地政学と文明

 
今日は、ちょっと趣向を変えて…

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1.米韓合同軍事演習終了

計7300人の兵力が動員された黄海での米韓合同軍事演習は、1日午後に4日間の日程を終了した。

演習中は北朝鮮からの目立った挑発はなかったようだけれど、まぁ、アメリカ空母にイージス艦を加えた部隊に喧嘩しても、勝てるわけがない。挑発した途端、フクロにされるだけ。

だから、もしも、北朝鮮が挑発するのなら、むしろ軍事演習後のほうが可能性が高いのだけえど、韓国もそれは重々承知。演習終了後も韓国は、厳重な警戒態勢を維持するという。

そして、韓国は、更に年内にも、再び合同演習を行う方向で米国と協議中であると明らかにした。この発表は、合同軍事演習が「終わる前」に発表したそうだから、その意図するところは、おそらく「合同演習はこれからも、何度でもやるよ」というメッセージを含めたのではないかと思う。

北朝鮮を締め上げる2つの戦略」のエントリーで、北朝鮮を締め上げる戦略として、アメリカ空母の「ジョージワシントン」を黄海若しくは黄海に固定して、張り付けておけばいいといったけれど、これから、毎月、合同軍事演習が黄海付近で行われ、そのたびに「ジョージワシントン」が参加するのであれば、この戦略に相当近い形になる。

次回の合同軍事演習については、その具体的な時期や場所は未定だそうだけれど、どうなるか注目している。

場合によれば、やはり小田原城の水攻めよろしく、じわじわと北朝鮮を締め上げる積りなのかもしれない。

半島情勢の緊迫化に伴って、ネットや、其処此処で「地政学」という言葉がちらほら聞こえてくるようになったと感じているのだけれど、ここで少し、地政学について振り返ってみたい。




2.マッキンダーとスパイクマン

地政学とは地理的な環境が国家に与える政治的、軍事的、経済的な影響を巨視的な視点で研究する学問のことで、対象となる学問分野は多岐に渡る。

ここでは、現代地政学の祖とされるマッキンダーと、その説を踏まえたスパイクマンを取り上げてみる。

マッキンダー(Halford Mackinder、1861-1947)は、英国の地理学者で、人類の歴史はランドパワーとシーパワーの相克の歴史であるという説を唱えた。

ランドパワー(大陸国家)とは、大陸内部、半島部に位置する陸軍国のことを指す。国家の性格としては、土地支配欲が旺盛で、土着的、閉鎖的、集団的、専制的といった傾向があるとされる。

それに対して、シーパワー(海洋国家)とは、大陸の外縁部、島嶼部に位置する海軍国のことを指し、その性格は、土地支配よりも交易を重視し、先進的、開放的性格を有し、個人的、合理的といった傾向があるとされる。

通常、シーパワーの力は大陸の外縁部へ及んで、それを支配するのだけれど、大陸のもっと奥に行けば、どうしてもシーパワーの及ばない地域が出てくる。マッキンダーは、この地域を「ハートランド(Heartland)」と名付けた。

次に示すのは、マッキンダーが提唱した、ハートランドの概念図。

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マッキンダーは、人間生活の基盤は地上にあるとして、世界の陸地の3分の2を占めるユーラシア大陸を「世界島」と定義した。

この「世界島」という概念の中では、ヨーロッパは「半島」として位置付けられ、ヨーロッパの歴史は、常にこの「ヨーロッパ半島」の内側、すなわち、ハートランドからの脅威に晒されてきたとマッキンダーは説く。

このマッキンダーの理論を継承したのが、アメリカの地政学者のスパイクマン(Nicholas J.Spykman、1893-1943)で、彼は、マッキンダーの説を踏まえて、リムランド理論を提唱した。

リムランドとは、ハートランドの周縁のシーパワーの影響が及んでいる地域のことで、言葉をかえれば、ランドパワーとシーパワーが互いに接触する地域のこと。

スパイクマンは、ハートランドは雨量と人口が少なく、また、寒冷地や不毛の砂漠が多いことから、近代的な力を生む場所には適さないとして、人口が多く、産業や文化が集中するリムランドを制圧することが、世界を制することに繋がるとした。

次に、スパイクマンが提唱した、リムランドの概念図を示しておく。

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3. 文明とリムランドの相関関係

さて、次の2つの動画を見ていただきたい。ひとつは、ユーラシア大陸を中心とした国家の勃興と衰退を纏めたもの。もうひとつは、過去1000年で戦争が発生した地域を纏めたもの。


ユーラシア大陸を中心とした国家の勃興と衰退



過去1000年の戦争発生地域


最初の動画である、ユーラシア大陸を中心とした国家の勃興と衰退と、マッキンダーのハートランドを重ね合わせてみると、シルクロード周辺を除けば、確かにスパイクマンの指摘どおり、ハートランドには帝国らしい帝国が興らなかったことが分かる。

そして、次の過去1000年の戦争発生地域の動画は、見た人達からは、ヨーロッパ以外の地域、たとえば、モンゴル帝国や中国の戦争がかなり抜けているのでは、という指摘があるものの、発生地域としてみた場合、その殆どは、リムランドの部分で起こっていることが分かる。

