与謝野野新経済相に批難が集まっている。それはそうだろう。自民の比例復活で当選したものの、反党行為で除名となり、反民主を旗頭とする「たちあがれ日本」の共同代表であったのが、いつの間にか民主党の閣僚に収まったのだから。
ただ、与謝野氏が内閣に入ることで、民主党は民主党であることを捨てたと言っていいように思う。
仙谷氏が閣外に去り、菅政権は、より保守化路線への舵をきった。もちろん完全な保守化には程遠いことはいうまでもないのだけれど、菅首相が財務省に取り込まれ、与謝野氏を経済相になった以上、経済政策だけは、これまでのように官僚を敵に回すことはしなくなる。
今度の内閣は財務省の後押しを得て、財政再建に乗り出すことになる。今の時期にそれを行うことの是非は別として、経済政策に限っては、与野党の歩み寄りの余地が出てくる。
国会答弁でも、経済政策に関して何も分からない菅首相に代わって、与謝野氏がほぼ全面的に答弁することになるものと思われる。
自民党は、民主党の子ども手当や高速道路無料化政策について、不要だと反対姿勢を示しているけれど、与謝野経相は14日の初閣議後の記者会見で、早速、子ども手当について、「批判精神は失っていない」と、見直しも含めた問題点の検討を示唆するコメントをしている。だから、もうすでに民主党から自民党への歩み寄りが始まっているともいえる。
ただ、これで、子ども手当が本当に無くなるようであれば、先の衆院選での目玉公約を潰すことになるから、国民も民主党は完全に詐欺政党だったのだと思うだろう。
民主党が自ら民主党であることを止めるのは勝手だけれど、それ相応の責任も取らず、詐欺まがいの生き残りを計るのは許されることではない。
さて、もういろいろな報道やブログなどで散々指摘されていることだけれど、与謝野氏が入閣したことで、民主党は爆弾を抱えることとなった。
それは次の3つ。
1.民主党内の亀裂
2.与党と野党との「パイプ」が断たれる
3.世論の反発
1.については、昨日のエントリーで指摘したように、結果として経済相の地位から追いやられることになった海江田氏の立場がないし、そのほかの議員にしても、他所から呼んでいきなり要職ともなれば、自分達の党内には経済相が務まる人材がいないと言われたも同然。どう考えても、面白くないだろう。表向きは兎も角、腹の底では菅首相に対する信頼がますます落ちる可能性がある。
2.については、野党からすれば、招聘の経緯をみれば与謝野氏の入閣どころか、その存在すら許せないだろう。社民党は「邪道だ」と声をあげているし、自民党も与謝野氏を問責する構えを見せている。自民党の山本一太議員は、「個人的に言うと、最初から問責を出したい大臣だ」と、与謝野氏を厳しく批判している。
だから、24日から始まる国会でも、与謝野氏を理由に審議拒否をすることだって十分考えられる。野党の審議拒否を回避するために、問責を受けた仙谷氏や馬淵氏を内閣改造で交代させたのに、与謝野氏の入閣でまた同じく審議拒否のリスクを抱えてしまうことになった。
与謝野氏を内閣に迎え入れる時点でこうなることは分かり切っていた筈なのに、なぜそうしたのか。
これは穿った見方なのかもしれないけれど、もしも、菅首相が政権維持のために、民主党が民主党であることすら捨てたのだとしたら、こうした不条理としか見えない組閣も平然とやれるのかもしれない。
どういうことかというと、野党を国家審議の場に引きずり出して協力させるためには、野党側の人間を閣内に引き込むことが一番手っ取り早いから。
たとえば、ある議員がいたとして、その人が如何なる政策や信条を持っていたとしても、一旦閣僚ともなれば、内閣の方針に従わざるを得ない。その時点で政府の人間になるから。
だから、反対者であればあるほど、閣内に取り込んでしまうことさえできれば、その反対意見を本人自ら黙らせることができる。
それが嫌なら、いくら声をかけられても受けなければいい。だから、閣僚なんかを受けた議員は、その時点で自分の意見は封印せざるを得なくなる。
普通に考えれば、あれほど民主党の経済政策を批判していた与謝野氏が入閣することは有りえないと思うのだけれど、逆に言えば、入閣しても、自分の意見を全く封印しなくてもよいともなれば、入閣を断る理由がひとつ減ることになる。
それを菅首相は狙ったのではないか。
つまり、「経済政策については、与謝野さんにお任せします。政府は貴方の方針に切り替えました。財務省も同じ意見です。好きなようにやってください。」と、丸投げすることで取り込んだのではないかということ。
まぁ、取り込まれるほうも取り込まれる方だと思うけれど、これには更に奥があるように思われる。
それは、経済政策において、政府与党が野党案に抱きつくことで、法案を通させない責任を野党に負わせるということ。
先にも述べたように、与謝野経済相は、早くも「子ども手当」の見直しを示唆し始めた。子ども手当について、与党が、自民党と同意見になることで抱き着き始めている。
もしも、民主党が子ども手当をあきらめて、自民党と同じ意見になってしまったら、審議拒否の責任は自民党が被ることになる。
非難は一気に自民党に向かうことになるから、審議に応じざるをえない。
同じことを、他の予算案についてもやってきたらどうなるか。つまり野党案を丸呑みすることで、国会を乗り切ってしまうという手に民主党が出たらどうするのか。
しかも、普通なら問責されても仕方がない経緯で招聘した与謝野氏という閣僚を抱えたまま、国会を乗り切ったという実績も残ってしまう。実に狡猾な一石二鳥の策。
