会派離脱宣言の裏にあるもの
今日は、この話題に触れざるをえないでしょう。
1.会派離脱宣言
民主党の渡辺浩一郎氏ら衆院議員16人が衆院会派「民主党・無所属クラブ」からの離脱を表明した。だけど離党はしないという。
離脱届を提出したのは、衆院比例代表選出の1回生14人と2回生2人で、小沢グループ衆院1回生からなる「北辰会」のメンバーらが中心。17日には、「民主党政権交代に責任を持つ会」なるグループを結成した。
会長に就任した渡辺浩一郎氏は記者会見で、予算関連法案への対応について「別の行動をすることはあり得る」と、造反の可能性を口にしている。
会派とは、議会で政治上の政策・主義・目的などを共有する議員が集まった団体のことで、2人以上で結成できることになっているのだけれど、普通、会派は政党を中心に結成される。
そもそも「政治上の政策・主義・目的などを共有する議員達」が集まった団体こそ政党なのだから、会派が政党を中心に結成されるのは、ごく当たり前の話。
なぜ、わざわざ会派を結成する必要があるのかといえば、国会での、各委員会の委員数の割り当てや質問時間配分などが会派の所属人数によって決められるから。
自分達の主張を政治に反映させようと思ったら、各委員会の委員数や質問時間は多ければ多いほど良い。だから、会派を作るときは、無所属や少数政党の議員たちを取り込んで、いわゆる「統一会派」を作るケースが多い。
民主党は衆院で無所属議員も含めた会派として「民主党・無所属クラブ」を結成しているし、自民党も「自民党・無所属の会」を作っている。
つまり、会派とは、党というよりは、議会内団体の意味合いが強く、それゆえ、どれだけの人数を会派が持っているかは、国会内での発言力を左右することになる。
したがって、会派を結成、または離脱するにあたっては、その申請を会派の代表者が国会事務局(衆参両議長)へ届け出る決まりがある。
今回、渡辺氏ら衆院議員16人が離脱を表明したのは、この「民主党・無所属クラブ」からの離脱なのだけれど、会派を離脱するためには、当然、"民主党・無所属クラブの会派代表"が、その申請を行なう必要がある。
だけど「民主党・無所属クラブ」の会派代表は、民主党の岡田幹事長。だから、岡田幹事長がウンといわない限り、この16名は離脱できない。もちろん、岡田氏は、彼らの離脱を認めていない。
ならばと、民主党の会派に所属しつつ、別の会派を立ち上げるのはどうかというと、そんなケースは想定されていない。国会の議事課は「結成届が提出されれば議院運営委員会で協議することになる」としているから、果たしてそれが認められるかどうかは分からない。
だから、渡辺氏らの離脱表明は、実際に離脱できるかどうかというよりは、執行部に対する強い反対表明、すなわち、今後、執行部には従わないという、所謂「造反宣言」とでも言うべきもの。
2.炸裂した鳩ビーム
今でさえ、法案再可決に必要な衆院の「3分の2」の議席に5議席足りなくて、社民党の協力をとりつけてなんとかしようとしていたところなのに、更に、民主党内から16人が造反すれば、完全に衆院での再可決はできなくなる。
それに、その頼みの綱だったはずの社民党ですら、「菅政権は方便発言があっても、微動だに見直す動きを見せない。予算関連法案が予算と大きくリンクしている面もある」と、鳩山発言を問題視して、当初賛成だった方針を撤回し、反対に回ろうとしている。
たった一言で、最後の望みさえ、ぶった切ってしまう。まったく、鳩山発言の破壊力たるや恐れ入る。はとビーム炸裂といったところか。もうほとんど予算関連法案が通る見込みはないといっていい。
造反されたくない民主党執行部は、引き止めに全力をあげるようだけれど、なんとなれば、菅首相が解散をちらつかせながら、脅してでも、彼らを思いとどまらせようとするかもしれない。
だけど、会派離脱届を出した議員によれば、「玉砕覚悟でみんな動いている」そうだから、解散という脅しとて通用しないかもしれない。
渡辺氏ら16人は会派離脱はするが離党はしない、としているけれど、もしかしたら、小沢氏が何度も離党を促されても、頑として離党しない姿勢を貫いた影響もあるのかもしれない。
つまり、どうせ、菅首相や執行部は何もできないのだ、と足元を見ているということ。
それに加えて、菅首相になってから、連戦連敗を続ける地方選挙に、とうとう20%を割った内閣支持率。そして衆院2/3も使えないとなれば、完全に政権運営は行き詰まる。
将棋であれば、もう投了までの形作りの段階に入ったと言っていい。
ならば、これからどうなるか。
