口先首相の空疎な答弁

 
26日、通常国会で代表質問が行われた。

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最初に質問に立った、自民党の谷垣総裁は、一言でいえば、民主党マニフェストの転換や、消費税を含む税制改正を行うのなら衆議解散すべきだ、解散するのなら協議に参加する、というもので、表向きは一応対決モードに立ったと言える。

谷垣氏の質問の骨子を筆者なりに大まかに整理すると次のとおり。

1.民主党マニフェストを激しく非難していた与謝野大臣の起用の意図は?与謝野大臣が節を変えたか、それとも民主党政権がマニフェストを放棄したのかどちらなのか?

2.小沢元代表を巡る問題で証人喚問をする気があるのか?

3.(23年度予算内容を引き合いに出して)民主党マニフェストは嘘だったとしか思えないが、見解を伺いたい。

4.消費税を含む税制の抜本改革の具体的プランが提示されなければ、協議に応じられない。参院選で消費税10%といい、参院選に負けたら途端にダンマリ。そして去年末になってまた言い出す。総選挙のマニフェストと違うことをやるのなら、前回のマニフェストの撤回と解散総選挙を行うべきだ。

これに対する、菅首相の答弁は次のとおり。
1.社会保障改革には、高い見識と志を持っている方で、成案を得る段階では、内閣の不統一はありえない。

2.国会の場における説明は必要だ。関係委員会などで、各党各会派で議論していただきたい。

3.マニフェストは4年で行うことを前提としている。優先順位に基づいて着手している。

4.現時点で、解散はまったく考えておりません。

一応突っ込みを入れておく。

1.に関して、菅首相は、与謝野氏を迎えたのは見識を持っているからで、内閣の不統一は有りえないと答えているけれど、またしてもすり替えをしている。

谷垣氏の質問は、与謝野氏のこれまでの主張を考えると、与謝野氏の入閣は、与謝野氏が変節したか、マニフェストが転換したかのどちらかしかロジック的には有りえない、というもの。

だから、この質問に「丁寧に」答えるならば、まず、与謝野氏の見解が如何なるものかという前提と、結論へと導くロジックがなければならない。

谷垣氏は、与謝野氏の見解と民主党マニフェストがイコールにはならないから、どちらかが変節したはずだとロジックの矛盾を指摘しているのに、菅首相は与謝野氏の見解に触れることなく、"内閣の不統一はない"と結論している。

前提を明示せずに、結論を述べるのは、たんなる「自分の思い」であって、ロジックではない。これでは、鳩山前首相と同じく、理由を一切述べずに「~という思いを受け取った」と勝手に言い張るのとなんら変わらない。

2については、これまでどおりの言い訳パタン。"自分は関係ない"を炸裂させ、3については、嘘ではない、やっていると平行線。ただ、マニフェストが4年で行うことを前提としているのであれば、途中でマニフェストを見直すこと自体がその前提を自ら否定していることになる。その点はもっと追及してもいいだろうと思われる。



そして、4に関する答弁でも、すり替えをしている。この点に関して、代表質問で谷垣氏は、過去の菅首相の答弁を引き合いに出し、次のように質問している。以下に引用する。

谷垣氏 ただし、政府は、23年度税制改正関連法案について、税制改正大綱に明記されたとおり、全体として税制抜本改革の一環をなす法案であると説明されており、それゆえに法案を一本化されているものと忖度します。確かに、そこに含まれている所得税の給与所得控除の見直しは、かつてですと「サラリーマン増税」との批判を受けかねない大改正ですし、相続税の税率構造の見直し、法人税率引下げ、国税通則法の見直しどれ一つをとっても近年稀に見る大改正と言えます。

 しかもこれらの内容は、具体的な改正の是非は別として、テーマ自体は、21年度税制改正法附則第104条第3項においてわが党が定めた消費税を含む税制抜本改革の検討の方向性とも一見軌を一にしています。

しかし、であればこそ、問いたいことがあります。総理は昨年8月の予算委員会で、私が、「消費税を含む税制抜本改革の前に信を問う、それはそれでよろしいですか。」とお尋ねしたときに、「例えば消費税を大きく引き上げるとか、あるいは別の税金でもそうかもしれませんが、大きな税制改正を行うときには、やはり国民の皆さんに判断をいただく、そういうことが必要だろう、その考え方は変わっておりません。」と答えられています。

