専制国家の道と泥船の航海

 
「そういうことを民主党が言っていたとすれば、憲法解釈を過剰に政治論でまぶしすぎているのではないか。訂正すべきだ」
仙谷官房長官 於:1/7記者会見

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通常国会の召集日程が決まらない。テレビでは1月28日を軸に調整をなんて言っていたように思うのだけれど、内閣改造・党役員人事が遅れているのは、単に官邸に調整能力が欠けているだけでもない。

民主党の「入閣適齢期」とされる党幹部には「首相と運命をともにしたくない」と言い切る議員もいるそうだから、今の菅政権が"泥船"だという自覚はそれなりに民主党の議員自身も持っているのだろう。

それがどの程度まで、民主党内の「共通認識」にまでなっているかは分からないけれど、相当数の議員がそう思っているようであれば、現内閣は野党のみならず、身内からも総スカンを食っていることになる。

泥船の原因の一端でもある、問責決議を受けた仙谷官房長官は、参院の問責決議に法的拘束力がないことを盾に、居座り続けている。

かつて、自分達が、問責決議を盾にとって「即刻辞任すべきだ」と責め立てていたことに頬かむりするばかりか、鳩山前首相が、福田康夫元首相が問責決議を受けたとき「衆院における不信任決議案可決と同じ意味を持つ」と発言していたことを、いけしゃあしゃあと訂正して恥じるところがない。

自分達の権力維持のためならば、なんでもやる御都合主義。

単なるご都合主義だけであれば、周りが諫めて、それを直させる余地はあるかもしれないけれど、権力者がご都合主義に走ると、国民は堪ったものじゃない。

自分で自分を律するだけのモラルがないものが権力を持つと、国政を壟断してしまう可能性があるのだけれど、今の民主党政権には、非常にその危険を感じる。

特に、危険だと思うのが、昨年の12月10日に、閣僚が国会で虚偽答弁を行った場合の政治的・道義的責任について「答弁の内容いかんによる」とし、必ずしも責任は問われないとする答弁書を決定したこと。

いくら内容如何によるのだとしても、これでは議論が成り立たない。

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国会で嘘をついても、責任を問われないのなら、いくらでも嘘をついても構わなくなる。

国会が嘘だらけになってしまったら、国会で議論することそのものが意味を無くしてしまう。誰もその責任を追及できなくなってしまうから。

しかも、この閣議決定で、責任を問われない対象は「閣僚」としている。国家中枢を担うはずの「閣僚」が嘘をついてもOKで、その責任を問う場もないとなったら、国政を好き勝手に壟断しても、次の選挙までそれを止める手段はない。

つまり、この閣議決定は、国会を無効化させるのみならず、少数専制国家へのための第一歩にもなりかねない危険を孕んでいる。

はっきり言って、今の民主党政権、とりわけ仙谷官房長官は、「法」や「閣議決定」を恣意的に使い回していると思う。

参院問責決議は「法的拘束力」がないからと「法」を盾にして居座り、国会答弁における責任については「閣議決定」を盾に責任を問われないようにしている。

どちらも、自分の権力維持と保身には有効に働くけれど、国会や国民にとってのメリットは何もない。なぜなら、いずれも、政府・閣僚といった権力者以外の者たち、すなわち、野党であるとか、国民であるとかの声を無視しても構わないものになっているから。

更には、同じく昨年12月に、民主党所属議員が政府に提出する質問主意書を「残す意義がある例外的な場合に限る」として制限する方針を決めているから、もう身内からの質問すら受け付けない。



だから、今の政府のやり方は、国民を無視し、野党を無視し、身内の反対者すら無視して、しかも罪に問われない体制を作りかねないもの。明らかに、民主主義に逆行してる。

もしも、今の民主党政権が、本気で自身の専制政治を目指しているとするならば、次にやってくると考えられるのは、マスコミを懐柔するなりなんなりして、自分達がやっていることや、国会での議論を一切報道させないようにして、国民を衆愚に陥らせること。

曲りなりにも選挙制度がある内は、選挙の洗礼を受けることで、国民から政治責任を取らされることになるのだけれど、選挙で責任を取らされないようにさえできれば、専制政治は安泰になる。

責任を取らされないためには、何が起こっても「民主党の責任ではない」と国民に思い込ませるか、国民に政治に対する「判断材料」を与えなければいい。

そうすれば、何度選挙をやったところで、責任を取らされることなく、専制政治を行うことができる。

その意味では、民主党がこれまで散々見せてきた、所謂「ジミンガ―」に代表される責任逃れと、国会で虚偽答弁しても責任を問われないという閣議決定は、民主党の責任ではないと国民に思い込ませ、また、国民に政治に対する「判断材料」を与えないということと見事に合致している。

