ルノーの技術流出と無法国家中国

  
フランスの自動車大手、ルノーで電気自動車の技術情報が流出した。

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漏洩したのはルノーが2012年以降の発売に向けて開発を進める次世代EVのバッテリーやモーターに関する情報と見られるのだけれど、ルノーのペラタ最高執行責任者(COO)は9日付の仏ルモンド紙に対し、流出した可能性があるのは車の構造やコストに関する情報だとコメントしている。

もし、漏洩情報がEV関連の情報だとすると、EVを共同開発する日産にも影響が及ぶ可能性がある。

フランスでは2007年に、中国人留学生が仏自動車企業の極秘情報を不正入手したとして、有罪を宣告されたことがあり、フランスメディアは、情報の流出先は中国の自動車メーカーだという見方が主流で、ルノーの経営幹部らが同社の下請け企業を通じて中国側に情報を提供し、その見返りに報奨金を受け取ったと報道されている。

ルノーの依頼を受けた民間調査会社の調査によると、経営幹部3人のうち2人について、スイスの口座に50万ユーロ、リヒテンシュタインの口座に13万ユーロが、上海やマルタの仲介者経由で入金があったようだ。

実際、ルノーは15日になって、漏洩に関わったとされる幹部2人に書面で解雇を通告。2人に対してルノーは「外国筋から相当の金額を受け取っており、見返りに戦略的な情報を提供したと判断せざるを得ない」と説明したそうだから、報奨金を受け取ったのは事実なのだろうと思われる。

フランスのメディアは、「中国側には産業スパイの“慣習”がある」と、中国に対する批判を強めている。

ルノーは13日に幹部3人を告訴。それを受けた仏中央対内情報局(DCRI)が捜査を行うことになっているのだけれど、中国外務省の洪磊報道官は「全く根拠がなく、受け入れがたい」と猛反発しているから、中国が捜査に協力する見込みは低い。

それに、肝心のルノーやフランス政府高官が押し黙ったまま。フランスのラガルド経済・財務・産業相は「どの国が関与したか臆測すべきではない」と、報道を牽制しているくらいだから、中国を刺激したくない思惑が見え隠れしている。

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いまや中国は世界最大の自動車市場に成長している。

2009年の中国市場でも新車販売台数は前年度比46.2%増の1364万台で、アメリカの1042万台を抜いて世界一になっていて、2010年は更に販売台数を伸ばしている。

中国自動車工業協会が1月10日に発表した、2010年の中国の新車販売台数は、前年比32.4%増の1806万台にも達したそうだ。

これは、アメリカの1159万台、日本の496万台の合計をも上回る規模。如何に自動車メーカーにとって、中国市場が魅力的に映るのか想像に難くない。

ルノーとしても、こうした世界最大の自動車市場を持つ中国との関係が拗れるのは痛手になるだけに中国批判は避けると見られている。

日本だって安穏としていられない。ルノーは日産自動車の筆頭株主で、日産の電気自動車技術をルノーは使っている。苦労して開発した技術がこんな形で流出するとなれば、強力な対策を講ずる必要がある。

日本は電池やモーター技術では世界一。その技術が他国のものとなれば、日本の自動車産業は壊滅的な打撃を受ける。

もしも、中国がルノーの技術をスパイしていたとするならば、当然日本のメーカーに対しても、直接金で買収しようとしたり、脅したりして技術を奪いに来ることも考えて置かなければならない。

何でも、中国はレアアースの取引を条件に、工場進出や技術の開示を迫られた日本メーカーもあるという。

去年、尖閣事件を端を発した日本向けのレアアース禁輸措置で世界を敵に回したはずなのに、中国は平気な顔で、レアアースの輸出を更に絞っている。

中国商務省は昨年12月28日、レアアースの2011年上半期の輸出量枠を、2010年の同期より35%減になる1万4446トンにすると発表している。

アメリカなどの中国以外でのレアアース生産が本格化するのは2012年以降と見られているから、足元を見ているのかもしれないけれど、それを盾にして、技術開示を迫るところなど、面の皮が厚いどころではない。

日本としても、今は苦しいかもしれないけれど、レアアースの在庫のあるうちに、中国以外のレアアース開発やレアアースに頼らない新技術の開発促進をする必要がある。


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画像“無法者国家”中国との軋轢回避優先? G20議長国の仏、ルノー事件で苦悩 2011.1.13 20:05

