今日は、ホットな話題を…
藻類に「石油」を作らせる研究で、筑波大のチームが従来より10倍以上も油の生産能力が高いタイプを沖縄の海で発見したと話題になっている。
何でも、2万ヘクタール程度の生産施設で、日本の石油輸入量に匹敵する量を生産できるそうだから、日本のエネルギー問題は大幅に改善する。なんとも凄いもの。
藻から石油なんて、と意外に思う向きもあるかもしれないけれど、元々、植物類には油脂成分があり、古くは菜種油など、植物から油を取り出すことは行われてきた。
これまでも、バイオ燃料として、大豆やトウモロコシ、アブラナなどから燃料を取り出す研究が行われてきたのだけれど、陸の上で生える植物から燃料を取り出そうと思えば、それらの植物を植えるための土地が必要になるから、一定規模以上の燃料を取り出そうとすれば、それなりの面積の土地を必要とする。
たとえば、アメリカで利用されている化石燃料を全てバイオ燃料で代替するためにどれくらいの土地が必要になるかを試算したところ、大豆ならアメリカの約2倍の面積、とうもろこしでもアメリカの面積の半分くらい必要になってしまうそうだ。
いくら環境にやさしいバイオ燃料とはいえ、その為にアメリカ国土全部の土地が必要となったら、今度は肝心の食糧用の作物が作れなくなってしまう。
従って、バイオ燃料として好ましい植物は、陸上でなくても生息でき、また、広大な面積をも必要としないものが求められていた。
そこで注目されたのが「藻」。
藻の中には、体内で炭化水素もしくは油脂類を生産する種類があって、高いものでは藻の体重量の60%以上の炭化水素類を蓄積するものもあると報告されている。
バイオ燃料として主に使用される藻は、微細藻類と呼ばれる単細胞を単位生命体とする顕微鏡サイズの小さな藻。別名、植物プランクトン。
微細藻類は、約30億年前に地球の海洋に出現した最初の生物の1つで、地球最古の生命体とも言われている。
微細藻類は、葉緑素を持っているのだけれど、生命活動により得られた脂質を細胞内に多く蓄積することで浮力を得て、海水の表面近くを漂うことで光合成を行い、大気中の二酸化炭素を固定化し、酸素を生成する。
数十億年の歳月は、微細藻類の大量の死骸を海底に堆積させ、その体内に含まれていた油脂成分がやがて石油へと変化したと言われている。
微細藻類は極端なことをいえば、どこでも生息できる「タフな藻」で、水中はもちろん、雪の上、木肌、果てはガードレールの表面でも生息でき、温泉、空中などからも採取可能だという。
しかも、微細藻類は、単位面積あたりの生産性が非常に高く、陸生植物のそれと比較して1桁上のポテンシャルを持っている。
1ヘクタールの面積で、1年あたりの油脂生産能力は、トウモロコシが0.2、アブラナが1.2であるのに対して、微細藻類は47から140もある。
藻は言うまでもなく、水生生物だから農地を使う必要もない。
こうした微細藻類の中でどの種類の藻を使えば、より効率的に石油が生産できるかについて、色々と研究がおこなわれてきたのだけれど、これまで一番有力視されていたのが、「ボトリオコッカス」と呼ばれる種類の藻。
これは、淡水に生息する藻類で、緑~赤色で30~500μmのコロニーを形成し、細胞内及びコロニー内部に、重油の一種である炭化水素を乾燥重量の約20~75%も蓄積するという。
このボトリオコッカスを使用することで、1ヘクタールあたり、年間で約118トンの油を生産することができるという。
だけど、今回、沖縄の海で新しく見つかった微細藻は、このボトリオコッカスの遥か上をゆく生産能力を持つ優れモノ。
オーランチオキトリウムと呼ばれる、この微細藻は、球形で直径は5~15マイクロメートル。同じ温度条件での培養でも、ボトリオコッカスに比べて10~12倍の量の炭化水素を作るそうで、国内の耕作放棄地などを利用して大規模な生産施設を作れば、緑の油田となる可能性があるという。
この微細藻類による油の生産については、アメリカで大規模な投資が相次いでいて、2008年9月に、ビルゲイツ氏が微細藻のオイル化を進めるSapphire Energy社に90億円投資しているし、石油メジャーのシェブロン(Chevron Corp.)とNREL(National Renewable Energy Labs)は、藻類を原料とするジェット燃料の5年間の共同研究を2006年からスタートしている。
また、米国のグリーンフーエル社(Green Fuel Corp.)は、藻類の培養設備を発電プラントに隣接して設置し、発電プラントの排ガスのCo2を吸収させながらバイオ燃料の原料となる藻を生産し、温室効果ガスの削減に繋げる一石二鳥のシステム開発を進めている。
アメリカ政府は、こうした民間の動きを後押ししていて、アメリカエネルギー省は、2008年度のバイオ燃料産業化開発への投資(約700億円)のうち、45億円を藻類バイオ燃料ワークショップ立ち上げと運営のために投資し、微細藻類由来バイオ燃料に関する研究開発の具体的なロードマップ作成を開始している。
オバマ政権のグリーンディール政策が、石油代替エネルギーの開発を強力に加速させていることは間違いない。
日本政府にも、今回の発見を機に、バイオ燃料戦略の後押し政策を期待したい。


藻類に「石油」を作らせる研究で、筑波大のチームが従来より10倍以上も油の生産能力が高いタイプを沖縄の海で発見した。チームは工業利用に向けて特許を申請している。将来は燃料油としての利用が期待され、資源小国の日本にとって朗報となりそうだ。茨城県で開かれた国際会議で14日に発表した。
筑波大の渡邉信教授、彼谷邦光特任教授らの研究チーム。海水や泥の中などにすむ「オーランチオキトリウム」という単細胞の藻類に注目し、東京湾やベトナムの海などで計150株を採った。これらの性質を調べたところ、沖縄の海で採れた株が極めて高い油の生産能力を持つことが分かった。
球形で直径は5~15マイクロメートル(マイクロは100万分の1)。水中の有機物をもとに、化石燃料の重油に相当する炭化水素を作り、細胞内にため込む性質がある。同じ温度条件で培養すると、これまで有望だとされていた藻類のボトリオコッカスに比べて、10~12倍の量の炭化水素を作ることが分かった。
研究チームの試算では、深さ1メートルのプールで培養すれば面積1ヘクタールあたり年間約1万トン作り出せる。「国内の耕作放棄地などを利用して生産施設を約2万ヘクタールにすれば、日本の石油輸入量に匹敵する生産量になる」としている。
炭化水素をつくる藻類は複数の種類が知られているが生産効率の低さが課題だった。
渡邉教授は「大規模なプラントで大量培養すれば、自動車の燃料用に1リットル50円以下で供給できるようになるだろう」と話している。
また、この藻類は水中の有機物を吸収して増殖するため、生活排水などを浄化しながら油を生産するプラントをつくる一石二鳥の構想もある。(山本智之)
URL:http://www.asahi.com/science/update/1214/TKY201012140212.html
この記事へのコメント
almanos
p10
光合成の為、潜水艦なら浮上せねばなりませんし、空母なら飛行甲板を空けなければなりません。
どのような形でも構わない実験船ならばその限りではありませんが。
白なまず
chica
早く政権交代してほしい。
mayo5
施設を分散させれば、海面下の生態系に対する影響は最小限に食い止められますね。あ、放棄耕作地ですか。海でも陸でも、台風などの災害で流出すると、油分は厄介ですけれど。