「今回の情報公開はアメリカの外交政策上の利益を攻撃するだけでなく、国際社会への攻撃だ。」11/29 ヒラリー・クリントン国務長官
1.ウィキリークスの衝撃
28日、ウィキリークスが独自に入手した約25万件のアメリカ外交文書のうち一部を公開した。公開されたのは、アメリカ国務省と世界各地の大使館が情報をやりとりした外交公電で、そのうち約1万1千件は極秘文書とされている。
公開された文書の中には、北朝鮮の内部崩壊を視野に、米国と韓国が南北統一後の対応を協議していたことや、北朝鮮のウラン濃縮技術について中国高官が、昨年の6月の段階で「まだ初期段階」と過小評価してアメリカに伝えていたこと。更には、北朝鮮の金正日の後継者に決まった金正恩氏について、少なくとも昨年2月時点まで、中国は信じていなかったことなどが明らかにされている。
ウィキリークス(Wikileaks)とは、匿名による政府や、企業、宗教に関わる機密情報を公開する、内部告発サイトのこと。
ウィキリークスの創設者であるオーストラリア人のジュリアン・アサンジ氏は、元ハッカーでコンピューター・プログラマー。1995年にオーストラリアでコンピュータへのハッキング行為で有罪になったこともある。
アサンジ氏は、2006年12月に「大衆のための初の情報機関」を掲げ、ウィキリークスを立ち上げた。それから僅か一年で120万を超える機密文書をデータベースに収集したとされている。
ウィキリークスは、世界中の匿名の内部告発者から情報提供を受けていて、ニューヨーク・タイムズによると、ウィキリークスの編集に携わるフルタイムのボランティアは10人弱。その他に暗号化、プログラミング、ニュース記事編集などに精通した800~1000人が協力体制にあるという。
ウィキリークスは、情報保護法制の整ったスウェーデンやベルギーなどに置かれた、20以上のインターネットサーバを使い、数百のドメインネームを持っているため、外部の政府がこれを閉鎖させることはほぼ不可能だといわれている。
ウィキリークスはこれまで、2008年の大統領選挙中に、サラペイリン氏の電子メールの内容を公表したり、2010年4月に、イラクのバグダッドで2007年7月に米軍の攻撃ヘリコプターが、記者や市民を銃撃する空撮映像を公開したりしている。
また、地球温暖化問題の研究機関である英イースト・アングリア大学の気候研究ユニットの研究者たちのデータ改竄を臭わせる電子メールなども公表してきた。
当然、こういったことをする以上、アサンジ氏は当局からつけ狙われている。アサンジ氏は、当局から身を隠すため、次々と居所を変えて生活しているそうなのだけれど、子供の頃から引っ越しを繰り返す生活を続けていたおかげで、苦にならないそうだ。
これまで、アサンジ氏はジャーナリストの活動を法律で厳しく保護するスウェーデンに同サイトの拠点を置きたいと考えていたのだけれど、スウェーデン当局から、就労申請などを却下されたこともあって、中立国のスイスでサイトを安全に運営したいと、スイスへの政治亡命を検討しているという。
それにしても、今回のアメリカの外交公電の公開が与えた影響には凄まじいものがある。何せ、各国首脳が語った「本音」が公開されているのだから、世界各国の外交に影響を与えない訳が無い。
今回の外交公電の公開について、アメリカ政府は神経をとがらせているのだけれど、アサンジ氏を捕まえたり、ウィキリークスのサイトを閉鎖させるまでには至っていない。
また、アメリカ政府は、外交公電の公開で不信感を抱いた同盟国との協力が揺らぐことを警戒していて、今回のウィキリークスの公開に際して、同盟国やいくつかの国にその事を伝えており、日本にも、前原外相に事前に知らされていたようだ。
ただ、アメリカが、このリークを逆に利用しようとしている可能性はあるかも知れない。というのは、リークされた文書が、外交公電であり、その中には、中国や北朝鮮の情報が多く含まれているから。
2.リーク情報を逆利用するアメリカ
たとえば、中国の一部指導者が、北朝鮮には緩衝国としての価値がないとの認識が広まっていることや、北朝鮮は経済的に破綻していて、金総書記の死後2~3年で崩壊し、それを止められないと見ているということなんかは、重要な情報だと言っていい。