 仏自動車大手ルノーは、日産自動車と共同開発している電気自動車(EV)の情報漏洩(ろうえい)問題で、幹部3人を当初の予定より1日遅れの13日に刑事告訴する。今後、スパイ事件として本格捜査が進む見通しとなったが、仏政府は、国内で高まっている「中国関与説」の火消しに躍起だ。同国にとって、中国は最重要の貿易相手国であるうえ、議長国を務める今年の20カ国・地域(G20)金融サミットで、中国との連携を模索しており、軋轢(あつれき)を避けたいとの思惑が働いているとの見方が出ている。

 ただ、レアアース(希土類)の輸出規制など経済力を武器に恫喝(どうかつ)外交も辞さない中国に対しては、世界的に「無法者国家」との批判が高まっており、仏政府の弱腰姿勢は、国内世論の反発を招く恐れもある。

 ■スパイを正当化?

 フランスでは、中国関与説を裏付ける報道が過熱。一部メディアは、情報漏洩の疑いがもたれている幹部3人のうち2人の銀行口座に国有送電会社の国家電網が送金していたと報じた。

 フランスでは過去にも、中国人研修生が自動車部品メーカーから機密情報を盗み出し摘発される事件が起きており、「中国は信用できない」との市民感情が高まっているという。

 これに対し、中国政府は「全く根拠がなく、受け入れがたい」(外務省の洪磊報道官)と猛反発。

 仏政府もラガルド経済・財務・産業相が「どの国が関与したか臆測すべきではない」と、報道を牽制(けんせい)。捜査段階で真相が解明されていないという事情はあるが、同相は「企業が研究開発に投資する限り、産業スパイは存在する。フランス企業は今回の問題を正しく認識し、対策を講じなければならない」と、スパイを正当化するかのような発言も行っている。

■屈辱のトラウマ

 仏政府には、対中外交でトラウマがある。2008年にサルコジ大統領がチベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世と会談したのに対し、中国は欧州航空機大手エアバスの納入凍結という報復措置を発動。関係改善を望む経済界の声に押され、サルコジ大統領が中国に内政不干渉を約束するという屈辱を味わった。

 フランスにとって、中国は輸出入とも日本を抜き、アジア最大の貿易相手国となっている。対中輸出では航空機のほか、原子力発電所や鉄道、水処理関連などのインフラに力を入れ、関係強化を進めてきた。

 来年の選挙で再選を目指すサルコジ大統領は支持率低迷にあえいでおり、「9%超で高止まりする失業率を改善するためにも、対中輸出のさらなる拡大が不可欠」(外交筋)という事情がある。

 ■米国包囲網で連携

 さらにサルコジ大統領には、先進国と新興国によるG20を成功させ、支持率回復につなげたいとの思惑もあり、特に米ドル基軸通貨体制の見直しに強い意欲を示している。

 一方の中国も人民元切り上げを迫る米国への対抗措置として欧州との関係を重視しており、中仏の思惑は一致。昨年11月にソウルで開かれたG20では、両国が米国のドル安政策批判で歩調を合わせた。

 サルコジ大統領は今月下旬にもG20に向けた声明を発表する予定で、「米国包囲網を再構築する上で、中国の協力が欠かせない」(同)。

 仏政府が大株主であるルノーにしても、中国は大事なお得意さま。同社は新興国でニーズの高い低価格小型車に強みを持つ。世界最大の自動車市場である中国との関係悪化は大きな痛手となるだけに、「捜査の行方を見守る姿勢に徹し、中国批判は避ける」(自動車大手)との見方が強い。

URL:http://sankei.jp.msn.com/economy/finance/110113/fnc1101132009016-n1.htm



画像中国レアアース輸出枠、前年比35%減 11年上半期 2010年12月28日20時43分

 中国商務省は28日、レアアース(希土類)の2011年上半期(1~6月)の輸出量枠を、1万4446トンとすると発表した。10年の同期より35%少なく、11年は通年でも10年を下回るとみられる。米国など中国以外での生産が本格化するのは12年以降で、日本企業にとって来年は、レアアースの調達が一段と厳しい年になりそうだ。

 内訳は、外資が9社で3684トン、中国系が22社で1万762トン。中国はこのところ輸出枠を年2回に分けて発表している。その比率は年によって異なるが、業界関係者によれば下半期分が上半期分を上回ることはほとんどない。11年の場合、上半期分を単純に倍増すると通年では10年分より5%の減少。ただ、10年の場合、7月になって発表した下半期分が大幅に減らされ、通年で前年比4割減となったこともあり、日本企業は、夏ごろに発表される下半期分の行方を心配している。