 すなわち、消費税以外の税制であっても、大きな税制改正を行うときには国民に信を問うという考え方を述べられています。この答弁に従えば、所得税、法人税、資産税、更には国税通則法の大改正、まして税制抜本改革の一環として説明される内容を盛り込んだ法案を提出し、かつ、年度内成立・4月施行を目指される以上、直ちに衆議院を解散すべきことになるはずですが、いかがでしょうか。事柄は、予算委員会で総理大臣が野党第一党党首に対しての発言に関わりますので、この点を明確にお答えいただきたいと存じます。
「たむたむの自民党vs民主党」 12/26 自民党総裁・谷垣禎一代表質問(全文)(その2、終わり)より

谷垣氏の質問を、三段論法的に前提と結論で整理すると、次のようになると思われる。

大前提:菅首相は「大きな税制改正を行うときには、やはり国民の皆さんに判断をいただくことが必要だ」と言った。

小前提:23年度税制改正関連法案は、所得税の給与所得控除の見直し、相続税の税率構造の見直し、法人税率引下げ、国税通則法の見直しなど、近年稀に見る大改正だ。

結論 :23年度税制改正関連法案は、大きな税制改正であるから、解散総選挙すべきだ。

谷垣氏の質問は、非常にすっきりしている。ロジックに矛盾はない。

だから、もし、これに反論しようとするのなら、ロジックに穴がない以上、大前提、小前提、結論の何れかが違っていることを示さなければならない。

これに対して菅首相は、「信を問うと言ったのは、仮に、消費税を上げる時やそれに匹敵する税制改正を行う場合で、毎年の税制改正を行うために解散することは考えていない」と答えているけれど、これは、谷垣氏の指摘した大前提を肯定して、小前提を否定していることを意味する。

であれば、23年度の税制改正関連法案は、消費税に匹敵するような"大きな改正ではない"ということを示さなければならない。だけど、それは一切説明しない。

だから、ここでも、根拠を明示せずに、「自分の思い」だけを言い張る答弁をしている。

今回の代表質問に関して、菅首相が解散時期について示唆した、なんていう報道も見られるのだけれど、これまでの嘘つき具合や、今回の答弁を考えると、本当に解散を考えているか非常に疑問。とても信じることはできない。

谷垣氏は非常にロジカルで、すっきりした質問をするのだけれど、菅@けものへん殿のような、嘘つきに対して、ロジックで攻めても実のある答弁は期待できないのではないかと思う。

