(ぶんすいれい)」とも呼ぶべき大きな変化に直面していると指摘し、「わが国周辺地域に存在する不確実性・不安定性は、予断を許さない」と強調した。問題意識はもっともだが、続く次の一節は何を意味するのか。

 「国民一人ひとりが自分の問題としてとらえ、国民全体で考える主体的で能動的な外交を展開していかなければならない」

 政府は現在、対米、対中、対露外交で迷走と敗北を繰り返し、「受動的・他律的外交」を余儀なくされている。それに困り果て、国民に「対応を考えてくれ」とげたをあずけて、責任回避を図っているかのように受け取れる。

 首相は、中国の軍事的拡張路線に対しては「透明性を欠いた国防力の強化や、インド洋から東シナ海に至る海洋活動の活発化には懸念を有している」と表明した。さらに、尖閣諸島に関し、「歴史的にも国際法的にもわが国固有の領土であり、領土問題は存在しない」と改めて強調した。

 そう認識しているのであればなぜ、海上保安庁の巡視船に2度体当たりした中国人船長を「地検の判断」と強弁して慌てて釈放したのか。諸外国に日本の正当性を理解させられたはずの国連総会で、首相は何も発信しなかったのか。

 「中国には、国際社会の責任ある一因として、適切な役割と言動を期待する」

 首相は演説でこうも訴えたが、日本の国会で内弁慶的に述べるより、広く国際社会、何より中国自身にきちんと主張すべきではないか。(阿比留瑠比)

URL:http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/politics/politicsit/446566/



画像谷垣さんも解放しろと…首相発言に「責任転嫁だ」

 菅首相は30日の衆院予算委員会集中審議で、尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件で逮捕した船長の釈放について、「(自民党の)谷垣総裁も、早く解放したほうがよかったのではないかと言っている」と述べた。


 自民党の谷垣総裁が船長釈放決定の直後、「小泉政権は尖閣に上陸した者を国外退去とした。そういう処理もありえた」などと発言したことを念頭に、政府の対応の妥当性を強調したものだ。

 これに対し、質問者で自民党の小野寺五典氏は、「いろいろな所に責任を押しつけている」と反発した。

(2010年10月1日09時26分 読売新聞)

URL:http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20101001-OYT1T00180.htm?from=navr



画像菅首相、国民におわび「心配かけた」=ビデオ見てない-尖閣沖衝突で・衆院予算委

 衆院予算委員会は30日午前、沖縄県・尖閣諸島沖で中国漁船が海上保安庁の巡視船に衝突した事件に関し、菅直人首相と全閣僚が出席して集中審議を行った。首相は、政府の一連の対応について「国民にご心配をお掛けしたことはおわびしたい」と陳謝した。民主党の長島昭久前防衛政務官への答弁。
 首相は、中国が日本側に謝罪と賠償を求めたことなどを念頭に「わが国の国内法に基づく粛々とした手続きを認めないかの姿勢があったことは大変問題だ」と批判。その上で「尖閣諸島はわが国固有の領土であると明確に申し上げ、きちんとした姿勢でこれからも臨んでいく」と強調した。
 また、首相は、海上保安庁が撮影した衝突時のビデオ映像について「見ていない。報告を必要に応じて仙谷由人官房長官からいただいている」と自民党の小野寺五典氏に答えた。(2010/09/30-13:19)

URL:http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2010093000156



画像【尖閣衝突事件】ビデオの扱いを官房長官に一任 2010.10.1 11:47

 仙谷由人官房長官、前原誠司外相、柳田稔法相、馬淵澄夫国土交通相が1日午前、首相官邸で中国漁船衝突事件のビデオ映像の扱いについて協議し、国会への提出のあり方などの対応を仙谷氏に一任することで合意した。

 映像をめぐっては30日の衆院予算委員会理事会が政府に対して同委に提出するよう求めることを決めた。ただ、仙谷氏は1日の記者会見で公開の是非に関し、「委員会から文書や正式な通告が来ているわけではないので、議論してみなければならない」と述べるにとどめた。

