災害復興宝くじ

 
「当せん金以外の利益を被災地域や農家に使えば、税金で時間がかかる枠組みより使い勝手がいい」
蓮舫行政刷新担当相 12/5 於:新潟県村上市での講演

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12月5日の夜、蓮舫行政刷新担当相は、地方自治体に対して、独自に宝くじを発行できる権限を与える案を検討していることを明らかにした。

現在の宝くじは、総務相の認可を受けた上で都道府県や政令市が発行しているけれど、この案では、発行権限を地方自治体に与えることで、危機対応の財源を機動的に賄うためだとしている。何でも、宮崎での口蹄疫のような状況を想定しているようだ。

だけど、これはおかしな話。

危機対応の財源を機動的に賄うためなんて言っているけれど、危機が起こってから、財源を集めているようでは、全然間に合わない。口蹄疫なんかは、放置すればしただけ被害は爆発的に拡大してゆく。それこそ、宮崎県の口蹄疫で経験した筈。28万9千頭も殺処分になったことを忘れたのか。

危機対応のための財源はまず、何時何処で何が起こっても、即時に対応できるように、予め「災害対策費」としてプールしておくべきもの。でなければ、災害救助ヘリ一つ飛ばすことだって出来なくなる。これがまず第一義。

それが十分に備えられていて、尚、それでも災害復興に必要な財源を賄うために「災害宝くじ」を発行する、というのなら、まだ分かる。

だけど、そんなのはこれまでもやっている。

6年前の中越地震では、「新潟県中越大震災復興宝くじ」として発行され、売上の40%(=全収益額)を復興資金に充てているし、そもそも、宝くじ事業の中に、大規模災害時に応援出動した市町村に交付金を交付したり、災害見舞金や復興支援金の交付するというものが入っている。

だから、今回の蓮舫大臣の「災害宝くじ」を検討している、なんてのは、凄くともなんともなくて、ただ、発行の許認可権を総務省から地方自治体に移す、というだけのもの。

まぁ、それでも、許認可権を中央省庁から現場に移せば、より機動的な財源確保ができるじゃないか、という意見もあるかもしれない。

だけど、災害時の対応は、兎にも角にも救援と安全確保が第一であって、復興はその後の話。災害直後やそこらで、宝くじを発行したって、被災地の人達はそれどころじゃない。全国で発売するとしても、被災直後では、一体いくら分発行すればよいのかなんて見当もつかない。

折角発行しても、復興資金に全然届かなければ、どこかでその穴埋めの予算を持って来なくちゃいけないし、逆に、復興資金を大きく超える金額を集めてしまったら、余った分はどうするんだ、と批難の的に成りかねない。

だから、こうしたものは、世論や景気を睨みながら、過不足なく丁度良い塩梅になるよう発行すべきものであって、被災直後に発行すべき性格のものじゃないと思われる。

事実、2004年10月に起きた中越地震に対する、復興宝くじは、翌年の2005年の4月に発行されている。

それに、許認可権を持っている総務省とて、被災にあった地方自治体から、復興宝くじを出したいと言われて、駄目だと一蹴する理由もない。余程、金が余っていて、宝くじを使わなくても復興資金が出せるような自治体でもない限り、まず許可するだろうと思われる。

だから、災害復興宝くじの許認可権を総務省から地方自治体に移したとて、それほど大きく変わるとも思えない。今の宝くじ事業に「災害見舞金・復興支援金の交付」というものがある限りは。

ところが、そうは問屋が卸さないのが民主党。



既に、宝くじ関係事業を事業仕分けで廃止だと結論づけている。

以下に、今年の11月15日に行われた、事業仕分け第三弾で配布された「市町村振興事業に対する助成事業」の事業シートから、一部引用する。

予算事業名:全国市町村振興協会事業 事業番号A-7(3)(4)

事業の目的:市町村の健全な発展を図るため一般市町村が共同で実施すべき全国的な事業を行い、もって地方自治の振興に資する。

事業概要 :各都道府県の市町村振興協会の事業の補完をはじめ一般市町村が共同で実施すべき全国的な事業について、一般市町村の共同事業として、全国市長会、全国町村会等が設立した地方共同の組織である本法人が、全国規模で効率的かつ効果的に実施する。
〈主な事業〉
①各都道府県の市町村振興協会への資金貸付け
②電子納税システム・住基カード利用など市町村共同事業
大規模災害に際し応援出動した市町村に交付金を交付
災害見舞金・復興支援金の交付
⑤各都道府県の市町村振興協会の実務向上のための各種研修会の開催

活動実績 :
①21年度貸付事業は、14府県市町村振興協会を通じて37市町が行う公共施設整備事業等に8,145百万円の低金利融資を行った。
②21年度災害対策関連事業は、全国20ヶ所で発生した林野火災、地震等に都道府県の区域を越えて消防応援した22地方公共団体に10百万円を、災害救助法が適用された大雨等により被災した7市町に4県市町村振興協会を通じて7百万円を交付した。
③21年度助成事業は、27公益法人等が行う96市町村共同事業に助成した。