尤も、今は、民主党の正体が知られてきたということもあり、そろそろ「ジミンガ―」も通用しなくなってきた感があるのだけれど、昨年の12月に蓮舫行政刷新相が静岡県議選の応援演説を行った際に、「もう少し時間をいただき、民主党を温かく見守ってほしい」と述べたように、「ジミンガ―」から、「もう少し時間をくれ」作戦に切り替えている節がないでもないのは気になるところ。

いずれにせよ、今の民主党政権のやり方では、日本は民主国家から専制国家に向かい兼ねない。

民主党政権になって1年3ヵ月、それでも日本は廻っていたけれど、そろそろ、そうも言えなくなってきたのかもしれない。

泥船になるのは民主党だけでいい。


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画像泥舟に乗りたくない?議員たち入閣敬遠

 政府・民主党が通常国会の召集日程を決めきれないでいる。

 国会法は通常国会を1月中に召集するよう定めているが、内閣改造・党役員人事の遅れが影響し、当初は今月中旬も取りざたされた召集日は、ずるずるとずれ込んでいる。

 菅首相は7日、首相官邸で民主党の枝野幸男幹事長代理と会談し、国会召集や内閣改造などの日程について協議した。

 召集日は今月28日が有力視されているが、枝野氏は参院で問責決議が可決された仙谷官房長官と馬淵国土交通相の続投を前提に「強行突破するなら24日召集という手もある。野党は冒頭から審議拒否するだろうが、早い方がいい」と進言した。

 通常国会の最重要課題は、2011年度予算案と予算関連法案の早期成立だ。枝野氏には、十分な審議日程を確保するには一日でも早い召集が必要だとの思いが強い。野党が審議拒否しても、腰砕けになるとの読みもあるようだ。

 しかし、首相はこの日も判断を先送りした。小沢一郎元民主党代表の国会招致問題も影響しているが、より直接的な要因は「13日の民主党大会以降、国会召集前」と明言した人事で要となる官房長官や、野党対策を仕切ってきた鉢呂吉雄国会対策委員長の後任の人選に手間取っていることだ。

 仙谷氏を交代させる場合、後任には江田五月前参院議長や北沢防衛相らの名前が挙がる。ただ、菅グループに所属する江田氏の就任は、党内の嫉妬を買う恐れがある。北沢氏は野党との関係が悪いとされ、参院自民党には「『北沢官房長官』なら、即問責決議案(提出)だ」との声がある。

 内閣支持率低迷で、「入閣適齢期」とされる議員に「泥舟に乗りたくない」との思いがあることも影響しているとの見方もある。実際、入閣適齢期の党幹部の一人は「首相と運命をともにしたくない」と言い切る。

(2011年1月8日09時14分 読売新聞)

URL:http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20110107-OYT1T01032.htm



画像問責は「法的拘束力なし」と言うけれど…野党時代の得意技 2011.1.8 10:29

問責決議可決後の政権の対応と野党側の見解 参院で問責決議が可決されたのを受け、菅直人政権の“弱み”となっている仙谷由人官房長官が、決議に法的拘束力がないことを盾に、「内閣の要」の座に居座り続けている。だが、民主党は野党時代、問責決議をフル活用し、自民党政権を揺さぶり続けた過去がある。仙谷氏は7日、同僚議員がその当時、「法的拘束力がある」としてきた見解を訂正し、批判の矛先が自身に向く「ブーメラン効果」を避けるのに“必死”となった。(村上智博)

 平成20年6月、福田康夫首相(当時)が問責決議を受けた際、民主党の鳩山由紀夫幹事長(同)は「衆院における不信任決議案可決と同じ意味を持つ」と発言した。仙谷氏は7日の記者会見でこの発言に対する見解を求められると、あっさり覆した。

 「そういうことを民主党が言っていたとすれば、憲法解釈を過剰に政治論でまぶしすぎているのではないか。訂正すべきだ」

 仙谷氏は、内閣改造で交代する公算が大きいが、「ねじれ国会」下で問責により辞任する前例を作れば、政権運営が立ち行かなくなるのは確実。このため、通常国会での審議拒否を突き付けて辞任を迫る野党側を批判するとともに、報道機関に対しても、「各社の論説の皆さんには審議拒否について自らの立場をはっきりさせてほしい」と難癖を付けた。