URL:http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/101001/plc1010011148013-n1.htm?utm_source=echofon



画像第176回国会における菅内閣総理大臣所信表明演説 平成22年10月1日(金)

一 はじめに

 国民の皆さん、国会議員の皆さん、菅直人です。六月に政権を担って四か月、九月に民主党の代表に再選され、党と内閣の改造を行い、政権を本格稼働させる段階に入りました。「有言実行内閣」の出発です。何を実行するのか。一言で申せば、これまで先送りしてきた重要政策課題の実行です。経済低迷が二十年続き、失業率が増加し、自殺や孤独死が増え、少子高齢化対策が遅れるなど、社会の閉塞感が深まっています。この閉塞感に包まれた日本社会の現状に対して、どの政権に責任があったか問うている段階ではありません。先送りしてきた重要政策課題に今こそ着手し、これを、次の世代に遺さないで解決していかなければなりません。それが、「有言実行」に込めた私の覚悟です。解決すべき重要政策課題は、「経済成長」、「財政健全化」、「社会保障改革」の一体的実現、その前提としての「地域主権改革の推進」、そして、国民全体で取り組む「主体的な外交の展開」の五つです。本日は、この五つの課題について、私の考えを申し上げます。


二 経済成長の実現―経済対策と新成長戦略の推進

(成長と雇用による国づくり)
 まず最初の課題は、経済成長です。国内消費を取り巻く状況には、厳しいものがあります。需要が不足する中、供給側がいくらコスト削減に努めても、値下げ競争になるばかりで、ますますデフレが進んでしまいます。これでは景気は回復しません。供給者本位から消費者目線に転換することが必要です。消費も投資も力強さを欠く今、経済の歯車を回すのは雇用です。政府が先頭に立って雇用を増やします。医療・介護・子育てサービス、そして環境分野。需要のある仕事はまだまだあります。これらの分野をターゲットに雇用を増やす。そうすれば、国民全体の雇用不安も、デフレ圧力も軽減されます。消費が刺激され、所得も増えます。その結果、需要が回復し、経済が活性化すれば、さらに雇用が創造されます。失業や不安定な雇用が減り、「新しい公共」の取組なども通じて社会の安定が増せば、誰もが「居場所」と「出番」を実感することができます。こうした成長と雇用に重点を置いた国づくりを、新設した「新成長戦略実現会議」で強力に推進します。


(円高、デフレ状況に対する緊急的な対応―第一段階)

 そのため、まず、今から来年度に向けて「三段構え」で成長と雇用に重点を置いた経済対策を切れ目なく推進します。既に、その「第一段階」、急激な円高・デフレ状況に対する緊急的な対応を実行に移しています。政府・日銀は、為替介入を実施しました。今後も、必要に応じ、断固たる措置をとります。また、即効性のある雇用対策に重点を置いて予備費約九千二百億円を執行します。特に、新卒者の就職に力を入れます。仕事を探す側、雇用する事業者、双方の負担を軽減し、ワンストップで雇用を「つなぐ」仕組みを全国展開します。さらに、低炭素産業の新規立地を補助して雇用を「守る」取組や、地域の雇用を「創る」取組も盛り込みました。日銀に対しては、政府と緊密な連携を図りつつ、デフレ脱却の実現に向け、さらなる必要な政策対応をとることを期待します。


(今後の動向を踏まえた機動的な対応―第二段階)

