SPACE BATTLE SHIP ヤマト
「SPACE BATTLE SHIP ヤマト」を観てきましたので、その感想その他をつらつらと。
筆者も所謂「ヤマト世代」ですので、語ってしまいますけれども、気軽にお読みいただければ幸いです。
ただ、内容はネタバレしまくりなので、観る予定があって、ネタバレはちょっとという方はこの先は飛ばしてください。
1.キャスト・スタッフ
主演の木村拓哉も「ヤマト世代」。生まれて始めて映画館に足を運んだ作品が「さらば宇宙戦艦ヤマト」だったそうで、実写化の話を聞いたときは、どんな形でも参加したいと思っていたそうです。
キムタクは、完成映画をみて、波動砲発射シーンが終わるまでは、手の平が汗びっしょりだったとコメントしていますから、相当熱が入ってたんでしょうね。
今回の実写版では、森雪がブラックタイガー隊のエースパイロットと、相当キャラ設定が変わっていましたけれども、脚本の初稿では、森雪は生活班班長兼レーダー手兼看護師だったところ、2時間の話として再構成する際、そのままでは難しいと設定を変えざるを得なかったようです。
黒木メイサの森雪も悪くはないと思いましたけれども、性格もオリジナルとは違って非常に勝ち気なキャラとして描かれており、黒木メイサ本人も、原作と全然違うという印象を受けた、と語っています。
それにしても、森雪にボクシングの心得があったとは…。ただ、ああいう強いキャラとしてヒロインを描いたところは、逆に海外ではウケるかもしれません。
そして、演技が光っていたと思うのは、柳葉敏郎演じる真田さん。
柳葉敏郎を真田さんに、というキャスティングは、実はキムタクの指名だったようで、スタッフから技術班の真田役で思い当たる方いませんか?って言われた時に、『スマスマ』のビストロに柳葉敏郎が来たときのやり取りを思い出したのが決め手だったそうです。
キムタク曰く、「ちょうどお台場に実物大ガンダムが立っているときで、『見に行きます?』って言ったら『すごいな、でもオレガンダムじゃなくてヤマトフリークだから』って言ってて。…『柳葉さんとかどうですか?』って言ったら、スタッフが柳葉さんのスケジュールを聞いてくださったんです。」
事務所のスタッフから、ヤマト実写版の話を聞いた柳葉本人は、「真田役でしょ」と答えたそうです。俺にはこの役しかないと自信があったとコメントしていますけれども、演技も気合入りまくりでしたね。本人が「真田さんに失礼に当たらないように演じること」と語っているように、オリジナルの真田さんを思わせる喋り方をしていましたし、声質もオリジナルと似ていたこともポイントだったように思います。
とりわけ、ガミラス中枢を破壊するシーンでの名台詞、「古代、お前を弟のように思っていたぞ。」の下りには痺れましたね。
あと、オリジナルの声優を効果的に使っていたのも、オリジナルヤマトファンを泣かせる演出でした。
ナレーションには、ささきいさお氏、アナライザーに緒方賢一氏、スターシアの声を担当していた、上田みゆきさん。そして、デスラーは勿論、伊武雅刀氏。ファンには堪らなかったでしょう。
2.脚本・演出
脚本については、あの長いオリジナルの話を2時間半に詰め込むために相当頑張ったな、という印象です。しかも後半に「さらば宇宙戦艦ヤマト」のエピソードを詰め込む欲張りぶり。
オリジナルヤマトの映画第一作は、TV版の総集編だったのですけれど、脚本を担当した佐藤氏がTV版からのオリジナルヤマトのファンだったということもあり、当初はオリジナルヤマトの映画版を実写化しようとしていたようなのですけれど、それだとオリジナルヤマトを知らない人には難易度が高くなると感じ、オリジナルヤマトを観たことがない人でも単独作品として楽しめるようにしたかった、と語っています。
ただ、やはり、2時間半の制約の中では、相当無理したなと思う部分が出てしまったのは残念でした。
今回の映画の口コミなどでは、波動砲とワープを安易に使い過ぎる、という指摘がありますけれども、時間という制約の中での苦渋の選択だったように思います。
