昨日のエントリーの続きです。
日比野 今後、拡張する中国に対して日本はどう付き合っていくべきでしょうか?「中国がなくても日本経済はまったく心配ない」という説もあります。日本の対中輸出はGDPの2.8%しかないそうですね。
K氏 あなたねぇ、2.8%ったって、日本のGDPは500兆円あるんだよ。500兆円の2.8%は1.4兆円くらいだよな。GDPが1.4兆円っていったら大したものだよ。ジャマイカやホンジュラス、アフリカのボツワナとかと同じくらいあるんだよ。それが無くなったら途端に潰れる企業も沢山あるはずだ。彼らにとっては中国との付き合いがあるなしで自分達の生死がかかってるんだから必死だよ。それこそ経団連に根回したり、政府に陳情に行くんだよ。「献金します。選挙でも民主党を支持するから、どうか中国を敵に回さんでくれ」ってお願いして回るんだ。彼らの声が大きくなったら、政府だってほったらかしには出来ないんだよ。もちろん、国益を損なわないようにするのは基本だよ。だけど、中国をまるっきり無視することは日本にとっても良くないんだ。たとえば、日本と中国の仲が悪くなって対立したとする。すると今度は、世界の国が日本と付き合うべきか、中国と付き合うべきかの選択を迫られるようになる。さっきのノーベル平和賞ではないけども、アレとおんなじになるんだ。中国にしてみれば、「日本と仲良くするんだったら、あんたとこの国とは縁を切りますよ、レアアースも売りませんよ、どうするんですか。」と二者択一を迫ってくる。そうなると世界の国が困るんだな。アジアにGDP世界2位と3位の国がある。世界からみたら、どちらとも仲良く貿易やっていきたいけども、どっちかを選ぶしかなくなるとなったら、儲けが半分になるわけだ。そして下手をするとそれが戦争や内紛の火種にもなりかねないんだね。まぁ、日本にしてみれば、中国の存在が大きくなって、日中関係がどうなるとか二国間関係で考えがちになってしまうのは分からないではないけども、世界はそういう目では見ていない。グローバルな視点を忘れてしまうと反って危機を呼び込んでしまうわな。
日比野 先般、丹羽宇一郎大使が中国へのODAの強化を外務省に具申していましたけれども、あれは…。
K氏 大使の発言としていいかどうかは別として、商売人の論理ではあるわな。今は、日本の世論が中国に対して厳しくなっているから、丹羽大使の発言は、一見売国奴にみえるかもしれないけども、ああした発言で、バランスを取っているところはあるんだよ。ある意味、財界の代弁ではあるのでね。中国に対して「日本は強硬一辺倒ではありませんよ、商売もちゃんと考えてますよ」というところだな。ただ政治の論理としてそれに従うかどうかは別の話だけどね。
日比野 そうすると、鳩山前首相の東アジア共同体構想も視野にいれるべきということですか?