 そして、デフレ脱却、景気回復を軌道に乗せるため、今国会での補正予算の編成を含む「第二段階」に入ります。中身が重要です。野党からの提言も踏まえ、五つの柱からなる大枠を提示しました。第一の柱が雇用・人材育成、第二が新成長戦略の推進、第三が子育てや医療・介護・福祉、第四が地域活性化、社会資本整備と中小企業対策です。第五の柱として、規制・制度改革に取り組みます。例えば、再生可能エネルギーの利用拡大に向け、全量買取制度の円滑な導入を目指すとともに、大規模太陽光発電や新エネ・省エネ設備に係る規制を緩和します。日本を国際医療交流の拠点とするため、ビザや在留資格の取扱いを改善します。さらに、雇用創出効果の大きい国内立地促進策を、新設した円卓会議で早急にまとめます。いずれも国民生活に直結する課題です。与野党間で意見交換を進め、補正予算を含め、合意を目指したいと思います。


(新成長戦略の本格実施―第三段階)

 「第三段階」は、既に作業を始めている来年度予算編成と税制改正です。予算編成では、「元気な日本復活特別枠」も活用し、需要創造や雇用創出を強化します。法人課税については、税制の簡素化、海外と比較した負担といった観点から、年内に見直し案を取りまとめます。ものづくりでも、サービス産業でも、業種を問わず、新しい需要を引き出し、豊かで安心な暮らしを実現するイノベーションを起こすことが重要です。この観点から研究開発や人材育成も強化します。

 改めて申し上げます。今国会の最大の課題は、「第二段階」である経済対策のための補正予算の成立です。与野党間での建設的な協議に心から期待いたします。そして、切れ目なく「第三段階」に進み、新成長戦略の前倒し実施により、日本経済を本格的な成長軌道に乗せていきたいと考えます。是非とも、ご理解、ご協力をお願いいたします。


三 財政健全化と行政の無駄削減

(財政運営戦略の実施)
 二番目の重要政策課題は、財政健全化です。現在の財政状況を放置すれば、どこかで持続できなくなります。政府は、六月に財政健全化の道筋を示した「財政運営戦略」をまとめました。二〇一五年度までに、基礎的財政収支の赤字を対GDP比で今年度の半分にし、二〇二〇年度までに黒字化を達成するものです。大変高い目標ですが、成長と雇用拡大を実現しながら、一歩ずつ達成を目指します。

(来年度予算編成に向けて)
 最初の一歩が、無駄の徹底した削減を含む来年度予算の編成です。昨年は、四百四十九の事業を仕分けし、約二兆円の財源確保を実現しました。引き続き、強力に無駄の削減を徹底します。そもそも、財政が如何なる状況にあろうと、無駄は許されません。事業仕分けを特別会計に広げるなど、幅広く事業を見直します。マニフェスト実現には、引き続き誠実に取り組みます。財源の制約などで実現が困難な場合は、国民に率直に説明し、支給の方法や対象を含め、国民が納得できる施策に仕上げていきます。

(行政改革、公務員制度改革の推進)
 歳出見直しは、単に切り詰めることが目的ではありません。行政が利用者の視点に立ってサービスを提供し、より効率的に奉仕する体制にすることが重要です。公務員制度改革も、この目標を共有しています。国家公務員の総人件費の二割削減と併せ、一体的に取り組んでいきます。また、国の出先機関の統廃合を含め、各府省の機構や定員をスリムにします。公務員諸君に改めてお願いします。行政のプロとしての皆さんの心構えが問われています。


四 社会保障改革

(改革の必要性)
 三番目の重要政策課題は、社会保障改革です。社会保障制度がしっかりしなければ、国民の将来に対する不安はぬぐえません。この不安が、消費の低迷、経済の停滞の背景になっています。改革を急がなければなりません。一般論として、多少の負担をしても安心できる社会を作っていくことを重視するのか、それとも、負担はできる限り少なくして、個人の自己責任に多くを任せるのか、大きく二つの道があります。私は、多少の負担をお願いしても安心できる社会を実現することが望ましいと考えています。
 まず、求める社会保障の姿について議論を進めます。安定した年金制度や、十分な医療・介護・福祉サービスを確保していかなければなりません。高齢化などに伴い、今のままでも、社会保障費は毎年一兆円以上増加していきます。さらに、新たなニーズも生じています。孤立したお年寄りを守る、女性を乳がん・子宮頸がんから守る、子どもを貧困や虐待から守る、あらゆる人を自殺や災害から守る。強者の論理ではなく、弱者に寄り添い、こうした課題にも応えなければなりません。社会保障の基盤となる番号制度をどう整備するか決める必要もあります。個々の課題にばらばらに答えを出しても根本的な解決策にはなりません。政府は、社会保障改革の全体像について、必要とされるサービスの水準・内容を含め、国民に、わかりやすい選択肢を提示していきたいと思います。

