俄かに政局の風が吹いてきた。
自民党の谷垣総裁が8日、自民党本部で渡辺恒雄・読売新聞グループ本社会長と会談した。今後の政局をめぐっての意見交換と見られているのだけれど、渡辺・読売会長は、その前日の7日夜に鳩山前首相とも会談しているから、自民党と民主党の「大連立」の話ではないか、との憶測を呼んでいる。
今年7月の参院選直後に、連立についてのエントリーをいくつか挙げたことがあるのだけれど、ここで、もう一度振りかえってみたい。以下に一部引用する。
…そうした連携先の政党の要求を、振り回される事も承知の上で丸呑みして、なんとか政権を維持する手がないこともない。
こうした事を踏まえると、空き菅@けものへん殿の取りうる策として考えられるのは次の3つ。
1.まず、みんなの党と緩やかに連携(連立ではない)して、更に、政策毎に社民党(4議席)、たちあがれ日本(3議席)、新党改革(2議席)などとパーシャル連携する。
2.空き菅@けものへん殿が辞任して、新首相を立て、公明党と連立を組む
3.党が割れるのを覚悟して、自民と大連立を組む
これらの中で一番ハードルが低いと思われるのが1.
みんなの党の渡辺代表は民主党との連立ではなく、政策ごとに連携するパーシャル連合に前向きと言われている。この程度であれば見込みはある。ただ、みんなの党と連携できた政策であっても、更に他の小政党と連携を取らなくちゃいけなくなるから、調整に手間取ることは充分に予想される。
また、政策の内容によっては、どう組み合わせたところで連携不可能になることだって考えられる。例えば、郵政なんかの問題は、国民新党とみんなの党で真っ向対立するから、みんなの党と連携できたとしても、法案提出の段階から、かなりモメることになるだろう。
では、2の公明と連立を組むというのはどうか。
確かに、民主党からみれば、公明党と連立を組むのが、数の上でもどうにか安心できる形であることには違いない。だけど、公明党の側からみれば、そうじゃない。
公明党は、参院選では自民党と選挙協力していたし、支持母体からして現民主党政権に拒否反応が強いと言われている。連立や連携の前に、まず彼らを説得しなきゃいけない。その材料として、民主党が何を提供できるのかを考えれば、今のままでは望みは薄い。
なんとなれば、空き菅@けものへん殿を含めた現執行部が全員辞任して、更に、友愛殿や剛腕殿が議員辞職して、新生・民主党くらいになれば、連立の目も出てくるかもしれないけれど、これはもう「夢想」とでもいうべきもの。日比野庵本館 7/14 「連立組替えとキャスティングボート」
では、民主党と自民党との大連立があるのかといえば、もっと有り得ないと思うのが普通。
まぁ、それは、民主党の多くの議員達が自民との大連立を嫌がっているというのもあるのだけれど、更に加えて、自民との大連立は、イコール民主党の否定に繋がることが大きいと思われる。
谷垣・自民党総裁は、消費税増税に関する超党派の協議は、昨年衆院選の民主党マニフェストを撤回してからだ、としているから、要は、民主党でなくなれ、と言っているようなもの。
溜池通信のかんべえ氏は、民自大連立について、7/12の記事にて私案を述べている。以下に引用する。(1)民主党と自民党は、向こう2年間の期限を切って連立政権を組む。国民新党との連立は解消する。議席的には十分過ぎるので、2大政党のみの連立とする。これは超安定政権となる。
(2)優先する政策事項は、①景気回復、②財政支出削減、③行革及び公務員制度改革、④年金制度改革、⑤政治主導確保に絞り込む(この辺は多少の交渉の余地あり)。
(3)それ以外の政策マターはすべて凍結する。子ども手当ては時限的に今年一杯だけ実施。高速道路無料化などの実験も右に同じ。郵政見直しは論外。要は昨年総選挙における民主党マニフェストをほとんど凍結してしまう。外国人参政権や人権擁護法案などももちろん除外。
(4)税制については、とりあえず法人減税をこの秋を目処に実施するが、消費税については協議会を設置し、議論を行なうにとどめる。
(5)組閣は現在のメンバーを中心に、自民党の幹部を加えたオールスターキャストとする。菅総理、仙谷官房長官以下のメンバーはほとんど変えず、例えば谷垣禎一副総理兼法務大臣、石破茂防衛大臣、小池百合子環境大臣、林芳正金融担当大臣の4議席くらいを迎える。
(6)向こう2年間を、財政再建のためのモデル期間と位置づけ、増税以外のあらゆる手段をとる。2年後の2012年夏になったら連立は解消。2013年夏に予想される衆参ダブル選挙に向けて、二大政党がヨーイドンで競争する。
とまぁ、こんな感じ。確かにこれであれば、世間は納得するだろうし、政権も安定するだろう。だけど、この案は同時に、ものの見事に、これまでの民主党そのものを否定している。
だから、この案の実現は、かんべえ氏も指摘しているとおり、民主党首脳部が自分達の間違いを認めない限り殆ど無理。