たとえば、ヤマト発進直後にヤマトに向かってくる惑星間ミサイルを破壊するシーンがありますけれども、オリジナルでは、主砲で破壊するところを、波動砲をいきなり使っています。あれは主砲であるべきだろう、という声があるのですけれども、あれも恐らく、時間制約の為だったのでしょう。
オリジナルでは、ヤマト発進⇒超大型ミサイルを主砲で迎撃⇒初ワープ実験⇒波動砲発射実験、とイベントが続くのですけれども、その時間が取れなくて、超大型ミサイルの迎撃イベントと波動砲発射イベントを纏めたのではないかと思います。
その為に、わざわざ山崎努演ずる沖田艦長に「敵に手の内をさらけ出してしまった」と語らせてフォローしていますけれども、ちょっと苦しかったかも・・
あと、波動砲を使い過ぎた弊害として、波動砲以外の武器の威力が霞んでしまったことがあるように思いました。オリジナルでは、ヤマトの主砲は一撃でガミラス艦を粉砕する威力を見せていたのですけれど、今回の実写版では、その類のシーンは僅か1回だけ。そのときも森雪に「今までと違う」と語らせてフォローを入れてはいます。
個人的には、ヤマトの主砲は、あんな軽そうにくるくるとは動かさずに、もう少し重厚に動いて、オリジナルヤマトの発射音を使っていたら、もっとファンにはアピールできたのに、と思っています。
とはいえ、全体的な脚本には、オリジナルヤマトの名シーン、名セリフが所々に散りばめられていて、ファンを納得させるものだったのではないかと思います。
特に嬉しかったのは、地球に別れを告げるために、ヤマト乗組員一人一人に地球への通信を許可するエピソードを入れてくれたことですね。
オリジナルのTV版では、家族の居ない古代は行くところがなく、艦内をうろうろしたり、トレーニングルームで腹筋をしたりして時間潰しをした挙句、艦長室に行って、沖田艦長と酒を酌み交わす、というエピソードがあるのですけれども、それが脚本を変えながらもちゃんと実写化されています。
子供の頃、これを観た時には、戦闘シーンが一度もないなんて、なんてつまらない回なんだろうと思っていたのですけれども、年を取るにつれて、段々とこの話はいいなぁ、と見方が変わってきたのですね。
確かに、このエピソードがあることで、ヤマト乗組員各々の家族関係などを描き、話に深みを持たせているのです。
それを実写版でも取り入れることで、個人の人間模様を描くと同時に、後半に向けての伏線にも使っている、よく練られたシナリオだと思いました。実写版では、営倉にぶち込まれた古代がちゃんと腹筋運動をしていましたし・・(笑)。
ただ、今回の実写版で初登場(?)と思われる古谷というキャラだけは、「マクロス」の柿崎でしたが。
3.音楽・メカデザイン・戦闘シーン
音楽は、故・宮川泰氏のオリジナル曲をきちんと使ってくれているのが、嬉しかったですね。あの有名な「♪あ~あ~…」が流れてきたときは、ヤマトの世界に一気に引き込まれました。
音楽を担当した佐藤直樹氏は、皆あのメロディーが聞きたいに決まってる。流れるべき場面で気持ち良く流す。”ヤマト”は絶対”宮川”メロディーなのだ、と「裏切らない」ことを心がけたとのこと。流石だと思いました。
メカデザインについてですけれども、これは意見が分かれるところかもしれません。まずガミラス艦が、まるっきり異なっています。最初のOPシーンで、おぉ、ガミラス戦艦だぁ、と思ったら、沖田艦の後部だったというオチ。う~ん。
意外だったのは、ブラックタイガーが予想外に格好良かったことですね。個人的には、ブラックタイガーよりもコスモタイガーⅡの方がデザイン的に好みだったので、実写版を観るまでは、ブラックタイガーではなくて、コスモタイガーⅡにしてくれないかな、などと淡い期待をしていたのですけれども、あにはからんや、実写版のブラックタイガーは、オリジナルヤマトのブラックタイガーよりも格好いい。
何故なんだろう、と考えていたら、どうやら、微妙に垂直尾翼のデザインを変えていることに気付きました。具体的には、垂直尾翼の大きさが違っています。
オリジナルのブラックタイガーは大きな垂直尾翼を持っていましたけれども、実写版では垂直尾翼の高さがうんと低くなっていて、むしろ、コスモタイガーⅡ並みに低くなっているんですね。