(与野党間の議論)
 その上で、国民の選択に当たり、社会保障に必要な財源をどう確保するか一体的に議論する必要があります。消費税を含め、税制全体の議論を進めたいと思います。結論を得て実施する際は、国民に信を問う。この方針に変更ありません。当然、与野党を超えた議論が不可欠です。それに向け、政府・与党で社会保障改革の全体像を検討する場を設け、野党の皆さんとも意見交換をしていきたいと思います。

(子ども・子育て支援の充実)
 子ども・子育て支援にも、引き続き重点的に取り組みます。どの子どもも、この国の将来を担う宝です。家族だけでなく、地域、さらには国で、大切に育てなければなりません。高校の授業料実質無償化を着実に実施し、子ども手当は、現金給付と保育所の整備などの現物支給のバランスをとって拡充する方針です。幼保一体化を含む法案を来年の通常国会に提出する準備を進めます。少子高齢化の下で、労働力人口が減少し始めています。待機児童の解消を急ぎ、働く女性を応援し、男女共同参画を推進します。


五 地域主権改革の推進

 以上の三つの重要政策課題の解決に当たっては、地域主権改革の推進が鍵となります。地域が主役となって、特色ある産業振興や、住民の要望に応じた社会サービスの提供ができるよう、我々の世代で確たる道筋をつけます。残念ながら、これまで実感のある変化は生じていません。壁を打ち破るため、まず、「ひもつき補助金」の一括交付金化に着手します。来年度予算では、各府省の枠を超えて投資的資金を集め、自由度の高い交付金に再編します。地域で、霞が関の発想に縛られない、独自のモデルを構想してください。国の出先機関が扱う事務・権限移譲については、各府省が検討結果を八月末に提出しましたが、不十分であり、やり直しを指示しました。横断的な移譲の指針を示し、年内を目標に検討を進めます。


六 国を開き未来を拓く主体的な外交の展開

(「歴史の分水嶺」における外交)
 五番目の重要政策課題は、主体的な外交の展開です。今日の国際社会は、安全保障面でも経済面等でも「歴史の分水嶺」とも呼ぶべき大きな変化に直面しています。新興国の台頭で、世界の力関係も変貌を遂げています。我が国周辺地域に存在する不確実性・不安定性は、予断を許しません。こうした国際情勢の下、天然資源・エネルギーや市場を海外に依存する我が国は、如何にして平和と繁栄を確保するのか。受動的に対応するだけでは不十分です。国民一人ひとりが自分の問題として捉え、国民全体で考える主体的で能動的な外交を展開していかなければなりません。その際、国を思い切って開き、世界の活力を積極的に取り込むとともに、国際社会が直面するグローバルな課題の解決に向け、先頭に立って貢献することが不可欠です。また、防衛計画の大綱の見直しに当たっては、真に役に立つ実効的な防衛力を整備するため、これからの時代にふさわしいものを、本年中に策定します。

(日米同盟)
 日米同盟は、我が国の外交・安全保障の基軸です。先日のオバマ大統領との会談でも、日米同盟がアジア太平洋地域のみならず、世界の安定と繁栄のための共有財産であること、そして、日米同盟を二十一世紀にふさわしい形で、安全保障、経済、文化・人材交流の三本柱でさらに深化・発展させていくことを確認しました。また、アフガニスタン・パキスタン支援、イランの核問題、気候変動、核軍縮・核不拡散など、国際社会が直面する課題へも日米が協力して対処することで一致しました。十一月のAPECの際に予定されている日米首脳会談では、さらに日米同盟深化のための具体策を詰めていきます。普天間飛行場の移設問題については、本年五月の日米合意を踏まえて取り組むと同時に、沖縄に集中した負担の軽減にも取り組みます。沖縄の方々のご理解を求め、誠心誠意説明してまいります。

