年金支給年齢引き上げ発言

 
 
「人生90年を前提とした場合、定年の延長と同時に、年金の支給開始年齢の引き上げも考えられる」
与謝野経済相 於:1/21 新成長戦略実現会議


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与謝野経済相の発言が波紋を呼んでいる。

1月21日に行われた、政府の「新成長戦略実現会議」に初めて出席した与謝野経済相は、会議の中で、将来的には、定年制の見直しと、年金の支給開始年齢の引き上げが課題になると述べたそうだ。

ともすれば、年金支給開始年齢引き上げのほうばかりクローズアップされるきらいがあるのだけれど、発言自身は、定年制の見直しとセットで、年金支給開始年齢の引き上げを述べている点は押えておくべきかと思われる。

というのは、この発言は要するに、政策として、現役世代の年齢を引き上げることを意味するから。つまり、厚生年金や国民年金の支給開始年齢を、たとえば、現在の65歳から70歳に引き上げると同時に、定年も、今の65歳から70歳に延長するという方針になるということ。

これは、「成長か分配か」のエントリーで紹介した、「デフレの正体――経済は『人口の波』で動く」の著者である藻谷浩介氏が提言している日本のデフレを解消する方策に沿ったものでもある。

藻谷氏はこの本の中で、日本経済再生の目標として、「生産年齢人口が減るペースを少しでも弱める」、「生産年齢人口に該当する世代の個人所得の総額を維持し増やす」、「個人消費の総額を維持し増やす」の3つを挙げているけれど、定年を延長すると、当然、その分だけ現役世代が維持されることになる。結果として、藻谷氏が提言する3つの目標のうちの一つである「生産年齢人口が減るペースを少しでも弱める」ことを目指すことになる。

また、同時に、給与を貰える現役世代人口が維持されることで、2つ目の目標である「現役世代の個人所得を維持する」ことにも繋がる。

更に、件のエントリーでも触れているけれど、昨年改正された税制改正大綱で、贈与税を下げて、また贈与の対象を「子」から「孫」にまで拡大し、かつ相続税を重くすることで、より消費性向の高い若い世代へ所得移転をさせてゆく施策を行っているから、この政策によって、3つ目の目標である「個人消費の総額を維持し増やす」ことも促そうとしている。

こうしてみると、政府は、結局のところ、「新成長戦略」と銘打ちながら、藻谷氏が提言する「デフレ対策」を実施しようとしていると言える。



では、これを実際にやろうとすると、定年延長がまず前提になる筈なのだけれど、「新成長戦略実現会議」のメンバーは、菅首相や関係閣僚のほか、日銀、日本経団連、それに連合などのトップが名を連ねているから、その辺りも話が進んでいるものと思われる。

実際、新成長戦略実現会議が行われた1月21日に、経団連の米倉会長は日本外国特派員協会での講演の質疑応答の中で、日本の労働力確保について、将来は外国からの移民を受け入れるべきだと述べると同時に、当面は専門的な知識を持った人に限るべきで、まずは、高齢者や女性の活用が先だ、との見解も示しているから、定年延長への布石が打たれている、とみていいのだろう。

今回の与謝野氏の発言に対しては、各所から反発があったようで、23日になって、自身の発言に対して釈明したようなのだけれど、その内容をよく聞くと、単に「今回の社会保障と税の一体改革と関連して言ったわけではない」と言っているだけで、将来的にもやらないなんて一言も言ってないどころか、中長期的な課題として指摘した、と発言している。やる気満々。

去年の「税制改正大綱」と、政府の「新成長戦略実現会議」の内容、そして経団連会長のコメントを照らし合わせると、やはり、藻谷氏が提言した、デフレ対策を行うのは、もう規定路線と見ていいように思われる。

ただ、注意すべきは、この対策でうまくいくのかどうかということと、実際にどう具体的にやっていくかという点。

仮に、定年延長によって、生産年齢人口を維持させる政策でデフレが解消し、上手くいくのだとしても、その70歳というのが妥当なのかどうか。いくら日本が長寿国であって、元気なお年寄りが多いとはいえ、30歳や40歳と同じというわけにはいかない。