事業仕分け第一弾・第二弾の結果等

〈結果〉
 当WGの結論としては、当該事業については廃止とする。地方財政の一層の拡充のために、また宝くじに夢を持って楽しみに購入される方々の利益のために、天下りの方々の高額給与の問題、過度に豪華なオフィス、複雑な交付形態、無駄な宣伝広報事業、これらの問題が解決されるまでは、宝くじの許可権限者である総務大臣は宝くじの販売を認めるべきではないこととする。

〈とりまとめコメント〉
 「事業の廃止」あるいは「見直しを行う」とした方のいずれからも、天下りの存在、複雑な資金流入のあり方等についてのご指摘があった。
 当WG の結論としては、当該事業については廃止とする。地方財政の一層の拡充のために、また宝くじに夢を持って楽しみに購入される方々の利益のために、天下りの方々の高額給与の問題、過度に豪華なオフィス、複雑な交付形態、無駄な宣伝広報事業、これらの問題が解決されるまでは、宝くじの許可権限者である総務大臣は宝くじの販売を認めるべきではないこととする。
 もしこのことを放置したまま宝くじの販売を認めるのであれば、政府として総務大臣としてしっかり無駄がないことをご証明いただきたい。



事業仕分け第一弾・第二弾で、この事業は「廃止」となっている。天下りの高額給与、豪華なオフィス、複雑な交付形態、無駄な宣伝広報事業などの問題が解決しない限り、宝くじの販売は認めない、としている。

それを受けての事業仕分け第三段での評価結果は以下のとおり。

WGの評価結果

・事業仕分け第2弾の評価結果(※)が反映されていない
・事業仕分け第2弾の評価結果の追加等(更なる事業の見直しを行う)

とりまとめコメント
仕分けの結果が反映されていないとお答えの方も、改革の方向性や、進捗については一定の理解がなされており、一方で、一部反映されていないとお答えの方にも、抜本的な改革にはなっていないという見方があり、そういった意味ではおおむね、評価者の皆さんの評価は一致しているのではないかと思う。

結論としては、当面の改革としては一定の努力がなされているが、より抜本的な改革を中期的に行っていくべく、さらに改善をしていただきたい。

具体的には、間接的に資金を配布している団体をさらに減らせるのではないか。天下りやその報酬の問題、資金の流れが複雑であること、さらにいえば、そもそも宝くじの発売主体が県と政令市に限られており市町村との関係をどのように考えるか。このような検討を半年で行うのは難しいと思うが、これで終わりではなく、むしろこれは入口であって、抜本的な改革を仕分け第2弾の結果も踏まえて進めていただく。




とまぁ、まだ改革が不十分だとしている。改革がきちんとやれるまで許可しない、というのは結構だけれど、その一方で、地方自治体に対して、独自に宝くじを発行できる権限を与えるというのはどういうことなのか。

もしも、地方自治体が独自に宝くじを発行できるとなれば、復興資金は自前で調達できることになるから、これまで、財団法人全国市町村振興協会が行ってきた、宝くじの収益の一部を被災地の復興に充てるという事業そのものが要らなくなることを意味する。

事業仕分けで改善の努力を促しておきながら、その裏で死刑宣告を出している。見ようによっては、人の努力を無にするようなやり方に見えるのだけれど、こんなやり方が普通なのか。

こんなやり方が通るのであれば、事業仕分けなんぞしなくても、最初から、宝くじの発行許認可権を地方自治体に与えるだけで済む。それが良いか悪いかは別として、そうすることで、復興支援金の交付事業は無くなって、地方自治体が独自に資金集めを行うようになるだろう。

そうしてみると、事業仕分けなんかよりも、法律の方を仕分けしたほうがいいのではないかとも思えてくる。

建物一つ立てるのだって、やれ建蔽率やなんやらで色んな規制が一杯あるけれど、今や、経済発展の阻害要因にしかならないものだって一杯ある筈。

「こういう理由で、今は必要ないから、この法律は廃止する」という具合に、事業仕分けではなくて、「法律仕分け」した方がよっぽどいいのではないか。

仕分けする方も、何故この法律が出来て、今どのような効果、または悪影響を及ぼしているかを十分に理解した上で、それを国民に説明する力が求められるから、単なるパフォーマンスに落ちた、事業仕分けなんかより、よっぽど身のある議論が出来るだろう。




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画像「災害宝くじ」検討 蓮舫氏、利益被災者に 2010.12.5 23:41

