「はやぶさ」小惑星イトカワの微粒子を回収に成功

 
「本当に期待以上の成果で胸がいっぱい。1粒でもあればと努力してきたが、1500粒もあるなんて、とても信じられない」
JAXA 川口淳一郎教授 於:11/16 文部科学省

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 今年6月に地球に帰還した小惑星探査機「はやぶさ」のカプセル内部で確認された微粒子について調査を進めていた、宇宙航空研究開発機構(JAXA)は16日に「ほぼ全部がイトカワ由来の物質と判断した」と発表した。

ついに、小惑星「イトカワ」から、サンプルを持ち帰るという「サンプル・リターン」計画は完遂された。小惑星に着陸するのも世界初なら、地球に帰還するのも世界初。そしてとうとうサンプルまで持ち帰っていた。正に快挙と言う他ない。

カプセル内部にある、円筒状の試料容器である「サンプル・キャッチャー」はA、Bの2つの部屋分かれていて、1回目の着陸で採取した試料はB室、2回目はA室に入るように設計されていたのだけれど、今回は、A室に収められた微粒子の回収と調査を進めていた。

当初、カプセル内の粒子の回収は「マニピュレーター」と呼ばれる、石英ガラスを加熱して両側から引っ張って、ちぎれた部分の先端に静電気を起こして、光学顕微鏡で見ながら粒子を1個ずつ吸い付ける方法が考えられていたのだけれど、カプセル内の微粒子の大きさは10μ以下のものが殆どで、光学顕微鏡では見えない大きさだった。

それでも、なんとか60粒ほど、石英ピンセット(マニピュレーター)で回収したものの、その多くが容器のアルミ粉末と推測されている。

そこで、急遽、長さ6ミリ、幅3ミリのフッ素樹脂製ヘラを特注して、容器の内壁をこすり、ヘラに付いた物質をより高倍率の電子顕微鏡で調べる方法に切り替えた。

このヘラで拭い取る方式に切り替えてから、約3週間で、ケイ素を含む「岩石質」の微粒子約800個を確認。その後の作業で計1500個もの微粒子を回収した。

ただ、ヘラで拭い取ったといっても、全部を分析にまわす訳じゃなくて、初期分析に使うのは、回収した微粒子のおよそ15%程。そして、協力関係にあるNASAに10%、公募研究に10%を提供し、残る半分以上は分析技術が進歩するであろう将来のために保存される。

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今回の発表は、その初期分析の前の、電子顕微鏡で観察する簡易分析の段階だったのだけれど、それでも、微粒子の鉱物種と存在割合、成分比率は地球上の岩石ではなく、隕石の組成と一致するという結果が得られた。

また、探査衛星「はやぶさ」が小惑星イトカワに接近した際に、様々な観測をおこなっていて、「近赤外線分光器(NIRS)」による、イトカワの地域ごとの反射スペクトルの観測や、「蛍光X線スペクトロメータ(XRS)」による総スペクトルの観測によって、イトカワの組成は、普通コンドライトであると推定されていた。

更に、「はやぶさ」がイトカワの「ミューゼスの海」と名付けられた、なだらかな部分への降下中に捉えた、イトカワ表面の画像には、表面の殆どで、数cmの大きさに揃った小石が敷き詰められたように存在し、観測の結果、輝石とかんらん石であることが分かっていた。

今回のカプセル内の微粒子にも、かんらん石や輝石、斜長石などが含まれ、イトカワの表面観測結果と一致していたことも、回収された微粒子がイトカワのものとする決め手の一つとなった。

JAXAはこれまで、電子顕微鏡による組成分析では「イトカワ由来」と判断するのは難しいとして、より詳細な分析を行ってから結論を出す予定だったそうなのだけれど、上野宗孝・JAXAミッション機器系副グループ長は「大量の微粒子がそろって、イトカワ由来の傾向を示したので、科学的にも間違いない。簡易分析でこれほどはっきりした結果が出るとは、予想していなかった」とコメントしており、JAXAも今回の発表には自信を持っているようだ。

今後は、1回目の着陸で用いた試料保管容器も開封して、来年1月以降に、より詳細な分析を行うという。

本当に「はやぶさ」の活躍は素晴らしい。

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政府は、去年の11月の事業仕分けで「はやぶさ後継機」の開発予算を削ったくせに、いざ、「はやぶさ」が帰還すると、手の平を返して「日本の技術水準の高さを世界に強くアピールしたした」なんて言っていたことがあったけれど、そもそも、宇宙のタイムスケールを考えると、1年や2年で結果が出て、儲けが出るなんて考えるほうがおかしい。

はやぶさプロジェクトのマネージャーを務めたJAXAの川口淳一郎教授は、2010年7月7日、フォーリンプレスセンターで行われた記者会見で、宇宙開発が国民の生活や産業にどう貢献するのかを問われ、宇宙開発そのものが経済に及ぼす投資効果は小さいが、次の経済や次の産業経済を担う人を育成することができる。それが宇宙開発の最高の成果だと思う、という主旨を述べている。

そして、国民が自分の国の科学技術にプライドを盛るのは非常に大事である、それが次の科学技術を培う源になって、産業経済を引っ張っていくことになるはずだ、ともコメントしている。

高木文部科学相は16日の閣議後の記者会見で、「はやぶさ」がイトカワの微粒子の採取に成功したと発表したことを「事業仕分けを意識したものでは全くない」なんて言っているけれど、「はやぶさ」の活躍が事業仕分けによる「廃止」や「縮減」を食い止めている、なんて憶測をされること自体が情けない。