日本のことより、自分達の面子を優先するような首脳部ではどうにもならない。日比野庵本館 7/15「民主・自民大連立の可能性」
これまでの菅政権は、みんなの党などとのパーシャル連合や、公明党との連携を計ってきたのだけれど、どれも上手くいかなかった。挙句の果てには、社民党と縁りを戻そうとまでする始末。行き当たりばったりもいいところ。
そして、遂には自民との大連立との話まで出るようになってきた。渡辺・読売会長が本当に大連立の仲立ちをしているかどうかは分からないけれど、仮にそうだとして、それを菅政権側から申し出たとするならば、それは、もう自ら民主党であることを止めるという宣言に等しい。
なぜなら、今の状況下で、自民に大連立を申し入れるということは、自民の言い分を相当以上に飲まなければならないことを意味するから。
だから、大連立するにしても、民主党は、政策は元より、閣僚も相当入れ替えないと成立しないと思われる。
たとえば、先の引用で紹介した、7月12日時点での、溜池通信のかんべえ氏の組閣の私案では、「菅総理、仙谷官房長官以下のメンバーはほとんど変えず、例えば谷垣禎一副総理兼法務大臣、石破茂防衛大臣、小池百合子環境大臣、林芳正金融担当大臣の4議席くらいを迎える。」となっているけれど、今はもうそれでは駄目で、仙谷官房長官、馬渕国土交通省といった、問責を出された閣僚は辞任してもらって、更にいくつかのポストを渡すくらいでないと難しいように思う。
ただ、この大連立が成立したとしても、自民も、民主も、それぞれリスクを抱えることになる。
自民にとってのリスクは、たとえ大連立を組んだとしても、単なる数合わせに使われてしまう危険があるということ。つまり、いくら閣内に入って、政策をあれこれ出したとしても、民主党内がそれを受け入れて、纏めることが出来ずに反対され、結局、自民党の意見が何も通らなくなるというリスク。
石破政調会長は4日テレビ東京の番組で大連立について、「民主党は菅直人首相と小沢一郎元代表の政策が百八十度度違い、外交や財政の政策が整理されていない。大連立すると混乱が増幅されるので絶対反対だ」と述べているけれど、確かに、今の民主党に党内を纏めて、更に、自民と大連立を組んで政策協議を仕切れる人物がいるとは思えない。
だから、自民党も菅政権との大連立には二の足を踏むのではないか。少なくとも、党内をしっかり纏めてから出直してこい、と突っぱねそうではある。
逆に、民主からみても、党内を纏めるということ自体、党を分裂させかねないリスクを負う。
今月の2日に、民主党の子ども・男女共同参画調査会が、夫婦別姓容認の提言を党内の保守系議員の反発を「無視」する形で強行提出したけれど、大連立したら、それと同じこと、いや、それ以上のことが、あちこちで起こらないとも限らない。
まぁ、もともと「綱領」すらない民主党に意見を纏めろという方が無理なのかもしれないけれど、こうした「基本がない」というところが、肝心な場面で足を引っ張ることになる。
では、菅政権ではない一派からの大連立ならどうか。すなわち、小沢グループとの大連立ならどうか、ということ。
だけど、この場合であっても、やっぱりリスクはある。
自民党にしてみれば、確かに、菅政権を引きずり降ろすことは出来るかもしれないけれど、党内及び世論からの批判を浴びることは間違いない。あれほど政治とカネで叩かれている御仁との大連立ともなれば、殆ど政権奪取に近いくらいの見返りがないと難しいのではないかと思う。
しかも、これは、小沢グループが集団離党することが前提になるし、小沢氏が割って出て行く数が少なければ、大連立そのものが成り立たない。
それに、今の小沢氏についていく議員がどれだけいるのかを考えると、なかなか厳しいものがある。
唯一、ウルトラCがあるとすれば、小沢氏と鳩山氏が手を結んで一緒に離党して、新党を立ち上げるというケース。この場合は、本当に民主党が真っ二つになると思うけれど、ちょっと机上の空論に過ぎるかと思われる。
いずれにせよ、年末にかけて、慌ただしくなることは間違いない。
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話題は「大連立」か 谷垣氏と読売・渡辺会長が会談 2010.12.8 18:01
自民党の谷垣禎一総裁は8日、自民党本部で渡辺恒雄・読売新聞グループ本社会長と会談した。今後の政局などをめぐって意見交換したものとみられる。渡辺氏は7日夜に民主党の鳩山由紀夫前首相とも会談。渡辺氏は福田政権下の平成19年に自民党と民主党の「大連立」に向け、仲介役を果たしたとされることもあって、会談の内容には与野党の関心が集まっている。
URL:http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/101208/stt1012081804011-n1.htm
石破氏、民主との大連立「絶対反対」2010.12.4 14:02