 蓮舫行政刷新担当相は5日夜、新潟県村上市での講演で、利益を被災者救済に充てる地方自治体発行の宝くじを検討していることを明らかにした。宮崎県で発生した口蹄疫なども想定している。蓮舫氏は「当せん金以外の利益を被災地域や農家に使えば税金で時間がかかる(支援)枠組みより使い勝手がいい」と指摘した。

URL:http://sankei.jp.msn.com/politics/local/101205/lcl1012052343007-n1.htm



画像中越地震復興宝くじ発売へ 40億収益見込む

 総務省は16日までに、地震の復興財源に充てるため「新潟県中越地震3件復興宝くじ」の発行を許可することを決めた。同県からの申請を受けた措置で、特定の災害復興のために宝くじが発行されるのは阪神大震災で兵庫県と神戸市などが発行して以来となる。来年4月に全国で約100億円分を発売、賞金や経費を除き約40億円の収益を見込んでいる。1等賞金は1億円、前後賞は各2500万円。阪神大震災の際は420億円を売り上げ、130億円が復興基金の財源に充てられた。

URL:http://www.47news.jp/CN/200412/CN2004121601001077.html

この記事へのコメント

  • ちび・むぎ・みみ・はな

    菅氏と同じく頭からっぽ.
    流石, 国会でファッション雑誌の写真をとるだけある.
    見た目とセリフの言い方がうまいだけ.
    自分の手がやっていることを理解する頭もない.
    産経の仙谷特集もそうだが, 民主党の連中に焦点を
    あてても脱力するばかり, およそ教育的でない.
    2015年08月10日 16:47
  • mayo5

    災害には、自治体、国のレベルで対応できる機構を作ればいいのに。屋上に屋を重ねることにしたら、それを仕分けし直す必要が出てくると思うんだな。

    それから、世界市民が友愛の精神で、募金に駆け回ればいいのに。
    あ、ペットボトルのキャップ集めとかだと、時間がかかるし、お金になるのかどうかも分からないし、被災地は遠慮するだろうなあ。千羽鶴は・・もごもご。

    宝くじだって、もう発行しすぎじゃないのかなあ。ギャンブルのガス抜き程度に有れば良いのであって、基本は汗を流して稼ぐことだよ、日本人は。・・変な方向に日本を導くなよ。・・帰化後、二世代、三世代は被参政権を与えない方が良いと思う、差別主義者ですよ、私は。

    仕分けは、犬が電柱におしっこをかけるのと同じで、自民を否定するために使われたツールですから、まだやっているのは不思議でなんですけど。
    2015年08月10日 16:47
  • almanos

    事業仕分け自体は元々単なるパフォーマンスです。法律については廃止は官僚が猛烈に抵抗します。例えば、酒税法では酒の自家醸造を禁じています。これは戦前に農家が自家醸造するのが当たり前で、その為に酒税の税収が下がる事を避ける為に時の政府が押し付けたものです。他国では趣味の一つである酒造りが日本ではこの法律のおかげで出来ないという訳です。ま、イタリアの様に統一以前の法律を使って公共工事用の土地を接収するという使い方もあるので、一律に廃止すると色々面倒が起きる場合もあります。法の遡及適用不可という原則からこの手の法律がないと行政のコストが跳ね上がるという面もあります。日本だと明治維新の時に律令を廃止しています。もし残っていたら呪術を行うと最悪死刑となったりした訳ですから廃止が妥当でしたけど。後、今仕分けてるのは民主党が自分で組んだ予算のです。仕分ける以前にちゃんとしてなかったという馬鹿を曝しているだけですからね。支持率が上がる訳無いのです。
    2015年08月10日 16:47
  • 田舎のダンディ

    「当せん金以外の利益を被災地域や農家に使えば、税金で時間がかかる枠組みより使い勝手がいい」

    つまり行政は、被災地や農家に対する現実的対応が出来ないものだと認めているのですね。それなら、あらゆる宝くじを国や自治体でやって、税金を半分にする方法を生みだしたらどうでしょう。競馬の収益が上がらないのに比べ、経費は100分の1で済みます。

    恐らく、立場が逆なら、事業仕分けの矛盾を一番突いたのが蓮舫大臣でしょう。仕分けとクレームは人一倍厳しく、提案と言い訳は子供並ではバランスが取れないのではないですか、蓮舫さん。弁舌の才は人並みすぐれていることは認めますが、あなたの政策では国は豊かになりません。科学立国も、技術立国も、未来産業振興も遠のき、夢のまた夢です。

    いかなる人間でも、専門的立場の人には、嵌る落とし穴があるかもしれませんが、人並みすぐれた経験や見識もあるのです。まず、そうした立場の方に対する敬意が全く感じられないのは、自分を遥か上だという驕りがあるからでしょう。蓮舫さんが優れているのは、上昇志向と早口で歯切れいい語り口だけです。本当に知識に富んだ方は、多くの場合、じっくり話すことで本分
    2015年08月10日 16:47

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