菅首相に、気力があれば、やぶれかぶれ解散に打って出る可能性があるし、気力が萎えていれば、総辞職になるところだろうけれど、なにせ、相手は"けものへん"な御仁。完全に詰んでいても、玉将を取られるまで、見苦しくジミンガー、オザワガーを叫びながら居座り続けるかもしれない。
だけど、今の状況下では、菅首相が石に齧り付けば齧り付くほど、民主党は崩壊してゆく。泥舟は沈み、我先にとみんな逃げ出していくだろうし、現にもうそうなっている。
3.賭けに出るしかなかった16人
実際、民主党の公認を辞退した、統一地方選挙の候補者の中には、みんなの党に移って出馬する例がちらほら見受けられる。だから、もし民主党が崩壊する場合には、逃げ出した議員が、今度はみんなの党に鞍替えして立候補する可能性だってある。
ただ、そうした、自分の立場が悪くなったから逃げ出すような節操ない議員を、安易に受け入れる党があるとするならば、その党にも国民の非難が集まることが予想される。
したがって、受け入れる方だって、受け入れるだけの"正当性"をその議員に求めるはずで、それがない議員には、たとえば、確実に当選できる地盤があるなどの手土産を持参しないと、中々受け入れてもらえないのではないかと思われる。
では、その"正当性"とは何か。
それは、おそらく与党から野党に入るだけの理由、すなわち、今の野党の立場を肯定することに他ならない。要するに、現時点であれば、現政権の否定であり、倒閣の意思がそれにあたる。
その意味では、造反の態度を明らかにした16人は、造反の意思表明そのものが、現政権と現執行部の否定であり、彼らなりの"正当性"であると同時に、野党にとっての"正当性"でもある。
野党にとっての正当性を得るということは、仮に解散総選挙になったとしても、民主党を離党して、野党に鞍替えして立候補できる余地だってあることを意味してる。
地方選挙で連戦連敗を続ける今の民主党では、よほどの地元の支持や地盤の強さがない限り、次の総選挙で勝つことは、相当に難しい。
一部には、今、解散総選挙をやれば、仙谷代表代行、野田財務相、そして、菅首相すら落選するかもしれないという予測さえ囁かれている。それくらい厳しい現実がある。
今回、会派の離脱を宣言した16人は、いずれも2009年の総選挙で、比例区単独で当選した議員たちばかり。要するに、民主党の看板で勝った議員達。
そんな彼らが、大逆風が吹いている今の状況下で勝てる公算はない。
であるからこそ、彼らは今回賭けに出た。いや、賭けに出るしかなかった。
現時点で倒閣に動くのが、非常にリスクが高いのは重々承知の筈。だけど、強力な地盤がない議員達にとっては、もう他に手がない。次の選挙で生き残るための玉砕覚悟の大勝負が、このタイミングでの倒閣運動。
もしも、これが小沢氏の指示だったとしたら、やはり只者ではない。選挙については、現執行部より一枚も二枚も上手。
もちろん、彼らがこの賭けに勝てるかどうかは分からない。だけど、ただひとつ言えることは、今回の彼らの行動に"正義"がある、と国民が思うかどうかが、結果を大きく左右するのではないかと思う。
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民主、事実上の分裂状態=小沢系「造反」の可能性-執行部は引き留めに全力
民主党の渡辺浩一郎氏ら小沢一郎元代表に近い比例単独選出衆院議員16人が衆院会派「民主党・無所属クラブ」からの離脱を表明したことで、同党は17日、事実上の分裂状態に陥った。党執行部は離脱を認めない方針だが、渡辺氏らは2011年度予算案の関連法案の採決で「造反」も辞さない構えだ。16人が造反すれば、法案を衆院の「3分の2」で再可決するのは不可能。赤字国債発行のための特例公債法案などの年度内成立は絶望的な情勢となり、菅政権は危機的な局面を迎えた。
岡田克也幹事長は同日午後、党本部で記者会見し、渡辺氏らの動きを「パフォーマンスと言われても仕方がない」と批判する一方、「考え直して責任を果たしてほしい」と述べ、会派離脱願は受理せず、説得に努める考えを示した。また「目くじらを立てなくてもいい」として、現時点では16人を処分対象としない意向を明らかにした。
離脱表明後、岡田氏は国会内で輿石東参院議員会長、仙谷由人代表代行と相次いで会談し、対応を協議。輿石氏は記者会見で「好ましい状況ではない。もう少し(渡辺氏らから)真意を聴く必要がある」と述べた。
党執行部は、小沢氏を「党員資格停止」処分とする方針について堅持する考えだ。ただ、首相の求心力欠如が決定的となる中、党内には動揺が広がっている。参院幹部は「(離脱の動きが続き)16人が50人になるかもしれない」と危機感を示した。