こういった、各国が他国や世界を、本音ではどう見ているのかを公開されてしまうことで、ある種の世界世論ともいうべき「合意形成」が、容易に為されてしまう可能性がある。
今回の公電文書の中には、イランが北朝鮮が開発した中距離弾道ミサイル「ムスダン」を19基入手した、というのもあるそうなのだけれど、これを聞いた各国は、「そうか、北朝鮮とイランは繋がっているんだな」と間違いなく思う。
核開発が問題視されてきたイランと、これまた核開発を止めない北朝鮮が繋がっていたとなると、世界の「世論」はイランと北朝鮮は、段々と「悪の枢軸国」だと思うようになるだろう。
ましてや、それが、単にアメリカの高官が話したことだけではなくて、他国の高官が話したことだったとしたら、益々その信憑性が高まってしまう。
要するに、ウィキリークスの公開を逆利用した、イランや北朝鮮を攻撃する際の口実作りに使おうと考えた、口実といって悪ければ、世界の合意を形成する手段として利用しようと考えてもおかしくない。
これは、2003年のイラク戦争を行う際に、如何にイラクが大量破壊兵器を持った悪の国なのだ、とアメリカが宣伝して、他国を説得しようと苦心したこととは実に対照的。
だから、北朝鮮やイランを攻撃する正当性というか、世界の合意が、イラク戦争とは比べ物にならないくらい早く形成されてしまうのではないかと思う。
これを、アメリカがわざと狙ってやらせているかどうかは分からないけれど、結果として、北朝鮮とイランは、ますます苦しい立場に追い込まれることになる。
もしも、本当にアメリカが狙ってやっているとするのなら、北朝鮮問題に関しては、その狙いのひとつに中国への牽制があるのではないかと思う。つまり、お前はどちらの味方なのだ、と踏み絵を迫ってるということ。
そして、願わくば、中国に北朝鮮を「見放させること」ができればベストと思っているのではないか。そうすれば、中国と事を構えることなく、北朝鮮を攻撃できることになる。
尤も、中国は、30日の環球時報で、「北朝鮮は中国にとり核心的な利益だ」とする論評を掲載して、北朝鮮を中国の領土並みの防衛対象とみなすと解釈される意見を出しているから、そう簡単に事が運ぶわけでもないだろうけれど。
神経戦、情報戦はまだまだ続く。


【ワシントン=望月洋嗣、村山祐介】機密情報の暴露で知られる民間告発サイト、ウィキリークスが28日、独自に入手した約25万件の米外交文書のうち一部を公開した。北朝鮮の内部崩壊を視野に、米国と韓国が南北統一後の対応を協議していたことや、米国務省が国連幹部らに対する「スパイ活動」を進めていたことなどが明らかになった。
公開されたのは、米国務省と世界各地の大使館が情報をやりとりした外交公電。ウィキリークスから事前に文書を入手したニューヨーク・タイムズ紙によると、約1万1千件は極秘文書。在日米大使館発などの約5700件の公電も含まれているが、ほとんどはまだ公開されていない。
同紙によると、今年2月にソウルの米大使館が送った公電は、北朝鮮の崩壊に備えた米韓の協議内容を詳述。南北統一国家と米国が同盟関係になることに懸念を抱きかねない中国に対し、韓国政府が経済政策を打ち出して対応する考えを示したことを伝えている。
同月の別の文書によると、米政府は、北朝鮮がイランに核弾頭を搭載可能な弾道ミサイル19基を輸出したと分析。このミサイルの最大射程は約3200キロに達し、イランはベルリンやモスクワを射程に収める可能性があるという。
一方、昨年7月31日のクリントン国務長官名の公電は、国連幹部が使用する通信ネットワーク用のパスワードや暗号を調べるよう、世界各地の大使館に指示。また、米中央情報局(CIA)などの情報機関のために、国連幹部や各国外交官のクレジットカード番号や携帯電話番号などの個人情報を収集し、報告するよう求めている。
英ガーディアン紙は、国務省が潘基文(パン・ギムン)・国連事務総長や国連安全保障理事会常任理事国の国連大使らも情報収集の対象にしていると指摘。「外交官がスパイ活動をすべきか、疑問を呼び起こすだろう」とした。