折に触れて、稲田女史のように「間抜け、腰抜け、卑怯者」とはっきりというキャラを全面に押し出すのも面白いかもしれない。


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画像衆議院代表質問 消費税と解散をめぐり与野党が激突

国会では、菅首相の施政方針演説など、政府4演説に対する各党の代表質問が始まった。自民党の谷垣総裁は、民主党の政権公約(マニフェスト)の転換や、消費税を含む税制改正を行うのであれば、早期に衆議院を解散すべきと追及したのに対し、菅首相は「現時点でまったく考えていない」と否定した。
自民党の谷垣総裁が「民主党政権の正統性そのものが、もはや崩壊したと言わざるを得ません。潔くマニフェストの過ちを認め、これを撤回し、有権者におわびしたうえで、信を問い直すべきと考えますが、総理の見解を伺います」とただすと、菅首相は「現時点で、解散はまったく考えておりません」と述べた。
自民党の谷垣総裁はまた、菅首相が消費税を含む税制の抜本改革で、「政治生命をかける」と発言したことに対し、期限内に実現できなければ解散するのかとただすとともに、「国民の信を問うことをもって覚悟と受け止め、与野党協議に積極的に参加する」と、衆議院の解散が与野党協議の前提になるとの認識を示した。
これに対し、菅首相は「信を問うと言ったのは、仮に、消費税を上げる時や大規模な税制改正を行う場合で、来年の税制改正を行うために解散することは考えていない」と述べ、「案作成の段階から、超党派協議の進め方を含めて野党の意見を伺いたい」と呼びかけた。
さらに、民主党政権の政策を厳しく批判してきた与謝野経済財政担当相の入閣について、谷垣総裁が「与謝野大臣の変節か、民主党がマニフェストを放棄し変節したかのいずれかだ」と追及したのに対し、菅首相は、「社会保障改革には、高い見識と志を持っている方で、成案を得る段階では、内閣の不統一はありえない」と反論した。
自民党の谷垣総裁は「支持率を上げるためだけの『小沢斬りごっこ』につきあうつもりはありません。本当にけじめをつけるつもりであれば、直ちに、われわれが求める証人喚問を実現すべきと考えますが、いかがでしょうか」と述べると、菅首相は「いずれにしても、国会の場における説明は必要だと考えております」と述べた。
さらに、民主党の小沢元代表の証人喚問を求めた谷垣総裁に対し、菅首相は「関係委員会などで、各党各会派で議論していただきたい」と述べるにとどまった。
また、自民党の小池総務会長が、野党時代の民主党の国会運営に苦言を呈したのに対し、菅首相が「率直に言って、反省すべきところがある」と述べ、「問題があった」と認める一幕もあった。
菅首相は「できるだけ、丁寧に質疑をしたつもりです」、「(消費税を引き上げる場合、法案提出前に解散し信を問うという理解でいいか?)消費税が議論され、そして最終的に上がるとすれば、上がる前までに(信を問う)ということですよね。(それは法案提出後もあり得るということですか?)時期について、特に今、申し上げる段階ではありませんが、少なくとも消費税が上がるまでにという意味で、この間申し上げてきました」と述べた。
自民党の谷垣総裁は「菅さんとは不思議な方で、右手では握手を求め、左でほっぺたたたくようなことがお好きなんですね。挑発せざるをえないような人格になっている。与野党協議をやるには、信なくば立たず、というのがありますから、前提条件をきちんとしてくださいと申し上げたが、きちんとするという方向の答弁ではなかったと思います。請求書だけ回すような話は、断固粉砕しないと話にならない」と述べた。
また、自民党の小泉 進次郎衆院議員は「小沢さんを切りたいのを(国民は)わかっているのに、本人(菅首相)は言わない。TPP(環太平洋経済連携協定)も開国、開国って言っているから参加したいはずなのに言えない。マニフェストも、もうできないのわかっているのに『できません』と言わない。消費税も上げたいと思っているはずなのに、『上げます』と言えない。このはっきりしないことだらけが、このもやもやなんだとわかりました」、「(谷垣総裁の代表質問で解散に追い込める?)正直言って、あんまり解散、解散ばっかり言わないほうがいいと思うんですよ。国民が冷めますよ。国民が解散を望み、その声に押されたうえで解散総選挙となる。これが、自民党にとっても民主党にとっても、日本にとってもベストシナリオじゃないですか」と述べた。
(01/26 20:20)

URL:http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00191925.html



画像解散時期「消費税率上がるまでに」(26日夕)2011.1.26 19:38

 菅直人首相は26日夕、消費税率上げをめぐり衆院解散・総選挙で国民に信を問う時期について「消費税が議論され、最終的に上がるとすれば、『上がる前までに』ということだ」と述べた。首相官邸で記者団の質問に答えた。

 ぶら下がり取材での詳細なやりとりは以下の通り。

 【国会論戦スタート】

 --今日、代表質問が始まり、国会論戦がスタートした。初日を終えての感想は

 「ええ。あの、できるだけ丁寧に質疑をしたつもりです。議論が深まればいいなと。こう思ってます」

 【「政治生命懸ける」の意味】

 --自民党の谷垣禎一総裁からの質問に対し、「政治生命を懸ける」(という以前の発言)の意味について「改革に最大限努力することだ」などと答えていたが、一般的に政治生命を懸けるとは職を賭すことだと思われる。この見解の違いをどう思うか

 「とにかく、やりとげなきゃいけない。そういう思いで申し上げました」

 --一般の人との認識の違いなどは感じないか

 「いや、私としてはとにかく、やり遂げることが政治責任を果たすと。そういう思いですから。そういう意味で申し上げました」

【税と社会保障改革の与野党協議】

 --同じく、谷垣総裁は、社会保障と税制の一体改革をめぐる与野党協議について、「与野党協議は衆議院を解散してからだ」としており、実現が難航している。首相はかねて、協議の段階で与野党ともに、と呼びかけているが、野党側に応じてもらえるよう具体策は考えているか

 「まあ、年金とか医療とか、社会保障の課題っていうのは、本当に国民の生活そのものの課題ですから。やはり、そういう課題について、ぜひ与野党で話し合う。それが必要じゃないでしょうか」

