1月14日、2回目の内閣改造が行われた。
組閣の陣容とその狙いについては、いろんな識者の方々が指摘しているので、今更、当ブログで指摘するまでもないとは思うけれど、蛇足を承知で少し触れておきたい。
まず、改造内閣の印象について、さるアニメキャラの独特の言い回しになぞらえれば、「想は"政権維持"、思考は"不条理"、願いは"増税"」といったところ。
今回の組閣の陣容をみれば、その狙いが増税にあることは誰の目にも明らか。今更「脱・小沢」を協調されても別に驚かない。
しかし、これほど「不条理」な内閣も珍しい。
不条理を辞書で引くと次のように定義されている。
ふ‐じょうり〔‐デウリ〕【不条理】 [名・形動]
1 筋道が通らないこと。道理に合わないこと。また、そのさま。「―な話」
2 実存主義の用語。人生に何の意義も見いだせない人間存在の絶望的状況。カミュの不条理の哲学によって知られる。
と、一般的には、道理に合わないことが「不条理」とされている。
今回の改造内閣の何処が道理に合わないのか。
まず、与謝野氏を経済相に迎え入れたことが挙げられる。
与謝野氏は先の衆院選で、自民党から東京一区から出馬し、海江田氏に敗れ、比例復活当選。その後自民党を除名処分となり、反・民主を掲げる「たちあがれ日本」を立ち上げた。
しかも、与謝野氏は、一年前に『民主党が日本経済を破壊する』という書籍を書いて、民主党の経済政策を批判している。そうした御仁が民主党と対立するどころか、誘いに乗ってほいほいと入閣し、当の経済相に就任するとは。とても「節操がない」などとというレベルでは済まない。
これでは、与謝野氏に相当批難が集まるものと思われる。
それに、与謝野氏を閣僚に迎える方にも道理がない。いくら閣僚経験者とはいえ、野党の与謝野氏をいきなり重要閣僚である経済相にあて、先の衆院選でその与謝野氏と戦って勝った海江田氏を、経済相から経産相への玉突き人事を行なった。
先の選挙結果をまるで無視している。
当の海江田氏本人も、この人事に対して会見で「人生は不条理だと思う」と憮然としたというけれど、それはそうだろう。納得できるはずもない。
西岡参院議長も「首相は不条理だ。民主党と小選挙区で戦った相手が入閣するというのは海江田氏にはたまらないだろう」とコメントしている。
先の衆院選のマニフェストの殆どが何一つ実現できず、見直しせざるを得なくなり、解散総選挙を求める声が日に日に大きくなっても、なお改造して居座ろうとする不条理。
昨年夏の参院選で増税を持ち出して敗北し、さらに地方選挙で負け続けるという民意で増税を否定されているのに、増税内閣を組閣する不条理。
その参院選で敗北したときの幹事長であった枝野氏が、官房長官として出世する不条理。
そして、年明けに菅首相自ら不条理を正したいと言っておきながら不条理な内閣を組むという不条理。
唯一、道理があったと言えるのが、国会答弁で不条理の限りを尽くした仙谷氏の交代だったという皮肉な組閣。
こういったことが平然と行なわれる政権なのだから、仏滅に組閣するというのも普通なのだろう。後世、仏滅内閣だったと名付けられそうではある。
さて、先ほど、改造内閣の狙いは増税にあるといったけれど、さらに付け加えるとするならば、TPPの推進も入れていいと思われる。
TPP推進に慎重であった前経産相の大畠氏を国土交通相に横滑りさせて、逆にTPP積極派の海江田氏を経産相に当てたこともその決意の表れと思われる。
まぁ、不条理な仏滅内閣とはいえ、これまでよりは多少やりたいことを鮮明にした内閣だといえなくもないのだけれど、こと民主党だから残念なことになる可能性がある。
もしも、この内閣が成功するとすれば、それは、閣僚や党が菅首相を支えるためにちゃんと働き、そして彼らのにそれだけの能力がある場合に限られる。なぜなら、これまでの民主党政権の"実績"たるや、国民を深く失望させ、政府に対する怒りを燃え上がらせるに十分過ぎるものだから。
TPPもやるとなったら、小泉改革以上の痛みが伴う。一度小泉改革の"痛み"を国民が知った以上、より激しい抵抗が予想される。それを説き伏せて、且つやり遂げることが果たして菅政権にできるのか。
今までのような、補助金つけたから賛成しろ、とか、反対するなら予算をつけてやらん、方式ではどうにもならないことは目に見えている。
TPPをやりたいというのなら、まず普天間をさっと解決するだけの力を見せないと到底納得できるものではないだろうと思うけれど、普天間問題はあれから一歩も進んでいない。