(日中関係)
 日中両国は、一衣帯水のお互いに重要な隣国であり、両国の関係はアジア太平洋地域、ひいては世界にとっても重要な関係だと認識しています。近年、中国の台頭については著しいものがありますが、透明性を欠いた国防力の強化や、インド洋から東シナ海に至る海洋活動の活発化には懸念を有しています。尖閣諸島は、歴史的にも国際法的にも我が国固有の領土であり、領土問題は存在しません。先般の事件は、我が国の国内法に則り粛々と処理したものです。中国には、国際社会の責任ある一員として、適切な役割と言動を期待します。日中両国間に様々な問題が生じたとしても、隣国同士として冷静に対処することが重要と考えます。日中関係全般については、アジア太平洋地域の平和と繁栄、経済分野での協力関係の進展を含め、大局的観点から戦略的互恵関係を深める日中双方の努力が不可欠です。

(東アジア地域の安定と繁栄に向けて)
 この秋は、我が国において、重要な国際会議が開催されます。生物多様性条約に関するCOP10では、議長国としての重要な役割を果たします。また、私が議長を務めるAPEC首脳会議では、米国、韓国、中国、ASEAN、豪州、ロシア等のアジア太平洋諸国と成長と繁栄を共有する環境を整備します。架け橋として、EPA・FTAが重要です。その一環として、環太平洋パートナーシップ協定交渉等への参加を検討し、アジア太平洋自由貿易圏の構築を目指します。東アジア共同体構想の実現を見据え、国を開き、具体的な交渉を一歩でも進めたいと思います。
 北朝鮮については、拉致、核、ミサイルといった諸懸案の包括的解決を図り、日朝平壌宣言に基づき、不幸な過去を清算し、国交正常化を追求します。拉致問題については、国の責任において、すべての拉致被害者の一刻も早い帰国に向けて全力を尽くします。なお、北朝鮮の政治情勢については、引き続き注視していきます。


七 政治改革と議員定数削減

 以上の課題に臨む我々国会議員のあり方について、一言述べます。カネのかからないクリーンな政治の実現。国民の強い要望です。私自身の政治活動の原点です。民主党は、企業・団体献金の禁止、国会議員の定数削減について党内で徹底的に議論し、年内に方針を取りまとめたいと思います。その後、与野党間で協議し、まとめたいと思います。


八 結び

 本日、国会が召集されました。日本が現在抱える課題を解決し、次の世代に先送りしない責任を、国会議員が協力して果たせるか。国民の期待に応えることができるか。この国会が試金石となります。郵政改革法案、地球温暖化対策基本法案、労働者派遣法改正法案などの審議もお願いすることとなります。私は、今回の国会が、具体的な政策をつくり上げる「政策の国会」となるよう願っています。そのために、議論を深める「熟議の国会」にしていくよう努めます。結論を出す国会になるよう期待します。この場にいる我々を隔てるものは、どこに座っているかではありません。野党の皆さんにも真摯に説明を尽くし、この国の将来を真剣に考える方々と、誠実に議論していきます。そして、何とか合意できないか知恵を絞ります。国民に選ばれた国会議員が全力を尽くし、この国の政治を築いていく。真の国民主権の政治に向け、共に頑張りましょう。


URL:http://www.kantei.go.jp/jp/kan/statement/201010/01syosin.html

この記事へのコメント

  • 白なまず

    まわりから大切な人達が居なくなって一人ぼっちになり、、、それでも孤独な虎のように生きていられるのか見ものですね。本当に志があるのであれば、エベレストの山頂や日本海溝の奥底でも生きられるはずですが、、、無理でしょうね。