これで全体の印象がぐんと変わってしまいました。ブラックタイガーのカラーリングなのにキャノピーから後ろのフォルムは、どちらかといえば、コスモタイガーⅡに近くなっています。なるほど、これならば、と感心しました。
全体的には、ガミラスのデザインは全然違いますけれども、地球防衛軍側は、それなりにオリジナルのデザイン、特に艦首の辺りのデザインにその名残がある感じで作られていて、それなりに納得できるものであるように思いました。
4.全体を通して
まず、監督、スタッフや出演者の多くがヤマトのオリジナルアニメを見ていたということが大きいと思いました。物凄く「ヤマト」への思い入れがあるのですね。
オリジナルヤマトの世界観をリスペクトして、その上でいい映画をつくろうとしていたんだな、ということが伝わってくる作品だと思います。
全体的には、2時間半という制約の中で上手く仕上げてくれた、という感想ですね。まずまずな出来だったのではないでしょうか。
ただ、ヤマトは当時大ブームになりましたし、今でも大勢のファンがいます。ですから、ヤマトファンにとっては、その人なりのヤマトの世界というものがあって、作品を単に楽しむだけではなくて、各々のヤマトの世界、こだわりの部分を実写としてどう表現するかという観点、すなわち、「製作者的な視点」でも今回の実写版を観ているのではないかと思うのですね。
ですから、細かな部分では、実写版に対して意見を言いたい人が一杯いるような気がします。
兎も角も、駄作の類では決してなく、普通に楽しめる作品に仕上がっていると思いました。
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この記事へのコメント
白なまず
大和は沈み、ヤマトは復活する。大和の宗教、文化、政治は沈み、ヤマトの魂はよみがえる。「ヤ」は天、「マ」は地、「ト」は統合。ヤマとは山、トとは十の教え、聖徳太子の十戒、モーセの十戒、法華経の意味を考える時が来ています。
聖徳太子の十戒 http://blog.goo.ne.jp/yoshinogawa3/e/b51e7e9f1271c846940186118c33d36f/?cid=01eb82893cfaf7408b97879ddb83462f&st=0
ちび・むぎ・みみ・はな
正論一月号に安倍元首相の興味深い談話があるので紹介.
昨日, 安倍政権を民主党政権と同等に論じるデマゴーグ的な
コメントに反論も考えたが日比野庵殿のブログを騒がすのを
控えた. 以下の抜粋は安倍氏が如何にタイミング良く米国に
働きかけていたかを示す.
「正論」1月号, p.108
『にもかかわらず、尖閣問題が起きると、民主党政権の外務大臣
は恥もせずに、クリントン国務長官に「尖閣は安保条約の
適用対象」と表明して欲しいとすがったわけです。私も本来
なら、「安保条約の適用をお願いします」とは言いたくありま
せん。ただ、アメリカが民主党政権の非常識さに不信を抱き、
それを見透かして中国が日本に覇権的野心を見せ、国民の多くが
同盟関係に不安を持っている。もはや自民党だ、民主党などと
言っていられませんから、「多くのに本国民は、日米同盟が
重要だと考えている」と伝えなければならないと考えて訪米を
しました。』
最後に一言. 「やまと」は日本のキーワドであり, 日本書紀の
嘘に隠れた真実が日本の心柱であると思う. このアニメが
日本人
日比野
> 宇宙戦艦やまと世代ではないものは控えるべきテーマだが,
私は、別にやまと世代以外の方は控えるべきとは思ってないです。むしろ、そうした方が、この作品を見てどう思うか気になりますね。
現代的にアレンジされているとはいえ、大まかなストーリープロットは同じですし、より「希望」を打ち出している面はあるものの、底流に流れるテーマもかわりません。それが今の若い世代にも受け入れられるのであれば、少なくとも、「希望を捨てないこと」においては世代間差はないということですから。
あと、正論一月号のご紹介ありがとうございます。とても参考になりました。
これまでのアメリカの外交政策からいって、「尖閣は安保条約の適用対象」と明確にコメントすることはないと思っていただけに、クリントン国務長官の発言は意外だったのですけれど、謎が解けました。