一方、小沢氏に近い若手でつくる「北辰会」の会合が同日昼、衆院議員会館で開かれ、離脱表明した議員を含む約30人が参加した。会派離脱について「思いは共有できる」などと理解を示す声が続出。会合後、出席者の一人は、記者団に対し、関連法案に造反する可能性について「仲間と相談して対応する」と含みを残した。別の出席者は「もう菅首相が辞めるしかない」と述べた。(2011/02/17-17:58)
URL:http://www.jiji.com/jc/c?g=pol&k=2011021700709
会派離脱願提出の民主党衆院議員16人全氏名
◆会派離脱願を提出した「民主党政権交代に責任を持つ会」の比例選出衆院議員16人(比例ブロック、当選回数。敬称略)
【会長】渡辺浩一郎(比例東京〈2〉)【会長代行】豊田潤多郎(比例近畿〈2〉)【幹事長】笠原多見子(比例東海〈1〉)【その他】三輪信昭(比例東海〈1〉)▽熊谷貞俊(比例近畿〈1〉)▽菊池長右ェ門(比例東北〈1〉)▽高松和夫(比例東北〈1〉)▽水野智彦(比例南関東〈1〉)▽渡辺義彦(比例近畿〈1〉)▽石田三示(比例南関東〈1〉)▽川口浩(比例北関東〈1〉)▽石井章(比例北関東〈1〉)▽大山昌宏(比例東海〈1〉)▽小林正枝(比例東海〈1〉)▽相原史乃(比例南関東〈1〉)▽川島智太郎(比例東京〈1〉)
(2011年2月17日12時53分 読売新聞)
URL:http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20110217-OYT1T00401.htm
仙谷氏 水野真紀が出馬すれば徳島1区で負ける説も出る 2011.02.16 10:00
強制起訴され、菅直人首相から党員資格の停止を迫れられた小沢一郎・元民主党代表は、週刊ポストのインタビュー(1月1・7日号)で、「私は地元が支えてくれるから大丈夫だが、普通の政治家はマスコミに叩かれたらすぐに選挙で負けちゃう」と語った。
マスコミに土下座する菅氏らは、せいぜい「普通の政治家」で、総理の器ではなかったということかもしれないが、その菅氏に最後に残された武器が解散だというのは皮肉というしかない。
やるならやればいい。前代未聞にして、国民にとっては痛快な結末を迎えるだろう。選挙分析に定評のある政治ジャーナリスト・野上忠興氏が語る。
「地方選挙が政治の流れを先取りすることはよくある。国民は民主党の公約撤回を政権交代への期待を裏切ったと怒り、愛知のトリプル選挙(県知事、名古屋市長、名古屋市議会のリコール)ではそれが爆発した。菅首相が解散を打てば、民主党には郵政選挙以上の逆風となる。特に菅首相、仙谷代表代行、野田財務相など政権中枢の政治家たちには有権者の怒りが集中的に向けられる。対立候補次第では、現職総理の菅氏を筆頭に、現職閣僚が枕を並べて討ち死にする事態も考えられる」
すでにその予兆はある。次の総選挙で躍進を狙うみんなの党の渡辺喜美・代表は、「消費税引き上げ反対を掲げて、菅首相の東京18区に鞍替えする」というプランを密かに練っている。
郵政選挙で菅氏は自民党新人に落選ギリギリまで追い詰められたし、菅氏のお膝元である西東京市で昨年末に行なわれた市議選では、民主党は7人の候補を擁立して4人が落選。当選した3人も下位で、民主党の得票率はわずか15%に過ぎなかった。むしろ菅首相の苦戦は必至の情勢なのだ。
また、仙谷氏の徳島1区は自民党の対立候補は決まっていないものの、昨年の参院選で民主党は自民党の30歳の新人に苦杯をなめた。地元の自民党関係者からは、「徳島3区の後藤田正純代議士の夫人で女優の水野真紀さんは人気が高い。1区から出馬すれば仙谷に勝てる」との声が上がる。
野田財務相の千葉4区には郵政解散で野田氏とわずか900票差にまで詰めた自民党元職の対立候補がいる。“次期首相候補”も、国民に背を向けて増税を推し進めれば、当落線上をさまようことは間違いない。
※週刊ポスト2011年2月25日号
URL:http://www.news-postseven.com/archives/20110216_12756.html
この記事へのコメント
sdi
彼らが自分たち行動・主張について「正統性」(legitimacy)を獲得たいのなら、「鳩山自由党」のように離党ないし分党するのが筋と思いますね。なにしろ、当時の鳩山派に比べて遥かに「正統性」(legitimacy)を得やすい状況です。それをしないの「したくてもできない」のか「最初からやる気がない」のどちらかです。また、小手先術策レベルの思考でいくなら小選挙区選出議員にとって比例オンリーの議員が減れば自分が比例区で復活救済される確率が上がります。「比例でしか当選できないヤツはもっと減ってくれないかな」と内心思っていているかもしれませんよ。
almanos