 昨年11月に馬淵澄夫国土交通相とともに問責決議を受けて以降、仙谷氏は「問責決議には法的拘束力はない」と言い続けてきた。憲法の規定に基づき可決後は、衆院解散か総辞職を行わなければならない内閣不信任決議案との違いを強調することで、自発的辞任を拒んできたのだ。

 ただ、問責決議の法的根拠をめぐっては、自民党の伊吹文明元幹事長が昨年12月、国会の首相指名権を理由に「法的根拠がないとの説は誤りだ。憲法67条(による首相指名)を前提に行う決議である」との見解を発表している。

 問責決議で政権運営を揺さぶる戦略は野党時代の民主党が好んで使ってきた。

 平成10年の「ねじれ国会」下では、防衛庁背任・証拠隠滅事件で自民党の額賀福志郎防衛庁長官(当時)に提出し、同調した野党の公明党とともに可決。その1カ月後、額賀氏は辞任に追いやられた。この「問責作戦」を皮切りに、民主党は福田康夫、麻生太郎両元首相にも同様の手法をとって、総辞職や衆院解散につなげた。

 首相も野党時代は問責決議を受けた首相や閣僚に「即刻辞任すべきだ」などと迫っていた。ところが、内閣改造で仙谷氏の責任をうやむやにしようとしており、都合の悪い過去は忘れようとしている「ご都合主義」が見え隠れする。

URL:http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/110108/stt1101081032005-n1.htm



画像国会での虚偽答弁の責任は「内容次第」 政府答弁書が無責任に… 2010.12.10 12:22

 政府は10日の閣議で、閣僚が国会で虚偽答弁を行った場合の政治的・道義的責任について「答弁の内容いかんによる」とし、必ずしも責任は問われないとする答弁書を決定した。自民党の森雅子参院議員の質問主意書に答えた。先の臨時国会では、仙谷由人官房長官をはじめとする閣僚の虚偽答弁が追及された。

URL:http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/101210/plc1012101227012-n1.htm



画像野党時代の武器、でも今は… 民主、質問主意書を制限へ 2010年12月22日19時52分

 民主党は、所属議員が政府に提出する質問主意書について「公文書として残す意義がある例外的な場合に限る」として制限する方針を決めた。政府与党一元化を徹底する目的だが、年金問題など野党時代に政権追及の武器にしてきた議員の権利を自ら縛ることに批判が出そうだ。

 質問主意書は国会議員なら誰でも提出できる。政府は答弁書を閣議決定して7日以内に回答しなければならない。野党時代は長妻昭前厚生労働相が年金問題で政府を追及する際に多用した。枝野幸男幹事長代理は21日の記者会見で「党の部門会議や国会の質疑で政府に回答を求めることはできる」と説明したが、今後の提出には党政策調査会の了承が必要となる。

URL:http://www.asahi.com/politics/update/1222/TKY201012220406.html



画像公孫丑章句下 十

孟子致爲臣而歸、王就見孟子曰、前日願見不而不可得、得侍同朝甚喜、今又棄寡人而歸、不識可以繼此而得見乎、對曰、不敢請耳、固所願也、他日王謂時子曰、我欲中國而授孟子室、養弟子以萬鍾、使諸大夫國人皆有所矜式、子盍爲我言之、時子因陳子而以告孟子、陳子以時子之言告孟子、孟子曰、然、夫時子惡知其不可也、如使豫欲富、辭十萬而受萬、是爲欲富乎、季孫曰、異哉子叔疑、使己爲政、不用則亦已矣、又使其子弟爲卿、人亦孰不欲富貴、而獨於富貴之中、有私龍斷焉、古之爲市也、以其所有、易其所無者、有司者治之耳、有賤丈夫焉、必求龍斷而登之、以左右望而罔市利、人皆以爲賤、故從而征之、征商自此賤丈夫始矣。