その意味では、マッキンダーが唱えた、人類の歴史はランドパワーとシーパワーの相克の歴史であるというのは、そのとおりだと思われる。

最後に、文明の衝突について考える参考として、人類過去5000年の宗教の発生地域とその広がりの動画を付記しておく。ここでも、宗教の広がりは、国家の勃興と同じく、リムランドを中心に広がっていることが分かる。

ただ一点、キリスト教が世界を覆うまでになったのは、近年になってからのことであって、それまでは、ローマ帝国の版図程度の広がりにしか過ぎなかったということは興味深い。




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画像米韓合同演習が終了 北朝鮮の挑発なし '10/12/1

 【ソウル共同】韓国・延坪島ヨンピョンド砲撃への事実上の対抗措置として米韓両軍が朝鮮半島西方の黄海で実施していた合同軍事演習は1日午後、4日間の日程を終了した。北朝鮮は連日激しく反発していたが、演習中の目立った挑発はなかった。

 計7300人の兵力が動員され、米原子力空母ジョージ・ワシントンや米韓のイージス艦、FA18戦闘攻撃機などが参加。韓国は演習終了後に北朝鮮が軍事挑発を行う可能性に備え、厳重な警戒態勢を維持する。

 演習では韓国が海上の南北境界と主張する北方限界線(NLL)を越えて侵入した敵艦艇を空母艦載機で撃退したり、大量破壊兵器の積載が疑われる北朝鮮船舶を制圧したりするなど、実戦を想定したさまざまな訓練が24時間態勢で実施された。

URL:http://www.chugoku-np.co.jp/News/Sp201012010240.html



画像米韓、年内にも再び合同演習か…北朝鮮反発必至

 【ソウル=仲川高志】韓国軍合同参謀本部は1日、北朝鮮による韓国・延坪島(ヨンピョンド)砲撃を受けて黄海上で行われている米韓合同軍事演習が同日午後終了するのを前に、年内にも再び合同演習を行う方向で米国と協議中であると明らかにした。

 北朝鮮の追加的挑発を抑止する目的だが、具体的な時期や場所は未定だという。

 一方、韓国軍が6日から12日まで、延坪島を除く全国29か所の島や沿岸部で砲撃訓練を行うことも1日分かった。韓国軍関係者は、今後、延坪島での訓練実施もあり得るとしている。

 北朝鮮は、11月23日の延坪島砲撃について、韓国軍が同島の南西海域で実施していた砲撃訓練を「事実上の戦争行為」だと見なして砲撃に踏み切ったとしていた。6日からの砲撃訓練も、北朝鮮の反発を招くのは必至とみられる。

(2010年12月1日14時08分 読売新聞)

URL:http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20101201-OYT1T00502.htm?from=main5

この記事へのコメント

  • sdi

    マッキンダーの「ハートランド」は当時の英国のシーパワー(海軍力とそれに支援された揚陸戦力)が脅威を及ぼすことが不可能な領域と私は理解しています。逆にスパイクマンの「リムランド」は、アメリカの(海軍力とそれに支援された揚陸戦力)の限界を規定したものではなかったでしょうか?
    この面での議論について海軍力が河川を通して内陸部に与える影響も考慮しはなくてはなりません。中国大陸における揚子江、アフリカ大陸におけるナイル川、北米大陸におけるミシシッピ川と五大湖・セントローレンス川、南米大陸のアマゾン川など外洋艦隊の支援のもとに河川艦隊と揚陸部隊を展開すれば、軍事的には巨大な入江です。英国はこれら巨大河川のうちアマゾン川を除くすべての水系の制水権を握ったことがあります。
    2015年08月10日 16:47
  • almanos

    キリスト教は西洋の軍事的パワーと共に広まっていったものですからね。列強の信じている宗教だから広まったという面があります。問題はハートランド理論はアメリカ大陸ではどう作用するのかがわからない事でしょうか。中央アメリカがアメリカ大陸におけるリムランドなのはまあいいとして、南アメリカは? とか。オーストラリア亜大陸を中心とした地域は? と穴はあります。中国と北朝鮮に関しては、最後の共産圏と旧西側との戦いという視点で捉えないといけないのかもしれません。
    2015年08月10日 16:47
  • ちび・むぎ・みみ・はな

    文明を考えるのであれば, 言語学の面からの
    検討も面白いと思います. もっとも, 物理的
    力のない民族の言語はすぐに滅ぼされるので
    文明の相剋に与える影響は微妙なところがある
    でしょうが.
    2015年08月10日 16:47
  • 白なまず

    人が住める環境にあるから、文明、宗教、紛争が起こる訳でBC3000から現在まで気候が安定していたとも言える。数万年サイクルで気候変動が起きている事実からすれば今回の地球文明は間違いなく次の気候変動の時期が迫っている。最近の世界中の噴火、地震をみれば大規模な地殻変動があるかもしれないと考えるのは不思議ではない。メキシコ湾の石油流出事故なんてどう考えても石油を取り出す設備の不備と言うよりは地殻の影響で破壊されたと考えるのが自然だし、最近良く耳にする地下に閉じ込められる事故は地下で変動が起きている証拠とみても良いのではないだろうか。桜島の噴火回数なんて過去最高で観測史上最多だった昨年の548回を大幅に上回る月間100~130回で推移。とある。日本列島は多くのプレートに浮かんでいるので日本の火山活動が地球のプレートの動きを表していると解釈すると今までのような安定した時期では無くなっている事を告げている可能性がある。
    2015年08月10日 16:47

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