URL:http://www.asahi.com/international/update/1129/TKY201011290142.html

【北米総局】民間ウェブサイト「ウィキリークス」が入手した米国の外交公電で、米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は29日、北朝鮮のウラン濃縮技術について中国高官が昨年6月、米側に「まだ初期段階」と過小評価して伝えていたと報じた。北朝鮮が今月公開した濃縮設備は「最新」で、既に産業規模の施設が建設中であり、同紙は米中両国の「明らかな(情報の)見誤り」と指摘している。
また、北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)総書記の後継者に決まった三男・正恩(ジョンウン)氏について、中国は少なくとも昨年2月時点まで「(後継者になると)信じていなかった」との公電内容も報じた。
ウラン濃縮に関する見通しは昨年6月、中国外務省幹部が北京で米当局者と昼食を取った際に述べた。これとは対照的に、オバマ米政権は昨年1月の就任直後から、北朝鮮が濃縮関連資材を買いあさっていると警戒もしていたという。
一方、正恩氏についての情報は、上海の米総領事館の公電に含まれていた。それによると、北朝鮮情勢に最も精通する中国人が正恩氏の後継就任のうわさを「信じていない」としており、北朝鮮と接触のある中国人学者らは「金総書記の3人の息子の誰も後継者にはまだ決まっていないようだ」と述べたと報告していた。
また北朝鮮の体制について、現在は韓国・青瓦台(大統領府)の外交安保首席秘書官を務める千英宇(チョン・ヨンウ)氏が今年2月、米国の駐韓大使との公式の昼食会で、「金総書記の死後2~3年で崩壊するだろう」との見方を示していた。
URL:http://mainichi.jp/select/world/news/20101130k0000e030043000c.html?inb=ra

【ワシントン=犬塚陽介】民間内部告発ウェブサイト「ウィキリークス」が公開した機密外交公電で、中国の2高官が韓国外交通商省第2次官だった千英宇氏(現大統領外交安保首席秘書官)に対し、「朝鮮半島は韓国のコントロールで統一されるべきだ」との見解を示していたことが分かった。
千氏は中国の一部指導者に「(北朝鮮には)緩衝国としての価値がない」との認識が広まっており、中国高官も「新たな現実に直面する用意がある」と語ったとしている。
千氏はスティーブンズ駐韓米大使との会談で、中国は北朝鮮の金正日総書記の死後の国家崩壊を止められないとの見解も伝達。北朝鮮は経済的に破綻(はたん)しており、金総書記の死後2~3年で崩壊すると予測していた。
一方で、駐中国米大使館が昨年4月に送信した外交公電によると、中国は北朝鮮について「甘やかされた子供」のように振る舞い、米国の気を引こうとしていると批判。
ただ、中国は6カ国協議の中断が長期になる場合、米中朝の3国間対話などを通じて北朝鮮との協議を続ける必要があるとの認識を米国に示していたという。
URL:http://sankei.jp.msn.com/world/china/101130/chn1011301236008-n1.htm

30日付中国紙・環球時報(電子版)は、韓国に対する砲撃事件をきっかけに、北朝鮮と日米韓の緊張が高まっていることに絡み「北朝鮮は中国にとり核心的な利益だ」とする論評を掲載した。中国は南シナ海や尖閣諸島の問題でも、「核心的利益」との言葉を使っている。北朝鮮を中国の領土並みの防衛対象とみなす意見として注目される。
中国は朝鮮半島の平和維持に寄与する責任がある。朝鮮半島で軍事衝突が起これば、数百万に上る北朝鮮難民が鴨緑江の国境を越えて中国東北部3省に押し寄せてくる可能性が高い。これによって東北部に混乱さらには動乱が起こる恐れがある。
今年3月の天安艦事件の発生以降、朝鮮半島では軍事緊張が続いている。今月23日、韓国北西部の延坪島(ヨンピョンド)で北朝鮮と韓国との間に砲撃戦が起こり、韓国人4人が死亡、19人が負傷した。韓国と米国は28日、半島西側の黄海沖で合同軍事演習を開始した。