年を取ると、段々体がいうことをきかなくなってくるのは、もう生物学上仕方のない事なのだから、定年延長が具体化するにつれて、医療介護の問題は今以上にクローズアップされると思う。与謝野経済相の発言のように、人生90年を前提にするなら、尚の事そう。

だから、医療介護については、今後相当力を入れていかないと、中々政府が思うようにいかない部分も出てくるように思われる。

なぜなら、もしもの時に安心できるインフラがきちんとしていなければ、やっぱり不安になって、消費せずに貯金してしまうことになるだろうから。

今後この辺りの議論と対策をどう政府が打ち出してくるか。注目したい。


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画像年金支給年齢“将来課題に”1月21日 23時29分

与謝野経済財政担当大臣は、21日に開かれた政府の「新成長戦略実現会議」で、高齢化が進む中で国の成長を実現していくために、将来的には、定年制を見直すとともに、年金の支給開始年齢の引き上げなどが検討課題になるという認識を明らかにしました。

政府の「新成長戦略実現会議」は、菅総理大臣や関係閣僚のほか、日銀、日本経団連、それに連合などのトップがメンバーとなり、去年秋に発足し、与謝野経済財政担当大臣は、今回、初めて出席しました。この中で与謝野大臣は「90歳でも元気な方が多いなかで、そうした長寿社会にふさわしい、規制制度や慣行の見直しをすべきではないか」と述べ、「成長型長寿経済」を目指すべきだという考えを示しました。そのうえで、与謝野大臣は、将来的には、定年制を見直すとともに、年金の支給開始年齢の引き上げなどが検討課題になるという認識を示したということです。菅総理大臣は会議でのあいさつで、「『成長型長寿経済』という大変新しいことばを出していただいた。このままいけば労働人口が少なくなり、いろんな課題があるなかで、積極的に高齢者に経済活動に参加してもらおうという構想は魅力的だ」と述べました。

URL:http://www.nhk.or.jp/news/html/20110121/t10013560241000.html



画像与謝野、庶民犠牲に赤字対策 働け!増税だ!年金はやらん!2011.01.22

 消費税の9%引き上げか、定年延長と年金支給年齢の引き上げか、あるいはその両方か。政府の財政運営をめぐり、毎年の国の借金がどの程度になるのか試算が出たなかで、与謝野馨経済財政担当相(72)が、年金支給について年齢支給引き上げを示唆した。ふくらみ続ける政府の財政赤字への対策。庶民の生活に大打撃を与えることは間違いない。

 内閣府が21日の閣議などで報告した「経済財政の中長期試算」では、慎重な経済見通しを前提とした場合、2020年度の国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)は、23兆2000億円の赤字となるとしている。

 このPBは、毎年の政策経費を、借金に頼らずに賄えているかの指標。PBがゼロになったとしても、国や政府の借金が増えなくなるだけのことで、10年度に833兆円、15年度には1000兆円を突破するとされる国と地方の公債残高、つまり累計の借金を減らすことにはならない。

 日本の財政は、先進国で最悪の水準にあり、高齢化の進展で社会保障費は自然増だけで毎年1兆円以上膨らみ続ける。このため、悲観的なシナリオの場合、20年度単年度の赤字が23兆2000億円となる計算だ。

 この23兆円の赤字をゼロにするためには、消費税換算で9%程度の税率引き上げが必要となり、消費税率10%台は避けられない。

 そういったなか、菅政権で税と社会保障の一体改革を担当する与謝野氏が、21日に首相官邸で開かれた新成長戦略実現会議の席上、「人生90年を前提とした場合、定年の延長と同時に、年金の支給開始年齢の引き上げも考えられる」と述べた。

 自営業者などが加入する国民年金は、支給開始が65歳。厚生年金と共済年金は定額部分(基礎年金に相当)の支給開始は01年度以降、段階的に引き上げられており、男性は13年度から、女性も18年度にいずれも65歳になる。