それに、今回の内閣改造に対する世論の反応は冷静なもの。
読売新聞が、今月14日から15日にかけて、緊急全国世論調査(電話方式)を実施したところ、内閣支持率は34%で、前回調査の25%から9ポイントしか上昇していない。このまま仮に、小沢氏に離党勧告を出すなり、除名処分なりして、離党させたとしても40%台に行くくらいが関の山。
そして、注目したいのは、仙谷官房長官の交代に関しては67%が「適切だ」と答え、消費税引き上げが「必要だ」と答えたのが61%、TPPに「参加すべきだ」との回答が57%といずれも過半数を超えているにも拘わらず、菅内閣が今後政策面で実績を上げられるとは思わないという回答が70%に達していること。
要するに、菅内閣には政策を実現できる力があるとは見られていない。菅首相が最強の内閣だなんだといったところで、世間は白けている。
いくら政策の方向性を支持されたとしても、それを行う力がないのであれば、世論は解散総選挙でもなんでもして、ちゃんとした政治をできるように国民は望むもの。
「不条理な仏滅内閣」が如何なる結果を残すのか、意外とその答えは早く出そうな予感がしている。


菅直人首相(64)は13日の民主党2011年度定期党大会後に党役員人事に着手、14日に内閣改造を断行する。24日召集予定の通常国会に向け、「挙党態勢」を打ち出す構えだが、実態はまるで違う。ねじれ国会を乗り切るには細心の注意が必要だが、今回の人事は、小沢一郎元代表(68)との暗闘に加え、党内外の人間関係をさらに悪化・複雑にしかねない火種が山積している。急きょ浮上した与謝野馨元官房長官(72)の起用。政権延命の大バクチが裏目に出る結果となりそうだ。
「この党大会を皮切りに、本格的な活動に入らないといけない。みなさんの声をしっかり受け止め、党運営、政権運営をしていきたい。最強の布陣をつくる」
菅首相は13日午後の党大会で力強くこう語った。だが、小沢グループの不満が爆発した前日の両院議員総会同様、内閣改造・党役員人事の先行きは暗たんとしている。
参院で問責決議を受けた仙谷由人官房長官と馬淵澄夫国交相、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)に慎重な大畠章宏経産相らは交代。仙谷氏は代表代行に就任し、後任長官には仙谷氏の弟分である枝野幸男幹事長代理を充てる方向で最終調整を始めた。仙谷氏が国対委員長を兼務するとの見方もある。
また、たちあがれ日本の与謝野共同代表を、税と社会保障担当の特命相や厚労相、首相補佐官などで起用することも検討。与謝野氏は昨年末、民主党とたち日の連立に向けて奔走したが、党内の猛反発を受けて断念した。「菅首相は与謝野氏とは囲碁仲間であり、官房長官や財務相を歴任した与謝野氏の手腕を評価している」(周辺)という。
与謝野氏は13日午前、都内で同党の平沼赳夫代表に離党届を提出した。
このほか、野田佳彦財務相や前原誠司外相、片山善博総務相、北沢俊美防衛相、自見庄三郎金融相、玄葉光一郎国家戦略相、蓮舫行政刷新担当相らの留任が固まった。
悲願の政権交代から1年4カ月、民主党政権の真価が問われる布陣だが、今回の人事には火種が山積している。まず、目玉である与謝野氏の起用には早くも野党から猛反発の声が噴出した。
自民党中堅は「そもそも、与謝野氏は自民党比例でやっと復活当選した人物。それが1年もたたないうちに自民党を離党して、平沼赳夫代表らと『打倒・民主党!』を掲げて、たちあがれ日本を立ち上げ、今度は180度豹変して民主党政権に協力するという。永田町のユダだ。一体、彼の政治信念はどこにあるのか。政局観もゼロ。閣僚になっても、そのうち問責決議を突き付けられるだろう」と突き放す。
与謝野氏は、衆院東京1区から出馬して落選しているが、ここで当選したのは民主党の海江田万里経済財政担当相。閣内バトルが勃発する可能性もある。
「影の宰相」こと仙谷氏の代表代行起用にも懸念がある。岡田克也幹事長とまったくウマが合わないのだ。
民主党関係者は「反小沢の急先鋒である仙谷氏は、かつて『政治の師は小沢一郎』と公言していた岡田氏を敬遠している。岡田氏も、外相から幹事長に横滑りしたのは『菅首相と仙谷氏にやられた』と思っているうえ、小沢氏の国会招致について、仙谷氏が『岡田は何をモタモタしているんだ!』と陰口を叩いていたのを知っている。とても一致結束してという雰囲気ではない」という。
■いまの民主党は「みっともない! みっともない!」
