
日々状況が変わるので、なかなかこのシリーズが終りませんけれども、今日のエントリーで一旦の区切りとしたいと思います。
8.細野氏訪中
さて、日本政府の対応についてですけれども、「睨みあう日中両政府と打開策」のエントリーで対応には、2つの方法があると述べました。
トップ会談を行って、早期に解決する方法と、長期戦を覚悟して正攻法で対応するという方法の2つですね。
ここのところの政府の動きをみると、どうやら、この2つを同時にやっている感があります。
まず、前者についていえば、29日になって、民主党の細野前幹事長代理が、菅首相の特使として訪中し、中国政府要人と会談したと伝えられています。
細野氏は、昨年12月に、小沢氏が大勢引き連れて、中国を訪れた折にも参加していて、小沢氏と胡錦濤主席との会談にも同席していますから、特使が務まるのではないかとみられた可能性は確かにあります。
ただ、誰が、細野氏を派遣したかについては、いまひとつ判然としません。
首相の特使といいつつ、肝心の菅首相はまったく承知していない、とコメントしていますし、細野氏本人も個人の判断で訪中したなどと言っています。
けれども、ここまで問題が大きくなっているのに、一議員が個人の判断で、訪中などできるとはとても思えませんから、やはり、官邸の了解のもと派遣された、と解釈するのが普通だと思われます。
第一、極秘といいつつ、北京入りした時点で、大々的に報道されるなど、一体何処が極秘なのか、さっぱり訳が分かりません。
細野氏の訪中は、小沢氏が動いたのだとか、いやいや北京が幕引きを狙って、わざわざ指名して呼んだのだとか、官邸が早期解決を計って派遣したのだとか、いろいろな憶測が飛んでいますけれども、少なくとも、中国側と会談を持てたことは事実であり、なんらかの交渉はあったと見るべきでしょう。
そして、細野氏の訪中にタイミングを合わせるかのように、フジタ社員4人のうち、3人が30日午前、拘束を解かれ、解放されました。
ただ、解放されたといっても全員というわけではありません。
まだ、中国の言うところの「主犯格」とされる、高橋定さんは、依然拘束されています。すなわち、中国はまだ「人質カード」を手放したわけではないのです。
9.フジタ社員を解放した理由
では、なぜ、3人を解放したのか。考えられる理由は大きく2つあります。
ひとつは、今回の事件によって、中国は、話の通じる相手ではない、と著しく世界の評判を落としていますけれども、それの払拭を狙ったということ。
もうひとつは、全員を返してしまって人質カードを無くしてしまうのは都合が悪い、というのは勿論のこと、日本に対して「格下」と見られたくないというメンツが働いたものと見ています。
前者については、細野氏が訪中したタイミングで解放することにより、自分達は話のできない相手ではないのだ、とアピールすることになりますし、更に、中国は、決して「法を無視」する国ではないのだというアピールする狙いもあると思われます。
というのは、フジタ社員の解放の際、中国外務省の胡正躍次官補は「3人は中国の法律に違反する活動に従事したことを認めており、始末書を提出するなど反省しているため、法に基づいて釈放した」と述べていますけれども、釈放という言葉の前にわざわざ「法に基づいて」という枕詞をつけているのですね。
この「法に基づいて」という枕詞は、フジタ社員を拘束した際にも「法に基づいて審理」と述べていますから、世界から「法治国家ではない」と見られることを相当嫌がっているのではないかと推測されます。
なぜなら、商売に差し支えるからです。法を守らない国との商売は長続きしませんから、ここのところを気にしている。すなわち、この点が中国の弱点とも言えるわけです。
また、後者については、衝突した漁船の船長以下、乗組員を日本側が拘束したものの、乗組員と船は早々に返し、船長のみ拘留を続けました。やはりこの措置に対抗した可能性がある。
日本が、船長ひとり拘束するなら、こちらも一人を拘束する。全員返してしまっては、日本の要求に屈したことになり「格下」になると考えているのかもしれません。まぁ要するにメンツですね。
もちろん、中国としても、今後の交渉を考えると「人質カード」はあった方がいい。そういう計算が働いているはずです。
したがって、中国はこのカードを最大限に使ってくると思います。つまり、交渉はこれからが本番だ、ということです。
10.正攻法と水面下の交渉
日本が中国に対して行っている交渉で、早期解決に向けた水面下の調整について、述べましたけれども、もうひとつの方法、すなわち、正攻法でじっくりやる方法について述べてみたいと思います。
これは、狙ってやっているのか、たまたまそうなのか分からないのですけれど、主に、前原大臣が担当しているのではないかと思われます。