 【消費税率上げの時期】

 --今日の答弁で首相は「消費税引き上げの場合、国民に信を問う方針に変わりはない」としていたが、引き上げる場合、法案の提出前に信を問うという理解でいいのか

 「あの、前からですね、消費税引き上げのような大きな政策の前には、国民の皆さんの判断を仰ぐことがあっていいということは言ってきました。あの、基本的にはだから、消費税が議論され、そして最終的には上がるとすれば、上がる前までに、ということですよね」

 --法案提出の後もありうるということか

 「ですから、そういうその、時期について、特に今、申し上げる段階ではありませんが、少なくとも消費税が上がるまでにという意味でこの間、申し上げてきました」

 【超党派の議員活動】

 --現場の国会議員レベルでは、国会改革などで、超党派の議連が活動を活発化しているものもある。首相は今日の代表質問でも答えていたが、こうした現場レベルの超党派の取り組みをどう捉えているか。また、どのようなことを期待するか

 「まあ、党として取り組むことと、個人個人の議員が党を超えて超党派で取り組むことと、それぞれあっていいんじゃないでしょうか」

 【鳥インフルエンザ拡大】

 --鳥インフルエンザについて、今日、愛知県で感染の疑いがある鳥が見つかるなど、感染拡大の様相を呈している。今日も関係閣僚会議で対応を検討していたが、今後、新たな対応や防疫対策の見直しを考えているか

 「まあ、宮崎、鹿児島に続いて、愛知県で感染の可能性があるという指摘で、あの、今、しっかり調査というか、確認をしているとこです。あの、この間も、最初の段階の宮崎が報告が来た直後に対策本部を開いて、全力を挙げてその後も、その態勢で進めてるところです。今後も自治体と連携して、全力を挙げて拡大の防止に努めていきたいと。まあ、この問題、原因が野鳥という可能性もあるもんですから、なかなか対応が難しいんですね。ですからもちろん、防護ネットとか、それぞれ皆さん、しっかり防止のための手当ては尽くしておられますけども。まあ、国として政府として、やれることは、拡大をいかにして防いでいくかと。それには全力を挙げて、自治体とともにやっていきたいと思ってます」

URL:http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110126/plc11012619420145-n1.htm

この記事へのコメント

  • almanos

    相変わらずの中身のない空き管ぶりが目につく答弁でしたか。こういう人にはきついユーモアを交えてやる方が効果的なんですけどね。憎まれ、敵視される事はなれていても、嗤われることには耐えられない。中身がないだけではなく、腐臭がする空き管はきちんとゴミ箱に入れないといけない。ま、名古屋の選挙結果によっては「こいつを降ろせ! でないと俺等が終わる! 」と民主党で反乱が起きるでしょうけど。内閣不信任案可決以外で辞めさせることが出来ないでしょうね。で、お返しに衆院解散を必ずやるでしょうから、選挙に備えて解散に追い込まないと駄目でしょう。
    2015年08月10日 16:47
  • とおる

    > 谷垣氏は、与謝野氏の見解と民主党マニフェストがイコールにはならないから、どちらかが変節したはずだとロジックの矛盾を指摘しているのに、菅首相は与謝野氏の見解に触れることなく、"内閣の不統一はない"と結論している。

    菅首相は、ロジックで応えるつもりは無いのでしょう。
    今年の党大会か両院議員総会で、「挙党体制とは、党トップに従う事」というような発言をしていましたが、「国会で多数を持っていて、国のトップ(首相)に従ってればいいんだよ」というように思っているような気がします。
    中国共産党独裁国家のように、事実がどうであれ、中国共産党の発表が「正しく、従ってればいい」と似ているロジックです。

    先日も書いたかもしれませんが、菅首相などの閣僚が、国会で嘘をついても平気なのでしょう。

    ・国会での虚偽答弁の責任は「内容次第」 政府答弁書が無責任に…
     http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110111/plc11011119180175-n1.htm

    ・森雅子氏の質問主意書
     質問: http://www.sangiin.go.jp/japanese/j
    2015年08月10日 16:47
  • ちび・むぎ・みみ・はな

    > ロジックの矛盾を指摘しているのに

    マルキストは論理なんて持たないので
    指摘しても無駄. 政権を離さないことに
    全存在がかかっているのだから.

    > 稲田女史のように「間抜け、腰抜け、卑怯者」と
    > はっきりというキャラを全面に押し出すのも面白い
    > かもしれない。

    面白いというより, 事実は事実. 真実は何度でも
    言ってあげないと中共の日本侵略の尖兵である
    民主党の頭には届かない.
    2015年08月10日 16:47

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