そんな後ろ向きな考えではなくて、もっと前向きに、世界初の成果を国家戦略として、どんと後押しくらいしたらどうなのか。どこかの国の首相のように、一緒になって喜んでいるだけでいいとは思わない。

「はやぶさ」のイオンエンジンは世界に売れるだろうし、制御技術だって、世界はよだれを流して見ていたに違いない。

だから、政府も、ちまちまと削れもしない、パフォーマンスの「事業仕分け」なんぞに血道をあげるのではなくて、産業を育成する、人を育成する、過去の糾弾ではなくて、未来への投資を行う。

そうしたことを、もっと考えるべきだと思う。




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画像「はやぶさ」また快挙 微粒子は小惑星「イトカワ」の物質と確認 月以遠からの回収は世界初 2010.11.16 09:21

 今年6月に帰還した小惑星探査機「はやぶさ」が小惑星「イトカワ」から持ち帰ったカプセル内部で確認された微粒子について、宇宙航空研究開発機構(JAXA)は16日、「ほぼ全部がイトカワ由来の物質と判断した」と発表した。地球から約3億キロ離れた小惑星「イトカワ」で地表物質を捕らえたことになり、人類が月より遠い天体地表から、地表物質の回収に成功したのは初めて。太陽系の起源解明につながる貴重な試料で、はやぶさ計画は最大の目的を達成した。

はやぶさ快挙 太陽系誕生の解明に迫る
 はやぶさは平成17年11月、イトカワに2回着陸した。装置の不具合などで計画通りの試料採取は1度もできなかったが、着陸時の衝撃で舞い上がった砂ぼこりなどをカプセルに収めていたと考えられる。

 JAXAは回収したカプセルを開封し、約1500個の微粒子を確認していた。ほとんどが大きさが100分の1ミリ以下で、今月上旬からは電子顕微鏡を使って1粒ずつ組成分析を実施。その結果、微粒子の大半はカンラン石と輝石で、どの粒も鉄とマグネシウムの割合(組成比)が地球の物質とは大きく異なることが判明した。

 さらに、はやぶさによるイトカワ地表の分光観測データなどが、微粒子の分析結果とほぼ一致した。JAXAは、はやぶさチーム以外の専門家をまじえて検討を重ね、「微粒子のほぼすべてが地球外物質で、イトカワに由来する」と判断した。

 JAXAはこれまで、電子顕微鏡による組成分析では「イトカワ由来」と判断するのは難しいとして、より詳細な分析を経て結論を出す方針だった。上野宗孝・JAXAミッション機器系副グループ長は「1、2個だけでは、組成比から由来を断定できない。だが、大量の微粒子がそろって、イトカワ由来の傾向を示したので、科学的にも間違いない。簡易分析でこれほどはっきりした結果が出るとは、予想していなかった」と話した。

 今回の微粒子は、2回目の着陸で用いた試料保管容器で見つかった。JAXAは今後、1回目の着陸で用いた試料保管容器も開封し、来年1月以降にはより詳細な分析を行う。

 小惑星の岩石は、太陽系初期の状態が保存されていると考えられる。「イトカワの微粒子」により、太陽系の起源や惑星進化の解明に向けた研究の大きな進展が期待される。

URL:http://sankei.jp.msn.com/science/science/101116/scn1011160922001-n1.htm



画像続く快挙「夢のまた夢」=地球外物質に「ガッツポーズ」-はやぶさチーム、喜び爆発

 小惑星探査機「はやぶさ」のミッションにかかわった宇宙航空研究開発機構の担当者らは午前9時50分から、文部科学省で記者会見に臨んだ。「夢のまた夢で、正夢が信じられない」。約1時間の会見は終始、喜びのムードに包まれた。
 会見には、開発責任者を務めた宇宙機構の川口淳一郎教授ら6人が出席。川口教授は冒頭で発表文をゆっくりと読み上げ、世界初の快挙を淡々と報告した。
 はやぶさが帰還した6月13日夜。川口教授は「往復飛行は大きな自信と希望になった。今でも夢のようだ」と話した。あれから5カ月。小惑星の砂回収の快挙に「夢を超えた。出来過ぎです」。その上で「本当に期待以上の成果で胸がいっぱい。(回収粒子は)1粒でもあればと努力してきたが、1500粒もあるなんて、とても信じられない」と振り返った。
 「岩石回収なら500点」とされた、はやぶさミッション。会見中、報道陣から改めて点数を聞かれると、「点数は付けたくない」と予想以上の快挙に照れたような表情も見せた。(2010/11/16-12:46)

URL:http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2010111600243



画像「はやぶさ」採取成功発表、仕分け逃れを否定

 高木文部科学相は16日の閣議後の記者会見で、小惑星探査機「はやぶさ」が小惑星イトカワの微粒子の採取に成功したと、宇宙航空研究開発機構が同日発表したことに関連し、「事業仕分けを意識したものでは全くない」と強調した。

 宇宙機構がこの日に採取成功を発表したのは、現在、政府の行政刷新会議が行っている「再仕分け」による「廃止」や「縮減」を免れるためではないかという一部の「憶測」を否定したものだ。

 宇宙機構を巡っては、過去2回の仕分けで、広報施設が「廃止」とされたほか、衛星打ち上げ費用などの「縮減」などの判定が出ており、今回の「再仕分け」でも、関連する全事業が対象となっていた。

 「微粒子が地球外物質かどうかは詳細な分析が必要」(宇宙機構関係者)とされる中、発表が周囲の予想より早かったことも、「憶測」が流れる一因となっている。

(2010年11月16日21時00分 読売新聞)

URL:http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20101116-OYT1T00906.htm