中国政府は今年3月、初めて米政府高官に対し、「南シナ海も中国の領土保全にかかわる核心的利益に属する」との方針を正式に表明した。その後、外交部は7月、「中国の核心的利益とは、国家主権、安全、領土保全と開発利益を指す」と明確に示した。
戦略面と国家安全面から見て、北朝鮮は中国にとって最も重要な隣国のひとつであり、中国東北3省の安全は、朝鮮半島の安定によって維持される。東北3省の安全は、中国のさらなる改革開放と現代化建設に向けた良好な外部環境を創造する上で必要であり、中国が世界の多極化推進に寄与し、平和を実現するためにも必要だ。
中国は世界に対し、朝鮮半島の平和と安定が中国の重大な核心的利益に関わっていることをアピールすべきだ。朝鮮半島で戦火を上げることは、中国に対する挑発と宣戦布告を意味する。朝鮮半島の平和維持のために、中国は北朝鮮に韓国を挑発しないよう忠告する一方、韓国の反応に対しても極力冷静さを保つ必要がある。また、今回の衝突を機に生まれた朝鮮半島に関する世論戦や心理戦に乗じ、日米両国が南北戦争を挑発するような行動を取ることのないよう、中国が働きかけるべきだ。(編集担当:松本夏穂)(サーチナ)
URL:http://toanews.com/2009-02-07-09-18-36/5784-2010-11-30-12-59-21.html

【ワシントン草野和彦】民間ウェブサイト「ウィキリークス」による外交公電公開について、オバマ米政権は神経をとがらせている。特に公電に核とテロに関する情報が含まれていたためだ。オバマ政権は、この二つが結合した「核テロ」を安全保障上の最大の脅威としているが、公電公開で不信感を抱いた同盟国との協力が揺らぐことを警戒している。
「世界の安定を脅かすテロから流行病、核不拡散にいたる共通の課題に立ち向かうため、パートナーや同盟国、利害関係国と進めている協力を危険にさらす」。米国務省は公電公開に先立つ27日、同省法律顧問がウィキリークス側に送った書簡を公表した。
懸念の一つはイエメンとの協力関係だ。同国は国際テロ組織「アラビア半島のアルカイダ(AQAP)」の本拠地。AQAP拠点への米軍によるミサイル攻撃の報道はあったが、両国政府が認めたことはなかった。イエメン国民の反発などを恐れたためだ。
だが米メディアによると、イエメンのサレハ大統領とペトレアス米中東軍司令官(当時)の今年1月の会談を伝える公電では、大統領が「爆弾は米国のものではなく、我々のものだと言い続けよう」と述べ、偽装していた。
また、サウジアラビアのアブドラ国王が、パキスタンのザルダリ大統領について言及した公電によると、国王は「頭(大統領)が腐れば、体全体(国)に影響を及ぼす」と酷評した。両国は、米国がテロ対策を進める上での貴重な同盟国で、両国関係の悪化は米国の安全保障の懸念材料となる。
このため、事前にウィキリークスから情報提供を受けた28日付ニューヨーク・タイムズ紙(電子版)は公電公開について「予期不可能な形で国際情勢に影響を与えつつある」と分析した。
URL:http://mainichi.jp/select/today/news/20101201k0000m030057000c.html
この記事へのコメント
almanos
白なまず
組織内部から破壊する事、通信技術による物なら通信の遮断、国家間の信頼関係の破壊、意図的な情報操作リークによる敵国のイメージ作り。。。うさん臭いですね。
目や耳は騙されますが、鼻は騙されません。破壊を目的とする活動はお互いを遠い存在にするのが目的なので、もちろん悪の仕組みでしょう。それに、元ハッカー、、、お笑いです。彼に物理学、数学、言語学、哲学に興味があるとは思えません。それにハッカーは政治にはほぼ無関心なのが特徴なんですから。もちろん猫派でしょう。ハイテク製品をいじるのが好きで、直ぐに役立たない小難しい事を考えるのが好きで、アニメ好きで、人種差別も無く、無宗教で、、、これらに近い人が多く生息する国は日本でしょう。そう、ハッカーとはオタク的なんです。単に科学技術が好きで没頭している人種。勿論、これが全てではないですが。自称ハッカーは間違いなく「クラッカー:偽ハッカー:悪意を持った破壊者」でしょう。