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孟子は斉の臣をとうとう辞職して、斉の自宅に帰ってしまった。斉王は孟子の宅まで出向いていって、こう言った、
斉宣王「これまでは先生と会見しようとしても、なかなか機会がございませんでした。ですが、本朝に先生が列席しているのをはなはだ喜んでおりました。今、先生は小生を捨てて帰ろうとしておられる。どうでしょう、これからも引き続いて先生と会見させていただけるでしょうか。」
孟子「それはこちらから請わなかっただけです。もとよりそれは、私の願いです。」
他日、斉王は時子(じし。斉の家臣か?)に言った、「余は都に孟子のために邸宅を与え、弟子たちの養育費として一万鐘(しょう。容積の単位で、約50リットル。つまり明治時代以降の石(こく)で換算すればだいたい1石=3.6鐘)を扶持し、大夫や国人たちに孟子を師として敬わせたいと思う。」
時子は、孟子の弟子の陳臻(ちんしん)を通じて孟子にこのことを伝えた。孟子はこう言った、「そうか。だが時子とかいう者、余がそんな申し出を受けられないということをわかっていない。もし余が富を望んでいるのならば、なんでこれまで十万鐘の禄を受け取らなかったのに今さら一万鐘の禄を受け取るものか。これは富を欲しているのではないのだ。かつて季孫(きそん。魯の三桓の一、季孫氏の誰かであろう)は言ったものだ、
奇っ怪なるかな、子叔疑(ししゅくぎ)は。政治の任に当たるものは、その策が用いられなければただ辞職するだけだ。なのに彼は、今またおのれの子弟を卿(けい。大臣)に押し込んでいる。(なんだ、結局政治の理想を求めていたのではなくて、禄が欲しいだけなのかよ。)

と。人は誰でも富貴を望むものだ。しかし、富貴の中にいながら、おのれ一人で壟断しようとするのが子叔疑のやり方なのだ。(壟断というのはこういう由来だ。)いにしえの時代、商いというのは余った産物と引き換えに不足している商品を得る交易にすぎなかった。役人は、市場の秩序を警備するだけであった。だが、そこにいやしい男が現れた。彼は必ず壟断つまり小高い丘に陣取った。そうして左右を見回して、市場の需給動向を見て取ってさや取りで利益を上げたのだ。人は皆彼をいやしいと考えた。ゆえに、人心に従ってこれに課税した。商業に対する課税は、実にこのいやしい男より始まったのだ。」

《★故事成句★》
「壟断(ろうだん。本文では「龍断」)」(原意は「小高い丘」。その地に登って市場の動向を独り先読みして利益を独占したことから、転じて「利益や権力を我が物に独占する」という意味となる)

URL:http://suzumoto.s217.xrea.com/website/mencius/mencius04-10.html

この記事へのコメント

  • ちび・むぎ・みみ・はな

    almanos 殿,

    > 曲がりなりにも国会の人である小沢氏が

    議論のできない「永田町の怪人」

    真面目な話し, 小沢氏を担ぎ出して地方で戦え
    るかということですね.

    国政選挙なら得意の地方巡業パフォーマンスが
    使えるが, 本当の地方選挙だと真面目に地方の
    問題に向き合う必要があるから, どうでしょう.

    前年9月15日の民主党 党首選挙のポイント数は

    .       菅   小沢
    サポーター  249.    51
    地方議員.   60    40
    国会議員   412.   400

    う~~ん. 地方の支持は小沢が良いわけではない.
    一般受けは全く違う.
    2015年08月10日 16:47
  • almanos

    ここまで来ると、恥知らずにも限度があるという状態ですね。都合が悪くなるなら嘘も前言を翻すのも良しとしてしまえば、誰もその人の言葉を信用しなくなる。長期的には破滅以外の選択肢がない。しかも、両院議員総会の前に。時期すら考えていない。
     自分たちが無能な卑怯者達ですと公言した様なものです。で、そういうのが執行部である限り民主党自体に先がない。解散で壊滅よりはと思っていた議員でも、仙石氏達を執行部にしたままでは三年後に全滅を避けられない。ならばという流れになるでしょう。仙石氏達は、国会をかつての学生運動次代の内輪揉めと同一視している事が明らかになった事例でしょう。曲がりなりにも国会の人である小沢氏が数段マシであったという流れが起きておかしくない。前原、岡田両氏以下の執行部派の若手は仙石氏のこういう臆面もない発言をきちんと批判し、何らかのアクションを起こさないと政治生命を失うでしょう。それが出来ないならバッジをつける資格はない。小沢氏にとっては敵の自爆壁に助けられたみたいなものでしょうね
    2015年08月10日 16:47
  • グー

    遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。
    本年も多様な角度からの発信を愉しみにしております。

    内閣改造、大連立、政界再編、いろいろと言われておりますが、議員の質の劣化が根本の問題。人材のない内閣改造も、政権延命のための大連立も、劣化議員の保身のための政界再編も、選択しようのない選択肢だけが並ぶのでしょうかね。
    2015年08月10日 16:47

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