 この引き上げに対しても、国民からは批判が相次いでいるが、それをさらに引き上げるという“与謝野発言”のインパクトは大きい。

 22日未明、与謝野氏は報道各社に「中長期の日本のビジョンとして述べたもので、当面の改革において年金支給の開始年齢の延長を検討する旨を述べたものではまったくない」と釈明した。だが、消費税と社会保障の一体改革を担当する大臣の発言だけに波紋は収まりそうもない。

URL:http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20110122/plt1101221542001-n1.htm



画像「将来は移民受け入れも」米倉経団連会長が表明 2011.1.21 18:46

 日本経団連の米倉弘昌会長は21日、東京・有楽町の日本外国特派員協会で講演し、質疑応答のなかで、少子高齢化に直面している日本の労働力確保について「将来は外国からの移民を受け入れるべきだ」と述べ、移民問題について初めて公的に言及した。

 ただ「単純労働者ではなく、当面は専門的な知識を持った人に限るべき」とも述べ、移民受け入れより「高齢者や女性の活用が先」との見解も示した。

URL:http://sankei.jp.msn.com/economy/news/110121/biz11012118470142-n1.htm



画像一体改革とは関連せずと与謝野氏 2011年1月23日(日)17時22分配信 共同通信 

 与謝野馨経済財政担当相は23日、年金支給開始年齢引き上げに言及した21日の自身の発言について「今回の社会保障と税の一体改革と関連して言ったわけではない」と述べ、あらためて中長期的な課題として指摘したものと釈明した。社会保障と税の一体改革に関する、菅直人首相と関係閣僚らとの協議の後、公邸で記者団に語った。

URL:http://news.nifty.com/cs/domestic/governmentdetail/kyodo-2011012301000320/1.htm

この記事へのコメント

  • 白なまず

    人間の寿命とはいったい何なのでしょうね。現代人は長生きが良い事と言う価値観かもしれませんが、魂の鍛錬を行う道場が輪廻転生と地球上の生命活動と見ると別の見方も見えてくる。短命な人が不幸かと言えばそうでもなく、己れの使命を真っ当すれば道端で絶命しても悔いは無いと思える人も居るし、散々長生きしても自分の使命を知ることすら出来ず、前世と同じ過ちを繰り返し無駄な時間を過ごす人も居る。長生きして尚やり残した事があれば良いが無ければ何の余生か。もう一度自分の人生の目的を見つめる時が来ている。

    「あなたは、何をしに、ここ(地球)へ来たのですか?」
    http://jinga123.blog118.fc2.com/blog-entry-208.html

    http://mihoh.seesaa.net/archives/20110124-1.html
    2015年08月10日 16:47
  • 日比野

    ちび・むぎ・みみ・はな様
    >「日本解放第二期工作要綱」.
    >エロは反日工作の道具でもあるので, 注意が必要.

    情報提供ありがとうございます。工作だとすれば、確かに注意が必要ですね。
    う~む。知らないうちに私も乗せられているのかもしれません…。

    ちょっと警戒しておくことにします。
    2015年08月10日 16:47
  • almanos

    寿命が延びたから定年もという考えは解らなくはないけど、やり方がまずい。もともと定年は寿命とほぼ同じです。定年前に亡くなるのが大半でした。老化による身体機能劣化が顕著になる60代後半から70代に伸ばすと、かえってコスト高になるのでは? 希望すると定年を伸ばせるならまだ実現化の余地があるでしょうけどね。このタイミングで出す辺りに与謝野氏の墓掘り人という渾名の所以があるのでしょうねえ。
    2015年08月10日 16:47
  • ちび・むぎ・みみ・はな

    経団連が絡むなら一般的な定年延長はないだろう.
    経済効率を上げるためには作業能力の落ちた人員を
    抱える余裕はない. 外国人採用は経済効率改善の
    ためなのだから. 従って, 定年延長は能力が必要な
    人に限るが, それは既に種々な形で採用されている.

    与謝野氏(財務省)と経済界の意見が一致している
    わけでは無いと思う.

    さすが, 財務原理主義者与謝野. 民主党の貴重な
    支持基盤である団塊の世代も気にしない.
    2015年08月10日 16:47

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