仙谷氏には国対委員長との兼務説も流れているが、「国対委員長は幹事長の指示に従って与野党間の調整に当たるポストだが、仙谷氏は独自の判断で動くはず。また、自民党も『問責された仙谷氏の国対委員長などふざけるな』と反発している。大丈夫なのか」(同)と不安を隠さない。
「内閣のスポークスマン」で「首相の女房役」でもある官房長官への起用が有力視される枝野氏にも懸念が。「菅首相の信頼が厚い」(官邸筋)とされるが、昨年の参院選惨敗のA級戦犯であるうえ、菅首相とは因縁がある。
小沢氏に近い民主党議員は「枝野氏は左翼色が強く、理屈っぽい。官僚とはソリが合わず、小生意気に見える。スポークスマンとしても国民の反発を受けるのではないか。10年ほど前、菅首相に不倫疑惑が発覚したが、この女性は枝野氏とも親しかったと聞いている。果たして、枝野氏が体を張って菅首相を支えるだろうか」と語る。
これまで、小沢氏との暗闘ばかりが注目されていたが、今回の内閣改造・党役員人事は新たな亀裂・内紛を生む可能性があるのだ。
政治評論家の小林吉弥氏は「通常国会を無事に召集するために、菅首相としては仕方なく行う内閣改造・党役員人事だが、国民へのインパクトはなく、とても政権浮揚の材料にならない。逆に、党内・閣内の火種が増えそうだ。今後、小沢グループも不満を抱え続けていく。2011年度予算案や関連法案の成立と引き換えに、菅首相は退陣に追い込まれることになるのではないか」と分析する。
党大会で来賓として挨拶した国民新党の亀井静香代表はたまりかねたのか、「今の民主党でいいんですか? みっともない! みっともない!」と言い放った。終わりの始まりということか。
URL:http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20110113/plt1101131622004-n1.htm

読売新聞社は、菅再改造内閣が発足した14日から15日にかけて、緊急全国世論調査(電話方式)を実施した。 内閣支持率は34%で、前回調査(昨年12月3~5日実施)の25%から9ポイント上昇した。
しかし、不支持率は55%(前回65%)に上り、菅内閣が今後、政策面で実績を上げられるとは思わない人は70%に達した。
小泉内閣以降の改造時支持率では、2008年8月の福田改造内閣の41%を下回る最低を記録した。
菅再改造内閣の顔ぶれでは、たちあがれ日本を離党した与謝野経済財政相の起用を「評価する」は34%で「評価しない」49%が上回った。枝野官房長官の起用は「評価する」43%が「評価しない」36%より多かった。
参院で問責決議が可決された仙谷官房長官の交代は、67%が「適切だ」と答えた。
財政再建や社会保障制度維持のため、消費税率引き上げが「必要だ」との回答は61%に上った。環太平洋経済連携協定(TPP)には「参加すべきだ」が57%(前回58%)だった。
民主党の小沢一郎元代表が、政治資金規正法違反事件で強制起訴された場合の対応は、「衆院議員を辞職する」56%、「議員は辞職しないで離党する」25%、「辞職も離党もする必要はない」15%となった。菅首相が小沢氏に、強制起訴された場合には離党や議員辞職をするよう促したことを「評価する」は72%だった。
衆院比例選の投票先は自民26%(同26%)が民主21%(同22%)を上回った。政党支持率は民主25%(同23%)、自民22%(同20%)などだった。
URL:http://news.nifty.com/cs/domestic/governmentdetail/yomiuri-20110115-00645/1.htm
この記事へのコメント
ちび・むぎ・みみ・はな
> 誘いに乗ってほいほいと入閣し、当の経済相に
> 就任するとは。とても「節操がない」などとと
> いうレベルでは済まない。
与謝野氏の頭にあるのは財政健全化しかないの
だろう. つまり, 「このまま民主に任せておくと
財政が益々不健全になるから俺が建て直してやる.
何で俺の心意気が理解されないんだ.」
KYでは菅氏と同類だが, 菅氏とはことなる
原理主義者. どんどん増税路線を走ってくれれば
地方統一選挙は良い結果になるだろう.
真面目原理主義者だから必ず閣内で騒動を起こす
だろう. 結果的には特攻隊になるのかも知れない.
外国人参政権や人権法案を譲らなければ, 結果
オーライの可能性もあり. (可能性だが.)
「仏滅」は江戸時代には日本になかった外来思想
だったような. 朝鮮人民主党内閣には相応しい
呼び名かも知れない.
almanos
白なまず