というのも、前原大臣は28日の参院外交防衛委員会で、中国の「人民日報」の1953年1月8日の紙面を取り上げ、「琉球諸島は、わが国の台湾の東北部と日本の九州南西部の間に散在している」と読み上げたそうです。
これは、まさに、正攻法で、馬鹿正直に日本の主張を行う方法に当たるのですけれども、その直後から中国は「対日関係重視」と言って、軟化の姿勢を示し始めたのですね。
そして、この件について「ほぼ終わった」として、事件の幕引きをしたいかのような発言をしています。更に、その翌日の29日には、レアアースの輸出ストップを解除しました。
したがって、中国は、この正攻法のやり方を非常に嫌がっているものと思われます。なにせ、当時の人民日報に、日本の領土だと書かれているとあっては、これを世界中に発信されるのは、非常に具合が悪い。もちろん、嘘がばれるからです。
ですから、中国の「ほぼ終わった」という発言の真意は、「これで終わったことにしてくれ、証拠付きでじっくり攻めないでくれ」という、半ば白旗宣言なのではないかと推測しています。
要するに、正攻法で、長期戦を覚悟して攻めてゆくのは、実は最も効果があるということですね。
こうしてみると、日本の中国に対する対応は、細野氏を派遣するという短期解決に向けた対応と、前原氏の発言による長期戦で正攻法で攻める対応の2つを同時に行っているともいえるわけです。
つまり、日本にしては珍しく、握手しながら、テーブルの下で蹴りを見舞う外交をしているということです。
これらを、狙ってやっているとするならば、それなりに大したものだと思うのですけれども、実際のところは、前原大臣が好き勝手に発言しているだけであって、それがたまたま、上手く言っているだけなのかもしれません。
本当のところは分かりませんけれども、結果オーライといえばオーライだと言えると思います。
さて、その細野氏は何を交渉しに訪中したのかということなのですけれども、勝手な憶測を許していただけるのであれば、私は、フジタ社員の解放の為の交渉というよりは、中国側の要求を聞きにいったのではないかと見ています。
中国が、この件の幕引きを狙っているとするならば、一番嫌なのは、自分達の主張が、嘘であったと世界にバレることですね。
自分達の嘘がバレてしまえば、世界の信頼を、更に失うのみならず、中国から外国資本が逃げ出してゆくことも有り得ます。正に踏んだり蹴ったりですね。それだけは避けたい。
ですから、その為の一番の障害となるのが、前原大臣の「馬鹿正直に主張する」正攻法の対応ですね。これを止めさせたい。
つまり、これ以上、日本側から「尖閣諸島が日本領土であった証拠」や、例の「漁船が海上保安庁の巡視船へ衝突したビデオ」が世界中に流されるのを止めさせたいということです。
ですから、日本側に、そうした衝突ビデオの開示や、証拠の類を公開しないよう要求した可能性があると思っています。
それと、残るフジタ社員一人の解放をバーターにする。そうした話があったのかもしれません。
ただ、日本の世論や野党からの圧力を考えると、ビデオを開示せざるを得なくなる可能性もあります。だから、その辺りの見極めがつくまで、どうしても最後の一人は解放できない。
そうした状況にあるのではないかとも思うのです。
勿論、これは、ただの想像であり、なんら証拠があるわけでは有りませんけれども、ひとつの可能性として想定しています。

この記事へのコメント
almanos
この際野党に頑張っていただきビデオの公開と共に触れていただいて騒ぎにする。で、北京が文句言っても「日本は報道機関を政府が統制できない国だから無理です」としれっといって、火の粉を煽るべきでしょう。北京にとって性質が悪い事に、面子が潰れたからとフジタ社員の一人をどうにかしたら最後、経済的に終わる。そして、政権の正当性は経済が終われば吹き飛ぶ。経済が終われば食えない人が今以上に増え
白なまず
ひふみ神示 第11巻 松の巻 第七帖 (二九八)
、、、神の国一度負けた様になって、終ひには勝ち、また負けた様になって勝つのざぞ。、、、
ちび・むぎ・みみ・はな
> アピールする狙いもあると思われます。
> 今後の交渉を考えると「人質カード」はあった方がいい。
単純に考えれば支那は阿呆としか見えない.
現政権はもっとスマートにやりたい筈.
挑発のやり方と言い, 人質の捕り方と言い,
軍関係の不器用さが感じられます.
> 馬鹿正直に日本の主張を行う方法に当たるのですけれども、
> その直後から中国は「対日関係重視」と言って、軟化の姿勢を示し始めたのですね。
はじめから馬鹿正直にやっていれば良いものを,
支那が恐ろしいものだから判断が狂う.
> 中国の「ほぼ終わった」という発言の真意は、「これで終わった
> ことにしてくれ、証拠付きでじっくり攻めないでくれ」という、
> 半ば白旗宣言なのではないかと推測しています。
支那の国内向け, 特に太子党(人民解放軍)向けでしょう.
現実の尖閣諸島では次に何が起きるか分からないと思います.