    ひふみ神示 補巻 月光の巻 第五十三帖

    、、、そなたは自分は悪くないが周囲がよくないのだ、自分は正しい信仰をしてゐるのだから、家族も知友も反対する理由はない、自分は正しいが他が正しくないのだから、正しくない方が正しい方へ従って来るべきだと申しているが、内にあるから外から近よるのだと申してあろうが。、、、

    第五十六帖

     そなたは何時もあれもよいらしい、これもよいようだと迷って、迷ひの世界をうみ出し、自分で自分を苦しめて、気の毒よなあ。これと一応信じたらまかせきれよ。梶をはなして鳴門の渦の中にまかせきれよ。まかせきるとひらけてくるのぢゃ。悟れたようでゐて、そなたが悟り切れんのはまかせきらんからぞ。

     そなたはいつも孤独、そなたの不運は孤独からぢゃ。友をつくりなさい、友つくることは己をつくることと申してあろうが。友つくることは新しき世界をつくることぞ。一人の世界は知れ
    2015年08月10日 16:48
  • ちび・むぎ・みみ・はな

    > 因みに、谷垣総裁のコメントは、9月24日のぶら下がり
    > 会見のことを言ったのだろうけれど、

    9/24ではなく, 9/25の講演が問題だったようです.

    > 自民党の谷垣禎一総裁は25日、京都市内で講演し、
    > 沖縄・尖閣諸島沖で海上保安庁の巡視船に衝突した中国
    > 漁船の中国人船長が釈放されたことに関し「騒いで得を
    > するのは中国で、問題を深刻化させないことが一番大事だ。
    > 直ちに国外退去させた方が良かった。最初の選択が間違
    > っていた」と述べ、政府の対応を批判した。

    この発言に賛成の方も多いようだが, 背後には支那との関係
    をあらだてないと言う「団塊の世代」の考え方があると思う.
    とにかく, 小沢氏, 仙谷氏, 菅氏, 谷垣氏など団塊の世代は
    米国や支那が絡むと思考が拘束されるので早く退場して欲しい.
    2015年08月10日 16:48
  • クマのプータロー

    「国民一人一人が…」というフレーズが何を意味するのかを啓蒙するのが効率的かな、と思います。
    自分をよく知る馬鹿は良いのですが、自分が馬鹿だと思っていない馬鹿は始末に負えません。おまけに無責任と来てやがる・・・。
    ソクラテスは偉大です。
    2015年08月10日 16:48
  • 日比野

    おはようございます。白なまず様
    >まわりから大切な人達が居なくなって一人ぼっちになり、、、それでも孤独な虎のように生きていられるのか見ものですね。

    そのうちそのネタで書こうかと思ってました(笑)
    空き菅@けものへん殿の首相就任時に、「けものへん」を持つ漢字の
    「狡」→「狙」→「独」
    のプロセスを辿るのでは、と予想しましたけれど、本当にそうなりそうですね。
    2015年08月10日 16:48
  • almanos

    危機に際して資質が明らかになる様ですが、空き管殿は明らかに資質無しと自分から言っちゃってますね。あの仙石氏すらも「やってられん」と言う訳です。問題はいつまで彼を支える気になるか? 小沢氏の「神輿は軽くてパーが良い」発言は神輿が担いでいる人達が言う事を聞くのが大前提。担いでいる連中の言う事は都合が悪い事は聞かないわ、責任は擦り付けるわの空き管を何時まで担げるか? 「コロコロ変えるのは良くない! が明らかに有害なのは速やかに変えないといけない! 」という流れになるでしょうね。パーで有害な神輿として放り出されるでしょう。特に衆院で。参院みたいに一定期間選挙がない所と違って、何時解散となるかの恐怖がある場所では。団塊世代は問題ですが、衆院内で世代間闘争が起きて衆院解散になるかもしれませんな。こんな馬鹿共担いでやってられっか! と。
    2015年08月10日 16:48

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