自民党の石破茂政調会長は4日午前のテレビ東京番組で、民主党との大連立について「民主党は菅直人首相と小沢一郎元代表の政策が百八十度度違い、外交や財政の政策が整理されていない。大連立すると混乱が増幅されるので絶対反対だ」と述べた。
また、石破氏は「首相が政策を出そうとしても党内で足を引っ張る人がいる。反対派を切れば活力が生まれるが、その勇気がない」と指摘した。
URL:http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/101204/stt1012041403003-n1.htm
民主党調査会、夫婦別姓容認の提言を強行提出 保守系議員の反発を「無視」 2010.12.2 22:34
民主党の子ども・男女共同参画調査会(会長・神本美恵子参院議員)は2日、党政調役員会に対して、選択的夫婦別姓制度の導入を事実上容認する提言を提出し了承された。政府の第3次男女共同参画基本計画案への党提言の原案に当たるものだが、同日の調査会で保守系議員らが「世論を踏まえておらず拙速だ」などと反発し、議論が紛糾したにもかかわらず、提出を強行した形だ。
提言は「男女共同参画会議の答申を最大限尊重して第3次基本計画を策定すること」と明記した。
政府の男女共同参画会議は7月、「選択的夫婦別姓制度を含む民法改正が必要」とした「基本的な考え方」をまとめ、菅直人首相に答申。政府は年内に第3次計画を閣議決定するが、答申を「最大限尊重」することは、選択的夫婦別姓制度の導入を容認することを意味する。
2日朝の調査会では保守系議員から「世論の動向を踏まえるべきだ」「社会の仕組みの根本にかかわる問題だ」「夫婦別姓の長所、短所をちゃんと検討しているのか」などの反対の声が相次いだが、調査会役員は「世論にばかり左右されるものではない」として、神本氏への一任をとりつけ、提出を強行した。
URL:http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/101202/stt1012022235012-n1.htm
小沢氏、両院議員総会の開催促す 中堅通じて首相側牽制 2010年12月8日11時32分
民主党の小沢一郎元代表は7日夜、東京都内で会食した党中堅議員に対し、「近く両院議員総会を開催するべきだ」と語り、党執行部に開催を要望するよう求めた。菅直人首相の政権運営に不満を持つ議員らが公然と異議を唱える場作りを指示したことで、「脱小沢」路線を進める首相側を強く牽制(けんせい)したものとみられる。
会食の複数の出席者によると、小沢氏は12日投開票の茨城県議選に触れ、「仮に大惨敗すれば地方組織から不満が噴き出す。自分は動けないが、君たちが動いて地方の声を代弁するため、(党執行部に)両院議員総会の開催を求めて欲しい」と話した。「菅直人首相、仙谷由人官房長官のコンビでは政権が成り立たない」とも述べ、仙谷氏の交代の必要性も示唆した。
さらに小沢氏は、自民党との大連立や民主党の分党にも言及。「今の党執行部は、自民党と主義主張が違うので大連立も出来ない。自分は大連立も分党もやる覚悟があるが、まず、君たちに動いて欲しい」とも語ったという。
両院議員総会は、代表の求めか常任幹事会の議決で開かれることになっているため、実際に開催される可能性は低いと見られる。ただ、政権批判を強めている小沢氏が、中堅議員に対して両院議員総会の開催という具体的な行動を促したことは、菅政権への強いいらだちを示したものといえそうだ。
一方、民主党の岡田克也幹事長は7日、国会内で輿石東参院議員会長と会談し、小沢氏の衆院政治倫理審査会への出席を議決するかどうかについて協議したが、結論は出なかった。岡田氏は近く、菅首相とも協議するとみられる。
URL:http://www.asahi.com/politics/update/1208/TKY201012080108.html
この記事へのコメント
田舎のダンディ
さらに延命のために公明党との提携を続け、今度は自党自らをを自立歩行の出来ない体質に劣化させ、遂には野党に転落しました。しかし、少しだけ世の中に貢献したことは、社会党を変質させて少数政党にさせたこと、そして自民党もだめだったが、新与党はもっと救い難いと国民に知らしめたことです。
この混迷状態から抜けきるために、従来型の政策のすり合わせや政策協定方式しか念頭になければ、いかなる連携や連立を試みても展望は拓けないでしょう。実際、民主党政権になって以降の数合わせの連立は、数%の少数勢力に襟首を掴まれて振り回される体たらくでした。大連立が成ったとして、足して2で割る政策を実施して、日本をどこに進ませようとするのでしょうか。
少し遠回りでも、理念政策を同じくする勢力や個人が大同団結するか、どの政党の政策にも制約されない、有能な議員や識者による協議を経て、救国の政
ちび・むぎ・みみ・はな
(訂正)
団塊の(近辺)世代の作るモヤモやを吹き払ってしまうに違いない.
白なまず
almanos