 ハイブリッド車のモーターや電池、排出ガスを浄化する触媒などにレアアースを使う自動車業界では「輸入が減るようなら、部品生産の一部を中国に移す必要があるかもしれない」(部品会社幹部)といった不安が根強い。

 中国が決めた今年の輸出枠は3万トン。大手商社の双日によると、来年の日本の供給不足は少なくとも1万1300トン生じそうだ。在庫もあるため工場が操業停止に追い込まれるようなことはないにしても、値上がりは必至で「かなり厳しい状況だ」という。

 中国政府は、「10年より減るが、その幅は大きくない」(商務省次官)としているものの、環境や資源の保護を理由に、一部のレアアースの輸出税を引き上げるなど管理をいっそう強める方針だ。(吉岡桂子=北京、神谷毅)

URL:http://www.asahi.com/business/update/1228/TKY201012280377.html

この記事へのコメント

  • ちび・むぎ・みみ・はな

    > いまや中国は世界最大の自動車市場に成長している。

    技術の不正な流出は問題だが, 技術のヒントが分か
    っても商品として作れなければ意味がない気もする.
    車を作っても売れなければ仕方がないし, 買っても
    乗れなければ仕方がないのではないかと思う.
    ガソリン価格が上昇するからと言うのだろうが,
    エネルギー効率の悪い支那にとっては, 電気自動車
    はエコでも何でもないだろう. 輸出にしても,
    現代の自動車さえ米国では敬遠されている現状で,
    支那の電気自動車なぞどこの国に購買層を設定
    するのか. 或は, 技術データで支那国内特許を
    申請して, ルノーの電気自動車が支那に入った時に
    特許商売をするのだろうか. これなら, 電気自動車
    の販売台数とは関係ないから, 儲かりそうだ.
    2015年08月10日 16:47
  • とおる

    フランスだったから発覚したのかも?
    日本なら、情報ダダ洩れでも、分からなかったり?
    日本に来ている中国人留学生を企業に採用し、安易に機密情報に接することができる社内体制では、「どうぞ、企業秘密を盗んで下さい」です。
    2015年08月10日 16:47
  • 白なまず

    技術は情報(文字、図)ではなく場(生産現場、設計現場、人)で保存されています。日本人は昔から現場に神棚を祭り生産上の様々な事が無事に済むように誓いを立ててきました。この事が良く分かってない工場長などが赴任してくると、大抵良くない事が起きます。例えば、死亡事故、生産トラブル、いざこざ等。大企業の工場では必ず神棚があり、神事を行い完全な計画を立ててもなお不安なので、最後は神に無事を願い、完成を誓うのです。すなわち、技術情報が漏れてもそれをそのまま実現出来る可能性は極めて低く、ソフトのコピーのようには行きません。図面が有ってもそのとおりに作成できません。絵のような物だと贋作は可能だと思いますが、機械は別です。またオーケストラの楽譜でもそうだと思いますが、楽譜の情報だけで演奏会を開くことは無理です。音楽家の解釈、技術、感情、指揮者の方針、解釈などが総合され出来上がる物です。
    日本に来ている中国人留学生は頭脳明晰かも知れませんが器用だとは限りません。だから、心配御無用です。
    2015年08月10日 16:47
  • almanos

    逆に見ると、レアアースがまだ武器として使えるうちに取れるものを取るという方針でしょうね。つまり、代替技術と他の供給源確保は適切であると言う事でしょう。一年しのぐのはそれほど厳しくないでしょうから、のらりくらりといい顔をしながら一年やり過ごすでしょう。ま、それでも違法な採掘と販売は後を絶たないのでそちらも利用する手がありますが。量がしれてますしね。技術流出は問題ですが、その技術をきちんと扱いきれるか? ここで中国は引っかかるでしょうし。安くない中国製品なんて誰も買わないという程度の品質しかないのですからね。むしろ、今のバブルが飛んで球に落ち込んだ時の事を考えるべきでしょう。どうみても中国でバブル崩壊が起き始めてますし。むしろ、バブル崩壊で生きる内憂を外征で誤魔化そうとして起きる問題の方が頭痛いでしょう。
    2015年08月10日 16:47
  • お門違い

    中国人がルノーの研究所に侵入して資料を持ち去ったのなら中国人に怒りを表明すべきだが
    フランス人が「金やるからこっそり売ってくれ」ともちかけられて売ったんだからそりゃ売ったほうがアホなだけ
    「この情報は俺個人のじゃないから売れないよ」と蹴ればよかったんだ
    2015年08月10日 16:47

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