その代り、民主党は民主党でなくなってしまうけれど、それとて、もうどうでもいいと菅首相が腹をくくったならば、いくらでもやってくる可能性はある。
石に齧り付いてでも解散しない。そういう意思が感じられる組閣ではないかと見る。
だから、もしも、その齧り付いた石から引き剥がすことが出来るとするならば、1の党内亀裂によって、民主党が分解して、衆院で内閣不信任案が可決する以外には、3の世論の反発しか残されていない。
先の世論調査でも、与謝野経済相の起用を「評価しない」という回答は49%で、「評価する」の34%を上回っている。スタートから与謝野氏の存在がマイナスに働いている。
今回の理不尽な内閣に世論が反発し、春の統一地方選で敗北して、地方から民主党が瓦解して、地元の国会議員が突き上げられ、士気が下がり、誰も菅首相に協力しようとしなくなったとき、極端にいえば、菅首相以外の全閣僚が辞表を提出して、誰も後任を受けなくなったら、もうどうにもならない。内閣不信任案が可決されたと同義になる。
そこまで追い込まないと、この御仁は自分からは決して辞めると言わないのではないかとさえ。
まさに仏滅内閣。
予算審議と統一地方選。それが次のターニングポイントになる。


与謝野経済財政相は14日夜、初閣議後の記者会見で年金制度のあり方について「(自らが閣僚だった自民党の)麻生内閣で『安心社会実現会議』を作った。その報告書の基調は民主党政権でも受け継がれており、社会保険方式が前提と理解している」と述べた。
超党派で改革を進める余地があるとの立場を強調したものとみられる。
また、「いろいろよい案があるが、制度移行が35年も40年もかかることが現実性があるのかという問題がある。すべての案を含め、総合的に検証する必要がある」とも強調、民主党案の修正も含め、検討を進めるべきだとの考えを示した。
民主党案は厚生、国民などの年金を一元化し、現役時代の所得に応じた保険料で年金額を決める所得比例年金とすることなどを柱としている。
一方、与謝野氏は「バラマキだ」と批判してきた子ども手当について「政策効果に対する確信が、導入当初は十分説明されていなかった」と指摘。「批判精神は失っていない」とも強調し、見直しも含め、問題点を検討していく考えをにじませた。
(2011年1月15日01時37分 読売新聞)
URL:http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20110115-OYT1T00002.htm

自民党が24日召集の通常国会で、内閣改造で入閣した与謝野馨経済財政担当相と江田五月法相に照準を合わせ、徹底追及する構えを見せている。与謝野氏は野党に転落した自民党を離れて菅政権に加わり、江田氏は参院議長時代に「民主党寄りの議会運営」を続けたとして野党から批判された。2人の国会答弁次第では、自民党は問責決議案の提出も視野に入れている。
「厳しく追及していく。個人的に言うと、最初から問責を出したい大臣だ」。自民党の山本一太参院政審会長は15日のテレビ番組で、与謝野氏についてこう語った。同党幹部も「問責の第1のターゲットは与謝野氏だ」と断言している。
与謝野氏は2009年の衆院選で自民党から出馬し、比例代表で復活当選。昨年4月、自民党を離党してたちあがれ日本を結党したが、13日に離党、今回入閣した。与謝野氏は「政権の中で政策を実現することが大事」などと釈明しているが、自民党は同氏の「政治遍歴」に矛先を向けていく方針だ。与謝野氏は自民党時代、民主党のマニフェスト(政権公約)を「財政が破綻する」と厳しく批判。当時の鳩山由紀夫首相の偽装献金事件をめぐっては、国会で鳩山氏を「平成の脱税王」と痛罵した。このため、与謝野氏のかつての言動と現在の行動の整合性もただしていく考えだ。
江田氏に関しては、参院議長時の対応を問題視している。昨年6月の通常国会会期末、自民党などは「民主党の強引な国会運営を黙認してきた」として、江田議長不信任決議案を参院に提出した経緯がある。決議案は廃案となったが、参院幹部は「江田氏の資質に問題があることに変わりはない」と指摘する。もっとも、昨年の臨時国会で自民党は閣僚批判に力を入れるあまり、支持者から「党の主張が見えない」との批判も出た。党内には「また追及一辺倒では有権者にそっぽを向かれる」(中堅)と懸念する向きもある。(2011/01/16-14:19)
URL:http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2011011600067
この記事へのコメント
ちび・むぎ・みみ・はな
していないのではなかろうか. 既に部分的で
あっても支払われていることだし.
問題は目前の景気.
与謝野氏の目指す財政健全化と消費税, 菅氏が官僚
の言葉を鵜呑みにして闇雲に進めている TPP.
国民への説明ができれば断固拒否する正当性がある.
問題は国民へのアピールに尽きるのだろう.
正しい情報をどうやって伝えるか.
TPP については新聞への意見広告が良い.
ただ, 財政健全化については自民党にも強く主張する
議員がいたような. 与謝野氏は最近までの自民党の
内部事情を承知している. 自民党内部での意見調整を
しっかりと行ない, 与謝野氏の智恵に負けない戦略を
出す必要があると思う. 対立点さえ提示できれば,
マルキストではなさそうな与謝野氏を中心に内閣内の
亀裂が進行するだろう.
白なまず
almanos
ス内パー
とおる
自爆内閣?
自爆テロ内閣?
人質をナイフで脅しながら、「俺の要求を呑め!」と脅している犯人みたい。