K氏 う~ん。まぁ、でも言ってみれば、東アジア共同体なんてもうあるんだよ。ある意味、中国がそうなんだ。中国は一国としてみれば、大国にみえるけども、中身をみれば、地域によって、民族も言語も経済力も全然違う省とか、自治区とかの集まりだよね。特に内陸部と沿岸部の所得格差は何倍にもなってる。ジニ係数も警戒ラインである0.4を超えてたと思うけども、中国の省なんて、人口は他のアジアの一国くらいの規模はあるわな。だから、省を"国"だと考えたら、中国は複数の国の共同体でもあるんだよ。それを中央政府が強権的に纏めてる。東アジア共同体は、要するに、経済力も言語も民族も全然違う国を統合してゆくという話だろう。それは、今の中国の姿でもあるんだね。
日比野 なるほど。東アジア共同体の実態が今の中国だとすると、実現するとそうとう厳しいことになりますね。
K氏 そうだね。東アジア共同体を実際にやろうとすると、貨幣から商習慣から共通のベースになるものをつくらなくちゃいけない。国家同士の貿易ならまだいいけども、道端の商店で、言葉から通じなかったら商売にならないよ。それに貧しいとこから豊かなとこに人がどんどん集まってくるしね。だから、東アジア共同体って、言葉は綺麗に聞こえるかもしらんけども、実際には難しい。人の流入を制限して格差を固定するなら、今の中国そのまんまで、民衆の不満が溜るだけだし、格差をなくしましょうとなったら、日本の富が中国の貧困層へのバラマキに使われる。日本は、妬まれるか貧乏になるかのどっちかの選択になるだろうね。だから鳩山にも言ってやればいいんだよ。「東アジア共同体ですか。日本を中国にするんですね。公用語は北京語ですよ。貴方は英語ができるようですけど、今度は北京語がペラペラにならないといけませんね。」ってそう言ってやればいいんだ。(笑)
日比野 そうすると、日本は、中国とは敵対しない程度にうまく付き合うべきということになりますね。今の中国の姿勢からすると中々難しそうに思うのですけれども、上手くできるのかな・・・
K氏 外交的には、やはり日米同盟をしっかりしておくのが一番だ。今は日米関係がギクシャクしてるけども、なんとか揉み手、擦り手でもしてだね、ヨリを戻しておくのが安上がりでいいと思うよ。その上で中国とも関係を繋いでおく。そうして世界のバランスを取るという考え方だね。なにも強硬一辺倒だけで上手くいくというわけでもないんだ。
日比野 経済的に中国とうまく付き合うというのは分かりますけれども、外交的に上手く付き合うのは難しいのではないですか?今の民主党政権を見てると、特にそう思います。尖閣を見てても、とても外交してるレベルではないですよ。
K氏 まぁ、中国だけとは限らないんだけども、外交で必要になるのは、相手が何を求めているかということだ。外交で100%自分の思うとおりなんて中々できるもんじゃない。互いに腹を探り合って、落とし所に持っていくのが普通だわな。だから、まず相手の本音を掴めなきゃいけないよ。尖閣の問題にしても、民主党の問題は、中国の意図が読めていなかったということがひとつ。なぜ読めなかったかというと、やはり中国とのパイプがなかったというのがあったと思うな。だから、原則論で対応するしかなくなってしまう。中国が強硬に出たら、慌てて細野を特使として派遣したけども、外交で相手に先手先手を取られちゃ取り返すのは難しいよね。よく媚中派とか、チャイナスクールとかいうけども、彼らが居ないと、今度は中国の本音が分からなくなるんだよ。表向きは駆け引きとかメンツが先に立つんだけども、その裏の本音をちゃんと引き出してやらないといけない。だから一概にチャイナスクールを全部叩き出してしまうと、尖閣みたいなことになってしまうんだね。
日比野 民主党政権は始めのうちは、政治主導だと称して官僚を敵に回してましたからね。その弊害が出たということですか。今頃になってようやくそれに気づいて、政務三役会議に事務次官を参加させるようにするみたいですけれども。
K氏 政治家だけで全部こなせるのなら、官僚なんてそもそも要らなくなるわけだからね。
明日に続きます。

この記事へのコメント
almanos
とりあえず日米同盟は機能しているから内憂を外征で誤魔化す行動に走った時、与しやすい所ではない。台湾も徐々に中国に呑まれるのは御免という流れになりつつある
ちび・むぎ・みみ・はな
> のが一番だ。今は日米関係がギクシャクしてるけども、
> なんとか揉み手、擦り手でもしてだね、ヨリを戻しておく
> のが安上がりでいいと思うよ。その上で中国とも関係を
> 繋いでおく。そうして世界のバランスを取るという考え方
> だね。なにも強硬一辺倒だけで上手くいくというわけでも
> ないんだ。
K 氏はやり手の経済通のようだが国のプライドに対する意識
があまり感じられない. 欧米だと, ここら辺で国としての格
を意識した発言が入ると思う. 国際政治はそうでなければ
発言力が得られない. 何はともあれ, 次回を期待.
今年も好き勝手なコメントですが, どうぞよろしく.
クマのプータロー
今なら1.4兆円で済む、と言うと、この御仁にはぶん殴られそうですね。